第百十四話です。
「っ!? (錬金術師……!? それも、手練れが三人もなんて……!)」
(人が、消えて……)
(あれは、錬金術による分解ですよね……?)
≪……これだけの錬金術が使えるなら、少なくともアタシよりは上でしょうね。つまり見つかったら超ピンチ、だゾっ☆⦅能天気⦆≫
バルベルデ共和国大統領を含む軍人達を監視していた調査班のメンバーは、ホール内で起こっている信じられない現象をただただ呆然と見つめていた。
その信じられない現象が起こる数分前……バルベルデ共和国の軍人達、そしてガリィ達が潜むホールに乱入した三人の正体不明の女性――その後の軍人達との会話からパヴァリア光明結社に所属する錬金術師と判明した彼女達は、何故か同盟関係にあるはずの軍人達と揉め始めたのである。
『何がアルカノイズだ! とんだ不良品を掴ませおって!』
『……不良品では無く、相手が悪かっただけなワケダが』
『プレラーティの言う通りよ。貴方達は運が悪かった、ただそれだけの事……』
『ふっ、ふざけるな! お前達パヴァリア光明結社が、アルカノイズは人間に対して無敵だと宣うから――』
この段階で判明した事は二点、乱入した三人の女性がパヴァリア光明結社に所属する者である事。
そしてその中の一人、眼鏡を掛けた小柄な女性の名が『プレラーティ』だという事の二点である。
しかし現状を考えると、彼女達の出現を軍人達は予期していなかったようだが……彼女達は一体何を目的にこの場所へと現れたのだろうか。
『目的は亡命将校の遺産とやら、なのか? でも遺産ってなんなんだ?』
『今はそれが問題では無いでしょう?……ガリィさん、マリアさんと二人であの三人を捕まえられる?』
『……残念だけど現実的じゃないわね。ここに来たのがあの三人だけとは限らないし、敵の実力も未知数……つまり安易に戦闘に踏み切るのは超危険、それがあたし――いえ、あたし達の意見よ』
『せめて人数で勝っていれば、という所ね。 戦闘に踏み切るなら、最低でもファラとレイアの到着を待ってからにしましょう』
ちなみに、彼等が揉めている間に調査班は超小声で作戦会議を行っていた。
その結果……ここで乱入するにはリスクが大きすぎるため、ガリィ一行は潜伏を継続する事を推奨しているようだ。
『了解。それじゃ、情報収集を続けるとしますかね……』
『気付かれた場合は即座に撤退しましょう。その時は私が敵を引き受け――』
そんなこんなで情報収集を続ける事となった調査班だが……。
『~♪』
次の瞬間、ホール上部に並ぶ三つの窓枠……その右側に立つ銀髪の女性が歌を奏でる事で
『~♪』
更に左に立つ青髪の女性……胸元が開いた派手な服装をした女性が、その歌声に被せるように続く。そして……。
『~♪』
中央に立つ眼鏡を掛けた黒髪の女性……一見すれば少女にしか見えない女性もその後に続き、ホールは彼女達の歌声に支配される事となったのである。
『か、痒い痒い痒いぃぃっ!!!』
『ひぃぃぃーーっ!!』
『た、助けて!助け――』
『か、金が欲しいのか!? それなら――』
そこからの展開は調査班の面々にとって、衝撃の連続だった。
彼女達が歌い始めて間も無く、軍人達は突然苦しみ出し……そして、彼等は光の粒子となり世界から消失したのである。
「っ!?――おいおい、冗談だろ……?」
「っ……! ガリィさん、あれも錬金術なの……?」
「人体を分解しエネルギーへと変換する術式、だと思うわ。恐らく最初からそのつもりで、既に仕込みを済ましていたんでしょうね」
「つまりこの襲撃は彼女達にとって予定通りのもの。そして……」
「ええ、恐らく彼女達の本命はこの先……さっき言っていた通り、ここにある何かを手に入れる事じゃないかしら」
≪はぁ~……あの女共の目的なんてアタシ、クリスの胸の大きさくらいどうでもいい事なんだけど≫
(クリスちゃんの胸の大きさが気にならない、だと……?)
