もう1人の赤い彗星の失敗作   作:嫉妬憤怒強欲

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イメージOP『宇宙の詩/TVアニメ版機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』
イメージED『Everlasting/機動戦士ガンダムUC』


思惑

 時刻はアインがカナメと共に艦長室から退室してしばらく経過し夕方を過ぎようとしている頃、エリシオンの艦長室の扉を叩く者がいた。

 中から応じる声がかかり、ラフな格好の上に白衣を着こんだ一人の女性が室内へと入ってゆく。室内には艦長であるアーネスト・ジョンソンとΔ小隊の隊員であるアラド、メッサーがおり、その来客を迎えた。

 

「それで、”博士”から見て例の機体はどうだ?」

「ええ、この天才『美』少女である私から見ても予想以上のシロモノだったわアラド。まさか地球人の技術だけであそこまで追いついているなんて」

 

 若い外見で、ビー玉のように透き通ったブルーの瞳、ピンク色のショートで後ろ髪の一部を三つ編みにしたゼントラーディの女性。

 アラドから博士と呼ばれた彼女の名はアイシャ・ブランシェット特務少佐

 Δ小隊が搭乗する『VF-31 ジークフリード』の前身である高性能試作機『YF-30 クロノス』の開発主任にして『VF-31』の開発にも携わったことがある才女で、その前は民間軍事会社『SMS』の惑星『ウロボロス』にある『ウロボロス支社』の支部長を務めたことがある。現在はケイオス・ラグナ支部では化学主任を務めている。

 もう20代を迎えているというのに天才『美』少女を自称したりと残念な部分があるが、かなりの自信家でその自信に負けないほどの才能を持つ彼女をアーネストたちは高く買っていた。

 

「どれくらい凄いのか頼まれていた報告書に記載しておいたわ」

「ふむ、助かる…これは……」

 

アーネストの手元にアイシャから渡された情報端末が握られる。

それにはバルギル――異世界からパイロットごと転移してきた機体――のジェネレーターと装甲に付着していた正体不明の粒子(ミノフスキー粒子)の解析結果の内容をまとめた報告書が記載されていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 粒子の解析結果:

 地球圏の木星に存在するヘリウム3と重水素を融合することで生まれる副産物で静止質量がほとんどゼロ。

様々なパターンでシミュレーションしたところ、これらに負荷(圧縮)を掛けた場合、縮退と言う現象を起こし、これを融合させる過程で電気的に中性にして高熱源エネルギーに変化。ビーム兵器として運用した場合、磁場・電場の影響を受けないかつレーザー砲や荷電粒子砲よりも優れた特性を持ち、出力・収束率次第では核兵器並の威力を持つ可能性がある。

 

また、粒子を空間内で一定以上の濃度に達した場合は静電入力と特殊な斥力によって交互に整列して立方格子状の不可視のフィールドを形成し、それを通過するマイクロ波から超長波までの電磁波を最大で99%減衰させる性質がある。

 

 

 ジェネレーターの解析結果:

 生み出されるエネルギーの出力は3,240kW

 上記の粒子の後者の性質で炉内を電磁誘導する事によって圧縮し安定化させる事でプラズマを安定させている。

 これにより小型ながらもD+He3反応を効率よく行う環境を手に入れる事が可能で放射能を封じ込めていると断定。

 

 更に発生したエネルギーをパルス状圧力に変換し機体の間接駆動用のロータリー・シリンダーに極超亜音速で伝達される。これにより駆動は極めてスムーズになっている模様。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ホント恐れ入ったわ…どうやってジェネレーター一基だけで1000世帯以上の住宅を賄える程の電力を生み出せるのか不思議でしょうがなかったけど…まさかこの粒子の特性を利用していたなんて…」

「1000世帯以上も……!?」

「あの大きさで、ですか?」

「ええ、最初は私も信じられなくて何度も計算してみたけど同じ結果だったわ。内部構造は把握したから模倣はできるけど、粒子を生成には木星からヘリウム3を回収する必要があるわ」

「ビーム兵器として応用ができる粒子を利用した高出力かつ安定した核融合炉、そしてそれを動力源とした人型機動兵器、か」

 

 アーネストの手元には先ほどの報告とは別の情報端末があった。

 それにはマキナとレイナが解析したバルギルのスペックデータが記載されている。(どのようなOSで動いているのかまではプロテクトが強すぎて未だに解析が進んでいない)

