第百十三話です。
「――昔の事か?」
「んっ? あたし、何か変な顔でもしてたか?」
「いや、表情は関係ない。そわそわと落ち着きが無いようだからな」
化学兵器製造プラントへ向かい川を遡上する二台の小型ボート……その内の一台に乗る風鳴翼は、同乗する雪音クリスの様子が不審な事に気が付き、話し掛けた。
「あー、まあ……そうだな。なんだかんだ六年近くこの国にいたからな、色々思い出す事もそりゃあるだろ?」
「クリスちゃん、大丈夫?」
「全っ然問題ねーから心配すんな。 昼の作戦だって普通だっただろ? (そわそわしてたのは昔の知り合いに会ったらどうしよう、って考えてただけだしな)」
「……そうか、どうやら私の杞憂だったようだな (特に思い詰めているようには見えない……よかった、問題は無さそうだな)」
どうやらクリスは昔の事を思い出していたようだが、その反応を見るに問題は無さそうだ。
こうして緒川、響、翼、クリスの四名を乗せた小型ボートは目的地へと順調に接近して行くのであった。
「えーじぇんとのおっちゃん、アタシにも運転させてほしいんだゾ!⦅好奇心⦆」
「えっ!? い、いや、それはちょっとご遠慮願いたいと言うか……」
「ミカ、職員さんが困ってるから我慢しよう?」
「そうデスよ! というか沈む未来しか見えないからやめるのデス!」
ちなみに、その後ろを追従するもう一台の小型ボートにはミカ、調、切歌、そしてS.O.N.G.のエージェントの男性(運転係)が乗っていたが、既にミカは飽き始めている模様。相変わらず潜入や奇襲には適正皆無なミカちゃんであった。
「なにヲーっ!? 最強のアタシにかかれば運転なんてちょちょいの――そこだゾっ!!!」
「っ!? な、なんデスかいきなり!?」
切歌と調の言葉に納得がいかずボートの上で騒ぐミカだったが、その言葉を言い終わる前に彼女は突然、陸地へ向けてカーボンロッドを発射した。
ミカは一体、何を見付けたのだろうか?
「う、うわぁーーーっ!?」
その答えは次の瞬間、爆発音と共に上がった悲鳴によって判明する。
ミカが攻撃を放った先には、荷台に銃座を取り付けられた一台の車両が存在していた。
しかし、その銃座は火を噴く前にカーボンロッドの直撃を受け爆散し、その役目を果たせぬままに消え去る事となったのである。
「眩し……」
「っ!? 待ち伏せデスか!?」
そして車両が爆散すると同時に、ボートの周囲はライトで照らされS.O.N.G.メンバーの存在を明るみにする。
どうやら政府軍は昼に行われた襲撃の事を周知しており、周囲に網を張っていたようだ。
「前に出るんだゾおっちゃん! 最強のアタシが皆を守るんだゾー!ガオーッ!!!⦅威風堂々⦆」
「わ、分かりました! ミカさん、お願いします!」
目的地まであと僅かという所で発見されたS.O.N.G.陣営だが、その状況でも彼女達にに混乱は起きなかった。
何故なら、彼女達が混乱に陥る前にミカが――荒事において最も頼りになる仲間が前へと躍り出たのだから。
「どっかんどっかんどっかーーーん!!!!!」
ミカを乗せたボートは響達が乗るボートを庇うように前方に進み、ミカは暗闇をものともしない視力で索敵を行い政府軍の車両を次々と撃滅していく。
「うわぁ……」
「相変わらず無茶苦茶すぎるだろコイツ……」
そしてその後、彼女達を乗せた二台のボートは誰一人欠ける事無く、無事に化学兵器製造プラントへと到着するのだった。
