GX編 後日談 その九です。
四人で休憩室で喋るだけの回。
S.O.N.G.潜水艦内休憩室……そこでは現在、訓練を終えた響とその付き添いの未来、そして休憩中のガリィとエルフナインが雑談していた。
「響さん、その、頬っぺたに食べカスが……」
「響ちゃんってば相変わらずの食い意地ねぇ……ほら、拭いてあげるからこっち向きなさい」
「えへへ~、ガリィちゃんが持って来てくれたお菓子がおいしすぎて、つい……」
「も~、響ったら……」
(もっと食べても、ええんやで?⦅優しい眼差し⦆)
【訓練中はキリっとしてるのに、終わった途端にフニャフニャになっちゃうのよねぇ】
(それはほら、オンとオフの切り替えがしっかりできてるって事だから……⦅フォロー⦆)
訓練後に小腹が空いたのか、前日休みだったガリィがシャトーから持ち帰ったちょっとお高いお菓子を幸せそうに頬張る響。
しかし慌てて食べたのが災いしたのか、その頬に食べカスがついてしまったらしい。それをガリィがハンカチで拭き取り、未来は呆れながら見つめていた。
「全くもう、そんな調子じゃ嫁の引き取り手が無くなっちゃうわよ? 未来ちゃんだっていつまでもアンタの世話をしてくれるとは限らないんだからね~」
「ガリィちゃんの言う通りだよ響。リディアンの寮を出たら、別々に住む事になるかもしれないんだからね」
「あっ、確かにそうですよね。 お二人が進学する大学が別々なら、一緒に住めないかもしれませんし……」
(ひびみくが離ればなれになる、だと……?)
(この二人は進路も合わせると思うけど……実際はどうなるのかなぁ?)
【響ちゃんの学力がアレだものねぇ……大学に進学するなら、正直同じところは厳しいんじゃないかしら?】
さて、普段であればこのまま平和にガールズトークを繰り広げ解散、そのままガリィは切歌達三人の夕食の買い出しに出掛けるのが流れなのだが……。
「心配しなくても大丈夫だよ~♪ だって私……未来と結婚するから!⦅威風堂々⦆」
「っ!?」
- その時、未来に電流走る -
「っ!?(未来ちゃんのこの反応は――どっち!?ガチなの、それとも友情なの!?)」
- そして、ガリィにも電流走る -
(っ!?)
(っ!?)
【えっ、何? この子達ってそういう関係なの?】
- 更に、『わたしたち』にも電流走る -
「も~、ダメですよ響さん。 そういうのはお互いの意思が大事なんですからね!」
- そして更に更にエルフナインにも電流が……走らなかったようだ⦅癒しポジション⦆ -
響が何気無く放った言葉により始まった鬼気迫る心理戦……今回はそんな感じのお話である⦅適当⦆
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「ちょっと待ちなさい響ちゃん! 残念だけど未来ちゃんはね……アタシと結婚するのよ!⦅迫真⦆」
≪さ~て、まずは場を掻き乱す所から始めましょうか! ごめんなさいね未来ちゃん♪ 笑いごとで済む程度に楽しませてもらうわよ☆≫
(卑劣な先制攻撃だぁ⦅白目⦆)
(解説のガリィさん、彼女……ガリィのこの発言の意図は何なのでしょうか? ただ場を混乱させるようにしか聞こえないのですが……?)
【混乱させて本音を零させるのが狙いでしょうね。つまり、狙いは未来ちゃんよ】
(さすが同一個体、思考のトレースもバッチリですね!)
謎の膠着状態を打開したのは、狂っているとしか思えないガリィの爆弾発言だった。
「な、なんだってぇー!?⦅驚愕⦆」
「えっ、何それ怖い、私全然聞いてないんだけど(響はきっと冗談、だよね? だけどガリィちゃんは何を考えて……まさか本気で私を――って無い無い! だとすればガリィちゃんの狙いは――)」
「そうなんですか未来さん? も~駄目だよガリィ、ちゃんと未来さんの意思を尊重しなきゃ」
ガリィの先制攻撃により混沌へと陥る休憩室。癒しポジのエルフナインが天然っぷりを発揮する中、未来の頭脳はフル回転していた。
先制攻撃を許した彼女だが、ここで気を取り直せればまだ逆転の目は残るだろう⦅適当⦆
「いい、よーく聞きなさいな。アタシと未来ちゃんはね……二人っきりで秋桜祭を回った仲なのよ! そう響ちゃん……アンタが未来ちゃんを置いて行った間にね!!⦅ドヤ顔⦆」
「っ!?――そ、そんな……私が未来を置いて行った所為で泥棒ネ――ガリィちゃんに未来を……?」
「未来さん、一緒に秋桜祭?を回るのってそんなにすごい事なんですか?」
「……ううん、全然大したことじゃ無いと思うよ?⦅遠い目⦆」
(今ビッキー泥棒猫って言いかけてなかった?)
