「え?三連休?今週?」
「嘘でしょ…?」
週終わりの金曜、「モカちゃんはバイトをエンジョイしてくる」と言ったモカはバイトに行きそれぞれがそれぞれの事情で解散した後、特に事情のない暇人2人、俺と蘭は電車に乗りやってきたのは俺の家。
というのも、きっかけは。
「改修工事?」
「そう、うちの家が」
そう、蘭の家が改修工事のため一週間家に出入り出来ない状態となった。蘭のお父さんとかはホテルに泊まっているらしいが絶賛反抗期中の蘭にとってお父さんにお願いするのはちょっと嫌だ。
というお父さん涙目の事情を聞かされた。
「よし、それじゃこうしよう!」
「ん?」
ひまりが突然何かを閃いたようにハッと顔を上げた。
「蘭をパスしよう!皆で!」
「「は?」」
何を言うとりやがるんですかいねこの娘は。
「なるほどな、そういう事か」
「今の説明で理解出来たのか巴!?」
ちょっと誰か巴にひまり検定一級あげて。
「モカちゃんは大賛成なのであります、ついでにしゅーくんの家に泊まりたい」
「人と膝元に頭乗せてなんてこと言いやがるんだお前」
あとすっごいナチュラルだけど、モカのだらけ具合が凄い。
「よし、もうあれだ…最終判断は当人に任せるあとつぐ」
「えぇ!?私?」
「なんで私?」
「まぁ、私はいいかな?」
「よし、蘭は?」
「まぁ…みんながいいなら」
「よし、じゃあ!月曜日は私!火曜日は巴!水曜日はモカ!木曜日はつぐ!そして金曜からは修人くんよろしく!」
「は?えっ…なんで俺だけ3日」
「一人暮らしだし、いいでしょ?」
「待て、なんでお前が乗り気なんだ蘭」
という事があって今に至る。
「そう言えば文化祭終わったなー」
「そっか、終わっちゃったのか」
そう、先週は文化祭だった。Roseliaだったりみんなでステージに立つっていうのはなかなかない経験だったからめっちゃ良かった。文化祭だからできるカバー歌いまくりとかも出来たし、俺がやった奴だと、友希那さんと蘭とやった革命デュアリズムは本当に楽しかったし、あとモカと彩さんと千聖さんの愛言葉Ⅲはめっちゃ良かった。
あとこころと彩さんが歌ったbaby sweet baby loveはまじでCD出して早く。
「あんた、一番乗り気だったね結局」
「うるせぇ…」
ほらあれだよ、体育祭とかでさ練習とかでただでさえこっちはやりたくもない縄跳びとか応援とかやらされてんのに「まじだりぃわ」とか「俺、当日休むから」とか言ってる奴らが当日いざその時になったら空気に乗ってマジになるやつあれだよ。
俺、ガチでめんどいやつじゃん。
「まぁ、私も楽しかったから」
「よし、来年もやるか。予算マシマシで」
「お金の話は任せるから」
「面倒臭いからって俺に押し付けないでね?俺君らのマネージャーじゃないからね?」
「それで、これからどうすんの?」
「どうって帰るよ?着替えは?」
「持ってる、家に洗濯機ある?」
「俺の家は昭和初期か、あるよ」
「そっか…じゃあ行こ」
「ふむぅぅぅぅ…!!!」
「モ、モカちゃん?」
「ふむむむ…今頃蘭はシューくんと…!」
「まぁ、つぐみもそっとしておいてあげてよ今は」
件の男はそんな事知りもしないが、その男は今頃蘭と一緒にいると思うとどうにもふむぅ…せざるを得ない。そんな彼女は青葉モカ、そして羽沢つぐみと今井リサ。彼女達は今、つぐみの家に泊まっている言い出しっぺはリサ姉でモカから、「シューくんが…シューくんがぁ…」とバイト中言っていたらしいのでそんな彼女の為に一度吐き出させればいいと、この会を企画したのだ。
「にしても、修人ってモテるの?」
「いや…そんなことは絶対無いと思うんですけど」
「つぐみさらっと毒吐いたね」
「シューくんこないだモテるの?って聞いたら無言で泣き出したから慰めてあげた」
「え、何それ面倒くさ」
「…リサ先輩も大概毒吐きますよね、確かに少し面倒くさいと思いますけど」
「普段は頼もしいけどそっち方面だとコミュ力低いからなぁ、修人って」
「でもたまにすごく可愛い…」
「「それは…うん」」
「よし!じゃあ今日は修人の愚痴を語り合おう!」
「お、おー…」
「おー!」
つぐみは心の中で修人君、ごめんと思った。
「ヘックシッ!!!」
