ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百話です。




第百話

 

 

 -  キャロル陣営によって破壊された発電施設、跡地  -

 

 

「ニシシ♪ お前達が強くなっててアタシ、嬉しいゾ!」

 

「はぁ、はぁっ…準備運動にしては激しすぎデスよ…!(やっぱり、滅茶苦茶で出鱈目な相手デス…!)」

 

「ぜぇ、ぜぇ…(ガリィには悪いけど、この人形は本当に格が違うんだ…!)」

 

 以前、キャロル達の襲撃により破壊された発電施設…その跡地で二人の装者と一体の人形が刃を交えていた。

 

「…!? ゴメン、予想以上に楽しかったせいで忘れてたゾ…」

 

「…危うくモジュールを起動する前に負けるところだったんデスけど⦅ジト目⦆」

 

「人間には準備運動が必要だって、ガリィから聞いたのを思い出したんだゾ…」

 

「うん、それ自体は間違っていないんだけど…やりすぎはよくない、かな」

 

 息が絶え絶えの二人に対し、人形のミカが余裕の表情をしている状況から考えると装者の不利に見えるかもしれない。

 しかしこの状況…実はミカが『まずは軽く準備運動するゾ!』と言い出したのが原因であり、装者二人は通常状態のギアでミカの言う準備運動に参加した結果…今の様な状況になってしまったのである⦅悲しみ⦆

 

「うぅ、次からは気を付けるゾ…⦅反省⦆」

 

「そうしてくれると嬉しいデス…」

 

「…響さんが私達を待っているの。だからここからは本気で行くよ」

 

「お~! 望むところだゾ!」

 

 …何はともあれ、ここからが本番のようだ。キラキラした目でご機嫌なミカが見つめる中、二人がギアペンダントに手を掛けると…。

 

 

「調、準備はいいデスか!」

 

「うん、リベンジだね切ちゃん」

 

 

 

「「イグナイトモジュール、抜剣!!!」」

 

 

 ミカ・ジャウカーンへのリベンジマッチを開始した。

 

 

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「イガリマ、シュルシャガナ両名のイグナイトモジュール起動を確認。バイタル、安定しています」

 

「よかった、問題無く起動したみたいね…セーフティダウンまでのカウント、開始します!」

 

「…滑り出しは問題無し、か。 後は、二人がミカ君という高い壁を越えられるかだな」

 

 S.O.N.G.司令本部、司令室…そこに備え付けられている大型モニターには切歌と調、そしてミカの姿が映し出されていた。

 だが何故彼女達の戦場がピックアップされているのだろうか…実は、その理由は他の装者達の意思によるものであり、切歌達の戦場がもっとも厳しいものになる⦅響を除く⦆と考えてた彼女達は、司令室のメンバーに切歌と調のサポートを手厚くするようお願いしていたのだった。

 

「あの、弦十郎さん…ミカちゃんってそんなに強いんですか? 私から見ればガリィちゃんも十分すごいと思うんですけど…」

 

「…あくまで俺個人の感想だが、モジュールを起動した状態の響君で五分五分…と言ったところか」

 

 司令室待機のメンバーがモニターを見つめる中、ミカと直接手合わせした事がある弦十郎に未来が気になっていた事を質問していた。そして弦十郎の答えは…呪いを纏った響ですら互角、という見立てだった。

 

「ミカは戦闘に関する機能以外を全て切り捨てているため、他のオートスコアラーとは比べものにならない程の出力を誇っているのです」

 

「そんな…エルフナインちゃん、ミカちゃんに弱点は無いの?」

 

「弱点を挙げるとすれば燃費が悪い事ですが…もしそれを気にしなくていい程のエネルギーを補給されていた場合、お二方にとってはかなり厳しい戦いになると思います」

 

