ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百三十一話です。




第百三十一話

 

 

「クソが!さっさとマスターの所に行かなきゃなんだよアタシは!!」

 

(陸地だと流石に厳しいかぁ)

【さっきまでのが異常なだけ、つまり今が本来の速度なのよ】

(うむむ、キャロルちゃんが負けるとは思えないんだけどなぁ……)

 

 S.O.N.G.仮説本部である潜水艦を飛び出したガリィ・トゥーマーンは、未だ主であるキャロルの下へ到着できずにいた。

 その原因はフィールド、地形が海から陸地へと変わった事であり、彼女のスピードは陸地に入った途端、本来のものに戻ってしまっていたのである。

 

「アホか!マスターが今いる所は、パヴァリアにとって圧倒的有利な場所だろうが!!」

 

(そうですね。ガリィちゃんの言う通り、今のキャロルさんには間違いなく不利な場所です)

【……成程ね。確かに、搦め手を取るにはうってつけの場所だものね】

(えっ、どういう事?今戦ってる場所って高級ホテルの――あっ!!)

(そう、高級ホテルなんです。そして、高級ホテルが建っている場所というのは……)

【観光地、リゾート地……それはもう、周囲にはたくさんの一般人がいるでしょうね】

 

 しかし、何故そこまでガリィは急ぐのか……その一番の理由は、現在キャロル達が戦闘を繰り広げている場所にあった。

 現在キャロル達は、リゾート地に建っている高級ホテルの前で戦闘を繰り広げている……そう、リゾート地である。

 ――つまり多数の観光客が集まる場所なのだ、キャロル達が今いる場所というのは。

 

「万単位の人間殺してるキ〇ガイが手段なんざ選ぶと思ってんのか!? キ〇ガイ共がいくら三流のカスでも、その辺歩いてるゴミを殺すくらい朝飯前なんだよ!」

 

(無差別テロだぁ……(絶望))

【でも、今のマスターなら――】

(はい、間違いなく一般人を守ろうとするはずです)

(だから不利なのね、納得)

 

 では、そんな場所でラスボス系金髪幼女に奇襲されたパヴァリアは、どのような行動に移るだろうか?

 ……恐らく、生き残るための最善手を選択するだろう。それがガリィの推測だった。

 

「クソクソクソクソこんな事なら無理言ってでも一緒に着いてくんだった!! ああもうミカの野郎!マスターの可愛い可愛い(強調)お顔にかすり傷でも付いてたら、二度と補給してやらねぇからな!!」

 

(口調が汚ぁい!!)

【それだけ焦ってるのよ、許してあげて】

(というかガリィちゃんがいても、大して役に立たな――いえ、なんでもないです)

 

 故にガリィは駆ける、それこそフルスロットル全開で駆け続ける。しかし――

 

 

 

(っ! ガリィちゃん、来たっ!!)

 

 

 

「ああん!?何よこっちは両足回すのに全力――」

 

 

 

 地を駆けるガリィよりも速いナニカ、そのナニカが悠々と空を駆け、無情にも彼女を追い越していく。

 

 

(とっ、鳥だ!)

【いえ、スーパンマンかしら?】

(いや、違う、あれは……!!)

 

 

 そのナニカとは一体何なのか……鳥か、飛行機か、スーパンマンか……いや、あの後姿は――

 

 

 

(((((立花響⦅限定解除ver⦆だっっっ!!!!!)))))

 

 

「――アタシが行くまでマスターを頼んだわよ!!主人公っっっ!!!」

 

 

 

 そう、ガリィ一行を追い抜いて行ったナニカ……それは我らが主人公、立花響その人だった。

 

 

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「……すまないね、少し取り乱してしまって」

 

「いえ、全然大丈夫です!でも――」

 

 アダムが放った小型の太陽を消し飛ばし、キャロルの下に到着した立花響。しかし何故彼女は、小型とはいえアダム程の錬金術師が作ったものを消し飛ばす事ができたのか……その答えは単純明快。そう、彼女は既に限定解除( エクスドライブ)へと至っていたのである。

 

 そんな彼女はキャロルと短い会話を交わした後、空へと上がりアダム、そしてティキと対峙した――のだが、ここで一つの問題が発生した。

 

