もう1人の赤い彗星の失敗作   作:嫉妬憤怒強欲

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宇宙世紀シリーズのガンダムとマクロスシリ-ズのアニメを見て執筆してみました


プロローグ 奇跡もまた人が起こす業

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに百年。

地球の周りには数百基のスペースコロニーが浮かべられていた。

 

 人々はその円筒の内壁にあたる人工の大地に住み、そこを第2の故郷とした。

数億の宇宙移民たちはそこで暮らし、子を産み、そして――――死んでいった。

 

 

 第二次ネオ・ジオン戦争別称『シャアの反乱』の抗争から半年が経過したころのこと。

 ジオン公国残党の拠点だった小惑星基地アクシズを地球へ落とす作戦が失敗し、ネオ・ジオン軍の残党は廃墟同然の資源小惑星で朽ち果てようとしていた。

 二度にわたるネオ・ジオン戦争での敗北と、新生ネオ・ジオンの総帥にしてジオン・ズム・ダイクンの遺児であるシャア・アズナブルを失った事実により雑多な勢力の寄り合った所帯がバラけ始める。

いずれ彼らは衰退して烏合の衆に成り下がるだろう。

 そのことを危惧したジオン共和国外務大臣モナハン・バハロは、シャアの代わりとなる新しい指導者を作り上げることを計画した。

 

 モナハンは一年戦争時のジオン公国、および戦後の共和国首相を務めたダルシア・バハロの息子ではあるが、平和路線を志向したダルシアとは正反対の野心家で、共和国解体の阻止と地球孤立、ジオンの再興を狙ってネオ・ジオンと非公式に接触。ジオン共和国の右翼政治団体「風の会」に影で出資している。

 

 但し彼の行動はジオン共和国政府自体の方針ではなく、政府閣僚である事を利用して個人的に企てている違法行為に過ぎないため、計画は極秘裏に行われた。

 

 ネオ・ジオン再統合を為す、シャアの再来として造られた強化人間。その役割を全うする忠実な人形にはシャアの再来としての名に恥じぬ高いMS操縦技量とカリスマ性が要求され、大臣旗下の研究所で候補生たちに綿密な調整と実機を使った過酷な訓練が強いられた。

 

 

 

 

 そして宇宙世紀0093年9月4日に――――事故が起こる。

 

―――――サイコモニターから異常な数値を検知! なおも上昇!

―――――被験者との連絡取れず! 暴走状態にあると推定!

―――――ミッション中止! 繰り返す!! ミッション中止! ただちに機能を緊急停止させろ!

―――――駄目です! 緊急停止機能がまったく機能しておりません!

 

 

 地球から最も遠い宇宙都市サイド3【ジオン共和国】近傍のエキストラ・バンチ【ダーク・コロニー】にて候補生の1人が実験機を操縦している最中に突如機体が暴走。管制室からの声に応答せずに暗礁宙域を飛び回り始める。

 

 モナハンが求めたのは忠実な人形。情緒的に不安定で自制心を欠き、感情の赴くままに暴走するものは失敗作である。

 計画が外部に露呈することを危惧したモナハンの決断はとても冷徹なものだった。

 

 

 

―――――では直ちに実験機を破壊せよ。どうせアレの代わりがすぐに手に入る。無論乗っている失敗作もな。

 

 

 

 

 

 

 暗礁宙域――――岩や機械の残骸が漂う闇に包まれた虚空の空間を無数の光が飛び交う。

 

緑色の装甲に身を包み、口元がガスマスクの形をした1つ目の巨人――――アナハイム社製の最新機AMS-129『ギラ・ズール』――――を先頭にギラ・ズールよりも少し小柄な白無垢の一つ目の巨人―――ジオン共和国防衛隊量産機RMS-106CS『ハイザック・カスタム』―――――が4体、手に握っているライフルの形をした銃器から一点の方向に向けて黄色い閃光の雨を降り注がせる。

 その方向の先では一つ目の赤い人型の鉄の巨人が疾走していた。背中から発せられる青い炎の尾が長く伸び、一筋の光の軌跡を描いていく。

 常に直線的なものではなく、障害物となる大きな残骸と放たれた閃光の雨を掻い潜るようにジグザクとした変則的なその動きは、まるで水を得た魚の様でギラ・ズールの部隊はついていけていない。

 

―――――チッ! 逃がすか!

―――――速い。動きが全く追えないぞ。

―――――なんて性能だ。あれで試験機なのか……!? 

―――――あんな機動でパイロットがもつのかよ?

―――――アレス、正面にある馬鹿でかいデブリを砕いて足を止めろ!

―――――了解!

 

 一体のハイザック・カスタムが手に持っている巨大な筒で赤い巨人の進行先にある大きな残骸に向ける。

 

―――――喰らえ!

