ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百二十四話です。更新サボって申し訳ありませんでした。

そしてさらにもう一つごめんなさい。活動報告にも書きましたが百二十四話以降を作り直すことにしました。これでややこしい要素抜きのシンプルになった……はず!⦅目逸らし⦆




第百二十四話

 

 

「バルベルデでの任務が完了し、早三日経ったが……はぁ、こうも平和だと私だけ気を張っていたのが馬鹿馬鹿しくなってくるな……」

 

「ま、キャロルの奴にあんだけボコボコにされたしな」

 

「マリア達が会ったのも偶発的に起こった事らしいデスし、もう会う事なんて無いんじゃないデスか?」

 

「そうかもしれないね。 ……そういえばあの人達の目的って、結局なんだったんだろう?」

 

「不死身の化け物の使役、そしてバルベルデを掌握。 その背後にはキャロルが自分以上の実力と認めた錬金術師、パヴァリア光明結社統制局長、アダム・ヴァイスハウプト……はぁ、どう考えても嫌な予感しかしないわね」

 

 バルベルデから帰還を果たした三日後……装者達とパヴァリア光明結社の戦いは幕を開ける――なんて事は無く、彼女達は皆、平和な日常を過ごしていた。

 ちなみに今日はミーティングのため、全員がS.O.N.G.仮説本部へと集められていたのだが、それも先程終了したため今は休憩室で雑談に興じているところである。

 

「……あの人達、もう会えないのかな?」

 

「立花……」

 

「お前まーだそんな事言ってんのかよ……」

 

「響さん、あのサンジェルマンって人が気になってるみたいだね」

 

「っ!? ま、まさかそれは……こ、恋の始まりの予感がするのデス!」

 

「こら、切歌! 未来がいないからって調子に乗らないの、後でどうなっても知らないわよ全く……」

 

 

 一方、響は何かが引っかかっているようで、ここ数日は考え込んでいるような姿が増えていた。

 そんな彼女を心配する仲間達だが……サンジェルマンともう一度会う機会が不明な以上、今は時間が解決してくれるのを待つしかないだろう。

 

「っ!? な、なにを言っているんデスかマリアは! み、未来さんは笑って許してくれるに決まっているのデス!」

 

「うん、私もそうだと思う……ただし、目だけは笑ってないと思うけど」

 

「し、しらべぇ~……」

 

 と、こんな感じで日常を過ごしている彼女達。その姿は先日の事件など無かったかのように平和そのものである。

 

 

「ふぅ……そういえば先程、キャロルが司令を引き留めていたが……何かあったのだろうか?」

 

 

 そう、 この場所については(・・・・・・・・・ )平和であった。

 

 

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「パヴァリア光明結社を壊滅させる。慈悲も容赦も無く、完膚なきまでに」

 

「……キャロル君、突然何を――」

 

「何をって、死刑執行のお知らせに決まってるじゃない♪ マスターはそう……ガリィが傷つけられたことにとーーーーーーってもお怒りなのよお分かりかしらぁ~☆」

 

(傷つけられたっけ?)

(えっと、ほらあれだよあれ!あの時の!えーっと、ほらなんやかんやマリアさんに勝った時の!《大嘘》)

(申し訳ないが捏造はNG(真顔))

 

「っ!? 駄目だキャロル君!怒りで我を失っては――」

 

「違うわ検討違いも甚だしい! 大体傷つけられたも何も、そこのポンコツが勝手に自爆しただけだろう!」

 

 バルベルデでのいざこざが終わり、誰一人欠ける事無く帰還を果たしたS.O.N.G.陣営。その中の一人、司令である風鳴弦十郎もまた、緊張感から解放され胸を撫で下ろしていた。

 

 しかしこの世界において、平和は長くは続かないのがお約束であり……帰還から僅か三日後の彼を襲ったのは、最終兵器系金髪幼女によるパヴァリア光明結社への無慈悲な死刑宣告であった。

 

「自爆だなんて酷いですよマスター!ガリィは最適解を選んだだけなのに!なのにぃ……ねぇ、アンタもそう思うでしょ!?」

 

【はぁ、最適解かどうかは関係無く自爆でしょうに……】

(というかガリィちゃん、自分で『この自爆技って、なんか負けを認めるみたいで癪なのよねぇ』って言ってたしね)

(多分キャロルちゃんに構ってもらいたいだけなので許してあげて……)

 

「ふぇっ!?ボ、ボク!? え、えっと、確かにガリィはベストを尽くしたと思います、ハイ……」

 

「勢いに飲まれるな馬鹿者……はぁ、話を続けるぞ、いいな?」

 

「あ、ああ……その結論に至った理由を頼む、教えてくれ」

 

 つい三日前にはエルフナインとの会話でイグナイトの復活、そしてリンカーの開発を主軸に置くと言っていたキャロル。

 そんな彼女が弦十郎をエルフナインの研究室に呼び出し、何故このような物騒極まりない結論に至ったのか……その理由とは一体どのようなものなのだろうか。

 

「きっかけは昨日……そう、ミカが何気なく放った一言だった」

 

「ミカ君が……?」

 

「ねえエルフナイン、マスターとパヴァリアどっちが勝つか賭けない? アタシはもちろんマスターに賭けるから、アンタはパヴァリアに全財産賭けなさいよね♪」

 

「嫌です⦅即答⦆」

 

(パヴァリアのオッズは現在、26500倍です)

(大穴ってレベルじゃねーぞ!!)

