ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百三十七話です。ちょっと遅くなってしまいました(反省)




第百三十七話

 

 

「到着しました。案内人を除いた我々はこの場所で待機しておりますので、御用がお有りの場合は端末を通じてご連絡をお願いします」

 

「把握した。ここまでの案内、ご苦労だった」

 

「ウェル博士の幽閉場所までは、私がご案内します。それでは参りましょうか」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 リンカーの生成を果たすため、ウェル博士との交渉に臨んでいたキャロルとエルフナインの二人。

 その交渉作業におけるクライマックスが、二回目の交渉を終えてから四日経った今日、深淵の竜宮にて執り行われることになっていた。

 

「……あの方達には感謝せねばな」

 

「うん。今度直接、お礼しにいこうね」

 

 専門の職員に先導され、通路を歩いている二人の現在地は深淵の竜宮、その中でも上層に位置する場所である。彼女達はそこからエレベーターに乗り、ウェル博士が幽閉されている最下層に向かう予定なのだ。

 ……だが少し待ってほしい。転移結晶を使う事で、直接ウェル博士の下へとワープできるはずの二人が何故、このような遠回りな道を辿っているのだろうか。しかもキャロルに限っては、最下層までの道筋も把握しているはずなのだが……実は、こうなった裏にはエルフナインから色々聞かされたOTONAや上層部が絡んでおり、彼らが組み上げたストーリー通りの進行を取ることになった事が原因で、このような状況になっていたのだった。

 

 では、彼らが組み上げたストーリ-についてだが……あまり長々と説明するのもグダりそうなので、簡単に説明すると――

 

 

『我々が提起したウェル博士との取引については、賛成が僅かに上回り承認された。よって明日、リンカー生成作業に携わっているエルフナインとキャロル・マールス・ディーンハイムの両名は深淵の竜宮へと赴き、交渉に臨むべし……後数時間もすればこの内容が、君達へと正式に通達されるだろう』

 

『……アダム・ヴァイスハウプトという脅威を前に、リンカー枯渇によりシンフォギア装者三名が離脱。この由々しき事態に危機感を覚えた我々S.O.N.G.上層部は、深淵の竜宮に幽閉されているリンカー開発の第一人者、ウェル博士に協力を仰ぐべきであると考える……というストーリーですね』

 

『これなら嬢ちゃん達が不法侵入した事実を隠しつつ、堂々と深淵の竜宮に乗り込めるからのぅ』

 

『お二人には明日、正規ルートを使用して深淵の竜宮へと向かって頂き、到着後は係の者の案内に従い最下層へと移動して下さい。そして我々が提示する条件をもとにウェル博士と交渉、同意が得られた場合は早急に帰還しリンカーの開発作業へのシフトをお願いします』

 

 

 まあこんな感じである。ちなみに補足すると、エルフナインとキャロルについては、今回がウェル博士との一回目の交渉、という設定になっている。まあ不法侵入がバレたらマズいからね、仕方ないね⦅週三で不法侵入しているミカちゃんから目を逸らしつつ⦆

 

 

「この部屋がウェル博士の居室です。私はここで待機していますので、何かあれば声をお掛けください」

 

 

「はい。ここまでの案内、ありがとうございました」

 

「世話になった」

 

 

 と、いう訳でチーム金髪幼女の二人は、第一回目(実際は三回目)のウェル博士との交渉に臨むのであった。

 

 

「……おや? 思っていたよりも早かったですねぇ……どうやら君達は相当に追い詰められているようだ、ふふふ……」

 

 

「これが契約書で……後はこちらも読んでおいてください」

 

「提示する条件については全て契約書に書き記されている。それを把握した上で、取引を受けるのかを判断して頂きたい」

 

 果たして、チーム金髪幼女はウェル博士との交渉を纏める事ができるのか……そして、アダム・ヴァイスハウプトの準備が整う前にリンカーを完成させる事ができるのだろうか……残された時間は、少ない。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「分離作業が成功した段階で、博士の身柄は地上の収容施設へと移され、そこで改めてフロンティア事変における罪状の整理と、今回の取引による減刑の計算を行う。なお、その後についても技術提供による貢献度に応じて、更なる減刑が行われる、との事だ」

 

「ふむ、成程……ちなみに分離した場合、僕の左腕は――いえ、このような問いは無意味でしたね」

 

 契約書を手渡してからおよそ十五分……ウェル博士は既に契約書を読み終え、今はキャロルの解説による最後の確認が行われていた。

 

「はい。精密検査が行えない現状では、博士に寄生するネフィリムがどの程度同化しているかを、ボク達には調べる術がありません」

 

「一応、目視での簡易検査は可能だが……最善を尽くしたとしても、恐らく完全に元通りというのは難しいだろう」

 

 ちなみに分離作業の後にウェル博士の左腕がどうなるのかについては、検査が行えない現状では全くの不明である。

 完全な欠損状態となるのか、或いは見かけ上は元通りになるものの、一部が機能不全となるのか……それを調べるにはまず契約を締結し、検査のために地上へと向かう事が必須なのだ。

 ……実は、キャロルが行っていた研究にはもう一つ、『再構成』というものもあるのだが……こちらを条件に含めると完成まで十年以上の月日を要することが確実なため、今回は交渉材料には含まれていない。

 

「まあ、そうでしょうね……更なる譲歩を引き出そうかとも思いましたが、まあいいでしょう。君の研究成果とミカ君に免じて、契約書にサインするとします」

 

「っ! あ、ありがとうございます!」

 

「……感謝する」

 

「いえいえ、こちらにも利がありますから。それよりも契約した以上は、三年以内での完成を厳守して下さいよ?」

 

「無論、最善を尽くすつもりだ」

 

 と、いう訳で質疑応答を終えた僅かに後、ウェル博士が首を縦に振り交渉成立である。

 余談だが……地上に出た後、彼の隣にミカちゃんを置いておけばかなり良いコンビになるのではないだろうか?