 ミカの弱点が燃費である事は間違いないが、残念ながらミカはシャトーから出立する前にガリィから限界まで想い出を補給されていた。つまり切歌達は消耗戦に持ち込むことはできず、真っ向勝負でミカを倒すしかないというのが厳しい現実である。

 

「…とにかく、我々にできる事は不測の事態に備える事のみ。 頼んだぞ、二人とも…!」

 

「イガリマ、シュルシャガナ、オートスコアラー・ミカとの戦闘を開始!」

 

「二人のユニゾン効果を確認! フォニックゲイン、上昇して行きます!」

 

 三人が見守る中、現場では切歌と調がミカとの戦闘を開始していた。それを不安そうに見守る未来、そして…。

 

「二人がどうか無事に帰って来れますように…!」

 

「…きっと大丈夫です、未来さん。 女神ザババの、そしてお二人の親和性によるユニゾン…その力を最大限に発揮する事ができれば勝機はあるはずです…!」

 

「ああ、その通りだとも。勝負は後半…それまで二人が持ち堪える事ができれば、或いは…!」

 

「二人の、力…それに後半、ですか?」

 

 モニターを熱心に見つめるエルフナインと弦十郎…その二人の表情は未来とは違い、まるで何かを待ちわびてているようなものだった。

 

 

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「アハハハハハハ!!!⦅超ご機嫌⦆」

 

「~♪(呪いを纏った事で戦えるようにはなっているデス…だけど!)」

 

「~♪(勝負を掛けるにはまだ(・・ )、足りない…!)」

 

 戦闘が再開されて既に五分が経過していた。この五分間、ミカと二人の装者は激しい攻防を繰り広げていたもののお互いにクリーンヒットは無しという状況だった。

 

「ガリィならもうとっくにギブアップしてるのに…すごいゾ二人とも!」

 

「~♪(向こうはまだ遊んでいるつもりみたいデス…! )」

 

「~♪(…いいよ、満足するまで付き合ってあげる。 だけどその後に後悔しても知らないから!)」

 

 イガリマの、そしてシュルシャガナの刃をミカは笑いながら躱し続ける。その表情は正に超ご機嫌と言っていいもので、ミカはこのスリルを長く楽しむために攻撃よりも回避を優先して行動していた。

 

「…おっ?」

 

 その最中…切歌が投擲したイガリマの刃を何気無く受け止めたミカは、 特に気にする事無く(・・・・・・・・ )その刃を放り捨てた。

 

「今のは多分躱せなかったから受け止めたゾ! でも惜しかったナ!」

 

 余裕を持って受け止める事ができたとはいえ、遂に自分に一撃を当てた二人をミカは称賛する。しかし…。

 

 

 

「~♪(当たった…? だけどまだ、まだ早い…!)」

 

 

「~♪(エルフナインと司令さんの言っていた通りデス!)」

 

 

 二人が思っていた事はミカに一撃を与えた事では無く、その先に起こる状況に対するものだった。

 

 もしもこの時…ミカがその僅かな変化に気付き勝負を急げば、ミカが勝利する可能性は高かったのだろう…。しかし彼女はこの戦いを長く楽しみたいと思っていたため、その好機を逃してしまったのである。

 

「ニッシッシ♪ ほらほらどんどんいくゾ~!」

 

「~♪(やらせるものかデス!)」

 

「~♪(切ちゃん!)」

 

 そして…戦闘が開始されて九分、遂に二人が待ち望んだ時間が訪れる。それは二人が冷静に、そして全力を尽くしていた事で勝ち取ったもの…最強のオートスコアラーとも互角に渡り合える力であった。

 

 

 

「おっ? アタシと力比べする気なのカ!」

 

「~♪(私達は、私達のできる事を全力でやるだけデス!)」

 

 

 カーボンロッドを射出するミカに対し、イガリマの鎌を構え突撃する事を選択した切歌。

 そして切歌に襲い掛かる飛来物は調によって全て叩き落とされ、それを見たミカはカーボンロッドを剣のように構え切歌を迎え撃つ。そして…。

 