(だって、全裸の変態さんがいくら強くても『お前それ獅子機の前でも言えんの?』って感じだし……)

 

 その発端は昨日、シャトー玉座の間にてキャロルが色々と頭を悩ませていた時のことであった。

『マスター、何か悩んでるのカ~?』 そう笑顔で彼女に話しかけたのはミカ・ジャウカーン……そして問題のシーンはこの後、キャロルの悩みを聞いたミカの答え……その中身である。

 

「私の悩みを聞き終えたミカは言った。『それなら先にパヴァリアを潰してしまえばいい』と……そうだ、私は考えすぎていた余り、愚かにも最短距離が見えなくなっていた」

 

 そう、パヴァリアとの再戦に備え準備を整えるのではなく……リンカーが無いならある内に決着を、イグナイトが無いなら限定解除で戦えばいいじゃない。

 と、つまりそういう事である(過剰戦力)

 

「パ、パヴァリアを先に……? だ、だが彼らが現在何処にいるかも――それにキャロル君達が我々抜きで彼らを捕縛した場合、君が危惧していた事態が起こってしまう可能性が――」

 

「奴らについてはガリィを除いたオートスコアラーと共に捜索する。 そして司令の危惧している部分についても問題は無い。何故ならこれは、あくまで六人の装者と我々による共同作戦になるのだから」

 

 後の問題はパヴァリア光明結社幹部達の潜伏場所の捜索だが……キャロルはこれを、これまで手に入れた金、モノ、人脈をフル活用し、彼らを発見するつもりであった。

 ちなみにこの結論に至ったキャロルは現在、この作戦の肝となるとある術式についての解析を全力で行っている。そしてそれが終わり次第、S.O.N.G.との共同作戦が可能になるという事のようだ。

 

「そ、捜索だと……? それに、我々との共同作戦……」

 

「そうだ。 僅かな足跡を辿り、裏側の情報網を駆使し発見、そして逃がすことなく叩き潰し、装者達と共に捕縛する。どうだ、単純だろう?」

 

「……だがS.O.N.G.に所属している以上、俺達は勝手な行動を――」

 

 だが響達シンフォギア装者がそれに参加することは、国連に正式に所属している以上簡単ではない。

 仮にそのような行動をすれば通常の任務に支障が出ることは明白であるため、申請したところで受理はされないだろう。

 

「旅行中に偶然、パヴァリア光明結社の構成員と思われる者を発見したとの情報を掴んだため、我々S.O.N.G.は現場へと向かう。なお、その情報はS.O.N.G.外部協力員であるキャロル・マールス・ディーンハイムからもたらされたものであるが、彼女は敵に発見されてしまっているため、同時に我々への救援要請も行っている……つまり、捜索はS.O.N.G.に籍を移したガリィ以外の私達が務める。そしてお前達はその間、普段通りに過ごすと良い」

 

 なので、キャロルはS.O.N.G.に籍を置いていない自分と人形三体で捜索をし、見つけた場合即座に戦闘を開始……と同時に外部協力員という肩書を使い本部に救援要請を送信、装者到着後に獅子機と限定解除で完膚なきまでに叩き潰す、という清々しい程の力押しである。

 

「外部協力員なら縛りはキツくありませんもんね~♪旅行だって行き放題☆ で、その間シャトーはどうするんです?」

 

「そ、そうだよキャロル! もしシャトーが取られちゃったら――」

 

「シャトー掌握までの時間、私達と限定解除を果たした装者達から逃げきれたなら奴らの勝利……そうなれば私は素直に負けを認めよう……まぁ最悪の場合、私はダウルダブラを犠牲にしてでも勝利を掴みに行くつもりだがな」

 

「……可哀想ねエルフナイン。アンタ、全財産……一万円くらい?をパヴァリアに――」

 

「賭けてませんしもうちょっともらってます《即答》」

 

(全裸の変態の人は? めっさ強いんでしょ?)