 

 筒から放たれた黄色い太いビームが宙に光芒の尾を残し残骸に直撃する。後から起こった爆発により、残骸はバラバラとなって砕け、無数の破片が赤い光に向かって降り注いだ。

 

 咄嗟に赤い巨人は右方向に弧を描くように軌道を変え、破片の直撃をぎりぎりの距離で避ける。そして赤い巨人は先ほどよりも速度を上げて、緑の巨人たちが向かってくる方向へとUターンして来た。

 

――――――良し戻ってきたぞ! 各機散開して集中砲火! 遠慮はいらん。使えない人形をハチの巣にしてやれ! 

――――――了解!

 

 四方八方から次々と発射される黄色い閃光。自らの命を刈り取ろうとするその光の軌道を読んでいるかのように赤い巨人は俊敏さで回避を繰り返し、ギラ・ズールたちの間を通過、一気に加速した。

 

―――――墜とせ! 墜とせ! 連邦の言う事を聞くしか能のない連中に計画の存在を絶対に悟られる前に始末しろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♦♢

 

 

ここは……どこだ?

 

真っ暗で何も見えない。

 

いや、見えないんじゃない。無だ。

 

何もない闇。

 

暗く冷たい宇宙の深淵。

 

光に導かれてここに来たが、そこには光がなく時間すら流れを完全に止まっている。

 

想像が及ぶ限りの範囲にただただ虚空が広がっている。

 

底なしの闇が……ただ果てしなく続くばかりだ。

 

 

寒い。

 

先程まで身の内から感じていた熱が少しずつ奪われていく。

 

急激に冷えていく体温と消えることのない虚脱感が、己の死に近いものを確信させた。

 

 どれだけ足掻いてみても身体は酸素を求めて意味のない呼吸を繰り返すだけだ。

 

もう長い時間がたった気がする。気づいた時には無駄だという事を悟り闇に身を任せていた。

 

ここで終わりを迎えるのか。

 

遠くなっていく意識の中、走馬灯が脳裏を過ぎった時、そう思った。

 

父と母を奪ったこの歪んだ世界を少しでもマシなものに変えようと抗ってはみたが、世界そのものがそれをあざ笑うかのように思い描いたものとは全く逆の方向へと歩み始めた。

 

多くの、多すぎる人達が死んだ。

 

いくら希望を見出しても宇宙世紀を統べる無慈悲な神――――地球連邦の支配体制は変わらず、結局は同じ過ちが繰り返されていく。

 

 

なんかもう……疲れた。

 

 

このまま闇に溶けるのも悪くないのかもしれない。

 

そうして俺は重い瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

~~~♪~~~♪

 

 

なんだ?

何か聞こえてくる?

 

女の声?

 

これは……歌?

 

歌が聞こえる。

 

透き通った綺麗な歌声がこの完全なる虚無に強く響き、美しい旋律を奏でていく。

 

 

~~~♪~~~♪~~~♪

 

 

重い瞼を開くと機体が再び光り、同時に自身の内に再び熱が灯りだした。

 

この光、この熱、この歌……とても暖かく、心地良い。

 

何かに導かれるように、あるいは無意識だったのかもしれない。

 

その歌の発生源に向けて俺はペダルを大きく踏みこんでいた。

 

 

 

 

 

♢♦♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、赤い巨人の背に取り付けられた六つのじょうご型の突起が外れた。赤い巨人の指示に従っているのか、それぞれの口径の大きい部分から青い炎が灯し赤い巨人の周囲を円を描くように飛び交い始める。

 

――――――おいおい嘘だろ!?

――――――まさか例の兵器を使う気か!?

――――――例の失敗作は使えなんじゃなかったのか!?

――――――各機とにかく一旦散開して距離を取れ!!あんなのを使われたらひとたまりもな―――な!?

 

 

 次の瞬間、赤い巨人の胸のあたりと突起から緑色の光が溢れ出す。その輝きは徐々に増していき、赤い巨人の周りの空間を包み込み始めていた。

 

――――――おい、あれ……

――――――ああ、あの時と同じ光だ。

 

 その光はサイコフレームから発する光。物理的エネルギーに転化し正体不明の力場を形成、莫大な質量を持つアクシズを弾き返す程の力を発揮した事例がある。その現象を解明できるものはおらず、開発側にも想定しきれない未知の特性で、制御がきかなくなる可能性が指摘されたことから地球連邦軍では研究開発が中止された曰く付きの代物。

 

 赤い巨人にも同じものが搭載されており、シャアを宇宙の彼方へ連れて行ったあの光と同様のものが発生している。

 

