ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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GX編 後日談 その三です。

今回はガリィの一日についてです。




GX編 後日談 その三

 

 

≪深夜でも店が開いてるなんて、最近は便利になったわよねぇ⦅しみじみ⦆≫

 

(そうだね~)

(さてと、二人の弁当を作りますか!)

(味見は任せろ~!)

 

 午前四時三十分、本部の夜間待機任務を終えたガリィは自宅へと戻っていた。

 彼女の一日のはここから始まるのだが……今回はその一日に密着してみよう。

 

≪ふふ、間抜けな顔で熟睡しちゃって♪ ガリィは働いてたのに暢気な事ねぇ⦅半ギレ⦆≫

 

(一瞬で不機嫌になるのやめて!)

【働いてたって貴方……同じ夜勤の藤尭君と喋ってただけじゃない】

(しかも、後半は飽きてガリィさんと交代してたしさぁ……)

 

≪アンタ達うっさい! いいから早くガキどもの弁当を作るわよ!≫

 

【はいはい、分かったわよ】

(は~い)

(今日は肉中心だから切歌ちゃんが喜びそうだね)

 

 帰宅してからまずガリィが行う事は、学園に通う同居人二人の弁当を作る事である。

 これは二人の世話係である彼女の仕事であり、ガリィはこの作業を休日以外は毎日行っているのだ。

 

 

 

 -  一時間半後  -

 

 

「ほら、起きなさい。 朝のランニング、行くんでしょ?」

 

「……おはよう、ガリィ――くんくん、いい匂い……」

 

「はいはいおはようさん。 朝ご飯できてるから早く済まして来なさいな」

 

「うん、分かった」

 

【調ちゃんは寝起きが良いのよねぇ……調ちゃんは】

(問題はもう一人、だね)

(今日は何分かかるかなぁ……⦅遠い目⦆)

 

 それからおよそ一時間半後の午前六時……ガリィはまず同居人である月読調を起床させる事に成功する。

 彼女は寝起きが良いため、少し身体を揺らせば起きてくれるのでガリィ的には大助かりであった。

 しかし、問題はここから……もう一人の同居人の存在である。

 

「起きなさい、切歌。 朝ご飯出来てるわよ」

 

「……」

 

(し、死んでる……)

【この程度じゃ起きないのはとっくに把握済みよ。 勝負はここからなんだから】

 

「……起きなさぁぁぁぁぁい!」

 

「……」

 

(今日もダメみたいですね⦅諦め⦆)

(これは実力行使不可避⦅悲しみ⦆)

 

 もう一人の同居人である暁切歌……彼女は調と違い、寝起きが最悪だったのである。

 そして十分後……結局今日もガリィは実力行使に頼る事になり、部屋に『デェェェェェェェス!?』という悲鳴が鳴り響くのであった。

 

 

 

「いただきます」

 

「おいしそうデース♪」

 

「こら、時間はあるんだからゆっくり食べなさいな。 昨日みたいに喉詰まらせるんじゃないわよ」

 

「了解デース♪」

 

「ガリィは私達が出た後、今日も本部に行くの?」

 

「ええ、そうよ。 マリアが戦闘以外で役に立たない所為でガリィが駆り出されてるってわけ、お分かりかしら?⦅半ギレ⦆」

 

(リンカーの生成、難しいみたいだねぇ)

(ウェル博士に聞こうにも、チップを盗まれた事にお冠で話にならないみたいだし……⦅悲しみ⦆)

【今の所、あたし達みたいな敵が現れていない事は不幸中の幸いね】

 

 それから二人は早朝ランニングへと出掛け帰宅後にシャワーを浴びると、ようやく朝食の時間である。

 ちなみに本部にはマリアが待機しているのだが、リンカーの残量が心許ない影響で彼女は戦闘が発生する事件以外では出撃できない状態になっている。

 つまりその穴を埋めるのがガリィという存在であり、彼女は現在マリアとコンビを組んでいる状態だった。

 

「ガリィがいてくれたら、私達も安心だね切ちゃん⦅本心⦆」

 

「そうデスよ! ガリィ達が味方になってくれて本当に良かったのデス!⦅本心⦆」

 

「――なによアンタ達分かってるじゃない♪ やっぱりあのゴリラ女共とは違うわね☆ あいつらってば口を開けばサボるなサボるなって……仕方ないでしょ待機してるの暇なんだから!あおいちゃんとヤサ男⦅藤尭⦆と少し遊ぶくらい構わないでしょうが!⦅憤怒⦆」

