第百二十六話です。今回はかなり短め。
――――困ったなぁ……
キャロル・マールス・ディーンハイムはとても困っていた。
「ああああああああああっっっ!!!」
「……(はぁ、どうして大人しくしててくれないのかなぁ……)」
そう、鬼の形相を浮かべ自身へと、億に一つも当たらない攻撃を繰り返している錬金術師プレラーティに……ではなく――
「はあああああっっっ!!! (こいつ……何故避けるばかりで仕掛けてこない!?)」
「……(しかも、話しながら時間を引き延ばそうとしたのにいきなり襲い掛かってくるし……はぁ、困ったなぁ……)」
彼女は予定が狂ってしまった事に対し、大層困っていたのである。
「クソっ!!どういうつもりなワケダ!!(まさか……攻撃に回せる程の力――『想い出』の余裕が無いのか?)」
「……(みんな、どのくらいで来てくれるかなぁ……あーあ、こんな事ならガリィとも話せるようにしておけば――いや、それだけは無いな)」
実はキャロル達がこの場所に到着したのは数時間前……その段階で彼女はS.O.N.G.へと救援要請を送り、彼ら到着を待ち潜伏していたのだが……その計画は、S.O.N.G.が到着する前にパヴァリア光明結社が動き出した事によって破綻した。
そう、彼らが日本に転移する等と言い出した所為で、キャロル達の出番が早まってしまったのである。
これでは装者との共同作戦という、子供達も大喜びな展開ではなく、金髪ラスボス幼女による虐殺ショー・人体分かい――じゃなくて消失マジックもあるよ☆という深夜枠でもアウトな絵面が展開されてしまう。つまりこのままでは戦姫絶唱シンフォギアAXZ、放送事故により打ち切り不可避である、ヤバい。
「黙りこくってどうしたワケダ! 攻撃しないのかそれとも……できないのかぁ!?(もしも私の予想が正しいのなら……勝てる!私達にはまだ、希望がある!!)」
「……(うそっ、当てられちゃった……鋭いなぁこの子、探偵とか向いてそう⦅小並感⦆)」
そんなヤバい展開を避けるには、装者達の到着まで粘るしかないのだが……目の前の錬金術師は何故か、更に攻勢を強めキャロルへと襲い掛かる始末であった。一体、何がそこまで彼女を突き動かすのだろうか……キャロルは不思議に思っていた。
「……(あの変態さんは動かないっと、ミカは……よしよし、いい感じに互角みたい)」
「何処を見て――――そうかそうか、赤い人形が頼りの綱、というワケダね」
そんな風に思われている錬金術師のプレラーティさんだが……何故か彼女は、表情に余裕が戻り始めていた。
……何か良い事でも思い出したのだろうか、キャロルは不思議に思っていた。
「……(ブンブンブンブン……蚊が飛んでるみたいで嫌だなぁ……はっ、もしかしてそれが目的なんじゃ……いやいや流石にそれはないよね……)」
何故彼女は無駄な事を延々と繰り返しているのだろう、もうとっくに詰んでいるのに……自称凡人のキャロルちゃんには、真の凡人(とはいっても、プレラーティは錬金術の才能で言えば秀才クラス以上である)の気持ちが理解できなかった。
「だけど想定外だったね……私達はこの通り、力を大幅に増しているワケダ!」
「……(あっ、確かにそれは想定外だった! うんうん!そのお陰でミカ相手に頑張れてるみたいだもんねすごいすごい!ありがとう!)」
力を大幅に増している……そう語るプレラーティの言葉は間違っていない、いないのだが……これはあくまで、あくまで例えだが、丸腰の人間が名匠が作った鎧を着こみ、名刀を手に入れたとする。
……しかし、それでゴジラに勝てるようになるのか――つまりはそういう事である(悲しみ)
「アハハハハっ!! お前強いナ!ちびっ子達と同じくらイ!!」
「もー!人形相手にここまで手こずるなんてぇ~!あーしのプライド、ズタズタなんですけどぉ~!!」
ま、まぁそんな例えはともかく、キャロルの視線の向こう……激しくぶつかりあうカリオストロとミカは、互角の戦いを繰り広げていた。
そう、カリオストロ単身で、ミカと互角なのである……この一言だけで、如何に彼女達が強くなっているか分かるだろう。
なお、ゴジラがそれを微笑ましいものを見る目で見守っている模様。
「……(はあああ、バーニングメモリー、ガリィがいないのもあるけど禁止しておいてホントに良かったぁ~! ナイス判断、わたし!)」
「何度向こうを見ても一緒……つまりお前はここで、燃料切れになるまで釘付けにさせてもらうワケダ!!」
しかしここで、そんなゴジラを仰天させる一言をプレラーティは言い放った――なんと彼女は、キャロルの想い出が尽きるまで攻め続けると、そう豪語したのである。
「……えっ?(ね、燃料切れになるまで!? ほ、本気で言ってるの!?何年かかるかわかんないよそれ!?⦅戦慄⦆)」