 

 VFシリーズやデストロイドなどは爆発的にエネルギーを生み出す熱核融合炉を搭載しており、これは1999年に地球に墜落した異星人の戦艦マクロスを解析した技術からもたらされた。ゼントラーディなどのプロトカルチャーに由来する種族にも大出力動力機関として幅広く採用されているおり、人型巨大兵器の誕生は太古のプロトカルチャー文明の遺産の恩恵によるものと言っていい。

 だが宇宙世紀の世界では純粋な地球人の技術だけでVFシリーズのスペックに負けないほどの進化を遂げている。(唯一のVFが勝っているところと言えばバルギルは航空力学上、長時間での大気圏内の戦闘に向いていない点だけである)

 

 内骨格構造のフレーム(ムーバブルフレーム)といい実弾に高い耐性を持つ装甲(ガンダリウム合金製)といい、これらの技術を完成させた異世界の技術者たちが恐ろしくなってくる。

 

「単体での機体制動・追従性・機動性を極限にまで突き詰められた宇宙戦特化型の高性能機である、か。背中に付いていたコンテナがなんなのかは?」

「マキナの話だとなにかの装置に電力と燃料を補充するものみたいだけど部品の殆どが破損してて詳しいことは分からないみたいよ」

「ふむ……だがやはり規格外だな。そんな機体を使いこなす彼もやはり捨て置くことはできんな」

「艦長も同じ意見か」

「ああ、それにウチの歌姫たちの力で争いを止める瞬間を見せてやりたいしな」

 

 宇宙世紀の世界では人類が未だ外宇宙に進出せず、数億の人間の命が失われる程の戦争が十年も続いていた。その原因は地球に住むアースノイドと宇宙に住むスペースノイドとの確執が主で、アインはアースノイドの軍閥『ティターンズ』の行き過ぎた弾圧の犠牲者の1人だという話を聞いている。

 ケイオスでは過去にいろいろなものを抱えている者がいるが、アインのは内容が内容だけに悲し過ぎる。彼が宇宙世紀の世界の説明をしていた時の口ぶりからして両親を殺した、争うことしかできない世界に絶望しているのだろう。

 操縦技術に心惹かれたのもあるが、なによりこの世界では僅かでも希望があることを知ってほしいというのがアーネストとアラドの考えであった。

 荒療治なのは確かだが……………

 

「お二人がそう言うのであれば……………ですが勧誘するにしてもVFとでは規格と設計思想が全く異なっているので明らかに操縦がかみ合わないかと思います……それにデルタ小隊はただ戦うだけの部隊ではありません」

 

 メッサーの言い分は正しかった。デルタ小隊はワルキューレの護衛だけでなく、パフォーマーを務めなければならない。そういう意味ではバルギルが使えない以上VFでどれだけ動けるのか、デルタ小隊はアインのセンスを直接見極めなければならない。

 

「そうなると同じVF同士で試すしか方法がないな」

「はい。ですので艦長、VFの情報を彼に閲覧させる許可を」

「許可する。ただし、本人の意見は尊重するようにしろ」

「了解しました」

 

 許可を得たメッサーはVFを動かす為のデータを用意する為に艦長室を出る。

 

 

 

♢♦♢

 

 

 

 

 異世界転移三日目

 

pipipi! pipipi!

 

「んん……」

 

目覚ましのアラーム音が鳴り響き、五月蠅さに意識がゆっくりと覚醒する。

 

「…そういえばそうだった」

 

 目を開け、視界に見知らぬ天井が入ったところでここが異世界であることを思い出す。

 寝惚け眼で体をゆっくりと起こし、鳴り止まないアラームを止めた後未だにラグナの重力に慣れない身体を軽く解す。

 

 宇宙世紀の世界では地球の重力の1Gに対してコロニーにかかる擬似重力が約0.8Gであることから、殆どの生涯を宇宙コロニーで費やすスペースノイドが地球に来た時は、体にかかる重力がいつもより重いと感じる事が多い。そう言った違和感をアインも感じていた。

 

「そのうち慣れる……か」

 

 ふと昨日の美雲のセリフを思い出す。

 しばらくケイオスに身柄を預けられることになった以上、この惑星での暮らしにも慣れる必要がある。

 ちょうど昨晩の食事の際にカナメから艦長から預かったと言うアインの身元を証明するIDカードを手渡された。

 気分転換に外に出て街の方に行くのも悪くない。

 

