ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百二十五話です。

※ 百二十四話以降を作り直していますので、読んで頂ける方はそちらを先にどうぞ。




第百二十五話

 

 

「日本各地のレイラインを奪取した後、儀式を行い神の力を顕現……その力を以てキ、キャロ、キャロル・マールス・ディ、ディーンハイムをげ、撃破し、しま――」

 

「……それよりも大丈夫かい、君は。 怠ってはいけないよ、体調管理は」

 

「こんな大事な時に風邪をひくなんて、流石は三級錬金術師って事なのね!」

 

「誰の所為でこうなったと思っているワケダ、この男は……」

 

「大丈夫よサンジェルマン、あーし達が付いてるからねっ。落ち着いて深呼吸して、ゆっくり話しましょ」

 

「カリオストロ……ふぅ……ありがとう、少し落ち着いたわ」

 

 キャロル陣営がパヴァリア幹部の潜伏先を発見する数日前、彼らは局長お気に入りのスイートルームにて、今後の話し合いを行っていた。

 ちなみにサンジェルマンについては、キャロルに殺されかけた瞬間がトラウマになっている(時間が経ってから恐怖を実感した)ため、彼女の事を思い出すと体中が震えるという後遺症を患ってしまっていた。実に気の毒である。

 

「? あるのかい、体調を崩した原因が」

 

「サンジェルマンは怒られたくないからそう言ってるだけなのよ!嘘つき!」

 

「……はぁ、もう説明する気力も失せたワケダ。 サンジェルマン、続きを」

 

 なお、局長はこの通りの平常運転であるが、今は彼の腕にしがみつくティキが増えている。

 ちなみに彼女の性格を簡単に説明すると、アダムLOVEでそれ以外は塵芥。こんな感じであるため、幹部達の心労がさらにプラスされるという悲しい状態になっていた

 

「え、えぇ――おほん……現在、我々の持つ資金を使い構成員――いえ、傭兵と言った方が正確でしょうか。とにかく、彼らに大規模な召集を掛けています」

 

「押し切るという事かい、数の力で」

 

「はい、数の力を以て各地のレイラインを解放します。一度キャロル陣営に破壊されたレイラインは、現在も裸同然、できても応急処置程度の封印であるはず……よって、我々でなくとも攻略は容易に行える、と私は考えます」

 

「神の力さえ手に入れれば、勝利も一緒に転がり込んでくることは明白なワケダ。つまり、我々はそれに全力を注げばいいというワケダね」

 

「儀式を行うのには、どうしても日本のレイラインを解放して、儀式を行う必要があるのよねぇ……お陰でもう私達の財布、スッカラカンなんだからもー!」

 

 そして本題に戻るが、サンジェルマン達は現在、日本各地に存在するレイラインを解放することを目論んでいた。

 ちなみにえ、なんで危険地帯に飛び込む必要があるの?と思うかもしれないが、勿論理由はある。

 そもそもアダム達の目的は、自動人形ティキに神の力を宿らせ神の力を顕現させることなのだが……そのために行う儀式の際、どうしても日本のレイラインを解放させる必要があるのだ。

 なので大規模な襲撃を掛けレイラインを解放し、神の力を顕現させる。そしてその強大な力を以てしてキャロルを含むS.O.N.G.陣営を撃退、それがサンジェルマンの描いた勝利への近道だった。

 

「ふむ……一つ教えてほしいな、いつになるのかをね」

 

「アダム~、えへへへへへぇ~」

 

「六日……いえ、五日で全ての準備を整えます」

 

「それまであーし達はろくでなし共の魂、回収しているわね♪」

 

「数百人分も集めれば足りると思うワケダ」

 

 勝利を掴むため、サンジェルマンは構成員の召集と備品の準備。そしてカリオストロ、プレラーティの二人は神を顕現させるため必要不可欠なエネルギー回収を担当するようだ。

 ……え、局長の仕事? あ、ちょっと分からないですねそれは……⦅目逸らし⦆

 

「五日か……いいね、その案は。 任せてあげようじゃないか、信頼する君達に」

 

「ありがとうございます。カリオストロ、プレラーティ――始めるわよ」

 

