ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百三十三話です。




第百三十三話

 

 

「どこ行くの、サンジェルマン?」

 

「少しの間、お手洗いに行ってくるわ(今の気分では、話すだけならともかく和気藹々とお喋りする気にはなれないわね……少し一人になって、気持ちを整えないと)」

 

「……そう、分かったわ。あーしとプレラーティは、ここで大人しく待ってるわね~♪」

 

「こいつらと話すのは私達に任せて、サンジェルマンはゆっくりしてきていいワケダ」

 

「……ありがとうカリオストロ、プレラーティ(二人にも心配を掛けてしまったわね……)」

 

 私達三人はS.O.N.G.に捕縛された後、船内で取り調べを受け、そして今……何故か『休憩ルーム』へと呼び出され、S.O.N.G.に所属する者達と親睦を深めていた。

 しかしアダムに騙され、長年の夢が潰えたばかりの私は、この場所に居続けるのが辛かった……故に私は、気持ちを落ち着けるために一人になる事にした。

 

「……監視を言いつけられておりますので」

 

「ええ、構わないわ(ここまで自由にさせてもらって、これ以上の贅沢は言えないわね)」

 

 そんな私に声を掛けたのは、私達の監視をしているS.O.N.G.職員の一人……恐らく諜報員か何かだろう、その男性が二人、私と同行する事を告げ、私も同意した。

 

 

 

 

「あっ、あのっ! ちょっと、待ってもらえませんか!?」

 

 

 

 

 ――その後私達が、部屋を出てすぐの事だった。私は、一人の少女に呼び止められた。

 

 

「君は……」

 

 

「たっ、立花響、です! その、サンジェルマンさんの監視なんですけど……」

 

 

 少女の名は立花響、先程の戦闘でアダムと互角に渡り合っていた、シンフォギア装者だった。

 そんな彼女はどうやら、私の監視について何か思うところがあるらしい……もっと厳重にしろ、という事だろうか?

 

 

「立花さん、この者への監視がどうかされましたか?」

 

 

「えっと、あの……!」

 

 

 ……いや、それにしては様子がおかしい――というより明らかに挙動不審である。

 この少女は一体、何を伝えにわざわざ私を追いかけて来たのか……面識など、ほとんど無いに等しいはずなのだが……。

 

 

 

 

「その人の監視なんですけど……私にやらせてもらえませんか!?」

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 だからこそ、次の瞬間にこの少女が言い放った言葉を……そしてその意図を私は、全く理解することができなかったのだ。

 

 

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「正直な所……まだ諦めきれていないのよ、私は。 局長は本当の事を言っていたんじゃないか、そしてバラルの呪詛を解除すれば理想の世界が来るんじゃないか……心の何処かでまだ、未練たらしくそんな思いを抱いている、それが今の私」

 

「……サンジェルマンさんが願う理想の世界って、他の方法では叶えられないんでしょうか……?」

 

 通路で立花響に呼び止められてから少しの時間が経った頃……私は、彼女の私室で腰を落ち着けていた。

 ……結局の所、私は誰かに話を聞いて欲しかったのだろう。こんなに辛かった、殺したくて殺したわけじゃない、これしか方法が無かった……全く、救いようが無いな、私は……。

 

「数百年の間、片手間に色々な事をしたわ……孤児院を作った、貧困に苦しむ人間にパンを配った、政治に介入しルールを変えようとした……だけど、結局は何も変えられなかった」

 

「でもサンジェルマンさんに救われた人だっていたはずです!」

 

 嫌な顔一つせず、私のつまらない昔語りをこの少女は聞いてくれる。

 ……気付いた頃には、私はペラペラと口を必死で動かすようになっていた。

 

「私からパンを受け取った人間が、忘れた頃に私を訪ねて来たの……話を聞くとその人間は、底辺から這い上がり……奴隷商になって財を築いたそうよ」

 

「えっ……」

 

「覚えておきなさい、立花響。今の世界では例え支配される事から脱却したとしても、次は支配する側に回るだけ……一見平和に見える貴方達の国でも、それは目に見えないだけで同じなのよ……」

 

 その上、更に調子に乗って説教まで始める始末……大量殺人鬼が正義の味方に説教とか、冗談でも笑えないわね。

 

「……それで、神の力?に頼ることにしたんですか?」

 