(解説のガリィさん、これは……?)
【いや『泥棒ネ』まで言ってたし聞かなくても分かるでしょうが……】
更に未来との思い出を武器に響を揺さぶるガリィ、ついでに未来を置いて行ったという罪悪感を呼び起こさせる事も忘れない、正にお手本のようなプロ畜生の仕事である。
「置いて行かれて可哀想な未来ちゃん、そこに優しく手を差し伸べるアタシ……ふふっ、少女コミックも真っ青なこのシチュエーションで恋が始まるのは当然だと思わない?」
「た、確かに……そんなに優しくされたら、私なら絶対好きになっちゃうよ!⦅完全敗北⦆」
「ガリィの事好きになったんですか、未来さん?」
「……ガリィちゃんの事はもちろん好きだよ? ただし、ラブじゃなくてライクだけどね⦅真顔⦆」
(すぐに理解するなんてビッキーは賢いなぁ!⦅錯乱⦆)
(解説のガリィさん……未来さんはこう言っていますが、本当のところはどうなのでしょうか?)
【ライクじゃなくてディスライクじゃないかしら? この子頭おかしいし⦅無慈悲⦆】
勢い任せのゴリ押しに何故か納得し出す響。そんな親友を未来は呆れを含んだ冷たい視線で見つめ、エルフナインは頭にハテナマークを浮かべながら未来に質問を繰り返していた。
「――待って! ガリィちゃんが未来と結婚するならキャロルちゃんはどうなるの!? ま、まさか別居!? そ、そんなのダメだよキャロルちゃんが可哀想!」
「良い所に目を付けたわね響ちゃん♪ でも安心して頂戴、何故なら……アタシの腕は二本あるの、つまりマスターを右腕に、未来ちゃんを左腕に抱く事ができるのよ☆⦅迫真⦆」
「っ!? た、確かに、それなら二人とも幸せにすることができるかも……!⦅謎理論⦆」
「キャロルを右腕に……未来さんは左腕の方がいいんですか?」
「どっちも嫌だよ! というか気になるのはそこなの!?」
(エルフナインちゃんの質問内容おかしい、おかしくない?)
(何言っても可愛いからセーフ⦅強弁⦆)
(未来さんが孤立無援状態でな、涙が出ますよ……⦅悲しみ⦆)
――アタシには腕が二本ついている―― そうドヤ顔で語るガリィだが、だから何なの?といった空気にならないのは間違いなく響のお陰である⦅遠い目⦆
というか未来さんどころかキャロルにも愛を受け取ってもらえてないんですがそれは大丈夫なんですかね……?⦅白目⦆
「それにね響ちゃん、アタシは何百年も前から生きているの。つまり……一夫多妻制についてもよく知っているのよ!⦅勝利を確信した表情⦆」
「す、すごい……! それなら二人を間違いなく幸せにできちゃうよ!」
「知っているのと実践するのではまったく話が違うと思うのですが……」
「うん、そうだね。 エルフナインちゃんの言う通りだと思うよ⦅疲れた表情⦆」
(誰が夫になるんだよ、人形と女性二人じゃねぇか⦅マジレス⦆)
(というかそもそもキャロルちゃんに拒否られるんだよなぁ⦅悲しみ⦆)
【言っても無駄よ。この子、もう自分が何言ってるかも分かってないと思うから⦅呆れ⦆】
『一夫多妻制について良く知っている』――――だからなんだよ⦅真顔⦆
「どうかしら響ちゃん、この完璧な理論は♪ アンタはそれでも、アタシより未来ちゃんを幸せにすることができるって言い張れるのかしらぁ~?⦅ゲス顔⦆」
「う、ううっ……!⦅苦悶の表情⦆」
「響さんが劣勢みたいですね……ゴクリ⦅息を飲む音⦆」
「……ウン、ソウミタイダネ⦅遠い目⦆」
(色々ガバガバすぎて草も生えない⦅真顔⦆)
【これ、どうやって収拾つける気なのかしらね?⦅他人事⦆】
(逃げるんじゃない?⦅名推理⦆)
相変わらず何処かの局長のように狂言を続けるガリィだが、響はそれを真面目に受け取り苦悶の表情を浮かべていた。
しかし忘れてはいけない……立花響は決して諦めない事を、逆境でこそ彼女の真価は発揮されるという事を……!⦅迫真⦆
