ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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GX編 後日談 その七です。

祝、キャロルちゃん実装! なおガリィはお預けな模様⦅悲しみ⦆




GX編 後日談 その七

 

 

「もう! いい加減に自分で歩きなさいよ!」

 

「嫌よ、面倒臭い⦅即答⦆」

 

「ガリィ、お前と言う奴は本当に……⦅呆れ⦆」

 

「うわぁ~、大きいねぇ~!」

 

「豪華客船の名に偽り無しって感じデス!」

 

(ギアを纏った二人は力持ちだなぁ⦅他人事⦆)

【この子の悪い所が見事に出たわねぇ】

(ここはガリィさんが表に出れば解決なのでは?⦅名推理⦆)

【そんなの嫌に決まってるじゃない⦅満面の笑み⦆】

 

 警戒網が敷かれた先には、内部が無人と化した豪華客船が水に浮いていた。そこに到着した六人の装者と二体の人形……彼女達は調査のためにS.O.N.G.から派遣された人員である。

 

「ガリィ、大丈夫?」

 

「大丈夫じゃ無いに決まってるでしょ……いい、調? アタシはね、面倒臭いのが大っ嫌いなのよ!⦅威風堂々⦆」

 

「うん、知ってる⦅満面の笑み⦆」

 

(知ってた⦅呆れ⦆)

(むしろこの状況でやる気出してたら逆に警戒するよね)

(つまり今回は安心って事だな⦅逆理論⦆)

 

 ちなみにガリィは司令室からここまで宇宙人スタイルで引き摺られて来ているのだが……どうやら今回の件が面倒臭くなると確信しているらしく、やる気が全く出ないようだ。

 

「おいそこのバカ二人! こんなとこで漫才すんな、置いて行くぞ?」

 

「置いていくゾ~?」

 

「うっさいわね馬鹿クリス! そんなにやる気があるならさっさと一人で調査して来なさいよ!⦅八つ当たり⦆」

 

(一人で調査は⦅死亡フラグ的に⦆まずいですよ!)

【こんな奴等と一緒にいられるか!私は一人で行動する! って感じかしら?】

(誰だよガリィさんに変な事教えたの!⦅半ギレ⦆)

 

 その時のやる気によって有能から役立たずまで幅広く変貌する、それがガリィ・トゥーマーンを味方に引き入れた場合の扱いづらさであった。

 そして今日はどうやら役立たずの日である。この調子では恐らく、ミカの補給くらいしか仕事をしないだろう⦅呆れ⦆

 

「……おっさん、ここに怪物が一体いるんだけど退治していいか? いいよな?⦅憤怒⦆」

 

『抑えてくれクリス君。 ガリィ君もどうか頼む』

 

「あ~はいはい言われなくても分かってますぅ~。 調~、面倒臭いから連れてってほしいんだけど~♪」

 

「うん、いいよ」

 

(世話係が世話されてる……)

(調ちゃんが嬉しそうだからセーフ⦅謎理論⦆)

【この子、将来駄目な男に尽くしそうね⦅心配⦆】

 

 何故か嬉しそうな調に手を引かれながら船内へと侵入して行くガリィ。その表情は正に無気力、やる気ゼロであった。

 

 ……ちなみにここまで面倒臭いを連呼しているガリィだが、この後すぐに面倒臭い事件が起きる事を彼女はまだ知らない。原作知識があれば回避できたかもしれないのに……悲しいなぁ。

 

 

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「ここは……どうやら貨物室のようだな」

 

「今のところは異常無しだけど、ここはどうかしらね? 隠れる所も多そうな場所だし」

 

「それじゃ念入りに調べるとしまスか!」

 

 船内を捜索し、数カ所の調査を終えた装者達……彼女達が次に訪れたのは貨物室だった。

 

「はぁ~楽チン楽チン、響ちゃんは力持ちで羨ましいわね~♪」

 

「えへへ、それほどでもないよ~」

 

「……はぁ」

 

「クリス先輩、いつもみたいにツッコまないんですか?」

 

「……呆れて何も言う気が起きねーんだよ⦅ジト目⦆」

 

(クリスちゃんにまで見放されてる⦅悲しみ⦆)

(ちょっとガリィさん! 貴方しかこの状況をどうにかできる人はいないんですよ!?)

