第百十話です。
「限定解除、装者六人によるユニゾン、そして
「えへへー! イグナイトモジュールが勝手に動き出した時はびっくりしたけど、なんとかなって良かったよ~!」
「そうか、イグナイトモジュールが勝手に――――は?⦅真顔⦆」
「??? えっ???」
「……一つ確認したい。 イグナイトモジュールは立花響……お前が起動したのではないのか?」
「えっ、違うよ???」
「えぇ……⦅困惑⦆」
戦闘が終了して僅か……響とキャロルの二人は先程の戦闘について言葉を交わしていた。
今の話題は最後の攻防でイグナイトモジュールが勝手に起動した事であり、その事を知ってしまったキャロルは絵に描いたような困惑顔であった。
「それよりキャロルちゃん、みんなの所に戻ろう? 流石に私もちょっと疲れちゃったし……」
「……あれだけの無茶をしてその程度で済むのか⦅困惑⦆ まあいい、私も疲労は感じてい――」
とりあえずその話題は置いておいて、今は仲間の下へと戻る事にした響とキャロル。響は巨大なアームドギアを解除すると同時にギアの融合も解除、通常の限定解除の姿へと戻りキャロルへと手を伸ばす。
キャロルは伸ばされた手を見つめ一瞬躊躇するものの、やがて響の手に自身の手を重ねようと――
バチッ!!!
「「っ!?」」
二人の手が繋がれると思われた刹那、それを阻止したのは火花……二人の手の間で発生した強烈な衝撃だった。
「な、何今の!? もしかして静電気なのかなキャロルちゃん!?」
「違うわ馬鹿者! これは……獅子機が莫大なエネルギーを処理し切れず、外に溢れ出ようとしている! つまりどうにかしないと爆発するという事だ!」
その原因は獅子機……どうやら先程の攻防で処理能力が限界を超えてしまい、それが外に溢れ出ようとしているらしい。
「えっ……えぇぇぇぇぇぇーーーっ!!!??? なっ、なんで、どうして!?⦅大混乱⦆」
「限界を超えた出力を注ぎ込んでいたのもあるが……恐らく決定打は先程の歌と想い出を交えた咆哮だろう、それにより――っ!?」
「わ、私にも何か手伝え――うわっ!?」
どうにか暴走を制御しようと試みるキャロル。しかし事態は更に悪化して行き、周囲に吹き荒れ始めた暴風により響が吹き飛ばされてしまう。
「立花響っ!? くっ……!」
『レイア、ファラ、それにガリィ! 獅子機の蓄えたエネルギーが暴走しお前達を巻き込む可能性がある、早急に装者達を連れシャトーへ避難せよ!』
この段階でキャロルが最優先に行ったのは装者達の保護であった。シャトーへと避難すればとりあえず彼女達の無事は確保され、自分も獅子機の制御に集中できると彼女は考えたのだろう。
『エネルギーの暴走……!? どういう事ですかマスター!?』
『シャトーに装者達を避難……!? ではマスターはどうされるのです!?』
しかし、その命令に対しレイアとファラが異を唱える。それに対しキャロルは……。
『私は制御に集中し爆発を抑える、だがお前達がそこにいては気が散って作業に集中できぬのだ! それを理解し早急に避難せよ!』
『っ!? で、ですが……!』
『間も無く獅子機の周囲には破壊の嵐が吹き荒れ始め、お前達では近付く事すら叶わぬだろう……頼む』
既に獅子機の周囲には暴風が吹き荒れ、近付く事が容易ではないのは明らかだった。その状況を踏まえ、レイアとファラは悔しさと不安が混ざったような表情で決断する。
『……分かり、ました』
『命令に……従います』
『……助かる。 立花響については私が命に代えても守ろう、故に装者達には心配無用と伝えてほしい』
結論を出したレイアとファラは即座に動き出し、装者達を集めて転移結晶で避難を試みる。しかし……。
「っ!?――あの大馬鹿者は何をやっている!?」
キャロルの視線の先には、シャトーへと転移して行く輪から外れる一体の人形が見えていた。
その人形とは、もちろん……。
「アハハハハハハ!!!ここでマスターを華麗に救出すれば生き残れる! 薔薇色の未来を掴めるんだからぁぁぁぁ!!!」
(……で、本音は?)