「はーい♪ あーし、頑張っちゃうんだから☆」

 

「はぁ……たった五日で最低数百人……私はそこの能天気のようには思えないワケダ」

 

 こうして信頼する部下に丸投――ではなく大任を任せて見せた器の大きな局長の有難いお言葉により、サンジェルマン達三人は動き始めた。

 そしてこれより五日間の彼女達の激務は、正に壮絶を極めていた……。

 

 

 -  一日目  -

 

 

「な、何をする貴様ら!俺様を誰だと思って――」

 

「そんなのし~らない♪ はい、さよーなら☆」

 

「これで三十四人……少しペースを上げる必要があるワケダ」

 

 

 

「サンジェルマン様、我々はどのように致しましょう?」

 

「ホテルの部屋を抑えてあるからそこで待機していなさい、それと――上辺だけの敬語はやめなさい、気分が悪くなるから」

 

 

 

「ねえアダム見て見て! この服可愛い!!」

 

「そうかい……それならサンジェルマン達に――ああ、そうか。頼めないね、今は」

 

「もう!肝心な時にいないんだから、あの三馬鹿トリオは!」

 

 

 一日目……カリオストロとプレラーティは悪い人達の魂の回収を、そしてサンジェルマンは集まり始めた構成員の管理を行っていました。

 一方、局長はそんな彼女達の事を忘れそうになりながらも、平和だね……と黄昏てみたりと、優雅に過ごしていました。

 

 

 -  三日目  -

 

 

「はぁ……ねえプレラーティ~、まだ駄目なの~? あーし、そろそろ休みたいんだけどぉ」

 

「そんな時間的余裕はこれっぽっちも無いワケダが……そんなに嫌なら、サンジェルマンに黙って民間人を襲ってみればいいワケダ」

 

「それだけは絶対にダメダメダメあーし頑張るから絶対にダメ~~っ!」

 

「……はぁ、相変わらず単純で分かりやすい奴なワケダ」

 

 

「はぁ? 目的は一切話さないだってぇ?」

 

「何よそれ、いくらなんでも酷くなぁい?」

 

「文句があるなら立ち去ればいい。その上で、それでも成功報酬が欲しいと言う者は残りなさい」

 

 

「ねえねえアダムアダム!ニホンに着いたらデートしよ、デート!」

 

「いいとも、時間があればね。 そうだ、今の内に調べておくといい、観光名所をさ」

 

「うん!暇だし、そうする!」

 

「ああ、そうするといい。さて……何をしようか、僕は」

 

 

 三日目……カリオストロとプレラーティの二人は、一日三十分の休憩を除いて魂の回収作業を続け、そしてサンジェルマンは増え続ける構成員との間にトラブルが発生し始め、その対応に苦慮していました。

 一方、局長とティキは暇を持て余しつつも、敵地である日本についての勉強会を行っていました⦅好意的解釈⦆

 なお、サンジェルマン達の事はまだかろうじて覚えているようです。

 

 

 -  五日目(最終日)  -

 

 

「お、俺が何をやったっていうんだ……お、お前達だって同類ダルルルルルォ!?⦅発狂⦆」

 

「あら、おバカさんね♪――お前等と同類の外道だからこそ、こんな事を平気でできるんだろうが」

 

「はぁ、なんとか間に合ったワケダが……カリオストロ、口調が昔に戻ってる」

 

「……へっ?――やーんもう恥ずかしいぃ~!!」

 

 

「戦力は揃い、大規模転移の用意も済ませた。そして魂の回収も……二人共、本当にありがとう……」

 

 

 

「ねえアダム~」

 

「なんだい、ティキ」

 

「ううん、呼んでみだだけ~♪」

 

「ハハハ、お茶目で愛らしいね、君は」

 

 

 五日目……二人は成し遂げた。そしてサンジェルマンも準備を整えた。以上!終わり!