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「はい、入り口異常なーし♪ 入って来て大丈夫よ☆」
「真っ暗にしか見えないんだけど、本当に大丈夫なんだろうな? し、信じてるからな!」
「……アタシの機能にケチをつける事イコールマスターを侮辱するのと同じなんだけど、アンタ覚悟はできてるんでしょうね?⦅満面の笑み⦆」
「し、信じてるって言ってるだろ! よっ、ガリィは偉い、凄い!キャロルちゃんの最高傑作!」
「よろしい♪ さてと、それじゃとっとと調べて帰りましょうか☆」
(最高傑作どころか不良品だと思うんですけど⦅名推理⦆)
【ミカちゃんにとっては最高のパートナーだと思うんだけど、他の人にとっては、ね⦅遠い目⦆】
(ちなみにキャロルちゃん、ガリィちゃん関連の事を話すと露骨に嫌そうな顔になるゾ⦅悲しみ⦆)
響達が化学兵器製造プラントへ到着した同時刻、ガリィ達別動隊もオペラハウス内部への侵入を開始していた。
内部はほぼ暗闇に包まれ月明かりに頼るしかない状況なのだが、人形であるガリィにとっては何の問題も無いのであり、彼等は無事に内部へと侵入を果たしたのである。
「中は思ったよりも広いみたいね」
「ええ。でも何があるか分からない以上、手分けするのは愚策だと思うわ。ゆっくりと確実に探索していきましょう」
「そうね、先頭はガリィに任せて私は殿を務めるわ」
「あーはいはい分かってるわよ。相変わらず人形使いの荒い連中でやんなっちゃうこと」
(暗くても視界を確保できるのはガリィちゃんだけだからね、この配置は仕方ないね)
【それにしても静かすぎるわね。もともとハズレだったのか、それとも既に撤収した後なのか、それとも……】
(我々を誘い出す罠の可能性、ですね)
先頭にガリィを置き、その後ろにオペレーターの二人と国連から派遣されたエージェントの皆さん、そして最後尾にシンフォギアを纏ったマリアという並びで歩みを進める調査班。
先頭を堂々と歩く人形の性根が少し心配な布陣だが、彼女も仕事だけはきちんとこなすので多分大丈夫だろう。
「それにしても人の気配が全く無いわね。もしかして夜の警備すら置いていないのかしら?」
「っ、確かにおかしいな……ここには警備も居ない上、金目の物が眠っている可能性があるってのに」
「……ちょっと思ったんだけど、これだけ情勢が不安定な国でどうしてこの建物は綺麗なままなの? 普通なら物盗りに荒らされてるはずでしょ?」
(やっぱり罠、なのかな?)
【もちろんその可能性はあるわ。だけどこっちにはこの子とマリアちゃんがいるんだもの、普通の人間だけなら問題は無いはずよ】
(キャロルちゃんみたいなのがいませんように……)
会話しながら静かに探索を続ける調査班のメンバーだが、やがて内部の状態が綺麗なままである事に対し疑問を持ち始めたようだ。
バルベルデ共和国の情勢が大きく乱れているにも関わらず、このオペラハウスは全く手を付けられていないという明らかに異質な状況だったのである。
「……更に怪しさが深まったわね。 ガリィちゃん、警戒を強めながら行きましょう」
「ガリィの耳なら、物音を立てた瞬間に対応できるから問題無いわよ。 まっ、相手が錬金術師でも無い限り――っ!――あらら、留守かと思ったんだけど違ったみたいね」
【……どうやら当たりみたいね。いえ、この子にとってはハズレなのかしら?】
(どうしてミカちゃんにも来てもらわなかったんですかヤダーッ!)