(ちょっと男子ー、そういうのはやめときなさいよー⦅風紀委員⦆)
(一歩間違えれば大ピンチなのにいつも通りのこの雰囲気……全く、頼もしくてたまらねぇぜ!⦅感覚麻痺⦆)
そして時間は現在へと追い付き、調査班の面々が驚愕に包まれているところである。
目の前で展開された信じられない光景もだが、それよりも重要なのはこれ程の高位の術式を行使する事が出来る錬金術師が三人も現れたという事……つまり、見つかれば大ピンチ待った無しの状況である。
「さってと二人共♪ 邪魔者はいなくなったし、宝物とのご対面と行きましょうか♪」
「ええ、そうね」
「ふふ、連中を追い詰めるために派手に暴れてくれた国連とS.O.N.G.の連中には、感謝の気持ちで一杯なワケダ」
思ってもいなかった強敵の登場に調査班に緊張感が走る中、彼女達は次の行動に移る事にしたようだ。
三人の錬金術師は窓枠から飛び降り、何処かへと向かい歩き始める。その行き先は……。
「あれは……地下に続いているのか」
「……あたしが提案するのは二つ。 一つ、ここで撤退し増援を待ってから再突入。ただしこの方法だと十中八九敵を逃がす事になるし、その目的も分からないままね」
「……もう一つは、なんだ?」
「錬金術師が向かった地下に潜入し連中の目的を把握、映像に収めた段階で撤退する。この方法のリスクは発見される危険がある上、戦闘に突入した場合……命を失うのも覚悟しなければいけない事よ」
≪はっ、何言ってんのかしらこのおバカさんは? 戦闘になればマリアを盾にして逃げるに決まってるじゃない♪ あっ、一人で寂しいのなら優男も置いて行って大丈夫よ☆≫
(護衛とは一体なんだったのか……⦅遠い目⦆)
(友里さんは護衛してるからセー……いや、アウトだわこれ⦅白目⦆)
(マリアさんがイグナイトモジュールを使えない事が痛すぎますね……)
錬金術師の三人は舞台横に隠されていた階段を降りていき、ホールから姿を消す。
それを見届けた調査班の面々は今後自分達が取る手段を話し合い、安全を取るか危険を承知で踏み込むか……その選択を強いられているところだった。
そして、彼らが選んだのは……。
「……オッケー、突入しよう。いいか、連中の目的が判明した時点で深追いはせず俺達は撤退する」
「もしもトラブルが発生した場合は、情報を持ち帰る人員を逃がし足止めに徹する。この役目は私が引き受けるからガリィさん、そうなったら皆の事をお願いね」
「……ええ。 気に入らないけど、ジャンケンに負けたんだから従ってあげる」
「そうならないように細心の注意を払って突入しましょう。それでは、行きましょうか」
≪アハハハハ! なんで勝った方が足止め係になるのよ、コイツら二人してバーーーーッカみたい♪≫
(うーん、この安定感)
(まぁ、見方によっては死にたがってるように見えるからね)
(自己犠牲的なアレだな)
そう、彼らが決めたのは調査の続行だった。パヴァリア光明結社に所属する手練れの錬金術師、それを三人も派遣してまで手に入れる必要があるもの……それを知らぬままに撤退する判断は取れなかったのである。
「……さーて、鬼が出るか蛇が出るか……」
そして、調査班は三人の錬金術師に続き、地下へと潜入して行く。果たして彼等は、無事に任務を完遂する事ができるのだろうか。
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「それ以上近付くなよ、化け物共! もしも近付けば……分かっているだろうなぁ?」
「っ!――貴様、民間人を……!」
一方こちらは化学兵器製造プラント攻略組……彼女達は現在、一人の少年の案内で小規模な村へと辿り着いていた。
彼女達がここに向かった原因は数十分前、政府軍と繋がっていたと思われるプラントの工場長……彼が逃走した事から始まった。
首謀者を逃がす事になってしまったS.O.N.G.の面々だが、そこで先程クリスに声を掛けた少年が登場し、工場長の行き先は自分の村がある方向だと語る。
それを聞き追撃を決断した装者達なのだが……そこで彼女達を待っていたのは、アルカノイズを展開し民間人を人質に取った軍人達の姿だったのである。
「ン~? 全部ぶっ飛ばしちゃダメなのカ?」
「っ!? おい化け物!貴様この状況を理解していないのか!?」
その中で最も前に立つ軍人……彼の手にはアルカノイズを操作する為の装置が握られ、更にもう片方の腕には、民間人の少女が人質として囚われていた。
「い、今はダメだよミカちゃん……村の人達がノイズに殺されちゃう」
「そっカー、それは可哀想だから我慢するゾ……」
実はミカはこの時、軍人達がアルカノイズ動かす前に彼等を八つ裂きにする自信があった。