 

「服を、着てもらえませんかっ!!(切実)」

 

 

 そう、響の視線の先にいるアダムは、一糸纏わぬすっぽんぽんだったのである(精神攻撃) これには響も即戦闘開始とはいかず、服を着るよう説得に掛かるのは当然だろう。

 だって今もぶらぶらしてるし……いや、何がとは言わないが(目逸らし)

 

 ちなみにファウストローブが崩壊しつつあるキャロルも、かなりすっぽんぽんに近い状態ではあるのだが……こちらはまだ大事な所が隠れているのでセーフである(ガバガバ判定)

 

「できない相談だな、それは(即答)」

 

 なお、響の切実な訴えに対するアダム局長の答えはノー(即答)だった模様。だって着てもすぐ燃えちゃうし……(制御下手)

 

「わ、猥褻物陳列罪ですよ! 私、最近学園で習ったから知ってるんです!!」

 

「一緒にしないでほしいな、犯罪者の汚いモノと。 だって美しいだろう、僕の身体は」

 

 ……この会話だけでツッコミどころが複数個所あるので、一つずつ整理していこう

 

 1、私立リディアン音楽院高等科は一体何を教えているんですかねぇ……(疑いの眼差し)

 2、美しいとか汚いとか、そういう問題ではない。アウトはアウトである(無慈悲)

 3、はよ戦え

 

 もしも響とアダム以外がこの会話を聞いていたら、きっとそうツッコミを入れただろう。

 しかし悲しいかな、今動ける三人(キャロル、サンジェルマン、プレラーティ)は倒れた仲間の回収に奔走している。つまりストッパーが不在、これはヤバい。

 

「う、美しい!? わ、私お父さん以外のを見たことないから分かりません!!(赤面)」

 

「悪かったね、それは……なら見ておくといい、じっくりと。この僕という芸術を、人類最高峰のね」

 

「じっくりと!? う、うわぁーん未来ぅ~!助けてぇー!!」

 

 なお、時間稼ぎという点については満点である。ただし、それをやっているのは敵であるアダムな模様。

 

「さっきから失礼ね、ちんちくりんのくせに! アダムの裸を見れるなんて、お金が発生してもおかしくないのよ!! 見なさい、このアダムの割れた腹筋は芸術品なの!!分かる!?」

 

「そ、そんなの頼んでないよぉ……あっ、確かに腹筋すごいかも……」

 

「はい見た!今見たでしょ!? 一億万円!今日中にアダムの口座に振り込まないと許さないから!!」

 

「えっ!? しっ、しまったぁ~!!」

 

 そして更にティキまで参戦してしまい、収拾不能となってしまう現場だが……まあ仲間を待つという意味では決して悪い展開ではない、はず……(目逸らし)

 

 

 

「駄目じゃないか、ティキ。 進まないだろう、話が」

 

 

 

 しかし、この場にいるのはラスボスである。つまりこちらの思い通りに行くほど甘くは無いのだ、アダムは。

 ……ちなみに『どの口が言うんですか局長』、というツッコミは無しである。何故なら、戦闘前に長く喋るのはラスボスの特権だから!(暴論)

 

「そして……ここまでだよ、道化芝居は。時間を稼いでいるんだろう、仲間の為に」

 

 そして語りだすアダムなのだが……どうやら彼は、響が時間稼ぎのために話に乗ったと勘違いしているらしい。

 だが勿論、響は本気で――

 

「えっ――あはは、最初は一応本気だったんですけど……バレちゃった」

 

「君は下手だね、嘘をつくのが。 隠せていないよ、固く握られた拳を」

 

 ――いや、アダムの指摘は正解だった。何故なら、お茶らけた事を言っている間もずっと、響の両の拳は強く握り締められていたからである。そう、彼はそれを見抜いていたのだ。

 

「……今私、ちょっとだけ怒ってます……どうしてこんなことをするのか、全然分からないから」

 

 ――響は怒っていた。友達……キャロルが危険だったこと、そして――この男は明らかに、サンジェルマン達を巻き込もうとしていたから。

 