(ん~~、見ていないから何とも言えないんだよなぁ……)

【マスターより上って言われても、全然ピンとこないのよねぇ……だって、それってもう人間やめててもおかしくないレベルなんだもの】

 

 ちなみに鬼のいぬ間にシャトーを制圧するという手もあるにはあるが……現在、シャトーのセキュリティはキャロルにより超強化されており、一時間や二時間ではどうにもならない状態である。

 つまり、シャトーを掌握するには帰ってきた鬼から一時間以上も逃げきらなければいけないという……つまり無理ゲー、いやクソゲーと言うべきか、とにかく酷いものであった。

 

「それにアダム・ヴァイスハウプトという規格外の存在がいる以上、今後後手に回った場合、私はここを守らなければいけない可能性が高くなる。そうなれば装者も限定解除できずに、戦局は不利になるだろう……故にここで先手を取り、敵の頭を砕く」

 

「む、むう……」

 

 先手を取り最強戦力で脅威を排除する……これ程分かりやすく強力な策があるだろうか、いや、無い(反語)

 ……下手をすれば響達が来る前に終わってしまうかもしれないが、その時はその時である⦅目逸らし⦆

 

「はぁ~、何難しく考えてるのよアンタ……アンタ達はマスターに任せて、普段通りに過ごしてればいいだけなんだから。もっと力抜きなさいよ相変わらず暑苦しいわねぇ」

 

「弦十郎さん、S.O.N.G.の権限ではキャロルの行動を止める事ができませんから……」

 

(ちなみに普段通りに過ごせってのは、パヴァリアへの情報漏洩を避けるためでもあるのです!)

(逃がさん、お前だけは……ってことだね⦅死刑宣告⦆)

(奇襲が怖いからね、仕方ないね)

 

 しかし外部協力員止まりであるキャロルへの強制力を持たない以上、弦十郎に火が付いた彼女を止める手段は存在しない。

 そんな彼にできる事はただ一つ、できるだけ穏便に事が片付いてくれるよう祈るだけであった《届かぬ願い》

 

「そ、それは勿論分かっているのだがその、とんでもない事になってしまうような……背筋に悪寒が走ってな」

 

「は?そんなの当り前じゃない。ま~っちがいなく!マスターに見つかれば連中、誰に喧嘩売ったのかを死ぬほど後悔するハメになるわよ♪」

 

 容易には動く事ができない弦十郎や装者達にとって、これは渡りに船と言える提案なのかもしれない。

 しかし不安要素があるのも事実で、例えばいくら時間をかけてもパヴァリアの発見に至らない可能性も十分に考えられるのだが……それについてキャロルはどう考えているのだろうか。

 

「ただ、あまり長い時間を掛けるつもりは無い。捜索期限は十日とし、その間の情報共有は今ここに居る者、そして緒川慎次、藤尭朔也、友里あおいの三名までとしたいのだが、どうだ?」

 

 そのことに対しキャロルは、十日と期限を区切ることとしたらしい。

 それまでに発見できなければ、当初の予定通りリンカーとイグナイトについてエルフナインと共に解析を進め、パヴァリアの出方を待つことにするつもりなのだろう。

 

「あらあらまあまあ!響ちゃん達に余計な心配をさせたくないんですねマスター……ああなんてお優しい!流石はガリィのマスターですねぇ♪」

 

「ち、違うわ馬鹿者!変に期待させたくないだけに決まっとるだろう!《早口》」

 

「そっ、そうか……」

 

「あ、あはは……」

 

(絶対嘘だゾ⦅確信⦆)

(んだんだ)

【表情が柔らかくなった分、色々と分かりやすくなったみたいね】

 

 そんな風に味方を気に掛けながら、パヴァリア襲撃計画を語るキャロルちゃんだが……果たして堂々と高級ホテルのスイートルームに滞在しているパヴァリアの皆さんは彼女の調査網から逃げ切ることができるのだろうか。

 ……ちなみに風の噂だが、アダム局長は今の部屋を大層気に入っていらっしゃるようなので、場所を移る事は全く考えていないとかなんとか《悲報》

 

「とにかくっ!ガリィ以外は一時的にここを離れさせてもらう。 その間、私達の不在を装者達に勘繰られた場合はガリィ、お前がなんとかするように!」

 

「ん~、今回は茶化してる余裕も無さそうですし、それは全然構いませんけどぉ。 ただしぃ、後でご褒美よろしくお願いしますね☆」

 

「はぁ……常識的な願い以外は受け付けんぞ」

 

「は~い、分かっていますとも♪」

 

(皆さんはお気づきだろうか、ガリィちゃんが余裕が無い = かなりヤバい状況であるという事を……)

【時間経過による状況の好転が望めない以上、後手に回るのは悪手も悪手……せめて相手が別なら、どっしり構えることもできたのでしょうけど】

(ガリィちゃん達がS.O.N.G.に仕掛けた手段、それを丸々相手も実行できるからね、ヤバいのは仕方ないね)

 

 

「キャロル君、調査については我々にも手伝えることがあると思うが、助力は必要か?」

 

「あ、あのっ、えっと……ボクにも何か手伝える事は無い、かな?」

 

「いや、この件については我々の単独で行う……後に面倒事が起きた場合、それが最適解になるはずだからな。そしてエルフナイン、お前には活路が見え始めたリンカーの解析を頼みたい……それと詳細は伏せるが、状況次第ではある場所に向かってもらう事になるかもしれぬ」

 

「キャロル君……」

 

「??? ある場所、ですか?」

 

「ああ、事態がひっ迫した場合の話だがな、心の奥にでも留めておくといい」

 

(これが本当の最終手段ってやつ?)