【……あたしし~らない、おやすみ~♪⦅狸寝入り⦆】

 

 ちなみにやる気ゼロのガリィは、なんと響に背負われて移動していた。どうやら余りのダルさに身体が歩く事を拒み、このような状態になっているようだ。

 この人形、複数人での任務になった途端にこの扱いづらさである。今後は単独任務だけやらせた方がいいのではないだろうか。

 

「薄暗いね……ちょ、ちょっと怖いかも……お化けが出そうな雰囲気だし……」

 

「臆するな立花。お前の背中には今、お化けよりも余程奇妙な人形が存在しているだろう?⦅煽り⦆」

 

「……はぁ? アタシはただの人形ですけど⦅半ギレ⦆ ケンカ売ってるなら響ちゃんが言い値で買うわよ⦅他力本願⦆」

 

「……一瞬怖いと思ったのデスけど、ガリィを見たら怖くなくなったのデス!⦅無意識の煽り⦆」

 

「マスターが言ってたゾ、ガリィは『おぞましいナニカ』だって!⦅無意識の煽り⦆」

 

(おぞましいナニカかぁ、流石キャロルちゃんはよく分かってるなぁ)

【全く否定できないのが笑えるわね~♪】

(人工知能で記憶と人格を保持→分かる  コアで記憶と人格を保持→完全におぞましいナニカ)

 

 貨物室の薄暗い雰囲気に寒気を感じかけた装者達……だったが、彼女達は響の背中でくつろぐ『おぞましいナニカ』を見て気を落ち着かせる事に成功した。

 まあぶっちゃけて言うと響の背中にいるのは幽霊なんか目じゃない程の不思議生物⦅?⦆であり、この状況で気を落ち着かせるのにもってこいの存在なのだ。

 

「ちょっと酷くないアンタ達……というか幽霊ならそこにいるじゃない、黒い風船みたいなの」

 

「っ!?――おいおい、マジかよ!?」

 

「とりあえずミカちゃ~ん、アタシの代わりにやっつけて――って言わなくてもよかったわね」

 

(速い⦅確信⦆)

(強い⦅確信⦆)

(勝ったな⦅確信⦆)

 

 周囲の酷い評価に落ち込んだ振りをするガリィだが、そんな事より幽霊である。なんと装者達の周囲には黒い風船のような怪物がふよふよと宙を舞っていたのだ。

 突然の事態に驚愕し、硬直する装者達。しかし、この状況で即座に動き出した人形が一体存在したのである。

 

「こいつら弱いゾ! アハハハハ!」

 

 高速で移動し怪物を次々と葬る人形……それはミカであった。装者達がその圧倒的な蹂躙劇を見つめる中、彼女はそのままの勢いで怪物を一掃したのである。

 

「はいお疲れ~♪ それでどうミカちゃん、感想は?」

 

「弱すぎて全然つまんなかったゾ!⦅威風堂々⦆」

 

「……今の現象は一体……? ミカの攻撃が通った以上、幽霊の類というわけでは無さそうだが……」

 

「それはまだ分からないわ。だけど少なくとも、怪物を見たって証言が嘘じゃないって事は確かなようね」

 

(怪物が弱いのかもしれないけどミカちゃんやばすぎぃ!)

【……私が知ってるミカちゃんより明らかにパワーアップしてる気がするんだけど……】

(それ、多分気の所為じゃないゾ⦅満面の笑み⦆)

 

 突如起きた怪奇現象について真面目に話し合う年長組。ミカがあっという間に全てを葬ってしまったので推測する材料は少ないのだが、攻撃が通った以上幽霊の類では無さそうだ。

 

「そうね~、この船で何かが起きてるのは間違いないわ……きゃ~ガリィこわ~い☆響ちゃん助けて~♪⦅他人事⦆」

 

「任せて! ガリィちゃんは私が戦って守るから!」

 

「はあ、その馬鹿人形を背中に乗せながらどうやって戦う気なんだよお前……⦅呆れ⦆」

 

「響さんが全力で戦ったら、ガリィ振り落とされそう……」

 

(う~んこの安定感)

(ここでビッキーに頼る所がガリィちゃんだよねぇ)

【響ちゃんは絶対に見捨てないものね、こんな残念な子でも⦅呆れ⦆】

 

 なお、その状況でもガリィは響の背中に乗ったままである。というか響はいざという時、ガリィを乗せたまま戦う気なのだろうか……。

 

「それより、次はどうするんデスか?」

 

「進むか、一旦退くか……私としては探索を続けるのがいいと思ってはいるが、マリアはどうだ?」

 

「このまま探索……と行きたい所だけど、まずは司令室に報告しましょうか。 ……こちらマリア、司令室聞こえますか?」

 

