第百二十三話です。いつも通り話が進まない模様⦅遠い目⦆
「我々は今後パヴァリア光明結社についての調査を行い、それに並行して響君達シンフォギア装者のイグナイトモジュール再稼働、そしてリンカーの量産を目指す事になった。 それを果たすまでは、キャロル君達に負担を掛ける事となるが……すまない、よろしく頼む」
「風鳴司令の判断は間違っていない。あの狂人の錬金術師としての才能は、私がこれまで見た人間で最も優れていると断言していい程なのだから」
「えーっ!? あのエッチな男の人、キャロルちゃんより凄いの!?」
「距離が近い! ……こほん、もしもあの男が十年程度、真面目に錬金術の研鑽に時間を費やしていたのなら恐らく私は即座に敗北していただろう。それ程の才能差があると言えば分かるか?」
クソゲーの権化キャロルちゃんの参戦により、辛くもパヴァリア光明結社を撤退に追い込む事ができたS.O.N.G.陣営。
彼等は現在、本部にて作戦会議を行っている最中であり、話題はパヴァリア光明結社について、そしてこれからの予定についてである。
ちなみにキャロルも参加しているのだが⦅まだ足が震えているのでイスに座っている⦆、何故か彼女は真後ろに立つ響に覆い被さられており、仲睦まじい⦅?⦆姿を見せていた。
「キャロルがそこまで言うなんて……本当に人間なんでしょうか、その錬金術師は……」
「エルフナイン、それだとキャロルが人間じゃないって言っているように聞こえるわよ…… (と言いつつも間違いじゃないかもしれないと思う自分がいるわね……さっきの戦い、あの銀髪の錬金術師に少し同情してしまったもの……)」
「いやこいつの力は間違い無く人間の限界超えてるだろ……その証拠に最後のあれ、あと一秒早かったら人間の丸焼きが二つ完成してたぞ絶対……」
「ちなみにクリス先輩。ダウルダブラが修復中な所為で、今のキャロルは本来の力を出せないらしいのデス! つまり……」
「危うく今日のお昼ご飯が食べられなくなるところだったね、切ちゃん」
エルフナインから無意識にディスられるキャロルだが、彼女だって勿論好きで人間を辞めているわけではない⦅猛抗議⦆
本来の彼女は想い出の残量と相談しつつ、省エネを徹底しなければならない。しかし何処かの青い人形がバグった事によりその制限が撤廃され、半強制的に人類最強クラスへと押し上げられてしまったのである。
「お前達は私を何だと思っているのだ……錬金術師である私から見れば、ガリィの方が余程化け物だと思うのだが……」
「はぁ、いつもいつも全く……貴方達、雑談は後にしなさい。それより司令、日本への帰還命令はまだ下りないのですか?」
「ふむ……実は帰還許可については既に下りているのだが、現在バルベルデの機密資料を本部に向け移送中でな。 それが到着するまで、パヴァリア光明結社及び他勢力の襲撃が無ければ日本へ帰還する予定だ」
「……先の襲撃でパヴァリア光明結社は、多方面には仕掛けずエスカロン空港の一カ所のみを派手に襲撃していた。 空港を襲撃した理由は地味に不明だが、連中の目的は少数精鋭での人形の奪取と考えるのが妥当だろうな」
こうしていつものように脱線して行く彼女達をいつものように翼が注意し、そして本題へと戻るのがいつもの流れである。
現在、S.O.N.G.はいまだバルベルデに駐留していたが、実は国連からの帰還許可命令は既に下りていた。
しかしバルベルデの機密資料移送の役目をS.O.N.G.が引き受けたため、それが到着するまでは日本帰還はお預けという訳のようだ。
「私もレイアの言う通り再襲撃の可能性は低いと考えている。が、万が一を考え日本に着くまでは私もお前達に帯同する。 それまで私はエルフナインと共に、イグナイトモジュールとリンカーの解析を行うとしよう……何か一つでも、光明が見出さなければな」
「はい、キャロルと二人で頑張ります!」
「ああ、頼りにしているぞ二人共。 よし、これで今回の会議は終了とする。お前達も疲れているだろうから、休息は十分に取るように、以上解散!」