「今後のことはそれから考えていけばいいか」

 

 備え付けの洗面台で顔を洗い、冷たい水で眠気を覚ましてからケイオスの制服に着替えていると、突然ドアがノックされた。

 

「おはようございます。そろそろ朝食の時間ですが、起きていらっしゃいますか?」

 

 扉越しから真面目そうな女性の声が聞こえ、誰だろうとアインはスライド式のドアのロックを解除する。ドアを開けるとサイドポニーに結った臙脂色の長髪と水色の瞳、尖った耳を特徴とする女性と古代日本のサムライがしていたチョンマゲのような髪型に首に片側3つ計6つのエラのようなものも付いている半魚人のような男性という明らかに地球人じゃない2人が立っていた。

 

「(女性の方はメルトランディ、男性はラグナ人だったか)えっと……」

「失礼しました。ケイオス第三戦闘航空団Δ小隊所属、ミラージュ・ファリーナ・ジーナス少尉です」

「同じくΔ小隊所属、チャック・マスタング。階級は少尉だ」

「自分はジオン共和国軍所属、アインハルト・シュヴァルツ少尉です。呼びにくい名前のためアインで構いません」

「そうか。なら、これからはアインって呼ばせてもらうよ。あと階級が同じだから別に敬語じゃなくても構わないぜ」

「……分かった。じゃあ改めてよろしく頼む」

「おう、よろしくな」

「よろしくお願いします」

 

 敬礼しながらの挨拶をしたのち、生真面目そうな耳のとがった女性――ミラージュ、ニカッと人懐っこい笑顔を見せる半魚人のような男――チャックと握手を交わした後、ラグナのことについて軽い質問をしながら食堂へと向かう。

 

「は? ラグナではクラゲを食べるのか?」

「ああ、ラグナのバレッタクラゲは地球のと違って食えるもんなんだ。町ではクラゲのスルメがお土産によく売られているし、他にもクラゲ饅とかクラゲの料理も色々あるんだぜ」

「食べれるクラゲ………いったいどんな味なんだ?」

「そいつは実際に食べてからのお楽しみだな。俺、艦の外で弟たちと料理店営んでいるから食べに来いよ」

「チャックの料理の美味しいですよ」

「……ふむ、そうだな。気が向いたら行くとしよう」

「おう、待ってるぜ!」

 

 喋りながら歩くこと数分後。

 食堂に入ると、既に数十人以上の職員が朝食を食べていた。

 エリシオンの食堂は基本、朝食、昼食はバイキング方式になっていて、お梵に皿を乗せて自分が食べれる量を盛っていける。他にもメニュー表から日替わり定食やカレー、うどんといった単品のものを注文することができる。

 

 座席は空いているところに自由に座れるため、できれば3人まとめて座れるところを探したかったアイン達は無駄なあがきかと思いつつ周囲を見回した。

 

 すると、端のほうから桃色の髪をツインテールにしている少女と小柄な緑髪の少女が声を掛けてきた。

 

「あ、ミラミラ!! こっちこっち」

「ここ空いている」

「おはようございます。マキナさん、レイナさん」

「おはよ~お~一つ目のパイロット君も一緒じゃないか~」

「……ジオン共和国軍所属、アインハルト・シュヴァルツ少尉です」

「ん?ジオン?」

「こことは違う別の世界の地球圏にある宇宙都市の中で唯一地球政府からの自治を認められた国家のことです」

 

――といってもあと6年で解体になるが。

 

「へー、あっ私はマキナ・中島。ワルキューレ所属でメカニック担当だよ。気軽にマキマキって呼んでね!」

「同じくワルキューレのレイナ・プラウラー。ハッキングはお手の物。あと年下だから敬語じゃなくてもいい」

「わかった……よろしく」

 

 マキナとレイナ、レイナはバルギルのコックピットハッチを開いた本人であり見たこともない異世界のOSに、マキナはメカニック担当としてバルギルにどのような技術が搭載されているのか興味津々だと聞いている。アインはバルギルに搭載されているあのフレームの存在を隠したままどうやってこの場を乗り切るか考えていた。

 

「アインは座っていてください。朝食は直ぐに持ってくるので。チャック、手伝ってください」

「あいよ」

「それじゃあ日替わり定食を頼む」

「分かりました。マキナさんとレイナさんは彼の相手をお願いします」

「はいは~い」

「任された」

 

 その間に軽く親睦を深めておいてくださいと、ミラージュとチャックは朝食が置いてあるカウンターの方へと向かい、アインは近くの空いている席に座る。その次の瞬間マキナとレイナの目がキラーンと光ったように見えたがきっと気のせいだ。

 

「ところでハルハル」

「なん……ん?」

 

ハルハル?