(……本心は?)
(ここで大人しく従うガリィちゃんじゃないんだよなぁ!⦅褒め言葉⦆)
≪ああもううっさいわねアンタ達! マスターの窮地に尻尾を巻いて逃げるですって?そんなお利口な選択をガリィがするわけないでしょうが!!!≫
その名はガリィ・トゥーマーン。この物語を正史から歪めた元凶である彼女が、くそったれな運命に襲われた主を救うために駆け出していた。
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その状況を把握した時、即座に動き出した者がいた。
「響ちゃん以外の装者達の反応、消失しました!――って司令!? 何処へ行かれるのですか!?」
「戦いは終わった! 響君を……いや、彼女達を助けに行くに決まっているだろう!」
「で、ですがまだ海の上ですし……いくら司令でも――」
「本気を出せば海の上を走った方が早い! 後は任せたぞエルフナイン君!」
「えっ、ええっ、ボ、ボクですか!?――って弦十郎さんは何処へ!?」
その名は風鳴弦十郎……人類最強でありお節介な大人でもある彼が少女達の窮地を見逃せるはずもなく、救出に動き出すのは至極当然の事だった。
「あっ、もう外に……ひ、響をお願いします弦十郎さん」
果たして海を駆ける弦十郎は響を、そしてキャロルを救う事ができるのか……。
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「……っ!(なんという不覚! 年甲斐も無くはしゃいだ結果がこれとは、愚かにも程がある!)」
キャロルは大人モードへの変身すら解除し、自身に残された力の全てを制御に回して必死に暴走を抑えていた。
もしもキャロルが以前の状態であればこんな事にはならなかったのかもしれない。しかし今ここにいるのは錬金術師キャロルであると同時に、田舎の村娘である事を思い出したキャロルちゃんである。
故に彼女は響との戦いに熱中してしまい、更に負けず嫌いな性格も災いしこんな事になってしまっていたのだった⦅悲しみ⦆
「……ちぃっ!(私に残された力ではまるで足りぬ……このままでは……!)」
ただでさえ限界を優に超えた力を注ぎ込まれていた獅子機だが、それだけで暴走する事は無かっただろう。
しかし更に強大なエネルギー⦅歌と想い出を融合したナニカ⦆を体内に注ぎ込まれ、トドメにグロリアスブレイク(強)を叩き込まれた事で、流石に獅子機自身が耐えきれなかったのだ。
そしてこれ程に強大なエネルギーの塊を制御するには、キャロル自身に残された想い出の量が少なすぎたのである。
「これ程のエネルギーが爆発すれば、被害はこの無人島だけでは留まらないだろう……ならば私が取るべき行動は一つ……!」
周囲には破壊の嵐が吹き荒れ既にキャロルに逃げ場は無い状況である。更にこのまま獅子機を放置すれば人的被害が発生する事は確実……そう悟った彼女は一つ、決意を固めるのだった。
「……すまない、立花響。 ここで私は全てを忘れるだろう……だが私の失策でお前を失うわけにはいかぬのだ……故に許してほしい」
キャロルは視線の先で何かを叫んでいる響へと視線を送り、静かに目を閉じる。彼女に残された手段……それは文字通り自身の全てを力に変える事。そう――
「……さようなら そして――(残された想い出に私自身の記憶を合わせ、その全てを焼却し力に変える事で暴走を抑え込む!)」
キャロルは不足分を自身の記憶で補う事を決意する。そう、過去を全て思い出したキャロルに蓄えられた数百年分の膨大な記憶……その全てを彼女は力に変える事を決意したのだ。
「パパ、ごめんなさ――(対象に例外は無し……記憶の焼却を開――)」
彼女の目は、自身でも気付かぬ内に大粒の涙が浮かんでいた。その光景を見た響がキャロルの下へと駆け付けようとしているが、荒れ狂う嵐に阻まれ近付く事ができない。
そして正史と同じくキャロルは、自身の記憶を全て力へと変え――――
「――大丈夫ですよ、マスター♪ こんなのガリィがパパっと解決しちゃいますから☆」
ようとした瞬間、キャロルの小さな身体はナニカに包まれていた。それに驚いた彼女が顔を上げると、そこには……。
「――――ガ、リィ……?」
ガリィ・トゥーマーン……主を救うため破壊の嵐の中を突き進んでいた人形が、遂に主の下へと辿り着いていた。
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「なによこれバッカじゃないの一歩も進めないんですけど!?⦅全ギレ⦆」
(知ってた⦅白目⦆)
(ビッキーでも無理なんだからそりゃ、ねぇ……)
キャロルの下に辿り着く少し前……ガリィは吹き荒れる破壊の嵐に手も足も出ず立ち往生していた⦅無慈悲⦆
「ああもう! 進めないし変な光が纏わりついて来るしで最悪よもう!⦅憤怒⦆」
(この光ってフォニックゲインだよね? なんでこっちに流れて来てんの?)