「いいよ、分からなくても。 だって……今から殺し合うんだろう?僕達は」

 

「……私に殺すつもりなんてありません。でも――」

 

 既に戦いは避けられない。そう理解した響の雰囲気が変わり戦闘態勢に入ると同時、アダムの周囲に多数の火球が出現する。そして――

 

 

「ここであなたを逃がすつもりも、全っ然ありません!! だからぶん殴って!全部教えてもらいます!!」

 

「やってみるといい、できるものなら!……君にも教えてあげようじゃないか、身の程というものを!」

 

 

 シンフォギアと錬金術師、又は主人公対ラスボスという名目の……早くもラストバトルと思わせる戦いが、幕を開けた。

 

 

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「……あれが、限定解除を果たした装者の力……」

 

 私は、上空で繰り広げられている凄まじい光景に、ただただ言葉を失っていた。

 

「急仕上げのファウストローブを、自慢気にしていた私達は所詮……井の中の蛙だったというワケダね」

 

 そしてそれは隣に立つプレラーティも同じ。私達二人は倒れ伏しているカリオストロを介抱しながら、呆然とその光景を見つめていたのだ。

 

「う、ううん……あれ……あーし……」

 

「今は動くな。いくら強化した身体とはいえ、骨の一本や二本折れていてもおかしくは無いのだから」

 

「……うん、ありがと――ってサンジェルマンとプレラーティは!?」

 

「無傷だ」

 

 そんな中、気を失っていたカリオストロが意識を取り戻した。アダムに落とされて心配だったが、どうやら致命傷は回避する事が出来ていたらしい。

 

「そう、無傷――っておかしいでしょ!? なんで片手間に瞬殺されたあーしが一番重症なのよぉ!?」

 

「……この小さな錬金術師、いやキャロルが守ってくれたワケダ」

 

「信じられないような、高度な術式を見せてもらったわ。正にあれこそ、錬金術式の最高峰と言っても過言では無いわね」

 

「えぇ、なんか友情が芽生えちゃってるし……⦅困惑⦆ もー!あーしが気絶してる間に何があったのよぉ~!!」

 

「それは人形達を回収してから話すわ。キャロル、行きましょう」

 

「ああ」

 

 私達の間で何があったのか、それを知らなければ取り乱すのは仕方がない。が、他の倒れた者を迅速に回収する事が優先なため、私は説明することを放棄した。ごめんなさい、カリオストロ。

 

「申し訳、ありませんマスター……」

 

「この様では、きっとガリィちゃんに怒られてしまいますわね……」

 

「う~!もうちょっとで届いたんだゾ!!」

 

「お前達に過失は無い。今回の件については、私の慢心と不注意が起こしたことだ」

 

 こうして私達は無事に全ての人形を回収した。そう、何事も無く無事に、である。

 それが意味することは……上空で一人で戦うあの少女が、アダムと互角に戦えているという事……私は今更になって、何に喧嘩を売ってしまったのかをようやく理解した――

 

 

「さて、私は立花響の援護に向かうがお前達はどうする?」

 

 

「…………えっ」

 

 

 ――訂正。どうやら私はまだ、完全に彼女達の事を理解できていなかったらしい。

 

 

「まっ、待て待て待て! そんなボロボロの状態で、どうやって戦うつもりなワケダ!?」

 

「いや~流石に冗談キツいわよぉ~、あはははは……」

 

 一つ言っておくが、ファウストローブを失った状態で、上空の化け物同士の衝突に飛び込む事はただの自殺以外の何物でも無い……具体例を上げれば、私がティルフィングの二回目の願いを使用したとしても、恐らく三秒でミンチになる……それくらい上空は危険地帯なのだ。それを――

 

 

 

「まあ倒し切ることは難しいだろうが、お前達の分まで殴り飛ばすくらいならしてみせるとしよう」

 

 

 

「……そ、ソウデスカ……」

 

 キャロルはなんら気負った様子を見せず、なんならお前達の分殴ってきてやると言い放ったのだ。

 ……住んでいる世界が、見ている世界が違いすぎる……⦅白目⦆

 

「ですがマスター、この者達は……」

 

「地味に逃亡の恐れがありますが」

 