「そう……人間の魂をエネルギーへと変えたものを使い、神いずる門を開きティキ――人形に降ろし、定着させる。その力をもって月遺跡を掌握し、バラルの呪詛を解除すれば……人がお互いを理解し合う機能が回復し、理想の世界が実現できると思っていたわ」

 

 ……恐らく、アダムは真実を語ってはいないだろう。

 神の力を手に入れるために、それなりに使える手駒が欲しかった彼は私に白羽の矢を立て……私を騙し、数百年もの間、利用し続けたのだ。

 

「フィーネ――了子さんが言ってました。バラルの呪詛で共通言語が奪われた後に、人同士が争いを始めて……その時に作られたのが、ノイズだって」

 

「……争いが無い世界、か。数百年もそれを目的にしておいてなんだけど……今となっては、どんなものか想像もつかないわね」

 

「はい、私も全然分からないです……」

 

 人類に撒き散らされた、相互理解を阻む呪い――バラルの呪詛

 その呪いが消滅すれば、世界はどのように変わるのだろうか……。もう一度、七万人以上を殺害すればそれが分かるかもしれない……だけど、今の私にそんな度胸はこれっぽっちも残ってはおらず、ただ天井を見上げて想像する事くらいしか、私にできる事は無かった。

 

「……そういえば、私ばかり話してしまっていたわね。 だから少しだけ、貴方の話も聞かせてくれない?」

 

「えっ!?わた、私のですか!? いえいえ私なんてそんな!全然面白い話とかできないですから!」

 

「貴方のような優しい子が、どのような経緯でシンフォギア装者になったのか、少し興味が湧いたのよ」

 

 そんな風に自分勝手に話し続けていた私は、ふと自分ばかりが話していることに気が付いた。

 そして同時にふと、この少女に対し『何故、この子がこの場所にいるのか』という疑問を抱いたのだが……それを言葉に出してしまった理由は、後になってもよく分からないままだった。

 

「シンフォギア装者、ですか?……えっと、サンジェルマンさんはツヴァイウイングって名前、聞いたことありますか?」

 

「ツヴァイウイング……? いえ、聞いたことは無――そういえばフィーネの動向を追っている時に、そんな名前を見たような……」

 

「はい、多分それで合ってます。ツヴァイウイングっていうのは、凄く人気があった歌手の人達で私、その人達のライブに――」

 

 そのような不躾な質問に対し、この少女は嫌な顔一つせず話し始めてくれた。

 

 

 ――こんな優しい子に育っているのだ、きっと悪意に晒されることも無く、対人関係に恵まれているのでしょうね。

 

 

 ……この時の私はこんな事を考えながら、あまつさえ笑顔を浮かべて、立花響の話を聞いていた。

 なお、それから五分もしない内に私の表情は凍り付く事になるのだが……。

 

 

 

「そう、か……このような恵まれた先進国でも、そのような事が……そうだ、やはりこの世界は――腐っている!立ち上がれ、立花響!

 

 

「ふぇ?」

 

 

「私達と共に、世界に巣食う悪意を打ち倒そう!! 神の力とは別の方法で、革命の火を灯すのだっ!!」

 

 

「えーーーっ!? ちょ、ちょっとサンジェルマンさん、いきなりそんな事言われても私、わたしぃー!!」

 

 

 それから更に十分後、立花響の過去を聞き終わった頃になると……気付けば私は、立花響の肩をユサユサと揺すり、何故か彼女を革命の同志にスカウトしていた。

 ……ご迷惑をお掛けして、本当にすいませんでした。

 

 

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「どうぞ、サンジェルマンさん。これでも飲んで、少し落ち着きましょう」

 

「……ありがとう、それとごめんなさい」

 

「あはは、気にしないでください。私もさっきのサンジェルマンみたいになっちゃう時があって、それで親友にいっつも怒られたりなんかしてて、あはは……」

 

「ふぅ……そうか、良い友に恵まれたのね」

 

「はいっ! 自慢の親友です!」

 

 それから少しの時間が経ち……どうにか落ち着きを取り戻した私は、立花響が用意してくれたお茶を口に含み、一息吐くことができていた。

 

「なら、その自慢の親友をこれ以上、私が独占するのは悪いわね……ありがとう、嫌な顔一つせず私の話を聞いてくれて、年甲斐も無く嬉しかったわ」

 

「いっ、いえいえ!そんな事は――って私が無理矢理付いてきただけですから!むしろ私が感謝しなきゃいけない方で、なので――」

 

「それも含めて感謝してる、と言っておきましょうか……立花響、貴方にね」

 