「確かに未来はガリィちゃんと結婚する方が幸せなのかもしれない――――だとしてもっ!!!!!」
「な、なんですって!? アンタ、まだこんな力が残っていたの!?⦅悪乗り⦆」
「どのような状況でも諦めない強い精神力……す、すごいです響さん!」
「もうみんなすきにしたらいいんじゃないかな?⦅ヤケクソ⦆」
(お前が纏っているそれはなんだ……なんなのだっ!?⦅一期ラスボス並感⦆)
(愛じゃよ⦅魔法学校校長並感⦆)
(何故そこで愛!?⦅マム並感⦆)
ここから始まるのは大切な人を取り戻す戦い……立花響にとって決して負けられない戦いであった⦅迫真⦆
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「未来は、私が一番辛かった時期に助けてくれ――」
「あっ、そういう辛気臭いのはいらないからパス♪」
「え~……⦅しょぼーん⦆」
(あちゃ~)
(ちょっとビッキー空気読んでよ~⦅生暖かい目⦆)
【ここで真面目に語られても困るわよねぇ……】
立花響の負けられない戦いは、残念ながら出鼻を挫かれる事となっていた⦅出オチ⦆
「さすがはガリィです、奪われかけていた主導権をすぐに取り返しました……!⦅ワクワク⦆」
「エルフナインちゃんはどうしてそんなに楽しそうなの……?⦅遠い目⦆」
主導権が激しく入れ替わる戦いを見つめるエルフナインは、どこか期待に満ちた表情だった。どうやらガリィと響が作り出した空気に巻き込まれてしまったらしい⦅悲しみ⦆
「ほらほら落ち込んでないで、未来ちゃんの何処が好きかアピールしてみなさいな♪ そんな体たらくじゃアタシ達の愛には一生勝てないわよ?」
「っ!? 響が――私を好きなところ?⦅耳がダンボ⦆」
「わぁっ、これが『がーるずとーく』ってやつですよね!? ボク、知っています!」
(かかったな未来さん!⦅小悪人⦆)
【これは友情?愛情? う~ん、今のところはなんとも言えないわね】
(愛じゃよ⦅適当⦆)
なお、この時点で最後の砦だった未来はあっさり陥落した。とーっても気になる話題だったからね、仕方ないね⦅諦め⦆
「えっ、未来がいる所で言わなきゃいけないの!? そ、そんなの恥ずかしいよぉ~!!」
「私の事なら気にしなくていいから♪ ほら、早く教えて?⦅満面の笑み⦆」
「いい、エルフナイン。 未来ちゃんだけは絶対に敵に回しちゃ駄目、分かったわね?」
「??? う、うん……なんだかよく分からないけど……」
(一瞬でビッキーの目の前に移動した、だと……?⦅戦慄⦆)
【恐ろしく速い動き……私でなきゃ見逃しちゃうわね♪⦅ドヤ顔⦆】
(だから誰だよガリィさんに変な事教えたの!⦅憤怒⦆)
もじもじと恥ずかしがる響を襲ったのは、どこか威圧感のある笑みを浮かべた親友の顔面どアップだった。
み、未来さんは親友の事が気になるお年頃なだけだから!きっとそれだけだから!⦅フォロー⦆
「えっ、えっと……言わなきゃ、駄目?⦅引き攣った笑み⦆」
「うん、だ~め♪⦅花が咲いたような笑顔⦆」
未来の手に頬を包まれ、逃げ場を失った響。少し前までの未来さんはここまでアグレッシブでは無かったはずなのだが、やはり神獣鏡の一件が影響しているのだろうか。つまりガリィが悪いよガリィが!⦅いつもの⦆
「ちなみにエルフナインはアタシのどんなところが好きなのかしら? ほら、ガリィに教えてご覧なさい☆」
「えっ……ちょっ、ちょっと待って!今考えるから!」
「……酷い、酷くない?⦅遠い目⦆」
(考える時点でお察しゾ⦅悲しみ⦆)
(むしろ何故自信満々で聞く事ができるのか……)
【自分が普段何を言ってるか全く覚えて無いんでしょうね、認知症なんじゃない?⦅無慈悲⦆】
なお、我らがガリィはエルフナインに精神を撃ち抜かれている模様。良い所の百倍悪い所が目立つからね、仕方ないね⦅無慈悲⦆