とにもかくにも、これで二日に渡るバルベルデ攻略任務は一旦終わりを告げたようだ。
果たしてパヴァリア光明結社の目的は何なのか、そして彼等と再び出会う事はあるのだろうか……各々が想いを馳せながら、彼等は日本への帰還を待つのだった。
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「おっさん、ちょっといいか?」
「ん?……ああ、クリス君か。 構わないが、どうかしたか?」
作戦会議終了から十分後……司令室には裏方の大人達だけが残り、装者達は休息を取るため仮眠室に、そしてレイア、キャロル、エルフナインの三人は研究室へと向かうため司令室から去った。
しかし弦十郎の前には何故か、先程司令室を去ったはずのクリスが訪れていたのである、彼女は何か用があるのだろうか。
「えっと、その……あたし達って今日中には日本に帰る、でいいんだよな?」
「ああ、そうだが……それがどうかしたのか?」
どうやらクリスは日本に帰る事が気になっているらしいが、それだけでは彼女の伝えたい事が分からなかったため、弦十郎は話の続きを促す事にした。すると……。
「そうか、そうだよな……えっと、そのだな……ちょっと今の内に行きたい所があるんだけど、外出許可とか……やっぱ駄目か?」
「行きたい所……バルベルデ国内でか?」
「ああ、ちょっと知り合い……友達の所に顔を見せに行きたいんだ。日本に帰った後だと、それも難しくなるからさ」
クリスは視線を左右に彷徨わせながら、本題を切り出し始めた。
その話を聞くと、彼女はバルベルデ国内に住む友達の所に顔を出したいらしいのだが……それを聞いた弦十郎の表情は何故か申し訳無さそうなものへと変化し、やがて彼はその表情を維持したままクリスへと答えを返した。
「そうか……すまないがクリス君、現状我々は国連からシンフォギア装者を含め、本部での待機を命じられている。 故に、俺の権限で君を外出させる事はできないのが現状だ」
「っ! ……あーそうか、そりゃそうだよな、あはは……。 あたしの方こそ悪かったな、おっさん。それじゃ用も済んだし、あたしは大人しく休んでるよ」
「すまんな、クリス君。 後日また会う機会を設けられるよう、スケジュールを調整する事で許してもらえるだろうか?」
「ああ、それで十分だよ、ありがと。それじゃーな」
「ああ、ゆっくりと休んでくれ」
弦十郎がクリスに返した答え……それは『外出許可は出せない』というものである。
その理由は今回のバルベルデ攻略任務が国連主導で行われている事にあり、その国連から現在、S.O.N.G.が本部待機命令を命じられている事にあった。
という事は勿論、その傘下にあるS.O.N.G.はその命令に従うのが当然である(不測の事態を除く)ため、故に弦十郎はクリスに外出許可を出せなかったのである。
「…… (まっ、仕方無いか……よし!また今度あたしの方から会いに行こう、絶対!) 」
その結果を残念に思いながらも、クリスは気を落とさずに前を向いていた。
今のクリスにとって彼女は大切な友人なのだから、また会いに行けばいいだけ……クリスはそう前向きに考え、本部の廊下を足取り軽く歩み、仮眠室へと向かうのだった。
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「先程は本当に申し訳ありませんでした。処分は如何様にでも受け入れます」
「ん? ああ、さっきのかい? 構わないよ、気にしなくても。 君が錯乱するのも仕方なかったからね、あの状況は」
「ですが、それでは――」
「わ~お♪ 局長ったらおっとこまえ~☆ 局長の器の大きさにあ-し、とぉーっても尊敬しちゃうわ~♪⦅熱い掌返し⦆」
「私は以前から局長を凄い男だと思っていたが、今回の事で確信を得る事ができたワケダ⦅便乗⦆」
一方、災厄から辛くも逃れる事ができたパヴァリア光明結社のトップチームは何をしているかというと……彼等は現在、局長アダムの導きで屋敷に見せかけた隠れ家へと訪れていた。