 

 

「――オオッッッ!?」

 

 

 

 ミカはイガリマの刃の威力を受け止めきれず…後方へと吹き飛ばされた。

 

 

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「弦十郎さん!」

 

「ああ、この時を待っていた…!」

 

 S.O.N.G.司令室に備え付けられている大型モニター…そこには弦十郎とエルフナインが待ち望んだ状況が映っていた。

 

「すごい…でも、さっきまではミカちゃんに押されていたのにどうして…?」

 

 そして、その二人とは対照的にその状況が理解出来ない未来は思わず二人に問いかける。先程まで押されていた切歌がミカに押し勝った理由、それは…。

 

 

「切歌さんがミカに押し勝った理由は、二人のユニゾンだけに起こる特性によるものです」

 

「ユニゾンの、特性…?」

 

 その理由は『ユニゾンの特性』によるものだとエルフナインは答える。しかしそれだけでは当然未来には分からないので、続けて弦十郎が詳しく解説するのだった。

 

「ガリィ君との、そして深淵の竜宮での戦闘において二人は今回と同じくユニゾンによりフォニックゲインを上昇させていた。ここまではいいな?」

 

「は、はい」

 

「過去二回の戦闘中…女神ザババの、そしてお二人の親和性によりフォニックゲインは上昇し続けていました。そう…戦闘が終了するまでずっと、です」

 

 そう、過去の戦いで二人がユニゾンを行っていた時、二人のギアの出力は戦闘終了まで僅かながら上昇を続けていたのだった。つまりそれに気付いた弦十郎とエルフナインが切歌と調にその事を伝え、二人はこの瞬間までフォニックゲインを高めていたのである。

 

「ずっと…っ!? それってつまり、二人は長い時間を戦いに費やせば費やす程…!」

 

「ああ、更に今回はイグナイトモジュールを起動した状態でのユニゾン…その効果は見ての通りってわけだ」

 

「戦闘開始から十分足らずの時間を掛け、お二人は徐々にギアの出力を上昇させていました。それ故にミカは戦闘開始直後に楽々躱せていたイガリマの刃を、数分後には受け止めざるを得なかったのです」

 

 ミカが戦闘に夢中な所為で犯した失策…それは楽々躱せていたはずのイガリマの刃を受け止めさせられた時、それが偶然では無いと気付けなかった事だった。そして、これに気付けなかった代償はとてつもなく大きい。

 

「そうなんですか…ってそんなに大事な事をどうして教えてくれなかったんですか!? 二人が負けるかもと思って私、ずっとハラハラしてたんですからね!」

 

「ご、ごめんなさい~!」

 

「それについてはすまなかったな未来君。…それと、一つだけ言わせてもらうが…まだ二人が勝利すると決まったわけでは無い」

 

「えっ…? で、でも二人はミカちゃんに押し勝てるくらい強くなっているんですよね? それでも駄目、なんですか?」

 

 今回の作戦を聞いていなかった事にふてくされている未来に謝りつつ、弦十郎は二人が敗北する可能性が残っていると語る。その理由とは…。

 

「確かに二人はミカ君を押してはいるが…時間が無い。 既にセーフティダウンまでは三分を切っている、そこまでミカ君が健在であれば二人の敗北は決まったようなものだ」

 

「それはお二人も勿論分かっているはずです。だから先程からミカへと果敢に攻撃を繰り出しているのでしょう」

 

「本当だ…後は時間との勝負、って事ですか」

 

「ああ、そうだ」

 

 実は、二人に残された時間は既に三分を切っていたのである。その時間に至った時、二人のギアは強制的に解除され、確実に敗北を喫する事になる…それに気付いているが故に、モニターに映る二人は防御を無視してミカに突撃を繰り返していた。

 

 

「…っ! 弦十郎さん、お二人が!?」

 

 