(さぁ?⦅無関心⦆)
(この光……もしかして!)
嵐の中で踏ん張るガリィには何故か光の粒子が纏わりついていた。
……実は破壊の嵐の中でガリィに大したダメージも無しに立っていられるのはこの光のお陰なのだが、もちろん彼女がそんな事に気付けるはずも無い⦅悲しみ⦆
そしてそれに最初に気付いたのは我らがガリィ一行筆頭軍師……鬼畜な策を提案する事に定評のある彼だった。
(ガリィさん、ちょっと試しにその光に指示を出してみてほしいんですけど……お願いできますか?)
「はっ? もしかしてアンタ、最近碌に活躍できていないから焦ってるのかしら?⦅優しい眼差し⦆」
(ち が い ま す !⦅半ギレ⦆ いいから早く!時間が無いんでしょう!?)
(そうだよ⦅便乗⦆)
「えぇ……⦅困惑⦆ それじゃなによ、このストーカーっぽい光に『マスターの所に辿り着けるよう、ガリィを守りなさい』とでも言えば――って急に集まって来たんですけど怖い!何よこの心霊現象は!?」
(っ!――やっぱりこの光は……私達です!)
彼が気付いた事……それはこの光の群れが意思を持っており、その意思が自分達のよく知る相手のものなのでは?という事だった。
そしてその予想通りガリィが自身を守る様に言葉を呟いた途端、光の群れが一斉にガリィへと集まり始めたのである。
「はあっ!? どういう事よ意味分かんないんですけど!?」
(それはキャロルさんの元に向かう間に説明しますから! 今は早く彼女の下へ!)