(原作との矛盾が起こした奇跡の邂逅……よし、色々考えたけどやっぱりやめよう!)

【そうなった場合、何を要求されるのかしらね?】

 

 パヴァリア光明結社との出会いから三日、キャロルは敵の捜索を決定しただけでなく、今後の状況のシミュレート……特に悪い方の状況に陥った場合の対策を考えていたが、その一つについてはどうやらエルフナインの協力が不可欠なようだ。

 もちろん、そうなる前にキャロル自身は決着をつけるつもりなのだが、相手があのキャロル本人曰く彼女以上の才能持ちのスーパー全裸マンである。なので最悪を想定するのは当然だろう。

 

「は、はぁ……」

 

「……それは、俺には話せない類の事なのかキャロル君?」

 

「ああ、その通りだ。 少々荒い手段なのでな、聞かなかったことにしてくれると助かる」

 

 ちなみにその手段については割とアウトなため、最悪の場合装者達や司令への被害を最小限に留めるため現状では秘密らしい。

 ……もしもの場合はキャロルの独断という事で突き通すつもりなのだろうか。

 

「……君が窮地に陥れば響君だけでなく、俺も含め皆が悲しむ。だから無茶だけはしてくれるなよ」

 

「ふっ、分かっているとも。 どこぞの装者のような無茶はしないと、ここに約束しよう。 では私はシャトーに戻り、捜索を開始するが……ガリィ、後はお前に任せる」

 

「はーい、質疑応答はガリィにお任せでっす☆ マスターもお気をつけて♪」

 

(地下に潜ってたらアウトだけど、キャロルちゃんはそう思ってないみたいだね)

【穴倉で大人しくしているとは思えない。全裸の変態の様子からそう考えたらしいわね】

(全裸の変態紳士だけでもアレなのに、そんな風に思われるってどんな人なの……?)

 

 とまぁ、そんなこんなで自身の考えを伝え終えたキャロルは、転移封じの解析及びパヴァリア捜索を開始するため、足早にシャトーへと帰還するのだった。

 

 

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「我々は組織の構造上、どうしても後手に回る事が多くなるのは仕方無いのだが……それにしてもキャロル君は、思い切った選択をしたものだな」

 

「はい、まさかキャロルがこんな策に打って出るとは思いませんでした……」

 

 キャロルが帰還してから僅かな時間が過ぎた頃……弦十郎とエルフナインは、予想外の事態に戸惑いを隠せずにいた。

 

「やはり、アダム・ヴァイスハウプトの存在が彼女の危機感を刺激したのだろうか?」

 

「そうだとすれば、キャロルならもっと早くに決断していると思います。ボクにはそれが何なのか見当もつきません……」

 

 アダム・ヴァイスハウプトの力に危機感を感じたのか、或いはあの人形について何か気付いたのかもしれない。

 そんな風に推測を重ねる二人だが……実はこの部屋にはもう一人、そんな彼らをシラけた目で見つめる者が存在していたのである。

 

 

 

 

 

「はぁ~~~~~⦅クソでか溜息⦆  アンタ達ってば能天気で羨ましい事……今回の敵と自分達の状況、その両方が最悪に近いってのに。 はぁ、そんな事にも気づけないから毎回ギリギリの戦いになるんでしょうが全くもう……」

 

(キャロルちゃんに昨日色々聞いたからね、そりゃ君は理解しているよね)

(ま、まぁ毎回後手に回っちゃってるのは事実だから……)

(守るための組織だからそこはどうしようもないんだよなぁ……)

 

 そう、口だけ達者な我らが主人公、ガリィ・トゥーマーンである。

 どうやら彼女は、キャロルの真意について何か知っているようなのだが……何故彼女が知っているのかをネタバレすると、前日にキャロルから色々と聞いているからというだけである、相変わらず酷い。

 

「今回の敵と――」

 

「――ボク達の状況、ですか?」

 

「ええ、そう♪ まっ、今日は機嫌が良いから説明してあげてもいいんだけど、教えて欲しいかしら? ねぇ聞きたい、聞きたい?☆」

 

「あ、ああ、頼む」

 

「はぁ? たのむぅ? へぇ~、アンタはそんな態度で教えてもらえると思――」

 

「おっ、お願いします!ボク達に教えてください!」

 

「そうそう、脳味噌まで筋肉に占領されてる中年とは違ってエルフナインは賢くて偉いわねぇ♪ それじゃ、今回の経緯をガリィが簡単に説明してあげる☆」

 

【エルフナインは上手よね、この子の扱い】

(かなり長い付き合いだからな)

(長い付き合いのキャロルちゃんは御しきれていないのですがそれは……)

 

 という事でガリィによる今回の経緯に至る詳細説明が開始されたのだが……

 

 

「まず、マスターが後手に回るのをよしとしなかった理由、それがコレ(・・ )の存在よ」

 

 

(コレだよコレ!コレが諸悪の根源なんだよ!⦅憤怒⦆)

(はーつっかえ!誰だよこんなもん開発したおバカさんは!)