「何?風邪?」
「いや…なんか俺の知らないところで俺の黒歴史とか秘密とかあることない事好き放題言われそうな気がして…」
「気がしての割には随分情報が正確じゃない?」
なんだろう、精神的に馬鹿だから風邪は引かないと思うんだけどなぁ。
俺も将来社畜になるか社豚になるかだから、体は強くしていかないと。
まぁ、バイトがある上に蘭やリサ姉達の練習まであるもんだから、社畜の才能だけはあると思う。
実際文化祭とか働きっぱなしだったし。
「それにしても、うちのキッチンで蘭が飯作ってる絵を見ることになるとはな」
今、俺と蘭は二人並んでキッチンに立って夕食を作っている。メニューは和食で主食はサンマである、いやこの話を母さんにしたら速達でいい感じのサンマと共に読むのもウザイメールが送られてきた。
まぁ、この季節はサンマが美味しい。一人暮らしだとあんま買わないけど。
隣で大根を切っている蘭はショートの髪を後ろへまとめている、え待っていまマジマジと見るけど可愛いめっちゃ可愛い。それに母さんが使ってた白いエプロンを付けたらなんか優しさが溢れ出ている。
え待ってほんとにやばい可愛い(語彙力)。
「余所見してないで、ほら手を動かす」
「アッハイ」
「それと」
「な、なに?」
「気づいてないかもしれないけど…」
「ん?」
「声に…出てたから」
顔真っ赤で照れながら超可愛い蘭が見れて満足満足…今なんつった?この赤メッシュ。恐る恐る俺は続きを聞く。
「白いエプロンかサンマどっちでしょうか?」
「…白いエプロン」
「…忘れてくれ、思春期だからな」
「そんな便利な言葉じゃないし…!」
「待て、落ち着け顔真っ赤だぞ」
「うるさい…」
「顔真っ赤って言えば止まるんかい…」
「…アリガトウ」
「え?今なんて?」
「もういいから手動かす!」
「は、ハイ!」
「まぁ、モテはしないだろうね、修人って」
そう、見かけはそこそこいいが基本的に普通の男子と何ら変わらない。彼女達のように深く関わらないと他の男子と彼の違いは分からない、その違いはきっと優しさだ。
「きっと、ライブハウスのみんなが修人を好いてるのは優しすぎるからだよ、いい意味でも、悪い意味でも」
「そうですね、でも…たまに無茶しちゃうのが玉に瑕ですけど」
「無茶は…困る」
「修人は自分が思ってるより身体強くないからね…、こないだの文化祭の時も当日の朝、目にクマ作ってたし…」
「でも…やっぱり優しいんですよ、修人くん」
「そうだ!よし、今から修人に電話でモカの事どう思ってるのか聞いてみよう!」
「リサ先輩?」
「リサ先輩!?」
「よし…電話掛けよ」
「ご馳走様でした!最高!」
「それはどうも…」
「よし、後片付けは俺やるから蘭は先に風呂入ってろ」
「いいの?覗かない?」
「覗くか!…あ、ていうかまだお風呂入れてなかったな…テレビでも見ながら待っててくれるか?」
「あ、うん…」
そう言って彼は浴室の方へと向かった。そして私は少し寒いと感じたのでリビングのソファに置いてあった毛布を膝掛けにしてソファにもたれてテレビを見始めた。そして、そのあと直ぐに…。
ヴー…ヴー…ヴー。
スマホのバイブ音が聞こえた、自分のスマホを確認するが自分のでは無い。なるほど、つまり…。
「修人のか…誰だろ」
興味本位で、着信待機画面を見るとそこには『リサ姉』。
いやこいつ、自分で登録名リサ姉にしてるのか。
「修人ー?」
「なんだー?」
「リサ先輩から電話ー」
「分かったー、とりあえず出といてくれるか?すぐ行く」
「うん」
『もしもしー?』
「もしもし…なんです?こんな時間に?」
『あれ?蘭?修人は?』
「今ちょっと手が離せないらしくてすぐ戻るって…」
『そっか、じゃあちょっと待ってるね』
「はい、すみません」
「修人ー?」
「はいはい、蘭、多分15分したら風呂湧いてると思うから先入っていいぞ?」
「うん、ありがと」
「じゃあ俺ちょっと二階に行ってくる」
「うん」
「はいはいもしもしー?」
『あ、修人?お風呂ってどういう…』
「切りますね?」
『待って待って!ちょっと話聞いて!』
「はぁ…それでなんの用です?」
「リサ先輩?スピーカーですよ?」