(潜入とか調査任務の適性が壊滅的だからだゾ⦅悲しみ⦆)
そんな中、ガリィの耳……というか集音センサーが僅かな音を捉えた。その音を聞いた瞬間、これまで以上に面倒臭そうな表情になったガリィの耳が捉えた音とは……。
「っ、おいおい……ちなみに、何が聞こえたんだ?」
「人間の笑い声だけど、きっと楽しい事でもあったんでしょうね♪」
(人間……よし、勝ったな⦅確信⦆)
(アルカノイズが来てもこの二人なら余裕だな!⦅確信⦆)
【この建物に展開されている不可視の結界、これを施した錬金術師がいなければいいんだけどね】
そう、ガリィの耳が僅かに捉えたものは人間の笑い声だった。静寂に包まれ無人かと思われてたこの施設だったが、どうやらそういうわけでは無いようだ。
「人間の声……物盗りか、それとも別の……」
「ガリィ、声が聞こえた方向は分かる?」
「ええ、もちろん☆ っていうかもう行く気満々なのねアンタ……別に止める気は無いけど、この先が猛獣の巣穴だったらガリィは知らないわよ」
(いや、任務内容的にここで退くのはちょっと難しいかなぁ)
【ええ、国連から派遣された人達もこのまま帰る気はないでしょうね】
(うーん……どの手段を選択しても結果論になりそうな予感)
その報告を聞いた仲間達に緊張が走る中、マリアはガリィへと音の出処を尋ねていた。
その表情を見たガリィはマリアがそちらへ向かうつもりであると確信し、『うわめんどくさっ、言うんじゃなかった……』と後悔していた。
「藤尭君はどう? 私はマリアさんに賛成、少なくともこの施設に潜んでいるのが何者なのかくらいは確認したいと思っているわ」
「怖いのは罠の可能性だけど、それならもうこの時点で俺達は捕捉されているはず……どちらでも一緒なら前に進む方がマシ、だよな――という事で俺も賛成でよろしく」
この建物に不審人物が潜んでいる事が確定した以上、ここで調査を打ち切るという選択肢はS.O.N.G.所属の面々には無いようだ。
最低でも潜んでいる人物の詳細くらいは掴んでおきたい、そういう事なのだろう。
「あーはいはい、どうせそうなると思ってたわよ……。 ふん、これで死んでもガリィは知らないんだから……それが嫌ならアタシの後ろから離れるんじゃないわよ、いいわね!?」
「はは、女の子の背中に隠れるってのは男としては情けないけど……ありがとうな、ガリィ」
「危険そうなら映像だけは押さえてすぐに撤退しましょう、もしもガリィちゃんが怪我でもしたらキャロルちゃんに申し訳が立たないもの」
「最悪の場合は私とガリィが壁になるわ。その間に二人にはこちらに向かっている増援と合流して、本部に情報を持ち帰ってもらいましょう」
(あれ、ガリィちゃんに死亡フラグ立ってない? 大丈夫?)
【うーん、この子よりイグナイトモジュールが使えないマリアちゃんの方が危なくない?】
(つまりどっちもやばいって事だな!⦅白目⦆)
満場一致の意見を聞き渋々と言った表情で笑い声を聞いた方向へと歩き始めるガリィと、その後ろを慎重な足取りで進む仲間達。
果たしてこの先には、一体何が待ち受けているのだろうか。
- それから数分後 -
「ここよ――ってなんだ、軍人のおっさんの集まりじゃない……警戒して損しちゃったわ」
(こんな所で何やってるんだろうね?)
【逃げようとしてるんじゃない? 昼の戦いを知っていれば、この国に見切りをつけるのも仕方ないでしょうし】
(ミカちゃん含むオートスコアラーの皆が大活躍したらしいな)
ガリィを先頭に歩みを進めていた調査班が辿り着いたのは、オペラハウスの中心部である舞台ホールだった。
そこには多くの客席が存在し、彼女達は後方の影に潜みながら前方で会話を交わす男達の詳細を見極めようとしていたのである。
「藤尭君、あの男性って……」
「……ああ、恐らく間違いない」
「はぁ? あの偉そうに座ってる奴って指揮官か何かなの?アタシにも教えなさいよ」
(配布された資料に乗ってたでしょ!)