 今度は何が起こるのか分からずギラ・ズールたちは距離を取って警戒する。

 

 やがて赤い巨人を包んだ光の繭の中から虹のような、波打つ帯状の光が幾筋も溢れてきて空間の歪ませる。

 

まるで空間を切り取るように。

 

 そして空間に巨人が一体入れるほどの一定の大きさで拡大を止めたと思われた瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤い巨人はその空間のゆがみの中に吸い込まれていき、この世界から文字通り姿を消した。

 

 

 

 

 

♢♦♢

 

 

 

 

『アイテールからアルファ小隊へ、アイテールへの着艦を許可する』

『了解。受け入れ感謝する。アルファリーダーより各機へ、デフォールドしたと思しき物体の周辺を警戒せよ』

『アルファ2、了解』

『アルファ3、了解』

『アルファ4、了解』

 

西暦2067年、ブリージンガル球状星団 惑星ラグナ

その近郊にて突如として謎の『デフォールド』反応を検知。

 

その原因を調査する為、星間複合企業体『ケイオス』に所属するアルファ小隊は反応が確認された場所に偵察に向かったがそこには奇妙な光景が広がっていた。

 

 動きを止め宇宙空間を漂う一機の謎の機動兵器。『可変戦闘機』のバトロイド形態、ゼントラーディーが使用する『クァドラン』『グラージ』『リガード』とも違うより人型に近い。

 機体の基本配色は赤で、全高約20メートルはあるその体躯は細身かつ直線的。背部上段左右には黒いコンテナのようなものが付いているが形が大きく歪み原型を留めていない。頭部は単眼型でその上から一本の角が聳え立ち、鎧武者の兜を想起させる。

 だが機体の所々に傷があり、両腕は肘から先が、脚部の方は右足はあっても左足は膝より下が完全になくなっておりとても痛々しい状態であった。

 

 

 

『それにしてもなんなんだ、この機体は?』

『どう見てもヴァルキリーじゃないな。新統合軍の新型か?』

『にしても不気味すぎだろ。隊長はどう思います?』

『分からん。俺もこんなのは見たことがない』

 

 データベースに該当する機体が無いか照合するも該当する機体は無し。

未知の機体に対し、破壊も考慮されたが、本部より可能なら捕獲と命令が下され、正体不明の機体は寄越してもらったケイオスデルタ小隊所有の空中母艦〈アイテール〉に慎重に運びこまれる。

 

着陸したアルファ小隊が甲板の誘導灯に従い例の機体を格納庫のデストロイド専用ハンガーの壁に背中をあずける形で納める。

 

ビー!ビー!

 

アラームを鳴らしながらエアロックが作動し、格納庫内に空気が満たされる。

続いて人工重力発生装置が作動し、暫くすると奥の大きなハッチが開き、ケイオスの中でも優れた技術者とツナギを着た整備士たちがぞろぞろと出てきた。

 

「これがアルファ隊が発見した正体不明機か」

「見たことのない機体だな」

「ああ、それにデカい」

「派手な色だな」

「きゃわわ~」

「回収部隊とアルファ小隊の話だと中に生体反応があるみたいだぞ」

「え? じゃあ誰かがあの中にいるってことか?」

 

 技術者たちは機体の解析と生体反応があった付近のコックピットを開けるのに奮闘している間、整備士たちは機体を一目見ようと人だかりができる。

 

「やはりデータベースに該当する機体はありませんね」

「……そうか。新統合軍やS.M.Sが運用している機体じゃないってことは一体何処から来たんだろうな?」

「さあ。乗っているパイロットを出さない限りは何もわかりません」

「そうだな」

 

 物珍しそうに彼らがざわついている中、赤毛であご髭を蓄えており、前髪に一部メッシュを入れてるような屈強な男――――――ケイオスのデルタ小隊に所属する隊長のアラド・メルダースと、タッチパネルを片手に持つ猛禽類のような鋭い目つきにモヒカンのような髪型の身長が一番高い男――――――同じくデルタ小隊の副隊長を務めるデルタ2のメッサー・イーレフェルトが進捗状況を見ながら静かに会話する。

 

「それにしてもウチの天才ハッカーが苦戦するなんて相当強いプロテクトがかけられてるみたいだな」

 

アラドがコックピットと思われる場所を見やる。そこには必死に機体のプロテクトを解こうとタブレットのキーボードにプログラムを打ち込む緑色の髪にボーイッシュの可愛らしい容姿をした少女―――――レイナ・プラウナーがいた。もう何度試したか判らないが一向に作業が進む様子は伺えない。

 

「このプログラムでも駄目。ならこれで…」

 