 怪物が現れたにも関わらず、緩い空気が流れる現場。そんな空気の中、真面目を保っている切歌、翼、マリアは司令室へと一旦連絡を取り、指示を仰ぐ事にしたようだが……。

 

『……』

 

「……繋がらない?」

 

「っ、通信妨害の類か? それとも先程の怪奇現象が原因で……?」

 

「――そうだ! ミカ、キャロルと連絡は取れまスか!?」

 

 どうやら何らかの妨害を受け、司令室との通信が取れなくなっているようだ。更に……。

 

「ン~? ……アタシの方も無理なんだゾ!」

 

「えぇ……⦅困惑⦆ なんだかキナ臭くなってきたわねぇ。はあ、めんどくさ……」

 

(キナ臭くなってきたならやる気出してホラ!)

(まあやる気出しても補給以外はあんまり役に立たないし……⦅悲しみ⦆)

(よわよわなガリィちゃんでもイグナイト無しの装者よりは戦力的に上だルルルルルォ!?)

 

 ミカの方もキャロルと連絡が取れなくなっているらしい。

 ……えっ、ガリィ? ガリィはもともとキャロルとの連絡手段を持って無いから問題外だゾ⦅悲しみ⦆

 

「外部との連絡手段を全て遮断されたか……ここは一旦退くのが無難か、それとも……」

 

「ここで退けば後でもっと面倒になる可能性だってあるだろ? だったらせめて原因くらいは突き止めねーと」

 

「戦力は十二分に揃っている……それならクリスの言う通りこのまま進む選択肢も悪く無い、か?」

 

 ガリィのテンションが底を突き破って更に下降して行く中、装者達は退くか進むかを議論していた。そしてその結果……。

 

 

「私達はこのまま探索を続行、ただしチーム分けはせず全員で行動する。いいな?」

 

「はいっ!」 「うぇ~い、好きにしたら~」

「はい」

「りょーかい」

「了解デス!」

「分かったゾ!」

 

「目的は怪奇現象の原因を突き止め、可能なら排除する事。 今後撤退の判断は翼が、もしも翼に何かアクシデントが起こった場合は私が務めるわ」

 

(翼さんとマリアさん、頼りになるぅー!)

(今のマリアさんパーフェクトやん無敵やん、反則やろこんなん⦅真顔⦆)

(イ、イグナイトモジュールが使えないから無敵じゃないし……⦅ずっと使えないとは言っていない⦆)

 

 このまま調査を続行する事に決定、更に指揮系統を年長組の二人が引き受ける事となった。

 実は翼とマリアの二人、キャロル達との戦いで心身ともに大きく成長した彼女達は戦後、リーダーシップを強く発揮するようになっていたのだ。

 

「立花、いざという時はその怠け者を弾除けにするといい。 なに、コアだけでも生き残るのだから心配は不要だろう⦅半ギレ⦆」

 

「この姿を見ればキャロルも分かってくれるだろうし、容赦はいらないわよ⦅半ギレ⦆」

 

「え、えぇっ!? そんな酷い事できないですよぉ~!」

 

「そーよそーよ! この血も涙もないゴリラ女共にもっと言ってやりなさいな!⦅便乗⦆」

 

(今日は一段と酷いっすね⦅白目⦆)

【全然やる気が出ないタイミングと重なったのね、きっと】

(いつもはガリィさんと交代してたから分からなかったけど、ここまで酷いのか⦅驚愕⦆)

 

 響の背中に隠れた上、更に響そのものを盾にしながら煽るガリィ……その卑怯すぎる行いに年長組の堪忍袋の緒は早くも千切れる寸前である。

 

「??? 翼とマリアはゴリラなのか!? すごいナ~、ゴリラは強いんだゾ~!⦅最大級の賛辞⦆」

 

「ちょっ、おまっ!? ちょっとこっち来い!⦅親切心⦆」

 

「……ミカ、ちょっと私達と向こうで遊んでよう、危ないし」

 

「ガリィに巻き込まれると碌な事にならないデスよ! だから早く避難するのデス!」

 

 ちなみに年少組とクリスは危険を察知してミカを救助、その後避難した模様。

 そしてこの後、翼とマリアに怒られるガリィだったが……。

 

 

「う、うぇ~ん! アタシはアタシなりに精一杯やってるのにぃ~、二人が虐める~!⦅嘘泣き⦆」

 

 

「よしよし、大丈夫だからね~。 翼さんマリアさん!いくらなんでも言いすぎです!」

 

「騙されるな立花! 背後でガリィが悪魔の笑みを……貴様ぁ!⦅憤怒⦆」

 

「落ち着いて翼! ガリィのペースに乗せられちゃ駄目よ!」

 

(⦅言い過ぎじゃ⦆ないです)

(ガリィさん、マジで交代できない?)