【それ全部、あたしが確認したわよ?】
(あっ、そういえばそうだったね……⦅遠い目⦆)
そんな中、前方の客席に着席している一人の男……その男の横顔を確認した途端、オペレーターの二人の表情が驚愕と戸惑いを合わせたようなものへと変わる。
二人が驚いた男の詳細とは、実は……
「……あの男、多分この国の大統領よ。 つまりこの場所は、要人の隠れ家なのかもしれないわね」
「ふ~ん、大統領ねぇ……もう面倒臭いからさっさと氷漬けにしていい?」
前方の客席に座る男、実はこの男はバルベルデ共和国の現大統領だったのである。
という事は彼の周囲にいる人間は親衛隊という事になるが……御覧の通り、ガリィにとってはどうでもいい事のようだ。既に彼女は、半殺し氷漬け状態で彼等を持ち帰る気満々である⦅遠い目⦆
「待て待て待て! もう少しだけ話を聞いてみよう、なっ!」
「そうね、彼等がここに潜んでいる理由が分かるかもしれないわ」
「あっ、そう⦅無関心⦆ それじゃアタシは中にいるから、何かあったら言ってね~♪――……という事で交代したわ。周囲の警戒はあたしとマリアちゃんでしておくから、皆は情報収集をよろしくね」
「……相変わらず大変なのね、お疲れ様」
「ありがとう、でももう慣れたから大丈夫よ……⦅遠い目⦆」
(ガリィさんの方が任務をちゃんと把握してるし実質プラスやな!)
≪そーそー、人間相手ならアタシが出るまでも無いしこれでいいのよー♪≫
(ガリィちゃんの今日の仕事終了! お疲れ様でした!)
無警戒で機密情報をペラペラと話し続ける大統領達を、しばらく泳がす事に決めた調査班の面々。
それを聞いたガリィは自分の役目が半ば終了したと判断し、内部へと撤退。代わってガリィさんが表に出て、任務を引き継ぐのだった。
「ふん、何がアルカノイズだ! 全く役に立っておらんではないか!」
「それが……国連軍はシンフォギア装者だけでなく、人型の化け物まで投入して来ているとの事です」
「……化け物だと?」
「はい。アルカノイズは全く相手にならず、報告では戦車を片手で振り回す程の力を持っている、と……」
一方、泳がされている大統領と親衛隊の皆さんが話す現在の話題は、戦車を片手で振り回す人型の化け物についてだった。
ちなみにそれを聞いた大統領、そして報告した本人までもが半信半疑の表情を浮かべていたのだが……このまま気付かない方が幸せなのかもしれないのが悲しいところである。
「戦車を片手で、だと……くだらん! そんなもの、我々の戦意を削ぐために国連が流布した嘘に決まっておるだろうが!」
「私もそう思います。ですが虎の子の空中戦艦までもが落とされた現状……国連がそれだけの戦力を投入している事は事実かと」
「……ふん、不可知の結界に守られたこの場所を悟られる心配は無いが……国外へ向かうのも含め、今後の事を考えねばならんか」
人型の化け物については置いておいて、バルベルデ共和国軍が劣勢を強いられているのは事実である。
故に大統領は今後の身の振り方を――要は国外逃亡する事を考え始めていた。
「……その際は結社に支援を頼みますか? 同盟関係にある我々なら、報酬を積めば受けてくれるでしょう」
「ああ、そのつもりだ。 シンフォギアだかなんだかに襲われても、錬金術師が護衛についていれば安心だからな」
結社、錬金術師……この言葉を聞いた調査班は、裏に錬金術師を擁する結社が絡んでいる事を確信する。
そして同時に、それが豪華客船の事件にも絡んでいたパヴァリア光明結社である可能性が高い、とも。