【マスターの技術も少し使われているとはいえ、パヴァリアはよくもまぁこんな物完成させたわよね】

 

 まずガリィはとある物を取り出し、司令とエルフナインへ見せつけたのだが、彼女取り出した物とは……

 

 

「ふむ……」

 

「……これって転移結晶、だよね?」

 

 そう、転移結晶である。しかしこの結晶の存在が一体、どのような理由でキャロルをパヴァリア絶対殺すガールへと変貌させてしまったのだろうか。

 

「ええ、そう――ってそこのおじさまはもう気付いたみたいだけど。まっ、これのせいでアタシ達に散々やられ放題だったもの、気付いて当然よね♪」

 

「……ああ、その通りだ。ガリィ君、続きを頼む」

 

「散々、ですか……あっ、ボクも分かりました!」

 

「ふふっ、よくできました☆ それじゃ、答え合わせはエルフナインにお願いしようかしら♪」

 

(対策の取りようがないんだよなぁ⦅諦め⦆)

(転移封じを解析できても、キャロルちゃんがずっとS.O.N.G.にいなきゃいけないっていう、ね……)

【攻める方が圧倒的有利なのよね。まっ、それは他でも言えることだけど】

 

 ガリィが言うにはどうやら『以前S.O.N.G.を苦しめた』ことが関係しているようだ。

 そしてそれを聞いたエルフナインも応えに気付き、これからは答え合わせの時間である。

 

「はい! えっと、そもそも転移結晶というものは地点登録により、特定の場所へと一瞬での移動を可能とするものです。地点登録には例外を除き、現地へと足を運ぶ必要がありそこで錬金術を用い結晶へと座標を登録します。ちなみに登録に掛かる時間はその錬金術師の実力によって大きく変化し、一週間掛かる人もいればキャロルのように十分足らずでできてしまったりと様々です。ですがここで最も重要なのは、錬金術師ならほとんどの人がそれをできる、という点……つまり人数さえいれば量産が可能であり、時間と資金さえ掛ければ多人数を一瞬で目的地へと移動させることが可能となるのです。つまりパヴァリア光明結社がS.O.N.G.への敵対行動を続ける場合、こちらがいくら警戒していても、彼らはいつでもこちらの懐に潜り込めるという事……もしも装者の皆さんが一人でいるところを狙われれば、イグナイトモジュールが起動できない今の状況では、とても……そしてそして!それだけではありま――」

 

「はいご苦労様! もう十分だし、これでも食べてちょっと静かにしてなさいな」

 

「ムッ、むぐっ!?」

 

(ちなみにキャロルちゃんはシャトーにいながらでも地点登録できるゾ、すっごい時間かかるけど)

(深淵の竜宮はそれだね)

(クッソ有能っすね相変わらず)

 

 しかしガリィ、ここで痛恨の人選ミスである。しばらく平和だったせいか、エルフナインの暴走癖を忘れていたのだろう。

 なお、暴走エルフナインは口にお菓子を詰め込まれたことで落ち着いた。相変わらず可愛い生き物である。

 

「ちなみにほとんど正解だけど一応聞いておこうかしら。アンタはどう、エルフナインと同じ?」

 

「……ああ、俺もエルフナイン君とほぼ同意見だ。ただ、一つだけ言わせてもらうならば……」

 

「……ふぅん? なにかしらぁ☆」

 

【……あらら】

(おっと)

(OTONAの様子が……)

 

 ちなみに司令も一つを除けばほぼ同意見のようだが……何故かそれを聞いたガリィは超ご機嫌である。一体何が嬉しかったのだろうかこの人形は……。

 

「狙われるのは装者だけとは限らない……例えば未来君、そして響君や翼の家族、リディアンに通う装者達の学友、藤尭や友里、そしてここにいるエルフナイン君も含め、非戦闘員が狙われる可能性がある、と俺は考えている」

 

「っ!? そ、そんな……!?」

 

「アハッ、アハハハハ! せいかいせいかいだいせいかぁ~い♪ ふふん、ストロベリーな甘ちゃんが少しは成長したじゃなぁい、ガリィが褒めてあ・げ・る☆」

 

【ちなみにこの子なら、前に言っていたけど初手で未来ちゃんを殺しに掛かるわよ】

(オートスコアラーこっわ!)