これには流石のキャロルも黙ってはいられず、『な、何を言っているのこの人、怖い……』と言わんばかりの表情を隠せない……そう、確かにこの瞬間、プレラーティはキャロルの上をいったのである、凄い⦅小並感⦆
「何を驚いている!? 勝ち筋が見えた以上、それを目指すのは当然なワケダっ!!」
「かっ、勝ち筋っ!?(ほ、本気で目指しちゃうの!? そのケン玉ずーっと振り回すつもりなの、何年も!?)」
――例え何年掛かっても、私はこのケン玉を振り回し続ける――
それが現実的に可能かどうかは別にして、キャロルはプレラーティに対し恐怖というか関わりたくないというか狂人同士ガリィが相手すればいいというか……と、とにかく様々な思いを抱いていた⦅最大限オブラートに包んだ表現⦆
「ほらほらほらほらぁ!! その鎧はあと何分もつワケダ!五分か、十分か、それとも既に限界かぁ!」
「ご、五分!?(ち、違うよ!?どんなに少なく見積もっても数年だよ!? こ、この人の頭の中の計算機、どうなってるの!?)」
そんな風に思われているとは露とも知らず、プレラーティさんは果敢にも攻め続ける。
一方、その猛攻を躱し続けるキャロルはと言うと……依然被弾は無いものの、既に彼女の表情には余裕が完全に消え去っていた。
それを見て自身の推測が間違っていない事を確信するプレラーティは、一層攻撃の勢いを強めるのだった。
「っ!?(手数増してだ、大丈夫なの!? いくら身体を強化してても、腕がちぎれる方が絶対早いのに!……え、駅前のお店のパフェ賭けてもいいよ一番!一番おっきいやつ!)」
果たしてプレラーティは、自身の両腕がバイバイする前にキャロルを燃料切れに追い込む事ができるのだろうか……できるの、だろうか……⦅沈痛な面持ち⦆
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「……私も彼女達――プレラーティに加勢します」
「ああ、好きにすればいいよ、君のしたいようにね」
キャロル、そしてミカが敵と互角の戦いを繰り広げる中、ようやく再起動を果たしたサジェルマンが、戦線に加わろうとしていた。
ちなみに雑魚狩りを命じられていたレイアとファラについてだが……
「い、嫌だ……こ、殺さないで!!ギャーーーッ!!!」
「派手に喚くな鬱陶しい!!」
「さ、流石にこの数を全部生かして捕まえろというのはその……はぁ、面倒ですわね」
逃げ惑う錬金術師達にとてもイラつかされていた……が、こちらは既に半数が意識を失うか、捕縛されているので放っておいて問題無いだろう。
「局長、集団戦に不得手な貴方はティキを……私達の希望をお願いします。 それともう一つ、これを――」
「ん?」
そんな感じで錬金術師達の汚い悲鳴が木霊する中、サンジェルマンは局長へとある物を託していた。
そう、彼女達が長い時間を掛け集めた魂を返還したエネルギー、その全てである。
「私達が集めた魂……これを貴方に託します。 勿論、私達も生きて帰るつもりですが……最悪の場合は、ティキを連れて結界の外に撤退を」
「……そうかい。祈っているよ、君の武運を」
局長とティキが健在であれば、理想の実現は叶う……そう例え、自身がその光景を見る前に、地獄に落ちたとしても……サンジェルマンの目は、生きる事を諦めてはおらず、だが同時に死を覚悟していた。
「……はい、それでは」
「してもいいんだろう、援護くらいは。チャンスがあればね」
「……ええ、ですが――」
そんな彼女を気遣ってか、助力を提案する局長……だが、サンジェルマンは気付いていた――
「……」
「……ニシシっ!!」
「……あちらも地味に動くか」
「……ここからが本番、という事でしょうね」
この場に存在する敵……その全てが、こちらに意識を向けている事を。
「チャンス、ですか……ええ、そんなものがもし存在するのであれば、その時はお願いします」
そして、局長の語るチャンス……その望みが絶望的に薄い事を。
つまり――サンジェルマンが向かう先は、死地に他ならない。
「プレラーティ!!」
「サンジェルマン!?」
「……新手か(え、なんで!?どうしてこの人が来るの!? あの変態さんじゃなきゃ無理だってば!命粗末にしちゃダメ!ゼッタイ!!)」
にも拘わらず、サンジェルマンは躊躇無く死地へと足を踏み入れる。
そう、かけがえのない友を救うため、そして……二人の友と共に理想的な世界の実現を果たし、それを見届けるために……。
「私達には夢がある……その邪魔をする者は、例外なく消えてもらう!!」
二人の錬金術師の絶望的な戦いは幕を下ろし、演目は被害者を一人増やした第二ステージへと突入する。
なお、一人増えても勝率は微塵も変わらん模様⦅悲しみ⦆
最近のキャロルちゃんの内心はこんな感じです。
でも表には出しません、恥ずかしいので。
追記:シンフォギアの二次小説なのにシンフォギアが出て来ない不具合が発生しています、ご注意ください。
次回も読んで頂ければ嬉しいです。