 

 

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「二人共、調子はどう?」

 

「あーしもプレラーティもたーっぷり寝たから大丈夫よ♪ ねっ、プレラーティ?」

 

「ああ。それこそ泥のように眠っていたワケダ」

 

「ふむ……判断は正しかったようだね、僕の。 正解だったろう?一日の休暇を設けたことは」

 

「アダムの優しさに感謝するのよ、三級錬金術師共!」

 

 そして現在は六日目……ではなく一日の休養を設けたため、七日目だが……百人はいようかという錬金術師の集団は、高級ホテルの玄関前で堂々と集会を行っていた。

 最早隠れる必要は何処にもない、という意思表示だろうか……とにかくホテルの周囲は不気味な雰囲気に包まれていた。

 

「言われずとも、局長のご慈悲には感謝しています……それで、日本での動きについてですが――」

 

「分かっているさ、二度も言わなくとも。 それより始めようじゃないか、サンジェルマン。君も待ち望んでいたんだろう、この時を」

 

「……はい。 これより我々は日本へと集団転移し、目的ポイントの破壊活動を行う!

 

「お前達に望むことはただ一つ……完璧に破壊しろ。そうすれば報酬は好きなだけくれてやるというワケダ」

 

「頑張った人にはボーナスも奮発しちゃうんだから♪ つ・ま・り!億万長者も夢じゃ無いわよ~☆」

 

「「「「「「オオオオオオっっっっ!!!!!!」」」」」」

 

 サンジェルマン達の言葉を聞き、地に直接響くような咆哮を奏でる老若男女、様々な風貌の者達……しかしそれとは逆に、彼らの目的は共通していた。

 

「では最後に……パヴァリア光明結社統制局長、アダム・ヴァイスハウプト様よりお言葉を頂戴する。局長、お願いします」

 

「いいとも。僕は得意なのさ、このような演説がね。 だからよく聞いておくといい、君も」

 

 そしてついに出立の時……なのだが、その前に大将であるアダム局長からの有難いお言葉をいただけるようだ。

 なお、その光景を見つめる錬金術師達の目は全員が$マークである。お金は大事だからね、仕方ないね。

 

 

 

「さて、諸君……行くとしようか、僕と共に。 そして手に入れようじゃないか、世界を」

 

 

 

「キャー!!やっぱりアダムはかっこいいぃぃぃぃ!!!」

 

「「「「「「ウオォォォォォォォォォっ!!!!!(金!金!金ぇぇぇぇっ!!!)」」」」」」

 

 

「???(えっ……そ、それだけなの?)」

 

「……よくもまぁ、これだけの精鋭が集まったものだ……全く、嬉しくて涙が出そうなワケダが」

 

「奇遇ね、プレラーティ。私も全くの同意見よ」

 

 局長の有難~い言葉に大興奮するオーディエンス達と、何故かテンションが急降下していくサンジェルマン達。

 ま、まぁ後はこの精鋭達と共に日本に上陸するだけなので、何も問題は無いだろう。

 

「それじゃ行こうか、日本に」

 

「はい……。 ではこれより、我々は転移術式を使い日本へと移動する!全員、その場を動くな!」

 

 いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないと思ったのか、どうにか気を取り直したサンジェルマン。

 彼女はこの日のために特別に準備した、通常の物よりもかなり大きな転移結晶を取り出し――

 

 

「さあ、始めましょう……支配からの脱却を」

 

 

 支配からの脱却――長い、長い時間を掛けた彼女の悲願を達成するための大きな一歩を踏み出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――何故」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はず、だった。なのに――

 

 

 

 

「――何故、術式が起動しないの……?」

 

 

 

 

 サンジェルマンの両足は依然、日本とは遠く離れた大地を、しっかりと踏みしめていた。

 

 

「……失敗かい?」

 

「ブーブー!何やってるのよサンジェルマンのバカっ!」

 

「何が、何が起こっているワケダ!? サンジェルマンがこの程度の術式、失敗するわけが無いっ!!!」

 

「――違う、これは……プレラーティ、この現象はあーし達が――」

 

 

 状況が把握できず、茫然自失状態のサンジェルマン。その姿を見たアダムは僅かに不快感を示し、それにプレラーティが反発する。

 更に集まった錬金術師達も雲行きが怪しくなったことに気付き騒めき始める中、唯一カリオストロだけがある事に気付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本まで送ってくれると聞いて来たのだが……これは派手に困ったな」

 