(ビッキーに粉々に壊される⦅確信⦆)

 

 そう、ガリィがニヤついていたのは、司令が気付いたことを察していたからだった。

 実は誰かさんの度重なる罵倒と嫌みのお陰(所為)で、前だけを真っすぐに見続けていた風鳴弦十郎という人物は、後ろに伸びる影にも目が行き届くように人格を作り替えられていたのである⦅悲しみ⦆

 その成果を実感したがゆえに、ガリィは大喜びしていたのだった。酷い。

 

「ガリィ君にそう言われると、なんというか複雑な気持ちになるが……これも一つの成長、という事か」

 

「そういうこ・と☆ まっ、それが一つ目の理由、ってことで次行くわよ♪ ほら、ぼーっとしてないでアンタもちゃーんと聞いてなさいな」

 

「っ!? うっ、うん……!」

 

(これだけで十分なんだよなぁ……)

【相手にその気が無いなら申し訳ない、と言いたい所だけど】

(どちらにせよ、禄でもない事企んでるっぽいし放置はできないよねぇ)

 

 とにかくこれで一つ目の理由『敵が奇襲し放題、超危険』の話は終了し、次に移るようだ。

 もうこれだけで十分な気もするが……ここで止めた場合、ガリィの機嫌がどうなるかが分かっている二人は何も言わなかった。

 

「よろしい♪ おほん、それじゃ二つ目なんだけど……時間がこちらに味方しない事、ね」

 

「「時間……?」」

 

「……まっ、これだけじゃ分からないでしょうし、簡単に説明するからそのまま聞いていなさいな」

 

「あ、ああ、頼む」

 

「はいはい頼まれました――マスターが考え抜いて攻めるのを決めた主な要因は三つ……ダウルダブラの修繕状態、イグナイトモジュールの再起動、そしてリンカーの生産……さて、まずはダウルダブラの事から説明しようかしら」

 

(イグナイト君がサボってるのが悪い⦅半ギレ⦆)

(ダウルダブラ君は半壊状態でこんなに頑張っているのにイグナイト君さぁ⦅呆れ⦆)

【どこにも異常が見当たらないっていうのが余計に絶望的なのよねぇ】

 

 そしてガリィは二つ目の要因『時間がS.O.N.G.陣営の敵』について語り始めるのだが……これについてキャロルは三つの不安要素、そのすべてが時間経過による改善が難しい、と判断していたため今回の決断に踏み切ったようだ。

 

「待ってガリィ! リ、リンカーの生産についてっていうのは――」

 

「あーはいはいそれもちゃんと説明するから、今は黙って聞いてなさいってば」

 

「自身が携わっている以上気になるのは分かるが、少しの間の辛抱だエルフナイン君」

 

「っ……はい……」

 

(完成を待ってる時間的余裕が無いんや、すまぬ、すまぬ……!)

(あと三歩、いや二歩くらいのところまで来てるのにねぇ)

【ウェル博士はとんでもない天才だった、って事でしょうね】

 

 なお、イグナイトモジュール再起動とリンカーの生産にはエルフナインは大きく関わっているが、イグナイトモジュールについては進展ゼロなため彼女は何も文句は無い。

 しかし一方、リンカーの生産については僅かに希望が見え始めた所であり、彼女はそれが要因とされていた事に驚いたのである。

 しかしその抗議の声に対し、ガリィは面倒くさそうな表情でマイペースに話を進めるのであった。酷い。

 

「って事でダウルダブラなんだけど、パヴァリアとのイザコザで展開したでしょ?そしたら思っていたより状態が悪いみたいなのよね。ちなみに分かりやすく言うと……今、獅子機を全力起動――あ、蒼い目の状態ね。その状態にするとほぼ確実にアウトらしいわ」

 

「そう、か……やはり聖遺物についての専門家無しでは、厳しいという事か」

 

(赤目で十分やろヨユーヨユー!⦅慢心⦆)

(そもそも街中で獅子機が戦う時点で色々と崩壊確定なんですが、それは大丈夫なんですかね?)

【せ、世界の平和が掛かっているもの……後は偉い人達に任せましょう⦅目逸らし⦆】

 

 ダウルダブラ……当初の予定では、キャロル自身の手で完全に修復できる、と彼女は思っていた。

 しかしパヴァリアとの戦闘で纏った所、彼女が期待していた出力が発揮されなかったことに気付き……今に至るという訳である。

 ちなみに、ダウルダブラが本来の出力を取り戻していた場合、最後の攻撃でサンジェルマンは間違いなくお星様になっていただろう。コワイ。

 

「ええ。ちなみに『聖遺物についての文献を読み漁り、長い時間を掛ければ完治させるのは不可能ではない』らしいんだけど……まっ、つまり生半可な時間経過じゃダウルダブラは直らないって事ね」

 

「時間が、味方しない……つまり、数日待っても万全なキャロルは戻って来ないって事、だよね?」

 

「おバカ、数日どころか数か月待っても戻って来ないわよ。まっ、マスターならそれでも余裕綽々なはずなんだけど……なーんか面倒な変態男がいるんでしょ?」

 

「……パヴァリア光明結社統制局長、アダム・ヴァイスハウプト」

 

「そうそうそれ――って今はどうでもいいわね。それじゃ、残りの二つは纏めて説明するわよ」

 