 

(遊ぶなら他人を巻き込まず一人で遊ぼう、なっ!⦅正論⦆)

(S.O.N.G.に来てからオペレーターの二人と急速に仲良くなってるよね、夜勤で一緒な事が多いから)

【あの二人、相当頭が良いし話してて楽しいのよ】

 

 こうして和やかに⦅強弁⦆団欒の時間は過ぎていく。そしてその後、二人は荷物の最終チェックをし、そして……。

 

 

「行って来ます」

 

「行って来まース!……ちなみに今日の夕ご飯のメニューはなんデスか?」

 

 

「は? そうねぇ……今日はカレーでいいでしょ⦅適当⦆ それじゃ今日も頑張って勉強して来なさい、いいわね?」

 

 

「「はーい!」」

 

(気を付けてね~!)

【こうしてると世話焼きのお姉さんにしか見えないのにね】

(この二人には優しいからね、この二人には⦅強調⦆)

 

 現在は夏季休暇の真っ最中なのだが、キャロル陣営との戦いで学園を休みがちだった装者達はその分を埋める為、今日も学園へと学びに行くのである。

 そして残されたガリィはこの後、朝食の後片付けを済ませ再びS.O.N.G.仮設本部に戻るのだが……。

 

 

≪あっ、このゲーム今日発売だったのね。 エルフナインと遊ぶのに丁度いいし、今買っちゃいましょうか≫

 

(前はエルフナインちゃんと遊ぶためだけにゲーム機二台買っちゃうし、相変わらず金銭感覚が緩いっすね)

【この子のプレイスタイル、最初は普通なんだけど途中から酷いのよねぇ⦅呆れ⦆】

(妨害するのに夢中になるからね、高笑いしながら⦅遠い目⦆)

 

 その途中、寄り道するのは日常茶飯事であり遅刻常習犯なのがガリィであった。なお、怒られても反省は一切しない模様⦅呆れ⦆

 

 

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「遅刻だぞー」

 

「うっさいヤサ男、このゲーム買ってたんだから仕方ないでしょうが⦅暴君⦆ これ以上文句言うならアンタには遊ばせてあげないんだからね」

 

「夜勤明けにゲームはちょっとキツいな……という事で俺は帰らせてもらうから、後は頑張ってな」

 

「はいはいお疲れ様。 それじゃアタシはエルフナインの所にでも行こうかしらね~♪」

 

 午前九時三十五分……五分遅れでガリィは司令室に到着、これから夕方まで待機任務及びエルフナインの補佐の仕事に就く。

 とは言ってもS.O.N.G.が駆り出される程の大事件はそうそう起こらないため、実質エルフナインの補佐がメインである。

 

「おはよ、エルフナイン。 今日は新しいゲーム買って来たわよ♪ 後で遊びましょうね☆」

 

「……ちなみに、ジャンルは何ですか?」

 

「ふふっ、それはね……国民的レースゲームの最新作よ! もちろん妨害アリアリのね!⦅威風堂々⦆」

 

「チェンジでお願いします⦅即答⦆」

 

「なにぃ~、聞こえんなぁ~☆」

 

(逃がさん、お前だけは……⦅迫真⦆)

(その内キャロルちゃんに告げ口されるな⦅確信⦆)

 

 事件が起こらなかった場合、こんな感じでエルフナインをからかいながら一日を過ごす。なお、飽きたらガリィさんと交代する模様⦅自己中⦆

 

「ああもう人の邪魔ばっかり! 貴方性格悪すぎない!?⦅最下位⦆」

 

「アハハハハハハ! 負け犬の遠吠えが気持ちいいわねぇ~♪⦅ブービー⦆」

 

「マリアさんの犠牲を、ボクは決して忘れません……!⦅一位⦆」

 

(緑甲羅は普通に当てるしバナナの皮を的確な位置に置くし……妨害に関しては本当に天才やな⦅呆れ⦆)

【この子って絶対に敵に回したくない存在よね、まあ味方に置いても厄介なんだけど】

(戦場を掻き乱しまくったあげく、最後だけはきっちり締めるのが厄介だよねぇ⦅遠い目⦆)

 

 ちなみに研究室に頻繁に訪れるマリアもガリィの暇潰しに巻き込まれるのだが、その場合は大体マリアが酷い目に遭う模様⦅悲しみ⦆

 戦闘では勝てない分、ここで鬱憤を晴らすガリィであった⦅呆れ⦆

 

 

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「ガリィはいる!? 海難事故が発生して船内に取り残されている人がいるみたいなの、貴方の力が必要よ!」

 

「あっそう⦅無関心⦆」

 

「この子は本当に……!⦅半ギレ⦆ いいから来なさい!」

 

「はいはい分かったわよ……はぁ、面倒臭……」

 

「が、頑張ってねガリィ!」

 

(エルフナインちゃんに応援されてるよやる気出してほら!)