「……他にもたくさんあるんだけど、誰よりも未来は一緒にいて落ち着くんだ。 ここが私の陽だまり、帰って来る場所なんだって思ってるし……えへへ、なんか恥ずかしいね!」
「ひびきぃ……!⦅感動⦆」
「アタシの良い所なんてたくさんあるでしょう!? 可愛いとか性格良いとか気遣いができるとか真面目だとか!ねぇ!?」
「ガリィ……ボク、嘘は吐きたくないから……!⦅真剣な表情⦆」
「な、なによそれ!? もしかしてアタシが可愛くないって言いたいのアンタ!?」
(違うゾ、それ以外の全部だゾ⦅悲しい現実⦆)
(性格良いとか気遣いができるとか真面目とか、笑っちゃうんすよね⦅嘲笑⦆)
【マスターに関しての事だけは真面目よね、他は全部壊滅的だけど⦅無慈悲⦆】
ガリィと立花響による未来を賭けた負けられない勝負……その戦いはいつの間にか、何故か斜め上の方向に向かっていた。
未来と響は二人だけの世界へと突入し、ガリィはエルフナインに現実を突き付けられているという謎の展開である、休憩室の空気はもう酷い闇鍋状態であった。
「他には――とか、――――とかも! 私、未来の事がほんとに大好きなんだよ?⦅微笑み⦆」
「うん、ありがとう響……私も、大好きだよ⦅微笑み⦆」
「ガリィはもうちょっと自分の行動を省みた方がいいと思うんですけど……」
「はぁ? どうしてアタシが他人のご機嫌を伺わなきゃいけないのよ、それなら周りがアタシに合わせればいいじゃない⦅唯我独尊⦆」
(ひびみくは尊い⦅確信⦆)
(ガリィちゃんは?)
【それ、聞く必要ある?】
(ないです⦅白目⦆)
ガリィがいつもどおり狂っている間に、響と未来はお互いの絆を深める事に成功していた。そして……。
「そんな事より勝負よしょう、ぶ……なぁにこれぇ⦅遠い目⦆」
(ほら収拾つけなさいよ貴方が始めたんだから!)
【今日も良い感じに暇潰しできたじゃない、よかったわね♪】
(さっ、夕飯の買い出しに行こうか!⦅目逸らし⦆)
ガリィは気付いた、響と未来が二人だけの世界を作っている事に……そして未来だけでなく響もガチだったという事に……。
「……」
「ガリィ、どうしたの?」
甘い空気を醸し出す二人を、なんとも言えない微妙な表情で見つめるガリィ。そして、彼女が出した答えは……。
「っ!? わっ、わわっ!」
「一緒に買い出し行くわよ、エルフナイン。 今日は家でご飯食べて行きなさいな」
(ほらね、逃げるって言ったでしょ? 私はガリィちゃんに詳しいんだ♪⦅ドヤ顔⦆)
【今日の夕飯は何だったかしら?⦅思考切り替え⦆】
(調ちゃんが中華がいいって言ってたからチャーハンと~、餃子と~……)
ガリィが出した答えは安定の『逃走』である。彼女はエルフナインを肩車し休憩室の出口へと向かい、去り際に響と未来を見て何とも言えない表情を浮かべて姿を消した。
ちなみに今日の夕飯は調のリクエストにより中華である。そのメニューの内容を考えながら、ガリィはエルフナインと共に街へと繰り出した。
しかし今から数時間後、夕食に響と未来が参加する事でガリィが再び何とも言えない表情になるのだが……それはまた別のお話⦅白目⦆
「はい、あーん♪」
「モグモグ……おいし~♪」
「人様の家でイチャイチャイチャイチャ……アンタ達わざとやってるんじゃないでしょうね!? そこまで熱々ならさっさと結婚でも何でもしなさいよまどろっこしい!!!⦅発狂⦆」
(ガリィ、キレた!⦅迫真⦆)
(クリスちゃんがこっち見てる……『ツッコむなよ面倒だろ……』って顔してるね⦅悲しみ⦆)
【切歌ちゃん調ちゃんは興味津々って感じね、そういうお年頃なのかしら?】
何はともあれ、今日の夕食が盛り上がった事だけは確かである⦅目逸らし⦆
終わってみれば平和な回でしたね⦅拡大解釈⦆
次回も読んで頂けたら嬉しいです。