「わ、分かったわよ! 行けばいいんでしょ行けば!!!」
軍師に急かされ、ガリィは嵐の中心へと向かい始める。その道中、嵐に身を削られながらもガリィは突き進み……そして遂にキャロルの下へと辿り着いたのだった。
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「あたし達を早く戻せよ! あの馬鹿が取り残されてるんだぞ分かってんのか!?」
「……マスターからの通信が届いていない以上、今は戻る事は出来ない」
「貴方達の安全を考えての事です。どうか納得してもらえないでしょうか?」
シャトーへと避難した装者達と二体の人形……レイアとファラは現在、雪音クリスを必死に制止していた。
「気持ちは分かるが抑えろ雪音。 私達と同じく彼女達もすぐに戻りたいはず……それをしないという事はそれ程に戦場が危険な状況だという事に他ならない」
「で、でも! 今のあたし達にはシンフォギアが戻ってきてまス!」
「切ちゃん、ちょっと落ち着こう。ねっ?」
「貴方も少し冷静になりなさい切歌。 私達が限定解除してもまるで歯が立たなかった獅子機が暴走しているのよ?その状態で私達が行って戦力になれると思う?」
「そっ、それは……その通りデスけど!」
「私達にギアを戻したとはいえ、立花は今も限定解除を維持している。ならば単独で避難する事も可能だろう(まあ立花がキャロルを置いて避難するとは考えにくいのだがな)」
装者達の中で冷静だった年長組と調が、クリスと切歌をなだめようと説得にかかる。しかし……。
「言っておくけどあたしが心配してるのはそれだけじゃないからな! あの馬鹿人形……ガリィの奴が残ってるのが死ぬ程不安なんだよっ!!!⦅憤怒⦆」
「「「「「「 あっ⦅察し⦆ 」」」」」」
クリスの発言で場の空気はひっくり返り、彼女達全員が『できるだけ早く戻らないと⦅使命感⦆』と考えを改めるのであった。これもガリィの普段の行いの賜物である⦅遠い目⦆
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「その身体はまさか……この嵐の中を潜り抜けて来たのか!?」
「……ありゃ、どうにも見えずらいと思ったら顔の右半分も無くなっちゃってますね☆ まっ、痛くも痒くもないからどうでもいいんですけど♪」
(死ぬかと思ったゾ⦅嘘偽りない感想⦆)
(人間なら絶対死んでたねぇ)
(さーて、ここからが文字通り
キャロルが自身の想い出を燃やす前に彼女の下へと駆け付ける事に成功したガリィだったが、その状態は悲惨なものだった。
ガリィは顔の右半分と左腕を消失し、それ以外の部分も散々なもので動けるのが不思議に思えるほどの状態だったのである。
「その頭部……人工知能を損傷しているのに何故お前は動いている!?」
「……言われてみればどうしてですかねぇ? この纏わりつく光が原因か、それとも――ってそんな事はどうでもいいんですってば!時間が無いからさっさと始めるんでマスターは黙っててくださいな!」
≪本当にうまくいくんでしょうね!? 失敗したら本気で怒るわよ!≫
(失敗したら間違いなく死ゾ⦅確信⦆)
(なんなら成功しても八割方死ゾ⦅白目⦆)
(この光が私達だとすればきっと上手く行くはずです! 後はガリィさんの身体がどこまで持ち堪えられるか……そこが勝負です!)
ガリィの腕の中にいるキャロルは理解不能な状況に混乱しており、ガリィはその隙に全てを終わらせるつもりだった。
この状況を乗り切るためにガリィと軍師が考えていた策……それは周囲に纏わりつく光を利用したもののようだが……。
「始めるだと? お前は何を――っ!?」
「あら、指示する前に分かってもらえるなんて嬉しいわ♪ マスターの事は任せたわよ、アンタ達」
状況に付いて行けず困惑するばかりのキャロルを余所に状況はどんどんと加速して行く。
まずはそれまでガリィに纏わりついていた光の群れが一斉にキャロルへと移動し、彼女を守る様に展開される。
「何故光が私に――っ!?」
「あらら、これじゃ長くは持ちそうに無いわね。 マスターと最後に話をしたかったけど、世の中そう都合よくは行かない、か」
≪あああああああ!!!!!どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないよクソったれな運命が死ねぇぇぇぇっ!≫
(こうなったのは運命さんじゃなくてガリィちゃんの所為だと思うんですけど⦅名推理⦆)
(そうだよ⦅便乗⦆)