「ああ、勝負に出たようだな」

 

 

 そして残り時間が一分を切った時、モニターの中に映る二人の装者は勝負に出たようだ。その結果は…。

 

 

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「わっ! わわわわわ!!」

 

「~♪(防御を捨てて二人掛かりで攻めているのに…!)」

 

「~♪(掠らせるので精一杯デス…!)」

 

 イグナイトモジュールの制限時間が三分を切った時、切歌達は猛烈な勢いでミカへと攻撃を繰り出していた。その勢いに押されたミカは散発的に反撃するのが精一杯だったが、それでも必死の回避行動でクリーンヒットは許していなかった。

 

「楽しい楽しい楽しいーっ!! だからもっともっとアタシを楽しませるんだゾ!!!」

 

「~♪(こっちは必死だっていうのに…これじゃどっちが有利なのか分からないじゃないデスか!)」

 

「~♪(まだ二分以上あるから焦っちゃダメ…私は、私にできる事を!)」

 

 圧倒的不利な状況の中、それでもミカは笑顔のままだった。力と手数で負けている分はガリィとの遊びで培った技を駆使し、彼女は二人の装者相手になんとか戦いを維持していたのである。

 

「ニシシシシ! だけどアタシだって負けてないゾ!」

 

「っ!? あぐっ!(この人形、強いだけじゃなくて…巧い!)」

 

「~♪(ヨーヨーを投げ返すなんて器用な真似を! だけど…私を忘れてもらっちゃ困るのデスっ!!)」

 

「――っ!? も、もう少しで手が無くなっちゃうところだったゾ…!」

 

 残り二分半…防御を捨てて攻めていた二人の内、調がミカの反撃を食らってしまう。しかしそれを見た切歌の即座の反撃により、ミカは浅くではあるが腕に傷を負ったのだった。

 

「無事デスか、調!?」

 

「…うん、なんとか大丈夫。だけど、このままじゃ…」

 

 ミカが後方に飛び退いた隙に、切歌は調を抱き起こす。どうやら調に大した怪我は無いようだが、制限時間が迫っている二人は徐々に追い込まれつつあった。

 

「…このままじゃ多分負けちゃうゾ…だから」

 

 そして一方、イグナイトの制限時間の事を知らないミカもこのままでは自身の敗北が確実であると悟っていた。そして…。

 

「二人ともっともっと遊ぶには…アタシも強くなるしかないんだゾ!」

 

 この瞬間、ミカの頭からはある事が抜けてしまっていた。そしてこの事がミカにとって致命的な隙を晒す失策となるのだが…それが分かるのは、僅かに先の事である。

 

 

 

 

「っ…調! 構えるデス!」

 

「…うん!」

 

「ニシシシシ♪」

 

 稼働限界まで残り二分足らず…切歌と調の二人は、突然無防備な姿を晒したミカを警戒していた。それもそのはず…ミカの周囲は以上な程の高熱により景色が歪んでおり、これから何かをする気なのは明白だったからである。そして…。

 

 

「これからアタシの本気を見せてやるゾ! バーニングハート・メ――」

 

 

 ミカは自身の全てを燃やし尽くす代わりに強大な力を発揮する切り札、『バーニングハート・メカニクス』を発動させようと――

 

 

 

『いい、ミカちゃん。 アレ…バーニングハート・メカニクスだけは絶対に使っちゃ駄目よ? アレを使えばアンタは確実に消滅するし相手だって無事じゃ済まないんだから絶対に禁止、分かったわね?』

 

 

 

 した瞬間…シャトーを出る前にガリィに十回以上言われた言葉を、ミカはこの瞬間に思い出した。故に…。

 

 

 

「――ガリィに使っちゃ駄目だって言われてたの、忘れてたゾ…⦅しょんぼり⦆」

 

 

 

「っ、切ちゃん!」

「分かってまス!」

 