「いいの?モカだって直接聞きたいでしょ?」
「まぁ…そうです」
電話口の彼は知らないだろうが、リササイドはスピーカーで三人に声が届いていた。
『それで話はなんですか?』
「そうそう…ちょっと聞きたいんだけど、修人ってさ、モカの事どう思ってるのー?」
『モカを…どう?』
「そうそう、だってどう考えても私やつぐみより距離感近くても気にしてないし、普通に考えて年頃の可愛い女の子があんな事してたら惚れちゃったりするんじゃないの?」
「仮にも年頃の可愛い女の子から出てくるセリフとは思えませんね…」
『細かいことはいいの、で?どう思ってるの?』
「…それはその…恋愛感情があるかないかの話ですか?」
『うーん、普通にどう思ってるかで』
「なんでそんなこと聞くんです?」
『嫌だって、普通にありえない距離感だよ?モカと修人って…』
「え?いやそりゃ…」
『だってモカだからって言うのはなしだからね?』
「…なんか今日のリサ姉鋭いっすね」
『ん?そーお?』
「えっと…どう思ってるか、か」
『無理しなくていいよ?言いたくないなら言わなくてもいいし』
「そうですね、モカの事は…好きですよ」
『それは、友人としてかな?、それとも…異性として?」
「両方…ですかね、結論として出すのが難しいところではありますけど…」
『友人としてはとりあえずモカの事どういう風に見てるの?』
「…まぁ、単純に居る時間が長いですからね…。多分俺、モカに隠してる事ってあんまないと思うんですよ」
『思ってたより仲良いね…、それで?異性としては?』
「なんて言うか、ほっとけないんですよ、モカって」
『ふーん…』
「ちょっと抜けてて、ぼんやりしてたり甘えたがりでマイペース、そういう人が近くにいたりすると何となく放ってはおけなくて…、でもそんなモカが時々、ありがとうとか、女の子らしい可愛い事をする度になんかちょっと…」
『うん、もういいから…ありがと』
「…?そうですか」
「………シューくんのばかぁ…」
電話の音声を聞いて顔真っ赤で収拾つかなくなっている状態のモカとつぐみとリサ。
「それじゃ、とりあえず恥ずかしいこと聞いてごめんね?」
『ていうか、今思うとめっちゃ恥ずかしいんで忘れてくれません?』
「やだ」
『ですよね…』
「おやすみーばいばい」
『はい…おやすみなさい』
そうして電話切ったリサは2人を近くに寄せた。
「どう?モカ?」
「リサ先輩いじわる…」
「ごめんごめん、それを踏まえて…明日は」
「「え?」」
「よぉし!やるよー!」
「え…え…え?」
「お風呂開いたよー」
「あ、サンキュー」
「…覗いてないよね?」
「覗くか、もう寝ててもいいぞ?」
眠そうだけどな…、いや多分起きてるか。そのために今コーヒー飲んでんのか蘭は、今からコーヒー飲んだら当分寝れないだろ。
「いや、起きてる」
「そうか、まぁ…適当に暇つぶしててくれ」
そして、お風呂から出ましたとさ。
「あー…いいお湯だった」
「おかえりー、ていうかいつも入ってるでしょ?というか長…30分も入ってた」
「金曜は毎回長いんだよなー、疲れ取りたいし」
現在時刻は22:30、蘭はまだ当分寝る気はないようで俺が羽沢珈琲店で買ったコーヒーを飲んでまだ寝ない様子なので、俺もコーヒーを飲んで目覚ましをする。
「ちょっと、隣来て?」
「なぜに?」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
深夜テンションなのか、眠気が取り切れてなくて眠いのか、いつもとは違ってどこか疲れていてそれでいて穏やかな蘭の声音と雰囲気は何となく普段のモカに近いものを感じた。
俺は蘭がポンポンと叩いてソファの所に座った。すると蘭は待ってましたと言わんばかりに、俺の膝を枕にソファに横になった。
「お前最初からこうするつもりだったろ?」
「モカはいいのに私はダメ?」
と、そんな真っ直ぐな目で見られてなんかすごく目を逸らしたくなる…、あのすいません蘭さんまじで深夜テンションすぎる。
でも可愛いいからいい。
「ダメじゃないけど、モカは堂々と言うからな…少しビックリしただけ」
「そっか、ありがと」
「一応言っとくけど寝る時はちゃんとベッドあるからそこ行けよ?」