ちなみにその最中、局長をぶっ叩いた事についての罰をクソ真面目なサンジェルマンが受けようとしていたが、偉大なる局長は彼女を許してあげるつもりのようだ。
「それはよく知っているよ、僕自身が一番。 部下に慕われているからね、僕は」
「そうそう、いつも見た事も無い構成員にタカられ――じゃなくて慕われているのを見掛けるワケダ」
「ちょっと前にも~、レアな触媒をタダで気前良くあげていたものね~♪ あーし達が苦労して集めた触媒を、ね……」
「……はぁ、全く貴方達は……」
局長が寛大な許しを与えた事で、和気あいあいとした雰囲気を醸し出すパヴァリア陣営。
この光景を見れば彼等四人が強い絆で繋がっている事は想像に難くないだろう、今日もパヴァリア光明結社はアットホームで超仲良しな職場です!⦅ブラック企業の求人広告並感⦆
「それよりも着いたよ、眠り姫の寝室に。 歓迎してあげないとね、彼女との再会を」
「ええ、分かっています。 彼女は我々にとっても大切な存在……それを無下に扱うなど、あってはならない事ですから」
「そーそー、当然よね~♪」
「ああ、そういうワケダね (全く、心にも無い事ばかり言うのは疲れるワケダ)」
こうして仲良し四人組は目的の部屋へ辿り着くと入室し、備え付けられたベッドの方へと向かう。
そこには一人……いや一体の人形が寝かされており、目覚めの時を今か今かと待ち侘びていた。
「ティキが目覚める事で、私達の計画は大きく前進する……さぁ、起きなさい」
「遂にこの時が来たワケダね……更に私達のファウストローブが完成すれば、私達に敗北は絶対に……ぜっ、絶対に無いというワケダ⦅とある金髪幼女の姿を思い浮かべながら⦆」
「アレの相手は局長に務めてもらえばいいじゃない♪ねっ、頼りになるアダム局長さん☆⦅擦り付け⦆」
「困ったね、全く。 やるしかないじゃないか、僕が。そこまで言われてしまってはね」
サンジェルマンはとある豪華客船内部の倉庫から奪取した歯車を、人形の胸部へと嵌め込んだ。
すると、これまで身動き一つとしてしなかった人形がぎこちないながらも動き出し、そして……。
「おはよう、ティキ」
「っ――アっ、アダムだぁ~~~~~♪♪♪♪♪」
彼等の悲願である『神の力』の掌握……その為には必要不可欠な人形、ティキ。
アダム・ヴァイスハウプトにとって最も愛しい
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「不死の怪物との戦闘中、マリア・カデンツァヴナ・イヴのシンフォギアが突然、光を放ちギア出力が上昇した。 それで間違いは無いな、エルフナイン」
「はい、その際の上昇値についてはこの書類に記してありますが……キャロルはどう思う?」
バルベルデの機密書類を受領し、日本への帰還を始めたS.O.N.G.仮設本部である潜水艦。
その内部にある研究室では現在、エルフナインとキャロルが戦力増強のための解析を行っていた。
ちなみに出航からしばらくの間、彼女達はイグナイトモジュールについての解析と議論を続けていたのだが、その解析作業が煮詰まってしまってため現在はリンカーについての議論にシフトしている。
「……私が以前話した事を覚えているか? シンフォギア装者は爆発力が凄まじい反面、安定感に著しく欠けるという話をしただろう?」
「う、うん、覚えてる。 えっと、もしかしてキャロルはその話がリンカーの生成と関係があるって考えているの?」
「……断言するだけの根拠は無い。 だが、エルフナインが見届けたマリア・カデンツァヴナ・イヴの姿、そして私と戦った際に限界を超えた風鳴翼や私の全力を打ち破った立花響……他にも奴等がシンフォギアの力を限界以上に引き出した際には、一つの共通点があったと私は考えている」
不死の怪物との戦闘の際、気になった事をキャロルへとなんとなしに伝えたエルフナイン。
しかしそれはリンカーの生成とは全く関係無い……はずなのだが、それを聞いた知識チートキャロルえもんが急に語り始めたのである。
全く、今日のキャロルちゃんはどれだけ働く気なのだろうか。仲間達の無事を聞いて安心したのか、シャトーでぬくぬくとトランプ遊びをしている連中とは大違いである⦅悲しみ⦆