そしてキャロルに光が移動するという事は、ガリィを守るものが無くなる事と同義である。既に彼女の身体は破壊の嵐に晒され、崩壊し始めていた。なお、副音声⦅ガリィの脳内音声⦆は酷いものであったが表には出していないのでセーフである⦅強弁⦆
「やめろガリィ!すぐにこの光を戻――待て、次は何を仕出かすつもりだ!?」
「えっ? ガリィの中の想い出、全部使ってこれを抑え込むんですけど?」
「なっ……!? この大馬鹿者!ミカならばまだしもお前がそんな事をすれば瞬時に弾け飛ぶに決まっているだろう!?」
「いえいえ、案外いけるかもしれませんよ♪ と、いう事でいきまーす☆」
≪ああああああやりたくないやりたくないぃぃぃぃっ!!! マスターがこう言うって事はガリィは確実に生き残れないって事じゃないのぉぉぉぉ!!! クソクソクソクソ!こうなったらせめてマスターの記憶に永遠に残るようガリィの事を刻み付けるしかない……!!!≫
(なんか怖い事言い始めたんですけど……⦅ドン引き⦆)
(ガリィちゃんはキャロルちゃんの事が大好きなんだなぁ⦅白目⦆)
(まーた変な事始めなきゃいいけど……)
ガリィが始めた事……それは自身の中に蓄積された無限に等しい想い出を使い、この爆発を抑え込む事だった。
後はガリィの耐久力でどこまで耐えられるのか……そこが軍師が考える勝負所であった。
「ま、待てっ!やめろガリィ! その想い出を私に渡せ!私ならお前より爆発を抑え込める可能性が高い!」
「――ねぇ、マスター……ガリィはマスターと……キャロルと一緒にいれて幸せでした」
(コイツ……! キャロルちゃんの正論を無視して自爆する気だ……!⦅戦慄⦆)
(まあ、ここに飛び込んだ時点でどう足掻いても死ぬのはほぼ確定してるからね仕方ないね⦅悲しみ⦆)
(いや、違う……この人形、ワンチャン生き残った後の事を考えてやがる!!⦅名推理⦆)
なお、この時ガリィが考えていた事は三つ……キャロルを全力で守る事、キャロルの記憶に自身の姿を刻み付ける事、そしてワンチャン生き残った後自身の評価を高める事、である⦅呆れ⦆
この局面での最善手は間違いなくキャロルに想い出を譲渡する事なのだが、それでは奇跡的に生き残れたとしてもガリィの戦後の行き先がゴミ箱になってしまう。
なのでガリィは自爆に等しい選択をし、更にワンチャン生き残る事に賭けたのである。
「な、何を言っている、こんな時に冗談は止せ……や、やめろと言っているこれは命令だ!!」
「……マスたーはこれカら、あのコ達と同じ時ヲ生きテ行くンです。だから、同ジ時間を歩めナいガリィはこコでさよナらです」
≪残された時間でガリィの存在を刻めばもう一度新しいガリィを作ろうなんて事は思わないはず!!そうすればアタシは永遠にマスターの中で生き続け――ってふざけるな!!!せっかくここまで来たのに!薔薇色の未来は目の前なのにどうしてアタシが退場しなきゃならないのよ!⦅憤怒⦆ クソ、クソクソクソクソっ石に噛りついてでも絶対に生き残ってやる!!!クソったれな運命になんてガリィは負けないんだからぁぁぁ!!!≫
(えぇ……⦅困惑⦆)
(これは酷い⦅真顔⦆)
(ここで大人しく死んだ方が世界のためになるんじゃ……)
ここでガリィが死ぬ事が世界の為になるのかは分からないが、何処かの局長さんや何処かのお爺さん⦅今後の被害者担当予定⦆などにとってはここでガリィが消える事は非常にありがたい事だろう。
「待て……待って!!! お、お願い……私を一人にしないで!」
「そんナ顔ヲしてちゃダメですッてバ……マスターにはコれかラ長い人生が待っテいるんデすカラ、もっト凛としテくださいマシ♪」
≪ああああもうマスターの可愛い可愛い可愛い⦅強調⦆声も聞こえなくなっちゃったぁぁぁぁっ!!! もう神様でもなんでもいいからガリィを助けてついでにアタシがゴミ箱に行かなくて済むように皆の記憶を消しなさいよぉぉぉぉ!!!!⦅発狂⦆≫
(しれっと皆の記憶を消そうとしている件について)
(というかガリィちゃんの貧弱なボディでよくここまでもってるね)
(人工知能が傷ついても動いてるくらいだから、文字通り消滅するまで想い出を注ぎ込めるんじゃね?⦅適当⦆)
ガリィの身体が崩壊して行くにつれ、獅子機の周りに展開されていく氷の檻……その強度はこれまでのガリィの盾と比べるのもおこがましい程の強度を誇っていた。
「あっ、あああああああっ!! い、嫌だ嫌だ嫌だ行かないで……!!!」
「……ありがとう、キャロル……そして……さよ、うなら……」
≪そして絶対絶対絶対にまた会いましょうねマスターぁぁぁぁぁっ!!!!! ≫
(なんだか本当に生き残りそうな気がしてきたんですけど⦅恐怖⦆)
(マジでパーツの欠片からでも復活するんじゃね?⦅戦慄⦆)
(やめろよ縁起でもない!!)