「了解致しました。 それでは最後に例のブツ……亡命将校の遺産はどう致しますか? 結社側に知られれば、面倒な事になるかもしれませんが……」
「他の荷物に隠蔽し、隠し通すに決まっておるだろう。 あれは我々にとって――」
こうしてバルベルデ共和国軍上層部の会話は続く……そのすぐ先に、危機が迫っている事も知らぬままに……。
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「アハハハハハハハハハハハーッ!!! 強いヤツはどこダーッ!!!」
場面は変わって化学兵器製造プラント……そこでは現在、人型の化け物が大暴れしていた。
「ヒッ、ヒィィーッ!!! ち、近付くなぁー!!!」
「……近付いちゃダメなのカ~?――なら、離れたところから攻撃すればいいんだゾッ!⦅カーボンロッド発射⦆」
逃げ惑う兵士、そして紙屑の様に葬られていくアルカノイズ……周囲ではシンフォギア装者も暴れ回っており、正に政府軍にとっての地獄絵図が展開されていた⦅悲しみ⦆
「ミカ! そんなに動いて想い出の残量は大丈夫なんデスか!?」
「強いヤツのためにとってあるから、まだまだ余裕だゾ!」
「民間人の避難誘導が終わるまで頑張ろう、二人共」
「了解デース!」
「オー! 頑張るんだゾ!」
現在、政府軍と戦闘を繰り広げているのは切歌と調、そしてミカである。他には対人戦闘のプロであるNINJA緒川は兵士を相手にしており響、翼、クリスの三人ともう一人のエージェントの男性は民間人の避難誘導及び護衛を行っている。
どうやらミカという特大の戦力が加わった事で、本来の時空とは違い贅沢な戦力配置が行われているようだ。
「落ち着いて避難してくださーい!」
「間もなく国連の部隊が到着します、安心して下さい!」
「こっちだ! 列からはぐれるんじゃねーぞ!」
こうして順調にノイズや敵兵士の掃討を、同時に避難誘導を進めるS.O.N.G.陣営である。
このままであれば、施設の制圧にはそう時間は掛からな――
「っ!? 危ない!!!」
「っ!?――ちぃっ!!」
……いくら戦力が充実していたとしても絶対の安全など無い、それが戦いというものなのだろうか。
ミカと切歌達の包囲網から奇跡的に抜け出したノイズが標的に定めたのは――背中を見せている雪音クリスだった。
それに気付いた民間人の少年が上げた声に反応し、即座に迎撃するため武器を掲げるクリス。しかし――
「させないっ!」
次の瞬間、アルカノイズの身体をバラバラに切り裂いたのは……調が放った丸鋸だった。
どうやらアルカノイズに気付いた調は、クリスよりも早くノイズへと攻撃していたようだ。
「大丈夫デスか!?」
「ああ、こっちは問題ねーから気にすんな! ……声を出したの、お前だよな? サンキュ、助かった」
「う、うん……それよりその、凄いんだなあんた達……」
こちらに駆け寄ろうとしていた切歌と調に問題無い事を伝え、クリスは声を上げた少年へと感謝を伝える。
しかし感謝を伝えられた活発そうな少年は何処か戸惑っている様子であり……どうやら、シンフォギア装者とミカの暴れっぷりに驚愕していたようだ。
「……あたしらなんてまだマシな方だっての。そいつらに比べれば、あの暴れてる赤い奴もマシな方なんだからな」
「えっ!? そ、そうなんだ、世界は広いんだね……」
「ああ、そうなんだ――っと、そんな事はいいから早く避難しな」
「わ、分かった!」
脳内にクソゲーの権化である幼女とその原因を作った人形の姿を思い浮かべ、それ比べると自分達は普通だと結論付けるクリス。