(了子さん……)

【その人が味方になってくれていたら、という所かしら?】

(懐かしいな……『死ね!老害!』って感じで殺意百パーセントだった日々が⦅遠い目⦆)

 

 万全な状態が期待できない以上、戦力が整っている今の内に先手を取り叩き潰す……それがキャロルの出した結論である。

 もしも敵にアダム局長がいなければ別だが、強大な敵にいつ奇襲されるか分からない状況を良しとはしない、という事なのだろう。

 

「っ、リンカーの、生産……」

 

「……エルフナインには悪いけど、イグナイトモジュールは何をどうしてもうんともすんとも言わない状態よね? まるで魂でも抜けてんじゃないの、みたいな」

 

「う、うん……それは分かるけど」

 

「で、問題はリンカーの生産なんだけど……希望が見え始めたのはいい、けど今度は最後の所で行き詰ってるわよね? で、それはいつになったら完成するのかしら?」

 

(言い方ぁ!)

【この子にしたら優しい方よ、だって相手がエルフナインなんだもの】

 

 残りの二つ……まずはイグナイトモジュールについてだが、こちらは現状全くと言っていい程に進展が無い、まさにうんともすんとも言わない状態である。

 一方、リンカーについてはエルフナインが解明に近付いているのは間違いない――が、その残量は僅かに三本……つまり三人が同時にギアを纏えば在庫切れという状態だった。

 

「っ!? で、でも!もう少しなんだよ! マリアさんに手伝ってもらって、ボクならできるって言ってくれて……キャロルだって、ガリィだってそう言ってくれたはずなのに……」

 

「エルフナイン君……」

 

「そうね。アンタなら辿り着けるって、アタシだってそう思ってるわ」

 

(うん、私も思ってるいや確信してる⦅唐突な自己主張⦆)

(でも反則チートコンボ使うときに、マリアさん達がいてくれないと困るんだよぉ)

【生半可な威力じゃない上、イグナイトについてもカバーできるんだもの。使わない手は無いわよね】

 

 エルフナインの頑張りを間近で見守っていたキャロルやガリィ。この二人は今もエルフナインの事を信じている。

 しかし、それを差し引いても実は今回、マリア達三人がギアを纏えない事を避けたい事情が存在していたのだ。

 

「そ、それじゃどうし――」

 

「最後のリンカー使うのとアンタが完成させるの、どっちが早いのかって事よ。 いい、エルフナイン?アタシもマスターもアンタを応援してるしそれは今も変わらない、だからこそマスターはアンタに研究を継続するように言った、ここまではいいわね?」

 

「えっ、そっ、それは嬉しいけど……」

 

「そこは素直に喜んでいいわよ? でもそれとは別に、マリア達のリンカーが残っている間に決着を付けたい理由、これは分かるかしら?」

 

「……リンカーが、残っている間に……?」

 

(奇跡を起こすんじゃよ)

(なお、相手にとっては地獄以外の何物でも無い模様)

【こっちに喧嘩売るのが悪いんじゃない?⦅適当⦆】

 

 その事情とも関係するのだが……パヴァリアにアダムという超戦力が存在すること、そしてサンジェルマン達三人の個々の力が、ギアを纏った装者達より上位に位置するする事が一つ。そして……。

 

「そっ♪ マスターと装者達には、とてつもない切り札が残ってるでしょう? アンタ達はそれを――全力のマスターすら超えて見せたその奇跡を忘れたのかしら?」

 

「奇跡……っ! エルフナイン君、俺達は見て、聞いたはずだ。絶望の淵から装者達を救った奇跡のような景色を……!」

 

「奇跡のような、景色……ハッ!そうです、限定解除……! キャロルがいれば、皆さんは限定解除に至ることができる……逆に考えれば、マリアさん達が離脱してしまえば……」

 

「そう、限定解除した装者三人という、強大な戦力が土壇場で使えないなんて事は絶対に避けるべきよ。 はぁ、悔しいけどアタシ達の中で連中に勝てそうなのはミカちゃんくらいなんだもの……その状況でマリア達まで離脱なんて、許容できるわけないでしょ……クソが、マスターを守るのはアタシ達の仕事だっていうのに、情けないったらありゃしないっての……」

 

「ガリィ君……」

 

(レイア姉さんもいけるんじゃない? 互角に戦えてたらしいし)

(ファラ姉さんも本気出したらやばくない? 見えない刃とか出せるじゃん?殺傷力高すぎてほとんど使わないけど)

(ミカちゃんは言わずもがなだよねぇ)

(そうだよ⦅便乗⦆)

【……】

(ガリィさんが遠い目をしておられる……)

(相手が普通の人間なら超強いんだけど悲しいなぁ……)

 

 キャロルが歌う → フォニックゲイン展開 → 限定解除 という反則級の流れが存在するため、これを装者六人揃った状態で完成させたいがため、キャロルは早期の決戦を望んでいるのである。