 

「もしかして俺の事か?」

 

聞きなれない呼び方にアインは聞き返す。

 

「うん!アインハルトだからハルハルだよ。そっちの方が可愛らしいでしょ?」

「……そんな理由でか」

「マキナはこういう娘だから気にしなくていい」

「いや、でもな」

 

 今まで一度も呼ばれたこともない変わった呼び方に少し驚いてしまっただけで特に不快感を感じなかったが公衆の面前で大声で「ハルハル~」と大声で叫ばれたらとても恥ずかしい。呼び方を変えることを要求したが、一度決めたら聞かないタイプのようで仕方なく、非常に仕方なく諦めることにした。

 

「で?さっきの続きだけど、ハルハルが乗って来たあの機体ってなんなの?」

「同じく気になる」

「バルギルのことを言ってるのか?」

 

マキナとレイナはこっくりと頷く。やはり二人の担当的に機体のことが気になって仕方がないのだろう。

 

「あれはモビルスーツといって俺がいた世界での有視界機動戦闘を想定した主力兵器で、俺のバルギルはフラッグシップ型の試作機だ」

「へえ、じゃああのスペック値は?」

「高すぎて並のパイロットにはまず乗りこなせない」

「宇宙軍再編を画策している連邦へのけん制のために苦肉の策として機動性などを極限にまで突き詰めて設計されているからだ」

「そうなんだ。それじゃあハルハルの機体の他にどんなのがあるの?」

「俺の知っている限りだとまず一番最初に造られた試作機のYMS-03『ヴァッフ』に近接戦に特化したMS-04『ブグ』、制式量産機で人類史上初の汎用人型兵器MS-05『ザクⅠ』、あとは――……」

 

 その後もジム、ネモ、ゲルググ、ドムといった連邦・ジオン系統の第1から第3世代までのモビルスーツ、更にはザクレロやビグザム、アプサラスといった拠点防衛・強襲などに特化した大型機動兵器モビルアーマーのことを説明するアイン。

 話せることには正直に話し、OSの詳しい部分や性能の秘密については極秘裏に開発が勧められていたことから詳しくは知らないと誤魔化す。助けてもらったことには感謝しているが、あれの特異性に関して簡単に情報開示するつもりはなかった。

もしあれに関する技術の情報開示をすればこの世界の誰かが宇宙世紀にいたロクでもない人間たちと同じことをするかもしれない。

 それだけはどうしても避けたい。

 

 朝食を取りに行ってくれていたミラージュとチャックが戻ってからも朝食を挟んで問いかけられたことに可能な限り答え、タイミングを見計らって逆に情報収集をする。

 

「そういえば情報端末に挙がっていたヴァールの被害について調べたが、『ワルキューレ』はあんな過酷な環境で歌うとなるとやはりその……」

「うん、確かに最初はきつかったかな。デビューしたばかりの頃は何度も出撃したけど私たちの歌が届かなかったんだ」

「ダメダメのボロボロだった」

「確か当時はΔ小隊も結成されていなくてアラド隊長しか護衛がいなかったな」

「私とチャックは大体一年くらい前にスカウトされたばかりですしね」

「あの時は全然結果をだせなくて何度も現実の厳しさに挫けそうになったな。あの頃が本当に懐かしいよ」

 

 ミラージュやチャックがΔ小隊に入る前、ワルキューレはまだ土台作りの途中で、メンバーは歌が効果を示せず解散の危機に瀕するがアイドル風衣装の採用やΔ小隊との連携作戦など試行錯誤を積み重ねた結果、次第に実績と知名度を高めていったようだ。ちなみにアイドル風衣装はマキナが発案したようでその理由は「戦闘服でステージなんて全然盛り上がないもん!」だった。

 