その様子を不思議そうに見つめながら、少年は避難の列に再び加わるのだった。
「アハハハハ! おっきいから狙い放題当て放題だゾ!! どっかんどっかんどっかーーーーん!!!」
「ば、化け物……⦅白目⦆」
なお、その間に政府軍の指揮官が最終兵器である巨大ノイズを呼び出していたが……僅か三十秒後、巨大ノイズの身体には無数の穴が開き、最後は超巨大なカーボンロッドにより叩き潰されていた⦅悲しみ⦆
「ま、まだだ!! こうなったら全員、道連れにしてやるぞぉぉぉぉぉ!!!⦅ヤケクソ⦆」
しかし政府軍指揮官のおじさんは諦めなかった。彼は周囲の兵士にすら秘密にしていた巨大飛行ノイズを空中に呼び出し、それを落とし味方ごと敵を葬り去ろうと試みたのである。
「オーッ! アタシ、的当ては得意だゾ!! どっ、かぁーーーーん!!!」
「あたしにも一発くらい撃たせろっての! これでも食らいやがれっ!!」
しかしそれも無駄な足掻きに終わる事になる。気付けば飛行ノイズにはミカがぶん投げた巨大カーボンロッドが突き刺さっており、その後ろをクリスが放った二発の巨大ミサイルが無慈悲に追撃したのである。その結果は勿論……。
「なぁにこれぇ……⦅失神⦆」
汚い花火が上がり決着、である⦅無慈悲⦆ ノイズだけでシンフォギア装者+aに勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!⦅理不尽に対する心からの叫び⦆
「――っ!? (あれは、工場長!?)」
そしてその頃……避難していた先ほどの少年に、運命という名の悲劇が襲い掛かろうとしていた。
果たして彼の運命は、そしてクリスにとって試練となる出来事はやはり起こってしまうのだろうか。
この場所には今、運命への反逆者はいない。では、その運命を変えられる者がいるとすれば……。
「楽しかったけど……強いヤツ、全然いなかったゾ……⦅しょんぼり⦆」
運命の反逆者が変えた世界だけに存在する、彼女だけなのかもしれない。
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「……藤尭君」
「ああ、もう十分だ。 ガリィさん、連中の拘束を頼む」
「いいけど、貴方達に被害が出そうな動きを見せたら容赦無く殺すわよ。風鳴司令からも許可はもらっているし、問題無いわよね?」
「……ああ、それでいい。悪いな、君に全部押しつけてしまって」
「ふふん、あたしもこの子もそんなの全然気にしないわよ。今も中で機嫌良さそうに、どうやって殺すかを考えてるしね」
≪氷漬けじゃ芸が無いわよねぇ……そうだ♪ 体内の水分を凍らせてー、ついでに鋭利に尖らせてー、内側からー⦅以下、畜生の素敵な殺人講座が続く⦆≫
(第三の矢はやめろぉ!!⦅悲鳴⦆)
(悪魔だぁ……⦅戦慄⦆)
(というかガリィさんにそんな精密操作はまだ難しいからやめよう!なっ!⦅切実⦆)
そしてまた場面変わって、こちらはオペラハウスに侵入している別動隊である。
どうやら情報収集は完了し、とうとうバルベルデ共和国大統領を含む軍人達を捕縛するタイミングが来たようだ。
「マリアちゃんは皆の守りをよろしくね♪ それじゃ、ガリィにお任せですっ☆」
「分かったわ。 何があるか分からないから気を付けてね」
「はーい、分かってまーす♪」
(おぉ~、本物のガリィ・トゥーマーンの原作セリフだぁ……⦅恍惚⦆)
≪はっ?⦅殺意⦆ 何言ってんのアンタ、本物はここにいるでしょうが⦅全ギレ⦆≫
(ガリィちゃんに原作アニメとの違いを見せたい、見せてみたくない?)