 自分が知りうる最後の手法を試みる。プログラムを構築し、エンターキーを押した次の瞬間、今まで何の反応も示さなかった機体のコックピットが、数時間に及ぶ作業の末に漸く開かれようとしていた。

 

「ハッチ開きます」

 

 その言葉を受け、コックピットの周辺に待機していた保安要員は不測の事態に対処できるように警戒を怠らず、機体を登って銃を構える。

 

 

ガコン

 

 

 正体不明機の胸部が開き、中のハッチがスライドする。

 

「…っ!?」

 

 慎重に覗き込むと何処の軍かもわからない赤と白を基調とした見たことのないパイロットスーツを身を包んだ青年が意識を失った状態で操縦席と思われるシートにもたれかかっている姿が目に入る。

 

「メディック!! ストレッチャーを!! 急げ!!」

「は、はい!」

 

 コックピットから青年を慎重に降ろし、ストレッチャーに乗せる。

 

「いいか。そっとだぞ!」

 

 ヘルメットを外し露わになったその顔は明らかに10代後半から20代前半ほどの青年だった。すらりとした長身で痩せ肉だが骨太。顔立ちは整っているが、額には一筋の小さな切り傷がついており、耳元まで伸びている髪も色素が抜け落ちかけたような灰色でボサボサの状態だ。

 

「こいつがこの機体を動かしていたってのか?」

「どう見ても地球人のようですが状況的に考えてそのようですね」

「まだ若いな……」

 

 アラドの指示によって医療班は直ぐに少年を医務室に搬送し、保安要員がそばを固めながらついていく。残った者は引き続き機体の解析を行っており、レイナも解析のために開いたコックピットの中に入った。

アラドは、青年が運ばれる様子を見届けた後はメッサーとともにコックピットに向かいレイナの邪魔にならないように外から中を一通り見回す。

 

「内部は思ってたよりも広いな」

「そうですね。それにこれは……」

「ああ…」

 

 内壁は丸みを帯びた球状になっており、水平・垂直360度でモニターのような板が張り巡らされている。その中心にある操縦席は左右の肘掛の部分に2本の操縦桿、下にフットペダル、前にコンソール付きのウィンドウが一体となって固定され、コックピットの後部あたりから伸びたアームで浮かせられた状態になっていた。

 

 機体の外観といいコックピットの構造といい、今までのVFシリ-ズとはまったく異質な発想により作られているのが明白である。

 

「レイナ、機体の解析はまだか?」

「さっきのよりもプロテクトが複雑。しばらく時間がかかるかも」

「そうか、とりあえず機体の解析はよろしく頼む。メッサー行くぞ」

「パイロットのところにですか?」

「ああ。いろいろと聞きたいことがあるからな」

「了解しました」

 

アラドとメッサーはその場をレイナとメカニック陣に任せると青年がいる医務室へと向かうのであった。

 

 

 

 




機体プロフィール(もはやオリジナル機体)

機体名称:バルギルR
型式番号:AMS-123XR 
頭頂高:20.9m
本体重量:35.3t

 新生ネオ・ジオンでシャア・アズナブル総帥が搭乗していたニュータイプ&強化人間専用MS『サザビー』のプロトタイプ機の改修型。
 サイコ・フレームの強度・追従性の運用からベース機体の性能向上と軽量化に成功している。
 赤く塗られた派手な機体色に反して、捕捉することすら叶わない機動を見せる本機は、否が応でもその搭乗者を『シャア・アズナブルの再来』と想起せざるを得ない。


経緯:

 開発当初はほかの実験機を上回る運動性能を発揮する一方で、サイコミュ・システムの性能はサイコ・フレーム搭載機であるヤクト・ドーガに劣っており、安定性を欠いた失敗作として倉庫行きが決まっていたが、同型機がティターンズ残党の『G-ドアーズ』の頭部とサイコミュユニットを組み込んで改修された『ムーンガンダム』として活躍したこととシャアの再来の開発計画が始まったことから専用機としての再設計が決まる。

 その過程でアナハイム・エレクトロニクス社から横流ししてもらった新しい部品やサイコ・フレームの搭載、とある火力重視の機体のコア・ユニットとしての役割を担う設計思想の流用から、機動力や運動性、ヤクト・ドーガに負けない程のサイコミュ機能のバランスがとれた謂わゆるバリエーション機として生まれ変わったが、現在のネオ・ジオンには胸部コックピット周辺と機体各部に使用しているサイコ・フレームを製造する設備がなく、バルギルの予備部品もほとんど残っていないことから追加生産も損傷箇所の完全修復もできないワン・アンド・オンリーな機体となっている。
 そのため、この機体がサイコ・フレームの暴走で姿を消した後は開発データの一部をアナハイムに流し、ある計画の一部の『スタイン01』を開発してもらうことになる。


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