(多分キャロルちゃんじゃなきゃ無理だゾ)

【やる気を出さないくらいで丁度いいんじゃない? この子がやる気を出した方が厄介だし】

 

 正午を回った頃、今日は珍しく大事件が発生しS.O.N.G.に救助要請が届いたようだ。しかもどうやら起こったのは海難事故のようであり、ガリィの出番が来たらしい。

 

 

「既に多数の死傷者が出てしまっているようだが、船内に生存者が取り残されている可能性が高い。 時間との勝負になるが……頼むぞ、ガリィ君」

 

「現場到着まであと三百秒、ガリィちゃんは出撃準備を!」

 

「はいはーい、救助用の酸素マスクは持ったしいつでも行けるわよ~」

 

(この温度差よ⦅遠い目⦆)

(緊張するよりはいいからセーフ)

【ま、あたし達にとっては散歩するのと変わらないしね】

 

 緊迫するスタッフに対し、ガリィはいつも通り緩い雰囲気を醸し出していた。

 しかしここにいるのは仕事についてだけは頼りになるガリィ・トゥーマーンである、なんだかんだで上手くやるだろう⦅希望的観測⦆

 

「死体は後回しでいいのよね?」

 

「ああ、生存者の発見及び救助を最優先に頼む」

 

「はいはい、それじゃ行ってくるわね~♪」

 

 こうしてガリィは海中に潜り、船内へと侵入して行く。果たして生存者は見つかるのだろうか……。

 

 

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「皆さん、諦めないでください! 必ず救助が来てくれるはずです!」

 

「そんな事言ったって……」

 

「もう無理よ、私達はここで……」

 

 海水が侵入した船内に残された僅かなエアポケット、そこに取り残された人間達は一人を除いて絶望していた。

 

「大丈夫、我が国の救助隊は優秀ですから!きっとすぐに来てくれます!

 

「……暗闇の中、もう十五分は待ってるよな? でも、いくら大声を出しても反応はないし……これじゃあもう……」

 

 絶望する乗客達の中、一人彼等を勇気づけ続ける青年……彼はこの船の船員だった。

 船長、副船長、そして仲間達が我先へと逃げる中……彼は死地へと退き返し八人の乗客を連れ、なんとかこの空間へと逃げ込む事に成功したのだが……彼等を待っていたのは迫り来る死への恐怖であった。

 

「寒い……寒いよぉ」

 

「……(皆、恐怖と寒さで限界が近い……諦めるしかないのか、俺達は水の中で誰にも看取られず死んでいくしかないのか……?)」

 

 気丈に振る舞っている彼だが、もちろん恐怖を感じていないわけでは無く限界寸前だった。

 このまま自分達は水の中で死ぬのか……そんな暗い気持ちに彼は遂に限界を迎え――

 

 

 

「は~い、生存者はっけーん♪ いちにぃさん……九人ね、それじゃさっさと救助しましょうか☆」

 

 

 

「――――えっ?」

 

 

(よしっ、九人も生きてた!)

【時間との勝負よ、急ぎましょう】

 

 しかし、天は彼等を見放さなかったようだ。水音と共に暗闇の中に響いた少女の声……それは九人の中の誰の声でも無く、それはつまり……。

 

 

「明かりをつけて~、足場を作ってっと♪ アンタ達、ちょっと冷たいけど水の中よりはマシなんだから我慢しなさいよね~」

 

 

「君は、まさか……」

 

 

 暗闇が明かりに照らされ、声の主の姿が浮かび上がる。そこにいたのは真っ白な顔をした中学生くらいの少女が一人、自信に満ちた表情で彼等を見つめていた。

 

 

「ほら、座って座って。 まずは酸素マスクとボンベね、順番に二人ずつ運ぶから残りは待ってなさいな」

 

 

「これ、氷で出来てるのか……?」

 