しかし響に制止され、更に民間人の犠牲をゼロに抑えられるかは分からなかったため彼女は渋々振り上げた拳を下ろすのだった。
「っ!(……あの子に注意が向いてる今なら、いける!)」
だがミカが拳を下ろしたその瞬間に軍人が見せた隙を、この場に同行した少年だけは見逃さなかった。
自身への注意が逸れている事を確認し、彼はある物を調達するためにその場を離れる。そして……。
「っ!? な、なんだぁ!?」
彼が蹴り上げたサッカーボール……それが軍人の頭部に直撃し、手に持った装置と少女が彼の手から離れたのである。
それは、つまり……。
「ニシシッ♪ おやすみ、だゾ!!!」
「「「「「うわぁぁぁぁーっ!!!!」」」」」
彼等にとっての悪魔のような存在を、解き放つ事に他ならないのだ。
「クッ、クソガキがぁぁぁぁ!!」
その結果……彼の手から装置が離れた僅かな間に、民間人を囲んでいた軍人達の意識は刈り取られる事となり、更に……。
『~♪』
この場に駆け付けた三人の装者(切歌、調はプラントの守備のため残留)が聖詠を唱えシンフォギアを纏う。
たった一人の少年の機転によって百八十度引っくり返った戦況に、軍人達は既に涙目である。
「はぁっ!」
「ふっっっ!!!」
「りゃぁっ!!」
響の拳が、翼の持つ剣が、クリスが構えるガトリング砲が、次々とアルカノイズを葬っていく。そしてその間にも、赤い悪魔の手により強制的に夢の世界へと連れていかれる軍人達……もはやだれが見ても勝敗は明らかであった。
「クッ、クソォォォォォッ!! もう終わりだ終わり!オワリィィィィッ!!!」
「っ!? あいつ、まだ持ってやがったのか!?」
その絶望的な光景に精神をやられてしまったのか、とうとう発狂してしまう軍人の男性。
しかしそれがまずかったのか、彼は装者達にとって予想外の手段へと出てしまうのだった。
「うっ、うわぁぁぁ!!!」
軍人が悪足掻きでバラ撒いた結晶から現れたアルカノイズ……それが人質にされていた少女と、サッカーボールをぶつけた少年の周囲に展開されたのである。
「っ!? クソがっ!!!」
響と翼は距離が離れているため救援は間に合わない……つまり助けに入る事ができる
「っ!? 危ないっ!」
一瞬早くアルカノイズの触手が少女へと放たれ、少年は少女を庇うように前に出る。
そして、運命に導かれるように触手は足へと――
「おオ~!! すごいすごい!!アタシの足が無くなってくゾ!⦅大喜び⦆」
そう、間一髪飛び込んで来たミカの足へと絡み付いたのである。ちなみに、アルカノイズはこの時点でミカが飛び込むと同時に放っていたカーボンロッドでお亡くなりになっているが、オートスコアラーの足を破壊するという偉業を成し遂げたのはノイズ史上、彼が初めての事である⦅称賛⦆
「っ!? よくもミカちゃんを! 絶対に、許さないっ……!!」
しかしアルカノイズが奇跡の偉業を成し遂げたのも束の間、仲間の負傷に激怒した響により周囲のアルカノイズは間も無く全滅、村に平穏が訪れるのだった。
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「(あれはなんだ……?)」
≪あれ、人形だと思うわよ。 ま、製作者が別の時点でアタシ達と中身は全く違うでしょうけど≫
【錬金術師がわざわざ自動人形を回収する為に……あの人形に何かあるのかしら?】
(ミカちゃんくらい強い人形、とか?)
(それが事実なら、マジでシャレにならないんですけど⦅真顔⦆)
地下に隠された倉庫内……調査班の面々は発見される事無く、無事に潜入を果たしていた。
その視線の先には三人の錬金術師の姿があり、彼女達は人形のようなナニカを見つめながら言葉を交わしている所である。
「あっ、そう言えば術式、そのままにしちゃってたわ。ねぇサンジェルマン、もう切っておいても大丈夫よね♪」
「後は運び出すだけだし、構わないわ」
「いつも適当な事ばかり言うカリオストロにしては、よく気が付いたワケダ」
「誰が適当なのよ~! あーしはいつも頑張ってるでしょ~!?」
「ふっ、頑張っているのと適当なのは、全く別なワケダね」
「きぃ~! この子ったらいつからこんなに生意気になったのよぉ~!」
「……二人共、遊ぶのは後にしなさい」
「「は~い」」
そこから動かない所を見ると、どうやら彼女達の目的は人形のようなナニカのようだ。
その画像及び映像を確保し終えた調査班の面々……これで後は静かに撤退するだけなのだが――
「(よし、もう十分だ。撤退を――)」
現場指揮官を務める藤尭が撤退のハンドサインを出した時、事件は起こった。
ビィーッ!!!