 そうして落ち着くと、この部屋に入室してから既に結構な時間が経過している事に私は気が付いた。

 そろそろ戻らないと二人を心配させてしまう……そう考えた私は、立花響へと感謝を伝えこの場を終わらせる事にした。だけど――

 

「何かお返しができればいいのだが……生憎、今の私には用意できるものなど――」

 

「名前……」

 

「えっ?」

 

「名前で――『響』でいいです、立花響じゃなくて」

 

「……そんな事で、いいの?」

 

「はいっ! あはは、『そんな事』かぁ……キャロルちゃんにもそう呼んでほしいんだけどなぁ」

 

 最後に響の事を、これから名前で……まるで友達のように呼ぶことになった。……ちなみに私は大人になってからの数百年間、友達と言える存在ができた事は一度も無い(遠い目)

 ……えっ、カリオストロとプレラーティ? 彼女達は大切な仲間であり同志です(断言)

 

「それじゃあ響、でいいのよね? ここにお邪魔してからかなりの時間が経っているし、そろそろ戻りましょう」

 

「あっ、はい分かりました……じゃなくてえっと、その前にもう一つだけ頼んじゃっていいですか?」

 

「……? ええ、勿論。私にできる事なら」

 

 そのような事実を今更思い出し、若干落ち込む私に対して、立花響はもう一つ言いたいことがあるようだ。

 拘束され何も持っていない私にできる事などほとんど無いのだが……私はとりあえず聞いてみる事にした。すると――

 

「あの、しばらくの間、サンジェルマンさんはここに居るんですよね?」

 

「ええ、処遇が決まるまでの間だけど、明日明後日に決まる、というわけでは無さそうね」

 

「それまでの間なんですけど、またこうやって私と、お、お話しませんか!?」

 

「話……? いや、それは全然構わないのだが……何故、そんな事を?」

 

「話したいからです! せっかく仲良くなれたのに、これで終わりなんて勿体ないと思いませんか!?」

 

 

 どうやら立花響という人間は、かなりの物好きらしい。

 だってそうでしょう? この少女は好き好んで大量殺人鬼と世間話をしに、わざわざ足を運ぶと言っているのだから……それが物好き以外の何だというのか。

 

「……そうね、貴方がそうしたいなら好きにすればいいと思う。ただし、一つだけ私から条件を付けさせてもらう」

 

「な、なんでしょうか……?」

 

 でもこの時私は……とても嬉しかった。それはもう、年甲斐も無く心が弾む程に。

 

「カリオストロとプレラーティ、二人にも会ってあげてほしい……明日からはきっと二人共、退屈していると思うから」

 

「っ!――はいっ!むしろ望む所です!!」

 

「ふっ、ふふっ、何よその気合は……そんなに力を入れなくて大丈夫、普段通りの貴方で接してあげて」

 

「普段通りですねっ! 分かりましたっ!!」

 

 だからこそ、大切な二人にもそうなってほしいと思ってしまった。

 この太陽のような眩しさを持ち、若干空回っている所も可愛らしい少女に、触れてほしいと思ったのだ。

 

「……戻りましょうか、響」

 

「はい、サンジェルマンさん」

 

 

 こうして私、サンジェルマンと響、二人の出会いの物語は幕を下ろす。

 

 ……それからしばらく経ち、私達が別の場所に送られた事で彼女との繋がりは消えたはずなのだが……。

 

 

 

『そちらはどうだ?何か異常があればすぐに私に言うといい。それと、装者達からお前達へのメッセージを預かっている』

 

『こちらは特に問題無し、牢屋の割りには快適よ――というか前から思っていたけど、なんだかこれ文通みたいで恥ずかしいわね……』

 

 

 ――これはまだ、少し先のお話……。

 

 

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「お帰り~☆――って、どうしたのその顔?」

 

「? 私の顔に何か付いているの?」

 

「……いや、カリオストロの気のせいなワケダ(心配していたが、とりあえずは大丈夫そうなワケダ)」

 

「っ! あー、そうそうあーしの気のせいだったみたい!ごめんね~♪(一緒に帰ってきた、あの子のお陰なのかしらね~♪)」

 

 それから休憩ルームに戻ると、何故か二人に変な目で見られたのだが……やっぱり私の顔に何かついていたのだろうか……?

 

 

 





はい、次はキャロルとエルフナインいきまーす。その後は作戦会議の時間デース(真顔)

次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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