【戦闘に突入した場合はこの子が表にいた方が戦力的に上だし、もう少し様子を見ましょうか】

 

 いつもの汚い作戦で楽々乗り切った模様⦅遠い目⦆

 最近大きく評価が上がっていたガリィだが、まあ実際はこんなもんである⦅白目⦆

 

 

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「あの赤い人形、サンジェルマンが警戒するだけの事はあるワケダ」

 

「それに対して青い方は……何やってるの、あれ?」

 

「文字通り遊んでいるだけでしょう。赤い人形に戦闘を任せている事からも、青い人形は戦闘が本業では無さそうね」

 

 貨物室で騒ぐ装者達を監視する三対の瞳……彼女達はとある目的のために今回の事件を引き起こした黒幕であった。

 

「……装者達が動き出した。これでようやく私達も目的を果たせるというワケダ」

 

「目的のブツ以外にも、色々と持って行くんでしょ~?」

 

「ええ、私達の目的を悟らせないために」

 

 装者達が貨物室を去った事を確認し、目的の物を探し始める三人。実はここには彼女達の計画に必要不可欠な物が眠っており、捜索の失敗は許されないのだ。故に……。

 

「時間稼ぎとはいえ仕込みは万端、余裕を持って探せるというワケダ」

 

「もしかしたら死んじゃうかもしれないけど、どうせ今か先かの違いしか無いんだし~」

 

「二人共、無駄口を叩いている暇があるなら手を動かしなさい」

 

「あははっ、ごめんね~☆」

 

「サンジェルマンは少し固すぎるワケダ……」

 

 彼女達は時間稼ぎを仕込んでいた。それはいくら装者であっても回避するには困難な初見殺し……そう、 装者にとっては( ・・・・・・・)

 

「そういえばアレ、人形には効果無いんじゃないの?」

 

「……カリオストロ、そういう事はもっと早く指摘して欲しかったワケダ」

 

「問題は無いわ。 装者達を昏倒させれば残る戦力は赤い人形一体のみ、そうなれば撤退せざるをえないはずよ」

 

「あ~、確かにそうねぇ。 もー、せっかく面倒臭い連中を一掃できると思ったのにぃ~!」

 

「私達が加われば楽勝……だけど今はそれよりも、歯車を探すのが優先なワケダね」

 

「その通りよ、分かったら手を動かしなさい。カリオストロはホールの術式起動も忘れないでね」

 

 装者達の事は構わずに、目的の物を探す三人……そして十数分後、彼女達は大量の美術品と共に姿を消すのであった。

 

 

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「――本気でやっていいわよミカちゃん。 アタシはこの子達を守るけど、余裕があれば援護してあげる」

 

「分かったゾ!――ガリィ、もしかして怒ってるのカ?」

 

「……ちょーっとだけね。ほら、無駄口叩かないでさっさと片付けるわよ」

 

「うん! (ガリィ、結構本気で怒ってるゾ……)」

 

(なにが起きたのさ!?)

(装者達の呼吸に乱れは無し、という事は毒の類では無い……恐らく、精神に作用する何かではないかと)

【スフィンクスにツタンカーメン……なんとなく予想は付く組み合わせね】

 

 ガリィの背後には昏倒した六人の装者、隣にはミカ、そして前方には……。

 

「……」

 

 顔の無い巨大なスフィンクス……それが今にもガリィ達に飛び掛かろうとしていた。

 

「一回でダメなら、何回だって分解してやるゾ~!」

 

 その姿を見据えながらミカは即座にバーニング・メモリーを発動させる。その力はイグナイトモジュールにも引けを取らないミカの全力が今、スフィンクスに襲い掛かろうとしていた。

 

「復活した揚げ句に訳の分からない攻撃……全く面倒臭いにも程があるわね!」

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(これ、ツタンカーメンだしやっぱり呪い的なアレなのかなぁ?)