既にガリィの身体はほとんどの機能が停止し、最早動いている事が奇跡のような状態だった。それでもキャロルは必死にガリィを繋ぎ止めようと声を上げるのだがガリィにその声は届いておらず、そして……。
「クソったれな運命メ……ざまあミロ……この勝負アタシの……アタシ達の勝ちヨ……!」
≪最後に足掻きやがってクソが!だけどアタシは絶対に生き残ってやるんだから覚悟していなさいよだいたいガリィだけが悪いみたいに言われてるけどむしろここまで盛り上がったのはガリィのお陰でしょうが!それを分からないゴリラ女達はぬくぬくとシャトーへ避難ですって?……ふざけるな!本来ならか弱いアタシじゃなくてアンタ達みたいな戦うしか能が無いゴリラがマスターを助けに行くべきでしょうが!⦅憤怒⦆ あのゴリラ達はきっとガリィを失う事が世界にとってどれだけの損失か分か――≫
(う る さ い )
(自業自得としか言い様がないんだよなぁ……⦅遠い目⦆)
(それでは皆さんこれにてガリィ一行の物語は終幕でございます! また何処かでお会いできましたらその時は是非ご贔屓の程よろしくお願い致します!⦅諦め⦆)
ガリィが脳内で喚き続ける中……遂に獅子機に蓄えられたエネルギーが限界を迎え、爆炎と閃光が周囲を包み込んだ。
ちなみにガリィはぐだぐだ言っているが、そもそも彼女がいらん事をしなければクソったれな運命に完全勝利できていたのは確かな模様⦅悲しみ⦆
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「キャロルちゃん!ガリィちゃん!? は、早く二人を助けに行かないと――っ!?」
獅子機が限界を迎える僅かに前……響はその場から避難する事もせず、キャロル達の救援に向かおうと必死で嵐の中を進んでいた。
しかし無情にも時間切れを迎え獅子機が爆発……近場にいた響はそれに巻き込まれてしまう。
「……あれっ? 痛く、ない……?」
その凄まじい衝撃に思わず目を瞑ってしまう響……しかし何故か、覚悟していた衝撃が彼女を襲う事は無く、不思議に思った彼女が目を開けるとそこには……。
「響君の救援には間に合ったが……すまない、キャロル君達の方は間に合わなかったようだ」
「――し、師匠!?」
響の目の前……彼女を庇うようにそこに立っていたのは風鳴弦十郎、S.O.N.G.司令を努める彼が少女達を守るために駆け付けたのだった。
「友里、藤尭! 爆発はどうなった!? 二次被害は!?」
『爆発の規模、想定より千分の一以下に収まっています。二次被害も確認できてはいません』
『爆心地周囲には何か光のようなものが舞っています。恐らくあの氷が砕けた欠片だと思われますが……』
「そうか……! キャロル君達がなんとか抑え込んでくれたようだな」
突然の登場に驚愕する響を余所に弦十郎は司令室へと通信を繋ぎ、被害の確認を始める。
その結果……どうやら被害はこの無人島内だけに収まっているようで、それを聞いた弦十郎もとりあえずは胸を撫で下ろすのだった。
「そ、そうだキャロルちゃん! まだキャロルちゃんとガリィちゃんがあそこにいるんです!早く助けに行かないと……!」
「ああ、分かっている。 少々煙が燻っているがいけるか、響君?」
「はいっ! 勿論です!!!」
被害の確認を終えた弦十郎は響と共に、煙が立ち込める中突入する事を決意する。二人の目的は勿論キャロルとガリィの救助……そのために最強の主従が動き始めるのだった。
「まずはこの厄介な煙を吹き飛ばすぞ響君! はあああああっ!!!!」