 一応他にもマリア達が非戦闘員化する=守らなければいけない対象が増え、逆に守るための人員が減少するという理由もあるが、最も大きな理由は当然限定解除についての部分だろう。

 

「と・に・か・く! 別にアンタを否定してるとかそういうんじゃないのよ、分かった?」

 

「う、うん」

 

「うむ、どうやら丸く収まったようだな!」

 

「あー、なんだか疲れたから最後のはマスターのありがた~い一言で適当に済ますわよ。『パヴァリアうんぬんよりも、あの男が何かを仕出かそうとしているという時点で私は嫌な予感しかしない、故に潰す』 はい、以下略!解散!」

 

(完全にやべー奴扱いで草)

【分からないものが一番怖いという事ね、きっと】

(しかも全裸を見せつけて来るという……そりゃ怖いわな)

 

 そして最後はかなり投げやりなものの、今回の件について説明を終えたガリィ。ちなみに彼女の籍はS.O.N.G.にあるので、しばらくキャロルとは別行動となるのだが……こればっかりは仕方ない上、今回の敵が色々な意味で脅威であるためガリィも渋々だが首を縦に振らざるをえなかったようだ。

 

「た、確かにそうかもしれないけど……」

 

「アダム・ヴァイスハウプトの目的、か。 装者達とキャロル君が見た彼の人物像を考えると……全く読めんが、確かに碌な事では無さそうだ」

 

「まっ、余計な事考えずに普段通りに過ごしてればいいのよ――という訳でエルフナイン、今日はアタシも手伝ってあげるからアンタはリンカーの解析を頑張りなさい、いいわね?」

 

(パヴァリアの目的……現状の手掛かりって人間の魂から抽出したエネルギーを回収していること、例の自動人形、あと不死身の怪物くらい?)

(エネルギーを回収して不死身の怪物軍団でも作る気なんじゃない?)

【だとしたら自動人形の役割が分からない……いえ、人形だけは別の用途って可能性もあるわね】

 

「えっ……うん、ありがとうガリィ!ボク、頑張るから!」

 

 纏めるとこれより十日間、ガリィを除くキャロル陣営はパヴァリア光明結社の捜索を行う。

 その間S.O.N.G.陣営は普段通りに過ごし、外部協力員キャロルからの救援要請を待つ。

 そして……限定解除した装者六人とキャロル陣営、総勢十一名による袋叩――じゃなくて一斉攻撃によりパヴァリア光明結社幹部及び自動人形を捕縛し、日常を取り戻す……これが、キャロルが描いた今回の作戦である。

 

「連中が見つからなかった場合、リンカーがあると無いとじゃ全然違うんだから、頼むわよ本当に」

 

「頼むぞエルフナイン君! よし、俺も万が一本部が襲撃された場合に備え、あの火球の迎撃手段を特訓――」

 

「余計な事すんなっつってんだろうが筋肉ダルマ! アンタはいつも通り脳筋共の世話してりゃいいのよこのおバカ!分かった!?分かったら返事!!」

 

「う、うむ……」

 

「あ、あはは……」

 

(アレ、火球ってレベルじゃないと思うんですけど)

【迎撃手段ってまさか、正面から殴り飛ばす気じゃないでしょうね?】

(余波でOTONA以外が死ぬ⦅確信⦆)

 

 ちなみに本部については一カ所に長時間留まらない事で奇襲を避ける事。そして未来や響の家族、装者の友人たちについては、S.O.N.G.の監視を付けることとなった(異変が起きた場合に迅速に察知するためであり、護衛では無い)

 

 

 

 そして、平和に時は流れ――

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、最高級ホテルのスイートに、堂々とご宿泊……その上、多数の構成員を堂々と出入りさせて周囲の噂になっているとはな……はッ、ハハッ、ハハハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、すっごい楽しそうだゾ!」

 

「フフッ、最高級ホテルに長期滞在なんて羨ましい事ですわね」

 

「遊びに来いと派手に誘われていますが、いかがいたしますかマスター」

 

 

 ――決戦の時

 

 

 

 

 

「ハ、ハハハハ……これより現地に赴き、包囲網を形成する――行くぞ」

 

 

 

 

 

 獅子が、大蛇へと牙を剥く。

 

 

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「喜びなさい立花響、君の願いはようやく叶う……多分おそらくめいびーね♪」

 

「またそれなの!? もー!いい加減どういう意味なのか教えてよぉ~!」

 

「響の願い……それって、やっぱり……」

 

(おいいいぃ!毎日言ってる所為で未来さんが感づいてるダルルルルルォ!?)

(未来さんは外部協力員だからセーフ⦅謎理論⦆)

【はぁ、今頃マスター達はどうしてるのかしらね……】

 

 ちなみにその頃、ガリィは某愉悦神父ごっこをしつつ響をからかって遊んでいた。酷い。

 

 





キャロルちゃんを活躍させなきゃ⦅使命感⦆



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