「分かってる、ありがと」
と言いつつ、寝るモードに入りかけてるのはなんなんですかね。
そうだ、寝られる前に言うこと言っとこ。俺が蘭にずっと伝えたかったこと。
「蘭、ありがとな」
「なに?急に?」
「お前が俺の事見つけてくれなかったら多分、俺はこんなに幸せで楽しい生活送れてなかったと思うからさ」
「あー…そう言えば、あたしが見つけたんだっけ…修人」
「そ、有無を言わさず手を引っ張って連れてかれた時は…」
「…あの時はその…無我夢中で」
「ていうか、そもそも…なんで俺だったん?」
そこが気になった、あのライブハウスには俺より多くの楽器が出来る人はいないだろうが、あの時俺が弾いていたギターよりも上手い人はそれなりにいたはずだ。
「なんていうか…あんたの音だけ、違って聞こえた」
「なんそれ?」
「私も…よくわかんない」
「そっか、まぁなんでもいいか」
「…寝よ?もう眠い」
「そうだな、いい時間だし寝るか」
「うん、ところでさ修人はどこで寝るの?」
「マンションだしな、部屋は少ないし…俺はソファで」
「ねぇ…敷布団ってある?」
「あるけどどないすん?」
「その…えっと…」
「どした?なんか顔真っ赤だけど?」
「その…同じ部屋で寝る…とか」
「あ~…うーん」
「い、嫌なら…いいけど」
「いや…嫌じゃないんだけど、その…」
果たして俺は色々耐えれるんだろうが、色々。
「じゃあ…今日は一緒に寝よ?」
「お、おう…」
やばい今の見ましたかみなさん。今の蘭はデレしかないですよ、でもそれはそれであり寄りのあり。
「なんか…ごめんね、今日甘えっぱなしで…」
「いいんだよ、というかお前はもっと甘えろ、モカを見習え…いややっぱいいわ」
「私も遠慮しとく」
現在隣のベッドで蘭が寝ていて俺はその下の敷布団の上に毛布にくるまって寝ている。
「モカはモカだからあの遠慮なさだからな、つぐがやってもそれはそれでアリだけど」
「ふーん…そうなんだ」
「なんか機嫌損ねた?」
「別に…」
「とにかく…お前はもっと甘えていいぞ?ただでさえ曲作りなんかしょっちゅう抱え込んで手詰まりになるんだし、少しは人に甘えとけ」
「…そっか、じゃあ早速甘え、聞いて貰っていい?」
「可能な限りな」
「じゃあ2つ、1つは月曜に空いてたら遊びに行こ?2人で」
「2人でか?」
「うん、ほら?文化祭終わって落ち着いたらって言ってたじゃん」
「…言ってたなそう言えば、分かった…了解」
「それと…もうひとつなんだけど」
「なに?」
「その…これは、本当に嫌ならいいし…やりたくないならやらなくてもいいんだけど」
「なんだよ?」
「…こっち来て、一緒に寝よ?」
「え…」
いやちょっと待っていやちょっと待って、待って待って、え?。
こんなこと言われるの初めてだからなんて返すのが正解か、分かんないんだけど…。
涙目で顔真っ赤になりながらそんな事を言った蘭はもう噴火寸前のあれみたいな感じで顔がさらに真っ赤になった。
「…ご、ごめん、変なこと聞いて」
でも、一瞬見えた蘭のその落ち込んだというか寂しそうな顔を見て俺はどうにもモヤモヤしてしまうらしい。
「蘭…ちょっと、ズレてくれるか?」
「…いいの?」
「お前が来てって言ったんだろ…」
「…うん」
そうして蘭が開けてくれたスペースに俺は横になる、やばい…いつだか屋上で眠気に負けて一緒に寝た事はあったけど時刻と場所が揃うだけでこんなにもドキドキするのか…。
「…私、寝るね」
「そ、そうか…おやすっ…!」
蘭が俺の腕を枕にして胸に顔を埋めて、寝始めた。やめてこれ俺寝れない奴じゃん。
「あの…蘭?」
「スーッ…スーッ」
「早すぎだろ」
よほど限界だったのか、秒で寝た。
これは…寝れないな。
「スーッ…スーッ…」
「寝てる…?」
半ば強引に寝たふりをしたが、どうやらそのまま眠ってしまったようだ。時計を見るとまだ3時、二度寝をしようと体勢を整えようとしたそのとき。
チュッ…
「っ!!!!!!」
あいつの僅かな動きと、自分の動きで互いの唇が触れた。
そのままマッハで私はあいつの胸に顔を埋めてしばらく悶えていた。
でも結局疲れて数分したら眠っていた。
「馬鹿…」