【恐らくそうでしょうね。パヴァリア光明結社……この状況でも出て来ないって事は本命は別なのかしらね】

 

 ミカが戦闘態勢に入った事を確認し、ガリィは装者達を背に仁王立ちの態勢を取る。そもそも何故こんな事になったのか……ここでは簡易的に語るとしよう。

 

 装者達、ホールに到着。顔無しスフィンクスを発見し戦闘に突入、程無くして撃破。

 ↓

 撃破したスフィンクスから霊魂のようなものが飛び出し、ツタンカーメンの仮面と同化。次の瞬間装者達が全員昏倒、ミカとガリィには影響無し。なお、この際にパヴァリア光明結社のものと思われる紋章を確認。

 ↓

 更に顔無しスフィンクスが復活。ガリィとミカは装者を守りながらの戦闘に突入。

 

 ここまでの流れを簡単に書くとこうである。そしてここに復活持ちの顔無しスフィンクスVSガリィが居れば実質無限に稼働するミカ、という長期戦待った無しの戦闘が開始されたのである。

 

 

「ガリィ~! こいつ弱いからアタシ飽きちゃったゾ!」

 

「まだ二分も経ってないでしょうが! その短時間で十回以上木端微塵にするアンタが異常なのよ!」

 

(ツタンカーメンの呪いは後世に誇張された迷信なはず……この世界では違うのでしょうか?)

(軍師~!早くしないとミカちゃんが――あっ、大丈夫だわこれ全然相手になってないや⦅遠い目⦆)

【あたしの知識と貴方の知識に差は無いわよ……つまりこれは、迷信を誇張させ実態を持たせた力。さっきのパヴァリアの残滓はこの術式を起動させた証だと思うわ】

 

 なお、その内容は当然の如くミカ無双であった⦅白目⦆

 復活する→次の瞬間にはミカが目の前に→どっかーん! このループが僅か二分で既に十回以上繰り返されているのである。この蹂躙劇にはスフィンクス君もトラウマ不可避⦅悲しみ⦆

 

 そして圧倒的な暴力でミカが無双している間に、ガリィ内部の解析班は正解に近付いていた。

 後はこの術式を解除させる方法を考えるだけなのだが……それが無理なら撤退も視野に入れなければいけないだろう。

 

「復活しても弱いままじゃつまんないゾ……どっかーん……⦅瞬殺⦆」

 

≪1.ツタンカーメンの仮面を砕く。 ただしこれは他の物に乗り移られる可能性がある上に何が起こるか分からないから微妙、次!≫

 

(2.装者達を連れて一時撤退。 安全を確保するにはこれが最善かも知れませんが、事態が悪化する可能性があるためこれも微妙です。できれば圧倒的優勢を得ているここで仕留めたいというのが本音ですね)

 

【3.術式を解除する。方法はいくつか考え付くけど……どれも確実性に欠ける上、この子という謎の存在を絡めたら何が起きるか予想が付かないわ……正に博打ね】

 

 ミカが本気を出してから五分経過……この時点でガリィ一行は作戦を三つに絞っており、その三つを簡単に言えば戦う、逃げる、パ○プンテであった。

 そして視線の先でスフィンクスが三十回目の死を遂げる中、ガリィ一行が下した決断とは……。

 

 

 

「ざぁんねん、そこは行き止まりよ☆ はい、一名様ごあんなーい♪」

 

 

「おオ!? ガリィの中に入っちゃったゾ!」

 

(ようこそモンスターハウスへ! 早速だがエジプトオタクのこのワタクシが、呪いが存在しない事を理論立てて証明してしんぜよう!)

(ついでに王様……後世に伝わる貴方の逸話についても話させて頂きます。 貴方は決して呪われた存在等では無い、それを証明するために)

【まっ、ゆっくりして行きなさいな。 この人達、変わっているけど愉快なのは間違いないから楽しんでいってね】

 

 そう、ガリィ一行が選んだのは……もちろんパ○プンテである⦅威風堂々⦆

 ちなみにガリィ内部で多数決を取った結果は戦う四割、逃げる五割、パ○プンテ一割⦅ガリィ含む⦆だった模様。相変わらずの独裁国家である⦅白目⦆

 

 

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「う、ううん……」

 

「響っ!?」

 

「あれ、未来……私、どうして……?」

 

「よかったぁ……今からゆっくり話すから、落ち着いて聞いてね?」

 

 その日の夕刻、響はベッドの上で目を覚ました。彼女が目を覚ました事に安心した未来は、響に何があったのかを話し始めるのだった。

 

「う、うん――ってそうだみんなは!? みんなは無事なの!?」

 

「うん、無事だよ。 もう皆目を覚ました後で、今は検査を受けてる所」

 