「そうですわね……どうしましょう、今から帰りの飛行機のチケット取れるかしら?」

 

「ひこうきっ!? アタシ乗ったことないんだゾ!乗りたい乗りたイ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、遅い――――パヴァリア光明結社の眼前に現れたのは三体の自動人形……既に逃走経路は、彼女達の手により完全に封鎖されている。

 

 

 

 

 

「――お前、達は……な、何故、この場所に――」

 

 

 

 

 

 そして、彼女達がここに現れたという事は、すなわち――――

 

 

 

 

 

 

 

「――お前達が誘ってくれたからに決まっているだろう?――――ふふっ、私達を舐め腐ってくれて、本当にありがとう♪」

 

 

 

 

 

 

 

「――――転移、封じ……か、解析し、自らの物にしたというの? こ、この短期間で……」

 

 

 

 

 

 

 

 金の髪を靡かせ、天使のような笑みを浮かべる少女……当然、彼女もこの場所に駆け付けているという事。

 

 

 

 

「なによあの人形、全部全然可愛くない! アダム~、ティキ以外は絶対見ちゃ駄目だからね!!」

 

「ふむ……君の失態だね、サンジェルマン……だが許すよ、僕は。寛大な心で、君の失策をね」

 

 

 

 

 だが、その事実を理解しつつもこの場における最高戦力、アダム・ヴァイスハウプトは動かず、二番手の実力を持つサンジェルマンも動揺し、動けない。

 

 

 

 

 

「「ティルフィングっ!!!」」

 

 

 

 

 

 故に――動いたのはカリオストロ、プレラーティ、二人の錬金術師。

 

 

 

 

 

「……レイア、ファラ、奴ら以外はお前達に任せる――一匹たりとも絶対に逃がすな」

 

「「はい、お任せくださいマスター」」

 

「ミカは私と共に……好きに暴れて構わぬが、絶対に奥の手だけは使用するな」

 

「分かったゾ!」

 

 

 

 

 

 二人の錬金術師はファウストローブを纏い、自らの意思で死地へと向かう。

 

 

 

 

「「ティルフィング!!サンジェルマンを守るための力を、私によこせぇっ!!!(あーしに与えて!!!)」」

 

 

 

 魔剣ティルフィングの特性、『使い手に三度、奇跡を起こすための――力を授ける』

 その一枚目を躊躇無く切りながらカリオストロは拳を握り締め、プレラーティは手に持つ獲物を振り上げる。

 

 

 

 

「サンジェルマンだけは、絶対にやらせないんだからぁ!!!」

 

「こんなところで終わるものか!! 私達はあの人からもらってばかりで、まだ何も返せていないワケダ!!!!」

 

 

 

 

 ――二人の絶望的な挑戦が、幕を開けた。

 

 

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「……おかしい」

 

「ああ、おかしいな」

 

「ええ、翼の言う通り、おかしいわね」

 

「はい。おかしい、です」

 

 

 時は少し遡り――

 

 S.O.N.G.仮説本部潜水艦内部、司令室……そこではある事件が起こっていた――

 

 

 

 

「えー、なにいってるかアタシぜんぜんわからないってゆーかー、パワハラはやめてほしいってかんじなんですけどぉ~」

 

(駄目みたいですね……⦅諦め⦆)

【一週間……よくもったほうだと思うけど】

(知ったらビッキーが飛び出しそうだからなぁ)

 

 

 そう、情報隠蔽の疑いで某青い人形が裁判に掛けられているのである。

 

 

 

「そ、そうです! ボ、ボボボボクにも皆さんが何を言っているのか、全然さっぱりわかりません!!」

 

 

 

 なお、弁護人はエルフナインたった一人である(OTONAは装者包囲網から逃げ切った、ガリィは勿論逃げ切れなかった)

 

 

「ねえ、ガリィちゃん……今、キャロルちゃん達ってどうしているの?」

 

「最近、全然さっぱり姿を見せなくなっちゃったのデス……心配デスよ」

 

「うん! 特訓の時間は皆勤賞だったミカちゃんが何日も来ないなんておかしいよ!!」

 

 

「うんそーねー心配よねーおかしいわよねーわかる、わかるわー」

 

(わかるわかるうんうんわかるよ!でも秘密!)