 ミカは致命的な隙を晒す事になりそれによって生じた隙…それを見逃す程、ミカの目の前に立つ二人は甘くないのである。

 

 

「おっ、おおおおおっ!?」

 

 

 そして次の瞬間、気付けばミカは何かに足を取られ転倒させられていた。

 

 

「~♪(きっとこれが最後のチャンス!行くよ、切ちゃん!)」

 

「~♪(壊れちゃったら申し訳無いデスですが、こちらに手加減する余裕は無いのデス!)」

 

 

 致命的な隙を晒したミカの足には、調が放ったヨーヨーが巻き付いていた。それを確認したミカが再び顔を上げた時、彼女の視界には自身に迫る巨大な車輪が見えていた。

 

「~♪(前は片手で止められた禁月輪…だけど今回は二人の力を合わせているんだ!)」

 

「~♪(ザババの刃の合体攻撃、止められるものなら止めてみやがれデス!!)」

 

 そう、ミカに迫っていたのは調の禁月輪だが…ただし調の背には切歌が同乗し、車輪にはイガリマの刃が合わさって凶悪な破壊兵器と化しているものだった。

 

 

「っ!!???(あんなのに轢かれたらアタシ、ペシャンコになっちゃうゾ!)」

 

 

 迫る破壊兵器を前に、直撃すれば自身が消滅する可能性が高いと考えるミカ。しかし既に相手は目の前であり回避は不可能、そしてカーボンロッドでも止められない…そんな絶体絶命の状況で、次にミカが取る行動とは…?

 

 

 

「…!(それならアタシも、必殺技だゾ!!!)」

 

 

「~♪(両手を前に…? もしかして、受け止める気なの!?)」

「~♪(あたし達の全てを込めた一撃を、簡単に止められるとは思わない事デス!!)」

 

 次にミカが取った行動…それは両手の掌を前に広げ、まるで受け止めようとしているかのような姿勢を取る事だった。もちろん切歌達もそう考え、速度を緩めずミカへと突撃を続け…。

 

 

 

 

「どっかーーーん!!!!!」

 

 

 

 ザババの刃が届いたと思われた瞬間、二人の視界は真っ白に包まれた。

 

 

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「っ!? 突如大規模な爆発が発生!! 装者二人の安否は不明です!!」

 

「バイタルに反応あり! ですが負傷しているかは依然不明!」

 

 S.O.N.G.司令本部司令室…そこは今、予想外の事態に慌てふためいていた。

 

「医療班を限界距離まで接近させろ! 煙が晴れ状況が確認され次第、二人の救援に向かわせる!」

 

「りょ、了解です!」

 

 装者二人の一撃がミカに届くと思われた瞬間に突然起こった大規模な爆発…それで大量に発生した煙が原因で司令室のメンバーは状況を確認できずにいた。

 

「うそ…な、何が起こったの…? き、切歌ちゃん調ちゃん大丈夫!?」

 

「ミ、ミカは一体何をしたのですか…?」

 

 突然起こった爆発により装者二人の安否も不明であり、二人の無事を確かめようと未来が必死に二人の通信機に呼びかける。すると…。

 

『ザッ、ザザッ――私も、切――も生きていま――』

 

『ザッ――だけど――ダメージはシャレに――ないデス…』

 

「っ!? 弦十郎さん!二人がっ!」

 

「何っ!?」

 

 二人からの返事があり、二人の生存が確認されたのだった。

 

 

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「切ちゃん、まだ戦える…?」

 

「…あたしも調と同じく満身創痍ってやつデス」

 

「そっか、そうだよね…」

 

 弦十郎との通信を終えた二人は、ギアを解除された状態で倒れ伏し救援を待っていた。突如自分達を襲った爆発が何だったのかは分からないままだが、最早戦う力を失った自分達の敗北は決定的だという事だけは確かに分かる事であった。

 

「煙が、晴れるね…」

 