「よ、よかったぁ~……」

 

「えっと、ガリィちゃんとミカちゃんが全部片付けてくれたんだって。弦十郎さんがそう言ってたよ?」

 

「ほんとっ!? あはは、すごいなぁ二人とも~!」

 

 どうやらガリィのパ○プンテは成功したようだ。しかし彼女は、いやガリィ一行は結局、何をやらかしたのだろうか……。

 

「そのガリィちゃんから伝言だよ、はい」

 

「え? ……ギリシャ、エジプト展……このチラシが、どうかしたの?」

 

「よく分からないけど、そこに行けばおもしろいものが見れるんだって。 どう、明後日からだから行ってみる?」

 

「おもしろいもの……」

 

 それから二日後……彼女達は『満面の笑みを浮かべるツタンカーメン』という世にも珍しい美術品と出逢う事になる。なお、そうなった原因に何処かの人形が絡んでいるとの噂だが……真偽は不明である。

 

 

 

≪だいたいねぇ、この仮面が仏頂面な所為で呪われてるとか根も葉もない噂が立つんでしょうが! それが嫌なら笑いなさい、そしたら呪いのなんだの言われなくなるわよ⦅適当⦆≫

 

(えぇ……⦅困惑⦆)

(そんな事できるわけ――)

【……この子は本当にもう……後で怒られても知らないからね⦅呆れ⦆】

 

 

 

 真偽は、不明である⦅念押し⦆

 

 

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「どうやら装者は無事だったようね」

 

「あの赤い人形、どうやってアレを攻略したワケダ……?」

 

「そんなの分かる訳ないでしょ~! 人形の分際で生意気なんだからぁ~!」

 

 豪華客船で起きた事件が解決した翌日、パヴァリア光明結社の幹部である三人は今回の事件の顛末について話していた。

 

「歯車を手に入れるという最重要目的は果たす事ができた、今回はこれで良しとしましょう。局長からも例のモノを支給して頂けるしね」

 

「ホントっ!?ファウストローブに組み込める聖遺物、手に入ったの!?」

 

「かなり強引な手で、ね。 何はともあれ、これでシンフォギア装者は私達の敵では無くなるわ」

 

「局長が話していた聖遺物……北欧神話に登場する魔剣が、私達を高みへと連れて行ってくれるワケダ」

 

 どうやら彼女達は今回、任務を見事成功させたようで上司から褒美をもらえるらしい。その褒美とはなんと、聖遺物のようなのだが……果たしてそれはどのようなものなのだろうか。

 

 

 

「ええ、持ち主に勝利を与える魔剣『ティルフィング』……その力を有した私達に敗北は無い」

 

 

 魔剣ティルフィング……それは持ち主の願いを叶え、勝利に導く魔剣。そして同時に……三度目の願いを叶えた後、持ち主を食い殺すという逸話を持つ魔剣である。

 

 

 

 チフォージュ・シャトーによる世界分解が行われなかった影響で、本来のものとはかけ離れてしまった彼女達の武装。

 それがどのように物語を変化させるのか、そして彼女達の運命をどのように変化させるのか……それが分かる日はまだ、遠い。

 

 

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「自身の敗北を察した瞬間に自殺、か。」

 

『はい。ですが直前の反応から考えると、恐らく本人の意思では無いと思われます』

 

『手に入った物は結局データチップ一枚のみ……これは私の予想ですが、このチップにも大した情報は残っていないでしょうね』

 

「ふむ……とにかくご苦労だったな、二人共。 この後は準備が整い次第、本部へと帰還してくれ」

 

『分かりました』

『了解致しましたわ』

 

豪華客船での事件が解決した後、S.O.N.G司令室にはロンドン滞在組からの結果報告が届いていた。

どうやら地下鉄で補足したパヴァリア光明結社の構成員は自殺し、大した情報も見つからなかったらしい。

 

「……口封じと情報封鎖は完璧、ですか」

 

「ああ、これでは下っ端をいくら捕まえたところで、奴らの喉元に届く事は無いだろうな」

 

こうして今回の調査はパヴァリア光明結社の徹底的な秘密主義、それを知っただけに留まるのであった。

 

 





後半で完全に息切れしてしまい、ダイジェストのような何かになってしまいました⦅疲労⦆

ちなみにティルフィングについては読者さんからアイデアを頂き、それを丸パク……丸パクりしました!⦅威風堂々⦆

という訳で次回からは脊髄反射で書き上げるユルッユルな後日談に戻ります。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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