「共通点、ですか? それは、一体……」
「心に抱き、頭に描いた『強い想い』だ、エルフナイン。 まあ結論から言うと、その想いを司る脳領域の場所……それを突き止め、リンカーによりシンフォギアと脳……いや、心を繋げる事ができれば、或いは……」
キャロルが言いたい事、それはつまり『シンフォギアの力を発揮させるのは何らかの想い、感情とそれを司る脳の部分に関係している可能性が高い』という事である。
ならばその部分を突き止め、リンカーによりシンフォギアとのパスを繋ぐ事ができればリンカーの実用化に届くかもしれないと彼女は考えているのだ。
「『強い想い』を司る、脳領域……その場所を突き止めるには、シンフォギア装者である皆さんにも協力してもらう必要がある、でいいのかな?」
「ああ、見当違いの空振りに終わる可能性も大きいが、何もしないよりはマシだろう。 そうだな、まずは装者達が爆発的な力を発揮した際、どのような想いを抱いていたのかを聞き取ってみればどうだ?」
「ボクはキャロルの推測が外れているのを見た事がありませんし、何よりボク自身がキャロルを信じていいるんです。 だから今回も、ボクはキャロルにオールインします!ガリィもそれが一番確実だって言ってました!」
「……お前もあの大馬鹿者の影響を受けてしまったのか、可哀想に……⦅遠い目⦆」
キャロルの推測を聞いたエルフナインの出した答えは……キャロルえもんに丸ごと全乗りする事だった。
その理由は主に二つ……一つはエルフナインがキャロルの推測を聞いて、それが全くの見当違いだった事が一回も無かった事、そしてここ一ヶ月の間ガリィと一緒に過ごした結果、キャロルえもんに全部任せればいいんじゃね派筆頭の彼女に影響を受けてしまった事である⦅悲しみ⦆
「あ、あはは……最近はガリィと朝から夜まで一緒だけど、ボクは楽しいよ? 他の皆さんもよく遊びに来てくれるし、研究室が賑やかになりました」
「そうか。頑固で真面目なお前には、ガリィのような性格は丁度良かったのだろう」
「うん。だからキャロル達も早く、こっちに来てくれるとボクは嬉しいな」
「ああ、私も勿論そのつもりで考えている」
という事で煮詰まっているイグナイトモジュールより先に、リンカーの量産を目指す事にしたエルフナイン。
キャロルという心強い仲間がいるからだろうか、彼女の目に焦りは見られず、同時に必ず成し遂げるという強い意志が宿っていた。
「……そういえば、なんだけど」
「ん? どうかしたのか?」
それからも言葉を交わしながら解析を続けていた二人だがその途中、エルフナインはふと気になった事をキャロルに尋ねるのだった。
「今回の戦闘、キャロルはかなり大立ち回りしちゃったよね? えっと、そんなに目立って大丈夫なのかな……確かS.O.N.G.の関係者の人達の中に、そういうのを嫌がる人がいるんだよね?」
エルフナインが気になった……というより心配している事、それは今回の戦いでキャロルが大暴れした事に対する、関係者の反発だった。
特にその筆頭となるのが風鳴機関の大将を務める某護国の鬼系おじいちゃんなのだが、もしも彼が今回の一件を知った場合、イラっとする事は間違いないだろう。
「……その件については、風鳴司令達が誤魔化してくれる事になっているが、空港の一件を見ていた国連兵士も多数いるだろう。 こんな事が続けばいつか発覚し、不満を抱かれるだろうな」
「……それを防ぐ事も含めてリンカー、そしてイグナイトモジュールの復活を急がないと、だね」
「ああ、そうだ。 私がいつも戦場に駆け付けられるとは限らないからな」
それを防ぐためにも司令部の大人達が情報操作に回ってくれているのだが、今日のようにキャロルが戦いに参加し続ければ、それが発覚する日も決して遠くは無いだろう。
故にエルフナインは装者達の為、そしてキャロル達の為に全身全霊で研究を続けるのだ。
その成果が出るのは、そう遠くない日……かもしれない。
次回も読んで頂けたら嬉しいです。