「アタシに任せてほしいゾ! だってこのままじゃ、ガリィにすっごい怒られるんだゾ!!⦅切実⦆」

 

 しかし、ここで人形達からの静止が入った。どうやら私達が逃亡する可能性を、懸念しているらしい。

 ……ここで逃げる気は無いと言っても、何の意味も無いでしょうね。でも、それでも信じてもらうよう訴える以外に、私達にできる事は、無い。

 

 

 

 

 

 

 

「マスタァァァァァァァァァァァァァァァっっっ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを考えていた視界の隅で――何処かで見た人形が、一直線にキャロルへと突っ込んで来ている瞬間を目撃してしまった。

 

 

 

 

 

 ――この青い人形だけ、留守番させられていたという事は……やっぱり一番の雑魚だったワケダ

 ――一体だけお留守番なんて、可哀想すぎてあーし涙が出ちゃう……

 ――戦闘で役に立たないという事は、ティキのような特殊な……いえ、そんな風にも見えないわね

 

 

 

 ちなみに上記は、遅れてやって来た青い人形、彼女を見て私達が思った事である。

 

 ……そう、まさか青い人形がキャロルよりも信じられない存在であることを、この時の私達は夢にも思っていなかったのだ。

 それを知ることになるのは、もう少し後の事――

 

 

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「うおおおおおっ!!!」

 

 突然だが立花響の纏うシンフォギア、ガングニールが限定解除された場合、何が変わるのだろうか?

 それを簡単に説明すると、飛行能力を獲得する事、ギアの耐久力が著しく向上する事、そして――

 

 

「危ないな、その拳は! 火傷じゃ済まないだろうね、当たってしまうと!」

 

 

 ――破壊力の超上昇、である

 

 

「また、避けられた……!(この人、多分今の私より強い!だって――)」

 

 

 今の響の一撃を浴びれば、恐らくアダムでもかなりの手傷を負うはず……しかし、当たらない。それも――

 

 

「ちょっと何するのよ!!危ないのはダメって、先生に習わなかったのちんちくりん!!」

 

 

 ティキを抱えながら、である。この信じられない状況に困惑する響。そして更にもう一つ、響には動揺を隠しきれない事があった。

 

 

「……怖く、ないんですか……?」

 

「怖いさ、君の拳が。 ゾッとするよ、当たった後を考えると」

 

「っ……!(違う……この人、絶対にそんな事思ってない!)」

 

 

 人間は、恐怖に弱い。例えば恐怖に直面すると身体が硬直し、動けなくなる。他にも錯乱し、恐怖そのものの排除に掛かる等、何らかの反応を示してしまう、それが恐怖である。

 

 だが響は、このアダム・ヴァイスハウプトという男から、それが全く感じられなかった。

 もしかしたら、当たらない事を確信しているのかもしれない。また、当たってもダメージを打ち消すような何かを隠しているのかもしれない……勿論それらのような可能性もあるのだが……響はそれでも、違和感を感じずにはいられなかった。

 

「でも慣れて来たよ、ようやく……だから――攻めさせてもらおうか、僕も」

 

「っ!?(確かキャロルちゃんが、この人は細かい事が苦手って言ってた! つまり……大技が来る!!)」

 

 しかし、その違和感の答えを探している暇も無く、これまで回避に徹していたアダムが、攻撃態勢へと移る宣言を行う。

 恐らく彼が、限定解除状態の響へと放つのは大技――今のガングニールの防御を貫きかねない、先程の太陽のような強力なもの。

 

「耐えられるのかな、君のシンフォギアは! 試そうじゃないか、僕の、この――」

 

「っ!!(来るっ!!)」

 

 防御か、回避か、それとも構わず突撃か――響の頭の中で、いくつもの選択肢が浮かび上がる――

 

 

 

 

「大技など、私の見ている前で放てると思うなっ!!!」

 

 

 

 

「っ!? また君か忌々しい!キャロル・マールス・ディーンハイムっっっ!!!」

 

 

 

 

 が、その思考は無駄に終わる事になる。その原因は、地上からの援護射撃――小さな錬金術師の、錬金術による精密射撃だった。

 

 