マリアに背後の守りを任せ、タイミングを計るガリィさん。
そして……全員に緊張が走る中、ガリィさんが軍人達へと奇襲を仕掛け――
「――つまり、本当に守るべきものはここに……貴方が先程自白したように、亡命将校の遺産はここに隠されている」
「っ!?」
≪……ふ~ん、つまりこいつらはヤバいものをここに隠していた、というわけなのね≫
(というか誰だよ⦅真顔⦆)
(知らねーよ、こちとら三期までの知識しか無いんだっつーの⦅真顔⦆)
――るかと思われた瞬間、その動きは予期せぬ乱入者によって強制的に中断させられるのであった。
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いきなり番外編シリーズ。 ファラ・スユーフと仲間達編
響の場合
「ファラさんファラさんファラさーん! 勉強教えてくださいぃぃ……あと、できればお菓子も下さい!!」
「もう、響ちゃんったら……いいわよ、それではシャトーで勉強しましょうか」
困った時に頼られたり、ファラが特訓に巻き込まれたりする。
クリスの場合
「正しい食べ方はこう……そう、いい感じよ。クリスちゃんは飲みこみが早いわね」
「……ふん、そーかよ」
優しいお姉さんとツンな妹。
マリアの場合
「次の作戦でちょっと気になるんだけど、バルベルデって――」
「……確かにその部分については資料では不足していますわね。この場所は本来――」
対等に話せる貴重な仕事仲間。
切歌の場合
「あたしも大人っぽい雰囲気を醸し出したいのデス! どうすればいいのデスか!?」
「う、うーん、そうねぇ……」
憧れのお姉さん。
調の場合
「ファラちゃん、想い出が欲しかったらアタシの靴を舐めなさいな」
「っ!? し、調ちゃん!ガリィちゃんの影響は受けちゃ駄目よ!まだ間に合うからこっちに戻って来なさい!!⦅必死⦆」
「アタシはそんな事言わない! というかアタシの真似だって即断定してんじゃないわよ!!⦅憤怒⦆」
リアクション芸人なお姉さん。
未来の場合
「それでですね、響がこの前――」
「響ちゃんったら相変わらずなのね。でもちょっと考えてみて? それは逆に言えば貴方の前だからこそ見せる姿であって――」
相談すると親身になってくれる人。
翼の場合
「……しばらく大人しいと思っていたが、まさかこんな場所を作っていたとはな……!」
「う、嘘っ!? 書斎の地下に構えたこの基地が、こんなに早く見破られるなんて!?」
「ま、まずいぞファラ君……!」
「やはりここにいましたか、御父様……貴方達、今日という今日は覚悟してもらいますからね!!」
「御父様! ここは私が抑えます! 貴方は逃げて、新たな基地を――」
「貴方達はまだそんな事を――な、何をするファラ!?は、離しなさい! 御父様!逃げるなっ!!⦅憤怒⦆」
歌手活動が絡んだ時が酷い。
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いきなり番外編シリーズその二。 ガリィの精神力訓練
「というわけで~、今日はアンタ達が戦闘中に心を乱さないための訓練を行うわね♪」
「……既に嫌な予感しかしないのだが(SAKIMORIの勘)」
「多分、皆そう思ってると思います……(同居人の勘)」
【とうとう来てしまったわね、この日が……⦅戦慄⦆】
(天気は快晴! 良い特訓日和ですネ!!⦅白目⦆)
(ガリィコーチ、皆の為に自らの命を……⦅悲しみ⦆)
装者達を集めて行われるガリィの訓練だが、本日はどうもいつもとは違うようだ。
「それで内容なんだけど、ここからは真面目に話すわね。 今日はアタシがアンタ達の敵という立場に立って、アンタ達の心を全力で掻き乱しに掛かるわ。 当然、心無い事も平気で言うつもりだから、限界が来たらアタシをぶん殴るくらいなら許してあげる」
「……ガリィがそこまでする意味はなんなのデスか?」
「はっきり言って、この世界でアンタ達に勝てる人間はそうそういないと思うわ。だけど精神面については別、アンタ達はまだまだ脆いとアタシは思っているの」
「……つまり精神面を鍛えろって事かよ」
「違うわよ。あのね、精神を鍛える事なんて簡単にはできないの、分かる? だからまずは痛みに慣れなさいな、揺さ振りを掛けられても動揺を最小限で抑えられるようにね」
どうやら今日はガリィによる揺さぶりに耐える訓練が行われるようだ。
いつもと違い真面目な表情で話すガリィの様子から、生半可な訓練では無い事が伺えるのだが……。
「まっ、とにかく一人ずつやってみましょうか。 それじゃ最初は響ちゃんね、おいでなさいな」
「えっ、私!? わ、分かったけどその……や、優しくしてね?」
「そうねぇ、考えておいてあげる。それじゃこの部屋にどーぞ」
こうして装者達が困惑する中始まったガリィの精神特訓。
その最初の挑戦者は立花響、その人である。果たして、彼女は耐えきる事ができるのだろうか……。
- 十分後 -
ドゴォッ!!