「あっちだって無傷じゃ無いと思いたいデスけど…」

 

 二人が話す中、徐々に煙は晴れて行き視界が回復して行く…そして、二人が視線の先に見たものは…。

 

 

 

 

「うう…これじゃもう戦えないし、お腹が空いて一歩も動けないゾ…」

 

 

 

 

 両腕の肩口から指先までの全てを失い、座り込み項垂れるミカの姿だった。

 

 

「切ちゃん、あれは…」

 

 

「な、何をすればあんな悲惨な状態になるんデスか!?」

 

 

 ミカの状態はボロボロの二人から見ても悲惨に見える程酷いものだった。両腕は吹き飛び、体の至るところに亀裂が走っているその姿は正に悲惨の一言である。

 

 

「…おっ? おー!お前達生きてたのカ!? 良かったゾ!」

 

 

「う、うん…ありがとう」

 

「生きてたのかって…本当に一体何をしたんデスか!?」

 

 そしてそんな悲惨な状況にも関わらず二人の生存を喜び声を掛けるミカ。それに対し引き攣った表情で返事する調とは対照的に、切歌は怒りを込めた表情でミカを問い詰めるのだった。

 

 

「何って…必殺技! ガリィと考えたんだゾ!⦅威風堂々⦆」

 

「――へっ? 必殺技、デスか?」

 

「そうダゾ! えっと~、両手の先に想い出をいっぱいいっぱい乗せてドカーン!って撃ち出すんだゾ!」

 

 ミカの必殺技…それはありったけの想い出を込め、大量のエネルギーを一気に放出するというとんでもない技だった。ちなみに以前、ミカはこの必殺技を使い両腕を損傷…キャロルに怒られガリィに使用を禁止されるという事件を起こしていたが、もちろんミカはそんな事は覚えていない。

 

「…ああ、それで両腕が無くなっちゃったんだね…⦅遠い目⦆」

 

「それって要は自爆技、デスよね…⦅遠い目⦆」

 

「でもこれしか思いつかなかったんだゾ!⦅満面の笑み⦆」

 

「そっかぁ…⦅思考放棄⦆」

 

「調っ!? い、医療班を早く!調が余りのショックで気絶しちゃったのデス!」

 

 余りにも堂々としたミカの姿に、調は考えるのをやめ意識を手放した。それからすぐに医療班が到着、二人は病院に運ばれる事となったのだった。

 

 

「動けないからアタシも連れて行ってほしいんだゾ!」

 

 

 失礼、二人と一体でした…⦅遠い目⦆

 

 

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「二人の容態は?」

 

「上昇していたギアの防御力のお陰で、見た目よりもひどい状態ではありませんが…」

 

「どうした?」

 

「二人がその…応急処置だけ済ませて響ちゃんの救援に向かいたいと主張しているようで、医師を困らせているようです」

 

「そうか、気持ちは分からんでもないが…」

 

 切歌と調が治療を受けている時、司令室の大型モニターには残された戦場…キャロルと響が相対している場所が映し出されていた。しかし…。

 

「動きが、ありませんね…」

 

「ふむ、何かを話しているようだが…響君が通信機の電源を落としている以上、込み入った話をしているのだろう…」

 

 彼女達に動きは見られなかった。キャロルと響は何かを話しているようだが、響が通信機の電源を落としているため司令室にいるメンバーはただその様子を見守っていたのだ。

 

「響…」

 

「キャロル…」

 

 それを心配する二人の少女…一人は響の親友である未来、そしてもう一人はキャロルのホムンクルスであるエルフナインである。そして…。

 

 

「あれは、ダウルダブラのファウストローブ!?」

 

 

「…始まったか。 翼、マリア君…急いでくれよ」

 

 

 

 

 

 遂に、最後の戦いが幕を開ける。

 

 





ガリィのお陰でミカが壊されずに済んだってはっきり分かんだね⦅大嘘⦆

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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