「うわ、本当に全裸じゃないですかアレ……あんなのを信用してたとか、アンタ達本気で頭おかしいんじゃない?」

 

「……今となっては、返す言葉も無いわね」

 

「以下同文なワケダ」

 

「あーしも、いかど~ぶん♪」

 

 ちなみに、その周囲にはサンジェルマン達の姿。そしてガリィも既に合流を果たし、キャロルに纏わり付いているようだった。

 

「ありがとうキャロルちゃん――ってあれ?なんでガリィちゃんまでいるの?」

 

 まぁ何はともあれこれで実質二対一であり、キャロルの援護でアダムの大技を妨害し、響が仕留める――そんな勝ち筋が見え始めたことは、確かである。

 

 

 

 

 

「……参ったね、これは」

 

 

 

 

 

「っ!? まさか、そっちは――」

 

 

 

 

 

 しかし、それに気付いたのは響だけではない。故にこの時、アダムはサンジェルマン達の殺害を諦め、事前に考えていた撤退する為の行動に出たのである。

 

 

 

 

「っ!――ちぃっ!!」

「プレラーティ!カリオストロをお願い!」

 

 

 

 

 

 

「難儀なものだな!国家公務員というのは!」

 

 

 

 

 まずは倒れ伏している大量のパヴァリア光明結社構成員へと、無数の豆鉄砲( 火球)を放つ。これでキャロル(とオマケ)は塵芥を守らざるを得ない。そして――

 

 

 

「見せてあげよう、僕の力を――」

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 その隙に力を込め、複数――四つもの巨大な火球を作り上げる。

 それを見たガングニールの装者は警戒態勢に――これも予想通り。

 

 

 

 ――そしてフィナーレだよ、これが

 

 

 

 

 

 

「――私に、じゃない!? まさか――駄目!そっちには人がっ!!!」

 

 

 

 

 

 ――ぶつけると思ったのかい、君に。 あるじゃないか、もっと効率的な方法が。

 

 ――まだまだ足りないみたいだね、戦闘経験が

 

 

 

 

 

「ど、どれを攻撃すれば――ち、違う!全部壊さないと!!」

 

 

 

 ――予想してみるかい、何人死ぬか。そして君が――何人救えるかを

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――やはり脆いな、人間なんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『立花! お前から見て右後方の火球を破壊しろ!!』

 

『残りは私達に任せて、早く!!』

 

『あたしのイチイバルなら一人でやれる!だから後は任せたからな!』

 

『了解デス!! 翼さん、行くデスよ!!』

 

『マリアは私と! これ以上、好きにはさせない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間は脆い。そう捨て台詞を残し、彼は撤退する為戦場を後にし始める。しかし――

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおっっっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 脆いからこそ、信頼し、共に歩むのだ。そう、完璧な彼とは違って――

 

 

 

 

 

「賢しいじゃないか、思ったよりも! だけど――残りを見捨てたんだよ、君は!」

 

 

 

 

 

 だが、彼は気付かない。何故なら、彼は既に完成してしまっているから……故に彼は一人のまま、他者を必要としていないから……彼は、気付くことができない。

 

 

 

 

「帰ろうか、ティキ。背に受けながら、見捨てられた怨嗟の声を!」

 

 

 

 

 だから彼は期待を込めて待つ……群衆の悲鳴を、そして救えなかったことに対する、罪悪感の叫びを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワーオ!!サムライガール!!!ブラボォーーッッ!!!!!』

 

『ヒューヒュー!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまらないな、本当に……本当に君達はっっっ!!!!!!!!」

 

 

 

 しかし起こったのは、悲鳴では無く歓声――アダムにとっては何が起こったのか、そんな事はどうでもいい。だが、彼は最後に一度だけ足を止め、この時初めて感情のようなものを表に出した。

 

 

 

 

 

 ヒュンッ

 

 

 

 

 

 ――瞬間、頬に僅かな衝撃

 

 

 

 

「……図に乗るなよ、三級錬金術師の分際で」

 

 

 

 

 本来であれば、絶対に当たるはずの無い距離――

 

 

 

 

「……まずは一発」

 

 

 

 