「お、おいっ!? なんだよ今の音!?」
室内から聞こえた轟音、そして……。
「うわぁぁぁぁんガリィちゃんのバカぁぁぁぁ!!! 私は、私は絶対みんなと手を繋ぐんだぁぁぁぁぁっ!!!」
大泣きしながら走り去って行く響。そしてそして……
「はーい、次の人どーぞー」
「っ!? ガリィ、首がその、なんというか……曲がっているぞ?」
「……あらら、響ちゃんってばギアも纏ってないのに大したものねぇ」
室内から現れたのは首が曲がったガリィであった。
その姿を見た装者達は悟る、『あっ、この特訓アカンやつや』と。
「次は私か……お手柔らかに、よろしく頼む」
「はいはい、どーぞー」
そして次は翼の番である。その結果は……。
- 十分後 -
ドゴォッ!(二回目)
「いつもいつも防人防人と馬鹿みたいに繰り返して来た私は、私は……うわあぁぁぁぁん!!⦅号泣⦆」
「「「「えぇ……⦅困惑⦆」」」」
「首を元に戻してっと……それじゃ次~、どんどんいくわよー」
ガリィの曲がった首と、号泣する翼の姿を見れば一目瞭然である。そしてその後も……。
「罪に染まった過去は変わらない……そうね、貴方の言う通りよ。 だけど、それでも私は歩むことを止めない、そうあの子に誓ったのよ」
痛みを噛み締めながら、決意を新たにする者……。
「そんな事は私自身が一番分かってるよ!! ガリィの……バカァァァァッ!!!」
普段は上げないような大きな声を出す者がいたり……。
「デスゥ……あっ、こういうのが駄目なんデスよね……?」
元気が取り柄な少女が別人のようになってしまったり……。
「あたっ、あたしはなぁ……! 本当はお前の事を信じ、信じて……うわぁぁぁぁぁっ!!」
感受性が高い故に手が付けられない程動揺してしまったりと、マリア以外は散々な結果であった。
「はい、第一回目はこれで終了♪ ちなみに合格はマリアだけ――というかあの子達いくらなんでも脆すぎでしょ……こんな事ならもっと早くやっておくんだったわ……」
「……私と切歌しか残ってないんだけど、どうする気なの?」
「響ちゃんについては未来ちゃんに、翼ちゃんについてはパパさんにフォローを頼んでるわ。クリスと調についてはアタシが引き受けるから、アンタは切歌をなんとかしてあげなさいな」
「そう、分かったわ……いつも汚れ役を引き受けさせて悪いわね」
「なーに言ってんのよ♪ アンタ達が頼もしくなれば、か弱いアタシが戦わなくても済むようになるでしょう? そのための先行投資よ先行投資、という事でまたね~☆」
こうして散々な結果で幕を閉じたガリィによる第一回精神強化訓練……それからも定期的に行われる訓練の成果が出るのは、遥か先の事である。
AXZ序盤は新加入の面々を活躍させてみました。
番外編はその……酷い特訓でしたね⦅遠い目⦆
次回:藤尭君、大失敗の巻
次回も読んで頂けたら嬉しいです。