「「「「「「「 っ!? 」」」」」」
調査班が撤退しようとした矢先に鳴り響いた機械音。その発信源は……藤尭の持つPCであった。
「この通知音、本部からの重要報告用の……?」
「し、しまった……通常のものとは別だったんだ、これ……」
鳴り響いた通知音は、本部からの重要報告が届いた場合にのみ鳴り響く通知音。それは通常のものとは別であり、藤尭は通常の通知音をオフにしたものの、そちらの方を切り忘れていたのである。
しかし実は、本部は今のタイミングでこの報告をこちらに送信したわけでは無かった。
本部が最後に報告を送ったのは十分以上も前……しかしそれは、この建物の周囲に展開されていた不可視の結界に阻まれ届いてはいなかったのである。
しかしその結界がたった今カリオストロの手によって解除された事で藤尭のPCへと辿り着き、盛大に通知音を響かせてしまったのだった。
「っ……どうやら鼠が紛れ込んでいたようね」
「隠れているのを自分達でバラすなんて、随分とうっかりさんなのねっ♪」
「だからといって、こちらに手加減をする義理は全く無いワケダ」
そしてその致命的な当然、敵に自分達の存在を知らせる事にも繋がってしまう。故に……。
「ガリィさん! ここは私が――」
そんな絶対的な窮地の中、マリアは一人足止めを行うために戦闘態勢を取ろうとする。
しかし……。
「「「っ!?」」」
それよりも早く動き出した者……その者が展開した氷の壁によって錬金術師の視界は塞がれ、そして……。
「何ぼさっとしてやがるマリアっ!!とっととその雑魚共を連れて行きやがれ!!!」
一体の自動人形……無限の動力を持つガリィ・トゥーマーンが仲間達を逃がすべく、錬金術師達の前に姿を現した。
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いきなり番外編シリーズ。 レイア・ダラーヒムと仲間達編
響の場合
「まずはミカの派手な突撃に合わせて私が弾幕を張る。その隙にお前は風鳴司令の背後に回り――」
「いいですねそれっ!! よぉーし、次は絶対師匠に勝つぞぉーっ!!」
「ああ、いつまでも地味な負けっぱなしではいられないからな」
修行仲間。ちなみに現在は打倒、風鳴弦十郎に燃えているようだ。
翼の場合
「レイア……少し話を、聞いてくれるか?⦅虚ろな目⦆」
「……ファラがまた、何かを仕出かしたのか?」
「……実家の地下に、怪しげな会合を開くための部屋を作っていた⦅虚ろな目⦆」
「……まるで隠れキ○シタンだな」
辛い時の相談相手。
クリスの場合
「おい、暇ならちょっと……つ、付き合えよ」
「……それは構わないが、行き先はまたファンシーショ――」
「わーわーわぁぁーっ!!! 分かってるなら言うな!!」
秘密を共有する仲(意味深)
マリアの場合
「ガリィは最近真面目にやっているか?」
「ええ、最近はまだ大人しい方よ。 そっちはどう?切歌達が迷惑掛けていないかしら?」
「ふっ、ガリィに比べればあの程度、地味に可愛いものだ」
「……比較対象の所為で麻痺してない? 本当に大丈夫?」
保護者仲間。
切歌の場合
「どうした、随分と退屈そうにしているが?」
「見ての通り、暇で暇で退屈なのデス……」
「そうか……実はマスターに地味に買い出しを頼まれていてな。お前が良ければだが、一緒に行くか?」
「いいんデスか!? 行く!行くのデス!」
何かと気遣ってくれるお姉さん。
調の場合
「ここ、初めて来ました……」
「だろうな。地味な店構えだが、色々な物があって地味に面白いぞ」
切歌と同じ。
未来の場合
「レイアさん、響がほんっとーにごめんなさい!」
「いや、謝る必要はない。 結果は自爆に終わったが、咄嗟の閃きにしては悪く無かったからな」
「まさか頭から弦十郎さんに突っ込むなんて……しかも結局、レイアさんにぶつかっちゃったし⦅遠い目⦆」
「ふっ、距離が近い相手がやんちゃだと大変だな」
「あはは、それはお互い様じゃないですか」
苦労人仲間。
弦十郎の場合
「ミカちゃんのパワーで百倍!それにレイアさんのパワーをプラスして千倍!そして私のパワーもプラスして……一万倍だぁーーーーっ!!!!!」
「つまり万策尽きた先の、いつもの派手な悪足掻きだな」
「いくゾぉぉぉぉーー!!!」
「そう来ると思っていたぞ響君!! はあああっ!!!」
勝てない⦅悲しみ⦆
次回ガリィが死んじゃったら打ち切りです。読者の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、どうかご了承ください⦅悲しみ⦆
次回も読んで頂けたら嬉しいです。