「はい師匠! うおぉぉぉぉぉーっ!!!」
まず二人は目の前の煙を拳圧で吹き飛ばし、視界を確保する事に成功する。
なお、シンフォギアを纏っている響はともかく弦十郎は唯の人間のはずなのだが……海を走って来た事もそうだが、相変わらず無茶苦茶な男である⦅遠い目⦆
「よし、爆心地へと向かうぞ! 辛いだろうが、いけるか?」
「っ、はいっ!」
痛む身体に鞭を打ち、弦十郎と響は爆発の中心部へと駆けて行く。
そこで二人が目にしたものは……。
「あああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!」
「っ!? キャロルちゃ――」
「っ!? 彼女は無事だったが……くそっ、なんという事だ!」
二人の視線の先にはナニカの胴体を抱え泣き叫ぶ少女……キャロルの姿が映っていた。
そしてガリィの姿は何処にも……いや、キャロルが抱えているナニカとは、まさか……。
「立花ーっ!」
「マスター!」
無慈悲な現実を目の当たりにした二人が呆然と立ち尽くす中、シャトーから帰還した仲間達が続々と合流していた。
そして彼女達も……その救いの無い状況を見せ付けられた。
「――おい……あの馬鹿人形は何処だよ? もっ、もしかして逃げちまったのか!? なぁ、そうなんだろおっさん!!!」
「……ガリィ君は恐らく、身を挺して主を守ったのだろう。 だが、その代償は大きかったという事だ……!」
「頭部と四肢を全て失いながらも主を守り切るとは……」
「――あっ、あはははは……! な、何を言っているんデスか司令さんは!? ガリィは何処にもいないじゃないデスか!?」
「――さ、寒い……怖い……!」
「調、貴方大丈夫なの!?」
クリスと切歌は現実を受け入れられず、そして調は受け入れてしまったが故に恐怖に怯えていた。一見冷静に見える大人組も表情には動揺が浮かんでおり、重苦しい何かが場の空気を支配していた。
「うわああああああああああああっっっ!!!!!!」
「マス、ター……」
「そんな……ガリィちゃんが」
そして動く事ができないのはオートスコアラーの二体も同様だった。主の聞いた事が無い悲痛な声、そして今にも崩れ落ちそうな胴体だけの姿へと変わり果てた仲間の姿を見せられたレイアとファラは、その光景を呆然と見つめていた。
「た、助けて――誰か……ガリィを、ガリィを助けて……!」
誰もが見つめる事しかできない中、キャロルは虚げな表情で手を伸ばす。
その光景は奇しくも処刑台に送られた父を見送った時と同じ……そしてあの時と同じく彼女に救いの手を差し伸べる者はおらず、彼女は二度目の喪失を――
「諦めないで!!!」
「――――えっ……?」
しかし今、過去とは一つ違う点があった。それは……。
「立花、響……?」
「諦めるには早いよキャロルちゃん! みんなでガリィちゃんを助けるんだ!」
ここには彼女が……立花響がいた。
冷え切っていた手は響の両の手に包まれ、再び熱を取り戻す。
そして……彼女達にとって大切なものを取り戻すための、最後の戦いが始まろうとしていた。
これは間違いなく主人公⦅確信⦆
というか読者さん全員⦅強調⦆に愛される⦅強弁⦆ガリィが死んでしまうというクソ展開…これは低評価不可避やろなぁ⦅白目⦆
後1、2話で本編は終わり、その後は後日談を長々と書いて行きたいと思います。
私はねぇ…GX編の後日談を書きたくてこの小説を書き始めたんだよ!⦅唐突なカミングアウト⦆
次回も読んで頂ければ嬉しいです。