「それから銀河中にも少しずつワルキューレの名前が知れ渡ってこのままうまくいくかなと思ってたんだけど、それでも戦場でのライブは何時だって命懸けで、恐怖に押し潰されて引退したクレクレみたいな娘もいたんだよ」

「……無理もないな」

 

 別段驚くことではない。銃やナイフ1つさえ持たずに丸腰で戦場に身を置く恐怖、死と隣り合わせの状況ではまず常人は到底耐えられない。一歩間違えれば死んでかもしれないし、仮に生き延びれたとしてもその強い精神的ストレスが心のダメージとなって、時間がたってもなかなか抜け出せないものである。 それが軍人だと日常生活に馴染むことができなくなってしまうケースがある。

 

 昔似たような経験をしたアインは他人事とは思えずマキナに問いかける。

 

「そのクレクレという娘は今は大丈夫なのか?」

「うん、もう大分落ち着いたみたいで今はケイオス地球支部の広報担当で働いているんだって」

「よく応援のメールが送られてくる」

「そうか……意外と強い子だな」

「?どうしたのハルハル?」

「いや、なんでもない(強化手術に逃げた俺なんかよりもずっと強い)」

 

 

 

 

 同刻、ケイオスの地球支部の広報課のデスクで金髪の少女が勤務中にくしゃみをしたとかなんとか。

 

 

 

 

♢♦♢

 

 

 

 アインたちが食事を終えてしばらく経った頃。

 

 アーネストからアインのVFに関する情報閲覧許可を承認されたメッサーは必要な情報を簡潔に纏め、それを提出した後に格納庫でバルギルから取り出された映像を見ていた。

 

 ホログラフィックスクリーンに映し出されているその映像はコックピットウィンドウに保存されていた訓練用のシミュレーションシステムの記録映像で、レイナが朝食後に再びハッキングした時に偶然見つけたものである。

 

「……………」

 

 映像ではアインがシミュレーション上操縦しているのは『MS-06S ザクⅡ』というバルギルと同じく機体カラーが赤で、頭部に角飾りを設置している人型機動兵器である。

 加速性能はバルギルに劣っているが、それでも隅に映る緑色のザクよりも高い推力と機動性を有しており、高推力を駆使した一撃離脱の戦闘が目立つ。

 その操縦に一切の無駄がなく、敵艦からの砲撃を鮮やかに避けながら戦場を駆け巡る姿はまるで赤い彗星のようだ。

 

「(シミュレーションとはいえたった一機で何隻もの戦艦を相手にするとは……)」

「あっ、メッサ―君」

 

 後ろから優しい女性の声が掛かる。振り向けばワルキューレのリーダーであるカナメとエースである美雲が立っていた。

 

「二人はどうして此処に?」

「私は訓練機の用意をする為の司令書を整備班の人に渡すようにって艦長に言われて」

「なるほど。確かに模擬戦をするのならあの機体の取説も必要ですね。それで美雲さんのほうは?」

「私はレイナから面白い映像があるって聞いて直接見に来たわ。それが例の映像?」

「ええ」

「ずいぶん熱心に見てたわね……………彼をこちら側に引き込む気?」

 

 美雲はスクリーンから目をそらさずにメッサーに問いかける。

 

「この映像だけでも彼は相当量の技量を有しているのがわかります。向こうの世界での基準は分かりませんがおそらくエース級でしょう」

「彼そんなに凄いの?」

「何故これ程の動きが出来るのかは分かりませんが、少なくとも下手に訓練された者よりかは信用ができます」

「そう」

 

 その答えだけで十分だったのか。美雲は部屋から出て行った。

 

「…美雲、なんだか機嫌良さそうね。」

「そうなんですか?」

「ええ、彼が来てからね」

 

 アインが来てからと言うもの、ワルキューレのエースボーカルである美雲の機嫌がやけに良い。普段なら食堂に姿を見せたり、特定の誰かとは行動を共にしない彼女が彼と一緒に行動をしている場面が昨日から見られている。

 

「そういう意味では、アイン君の入隊はきっと良い変化をもたらすかもしれないわ」

 

 戦場で歌う以上はワルキューレ内の団結が必要であり、より深いものにできるのであれば彼の存在は必要不可欠なものになる。そういった点でも彼のΔ小隊への入隊は望むべきものなのだろう。

 

 

 それも踏まえて、格納庫にいないアラドは近いうちにアインに声をかけるつもりでいた。

 

 

 

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