 呆然とする生存者達を余所にテキパキと作業を進める少女。彼女は全員に酸素マスクを渡し取り付け方を説明。それが終わると手近にいた二人を抱え、足早に水中へと戻っていく。

 

 

「……(あの子今、酸素マスクしてなかったよな?)」

 

 

「……(だ、大丈夫なのかしら? ちゃんと戻って来てくれるの……?)」

 

 

 その光景に様々な思いを抱く生存者達だが……。

 

 

「はい次、行くわよ~」

 

 

「っ!?(嘘だろ!? 早過ぎる!)」

 

 

 それから僅か数分後に少女は帰還し、再び水中へ潜っていく。

 

 

「……(俺は、夢を見ているのか……?)」

 

 

 そして十五分後……この場にいた生存者全員が地上へと生還。最後に運ばれた船員の青年は生還後、思わず少女にこう話し掛けた。

 

 

「あ、ありがとう……だけど君は一体……?」

 

 

 その問いに対し、少女は悪戯な笑みを浮かべ答える。

 

 

「ん? あ~、そうねぇ……アタシは魔法使い、元悪の組織の魔法使いよ♪」

 

 

「魔法、使い……?」

 

 

 再び海へ潜る彼女の後姿を見つめながら、彼はその言葉と姿を胸に刻む。それから彼と少女が再会する事は無かったが、彼はこの時の記憶を死ぬまで忘れる事は無かった。

 

 

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「生存者三十二名、命に別状がない事を確認した。 よくやってくれたな、ガリィ君」

 

「あっそう⦅無関心⦆ それよりガキどもの夕ご飯の材料買いに行きたいんだけど……もう帰っていい?」

 

「あ、ああ……それと申し訳ないが、ガリィ君という存在を世間に公表するわけには行かなくてな。 今回の功績については――」

 

「丁度いいわ、面倒臭いからアタシはパスって事でいいわよ。 それじゃ~ね~♪」

 

(二人の夕飯の方が百倍大事だからね、仕方ないね)

【あの子達、本当に嬉しそうに食べてくれるものね】

(今日はカレーだ~!⦅歓喜⦆)

 

 同居人の夕食を作るため、地点登録しておいた転移結晶でガリィは姿を消した。

 その表情は多くの死体を見てきたにも関わらず、全くいつも通りである。

 

「その、こういう言い方は良くないのかもしれませんけど……あの子、とんでもない拾い物でしたね」

 

「ああ、災害への対応力、他者の感情を理解する能力、そして強固な精神力……彼女は既に、我々にとって無くてはならない存在になっているという事なのだろうな」

 

「ガリィは響さん達の力を借りたとはいえ、酷い精神状態だったキャロルを正気に戻して見せた人形なんです。 それはきっと、ガリィ以外には不可能な事だったとボクは思っています」

 

「そうだな。 もしも今後、我々に敵対する勢力が現れた時……俺は彼等に同情してしまうかもしれん。 何故なら――」

 

 ガリィが去った後、司令室のメンバーはガリィについて話をしているようだが、その内容は本人が聞いたら間違いなく調子に乗る内容である。

 その中でもガリィを一番高く評価していると言っても過言では無い弦十郎は、今後現れるかもしれない敵に同情に近い感情を抱き、そして……。

 

 

 

「ガリィ・トゥーマーン……彼女を敵に回す恐ろしさを、身を持って知らされる事になるのだろうからな」

 

 

 

 何処かの局長に今すぐ伝えてあげてほしい台詞を口にした。

 なお、何処かの局長はガリィどころかキャロルすら全く警戒していない模様⦅白目⦆

 

 

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「はい完成♪ おまちどう様でした☆」

 

「いい匂い……早く食べよう?」

 

「こっちはとっくに準備万端なのデス!」

 

(ちょっと待って、そろそろ……)

【あの子が来るんじゃない?】

 

 午後六時半……ガリィは今日あった事件の事など既に忘れ、カレーを完成させていた。

 その後ガリィは三人分のカレーを準備し、テーブルへと腰を落ち着けたのだが……あれ、ガリィの分は不要なのに何故三人分なのだろうか?

 

 

「邪魔するぞ~。 おっ、今日はカレーか」

 

 

 その答えは雪音クリス、彼女が訪れた事で容易に分かるだろう。そう、残りの一皿は彼女の分だったのである。

 

 

「アンタのだけ超辛口にしておいてあげ――って冗談よ冗談、そんなに怒らないでもいいじゃない」

 

「クリス先輩、こんばんわ」

 

「こんばんわデース、今日はちょっと遅かったデスね?」

 

(いつもはもっと早いよね?)