 その距離を、銀髪の錬金術師(サンジェルマン )は怒りと執念で埋める事に成功した。

 

 

 

 

 

 

「……行こうか、ティキ」

 

 

 

 

 

 

 パヴァリア光明結社統制局長アダム・ヴァイスハウプト、そして自動人形ティキ。

 サンジェルマン達三名を捕縛したものの、この二名の逃走を許した事でキャロルの作戦は失敗に終わる事となる。

 しかし怪我の功名か、ダウルダブラを失った事実が『キャロルが窮地に陥っていた』ことに説得力を持たせる事になり、彼女は処分を免れた。

 

 失ったものは大きいが、それに見合う程に得たものもある戦いだった。そう後にキャロル・マールス・ディーンハイムは、今回の一件について語っている。

 

 

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 S.O.N.G.仮説本部である潜水艦の到着を待っている間、港ではガリィ主催のとあるイベントが行われていた。

 

 

「おい、カス共」

 

「地味なカスです……」

 

「瞬殺されたカスですわ……」

 

「あともうちょっとだったカスだゾ……」

 

 

 そう、死体蹴りである⦅畜生⦆

 実はガリィは許せなかったのだ、自分の主がすっぽんぽんになるまで追い込まれていたことが、そしてそれを阻止できなかった仲間達の事が。

 ちなみにガリィ自身はその場にいなかったからもちろん無罪である。というかなんならこの人形、自分がいれば勝っていたまで思っている、冗談も大概にしろ(失笑)

 

 

「アンタたちの役目は何? はい、右のゴミカスから言ってごらんなさい」

 

「マスタ」「マスターを」

 

「アタシから見て右よバカッ!! そんな事も分からないからゴミカスなのよアンタ達は!はい、もう一回!」

 

「マスターを地味にお守りする事です……」

 

「マスターが十全に戦えるよう、サポートする事ですわ……」

 

「マスターと一緒に戦う事だゾ……」

 

 

 ちなみに三体の人形は正座――そう、ガリィが週に最低三回は取っている姿勢をさせられているのだが……実は今、この場に彼女を止められる者が誰一人としていないため、ガリィは好き勝手し放題なのである(事情を知っている響とキャロルは不在)

 

 

「はい、全員正解♪パチパチパチパチ~☆――で、それを分かっているアンタたちは今回、もちろんそのように立ち回ったんでしょうね?」

 

「……派手に落とされました」

 

「気付けば、地面とキスしていましたわ……」

 

「う~っ!!」

 

 

「はぁ~⦅クソでか溜息⦆ ほんまつっかえ!やめたら?オートスコアラー」

 

 

(死体蹴りやめーや⦅真顔⦆)

【あなたがいたって結果は一緒だったでしょうに……はぁ……】

(ていうかあのアダムっていう全裸の人なんなの!? この三人を纏めて瞬殺とか、ヤバすぎると思うんですけど!!⦅戦慄⦆)

 

 

 なお、アダムが強かった事についてはもちろん完全に棚上げである⦅畜生⦆

 ……ちなみに君、ファウストローブ無しのサンジェルマン達にすら歯が立たなかったよね? とかは絶対に言ってはいけない。言えば間違いなく面倒くさい、色々と⦅三体の経験談⦆

 

 

 

 

「……(こいつらの力関係、一体どうなっているワケダ……?)」

 

「……(青い子こわ~い♪ でも、おもしろい子ね~☆)」

 

「……(ティキと比べても、表情が豊かすぎる……本当に人形なのか、この者達は……?)」

 

 

 あっ、サンジェルマンさん達は逃亡せず、残ってくれたようです。

 これで戦力が増えましたね!!

 

 

 

 

 

 ――え、ティルフィングは没収……?

 

 

 

 

 

 次回に続く

 

 





AXZ編まではなんとしても完結したいため、少々展開を足早にしようとして……これが限界でした(白目)

追記:最後のリンカーを使ったマリア、調、切歌の三人を活躍させようと思ってたのに……すっかり忘れて投稿してから気付いてしまいました(絶望)

火球をどうにかしただけで最後のリンカー終わりとか、マジでやってしまったぁ……すまぬ、すまぬ……(超反省)


次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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