(君達が動いちゃうと後で面倒な事になるんや、許してクレメンス)

 

 

「こ、こいつ……」

 

「くっ、司令ならば口を割らせることは容易だったというのに……!」

 

「これなら、心が痛むけどエルフナインを攻めた方がよさそうね……」

 

「ごめんね、エルフナイン。でも、仕方のない事だから……」

 

 

 ちなみに罪状は、『キャロル陣営不在の理由・隠蔽の疑い』である。

 というのもここ一週間程の間、キャロル、レイア、ファラ、ミカの四名の姿が全く見られず、おかしいと思っていた装者達が動き出し……今に至るというわけだ。

 

 

「えっ!? あわ、あわわわわ!! ボ、ボク絶対に喋りませんから!く、屈しませんからぁ!!!」

 

「エルフナインちゃんお願い!ちょっとだけでも!先っちょだけでもいいから!!」

 

「吐いたら楽になるぞ、エルフナイン。これ以上罪を重ねるのはお前もつらいだろう?」

 

「心配すんな、全部この馬鹿ガ……人形が吐いたって事にするから」

 

 

「……あーあ、これはもう駄目かしらね」

 

【話した上で、知らんぷりをしてもらうしかなさそうね】

(説得フェイズに移行するって事ね)

 

 

 そして今……陥落間近という危機的状況に陥り、流石のガリィも諦めかけていたのだが――

 

 

 

 

「っ!? 秘匿回線での救援要請、来ました! 送信者は……キャロル・マールス・ディーンハイム!!」

 

 

 

 正に間一髪のタイミングで指令室に鳴り響いたのは、オペレーターである友里あおいの声。

 

 

 

「司令!」

 

「おうともよっ!! 藤尭! 装者達に召集を――いや、全員揃っているな――お前達!!」

 

 

 その声に続くのは、いつの間にやら司令室へと戻っていた風鳴弦十郎、緒川慎次の両名。

 

「し、司令っ!? こ、これは一体……!」

 

「な、名前!! い、今あおいさんがキャロルちゃんって!師匠!」

 

「な、何が起こってるんデス!?」

 

 装者達が混乱する中、彼らはまるでそれが分かっていたかのように、迅速に動き始める。

 

 

 

「S.O.N.G.外部協力員、キャロル・マールス・ディーンハイムから旅行中に偶然、パヴァリア光明結社を発見したとの連絡が入った! しかし同時に彼女達は現在、敵に包囲され危機的状況に陥っている!よって我々はこれより現地へと急行し、彼女達の救出活動を行う!」

 

「S.O.N.G.仮説本部、現地への移動を開始します!!」

 

「装者達は各部屋で待機、外部協力員である未来ちゃんは、響ちゃんの部屋で待機をお願いします!」

 

 

「な、なんですって……!?」

 

「あーはいはい、そういうのはいいからさっさと行きましょ。ほら、アンタ達現場組はいても役に立たないんだからさっさと行った行った」

 

(ついに全裸の変態紳士が見れるのか、ゴクリ……!)

(股間の戦闘力は如何程の物でしょうなぁ……)

【はぁ……相変わらずね、貴方達】

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

 完全に置いてきぼりな装者達を他所に潜水艦は動き出し、物語はクライマックスへの最短距離を突き進む。

 

「ねっ、言ったでしょう?アンタの願いはもうすぐ叶うって……さ、後はアンタ次第よ――立花響」

 

「へっ? わ、わたしっ!?」

 

(ぶん殴って捕まえた後は好きにしていいよ!)

【……あたし達が着くまでに戦闘が始まらなければいいんだけど】

(それは大丈夫、キャロルちゃんだって手加減……手加減してもヤバいんじゃね?)

 

 

 その先で少女は、そして――

 

 

 

「完全世界の実現……長き時間を掛けようやく、ようやくここまで来ることができた……おかあさん、私は――」

 

 

 

 過去を、そして今をも踏み躙られ続ける彼女は何を見るのだろうか――

 

 

 





百人以上の錬金術師がいる場所に堂々現れるとは……キャロル貴様、死ぬ気なのか?(一般的見解)



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