(珍しいな)

 

 実はクリス、一度夕食をこの家で食べてから何故か毎日通い詰めるようになっていたのである。

 普段は犬猿の仲であるガリィもこの件については何も言わなかったため、それは今日まで続いているようだ。

 

「あの馬鹿に勉強教えてた所為で遅くなったんだよ……というか馬鹿と親友も来たいって言ってたぞ、結局は迷惑だからって諦めてたけど」

 

「あら、そうなの。 今日はカレーだからあと四人分くらいは余裕なんだけど……せっかくだから呼んであげましょうか☆」

 

(あ、これは全員来る⦅未来予知⦆)

【いやいや、翼ちゃんとマリアちゃんは本部待機でしょう? 流石に無理じゃない?】

(OTONAが気を利かすに一票!)

 

 どうやら今日は大人数での夕食となるようだ。そして……。

 

 

「お邪魔しまーす!」

 

「こんばんわ、ガリィちゃん。 今日、お仕事で大活躍だって聞いたよ」

 

「すまない、迷惑だとは思ったのだが……」

 

「皆の分のケーキ、買って来たから許してくれない?」

 

 

「いや、別に人数はいいんだけど……アンタ達ほんとに仲良いわねぇ⦅ジト目⦆」

 

 

(皆仲良くなったよねぇ)

【翼ちゃんと響ちゃん以外、最初は敵だったんでしょ?】

(うん、そうだよ~)

 

 声達の予想通り、本部に待機していた翼とマリアまで参戦し装者全員が参加する事になったのである。恐らく話を聞いた弦十郎が気を利かしたのだろう。

 

「師匠から聞いたんだけど、今日はガリィちゃん大活躍だったんだって! そうだよね、ガリィちゃん!?」

 

「今日……? う~ん……あっ、分かった!美味しいカレーを作った事ね!?」

 

「嘘でしょう!? あんなに大事件だったのに貴方覚えて無いの!?」

 

(えぇ……⦅困惑⦆)

(興味がない事はすぐ忘れちゃうからね、仕方ないね⦅悲しみ⦆)

(認知症かな?)

 

 ちなみにガリィは今日の事はもう忘れていた。彼女にとって、今日の事件が夕食の献立以下だという事が判明した瞬間である……ま、まあ仕事はきちんとこなすので問題は無いだろう、多分……⦅遠い目⦆

 

 

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「おやすみなさい」

 

「むにゃむにゃ……」

 

「おやすみなさい☆ それじゃアタシはヤサ男とゲーム……じゃなくて夜勤に行ってくるわね~♪」

 

 賑やかな食事も終わり、気付けば午後十時半……二人の就寝を確認したガリィは一人、待機任務のため家を出た。

 

≪……あ、駄目だわこれ。 家を出た瞬間に面倒臭くなっちゃった……というわけで交代ね♪≫

 

【本当に自由ね貴方……いいわよ、交代してあげる】

(天使かな?)

(ガリィさんが加入してくれて本当に良かった……)

 

 しかし家を出た瞬間、ガリィのやる気はゼロになった。故に今日はガリィさんに仕事を押し付け、自分は中でダラダラするようだ。

 

「こんばんわ、藤尭君」

 

「十分前に来たって事は……もしかしてガリィさんか?」

 

「ええ、そうよ。 突然やる気が無くなったんですって」

 

「えぇ……⦅困惑⦆」

 

≪そんな日もたまにはあるわよね~♪≫

(たまには……?⦅疑いの目⦆)

(三日に一回くらいだよね?)

 

 こうしてガリィさんは朝方まで本部に待機し、そしてまた朝食の準備のため家に戻り、以下繰り返しである。

 これがガリィの一日であり、人形という強みを最大限に生かしたブラック勤務であった。

 

 

「ガリィは暇よヤサ男、という事でゲームするから付き合いなさい⦅暴君⦆」

 

 

「と、突然切り替わるなよ驚くだろ!?」

 

 

(えぇ……⦅困惑⦆)

【……もう慣れたわ、今となってはこっちの方が落ち着くしね⦅遠い目⦆】

(ガリィさん、可哀想……)

 

 ただし本人はそれなりに満喫しているので問題は無く、なんだかんだで馴染んでいるガリィであった(キャロル欠乏症が発病した時を除く)

 

 





次回・何処かの局長の慢心 他⦅予定⦆

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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