 基本有能なウェル博士に、ギリギリの所でストッパー(物理)になるミカ……実は彼に一番必要だったのは、気の合う助手の存在だったのかもしれない。

 

 

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「結論から言いましょう……今ここで、君に答えをお教えする事はできません」

 

「えっ……ええーっ!?」

 

「この程度で慌てふためくなエルフナイン。それで博士、そのニヤケ顔は何を思いついてのものだ?」

 

「いやぁ、将来有望な研究者の卵を成長させるためにも、自分で答えに辿り着いてもらいたいなと思いましてねぇ」

 

 交渉が成立し、契約書にサインをしたウェル博士。

 そして早速、リンカー完成への助言を求めたのだが……ここでまさかのアクシデント発生である。なお、その主な原因はウェル博士がエルフナインを気に入ってしまった事である、うーんこの天邪鬼博士。

 

「で、でもボク達には時間が無くて……」

 

「すぐに済みますよ。なにせ、装者の頭の中を覗いてくればいいだけなのですから」

 

「頭の中を……?……つまり脳領域に侵入した先に、我々が求める答えがある……?」

 

 そんな天邪鬼博士がエルフナインの為に、一分という時間を費やして考えたのが……ずばり、『危険がいっぱい!シンフォギア装者の脳内に飛びこんで、答えを見つけにいこう!』というクソ企画である。なお、もちろん今のS.O.N.G.にそんな事をして遊んでいる余裕は全く無い、マジで博士空気読め。

 

「その通りです。 いいですか?君が最後のピースに辿り着く事ができなかったのには、しっかりとした理由があるんです」

 

「理由……ですか?」

 

「そう、理由です。 君がリンカー完成に一歩届かなかった原因は、人生経験の不足……その中でも、『愛』という感情への理解が足りなかったからなのですよ!」

 

「……何故、そこで愛?」

 

「ふふ、シンフォギアの適合に、奇跡などというものは介在しないのです。つまり、答えは必ず形として存在している……そう、記憶の中に、愛という確かな形で、ね」

 

 それからも何言ってんだコイツ?と思わず言いたくなるような謎解説をドヤ顔で繰り広げ続けるウェル博士。

 ……そう言う博士は愛という感情について詳しいのですか?失礼ですが恋愛経験の方は?――そう聞き返せば、彼は何と答えるのだろう……まさかとは思うが、自己への愛が豊富とか言い出すのでは……(疑惑の眼差し)

 

「愛への理解、それが今のボクに足りていないもの……シンフォギア装者の心に触れれば、足りない答えが見つかるのでしょうか?」

 

「さぁ?気付けるかどうかは君次第ですからねぇ……ちなみに君の話を聞いた上で助言しますが、戦線離脱した三人の中であればマリア・カデンツァヴナ・イヴと共に行くのが一番だと、僕は思いますがね」

 

「……もしも、失敗した場合は?」

 

「その時はもう一度、ここに来れば教えてあげますよ。流石にこのような子供を虐めて喜ぶような趣味は、僕にはありませんから」

 

 なお一応ではあるものの、失敗した場合の救済については用意してくれるようだ。

 それを踏まえてキャロル達が取れる選択肢は――

 

 1、ウェル博士を拷問に掛けて情報を引き出す、時間が無いって言ってんだろボケェ!!(憤怒)

 2、今すぐ帰ってマリアと共に脳内にダイブ! で、失敗したら再度この場所へ!

 3、アホくさ、もうええわ。契約は無しな(全ギレ)

 

 この三つである。では、気になるチーム金髪幼女が出した答えはというと――

 

「……キャロル」

 

「……今すぐ教えよ、と問答するのも時間が惜しい。博士、我々はこれで失礼する」

 

「どうやら本当に追い込まれているようですね……仕方がない、もう一つだけヒントを差し上げましょう」

 

 二番、であった。まあ詰まるところ、こうやって無駄に話している時間すら惜しいという事なのだろう。

 しかし、帰路につくことを即座に決めた二人の姿を見たウェル博士は、もう一つだけ彼女達にオマケを与える事にした……なお、意地でも答えを教える気はない模様(天邪鬼)

 

 

「……ババ――こほん、ナスターシャ教授についての記憶を、特に深く観察することをオススメしますよ。何故なら、あの弱虫装者に愛を与えるような物好きな人間は、彼女くらいのものでしょうからねぇ」

 

 

「……覚えておこう。行くぞ、エルフナイン」

 

「うん……(弱虫……? あっ、そっか……博士の中でのマリアさんは、フロンティア事変が終わった時のままなんだ)」

 

 

 こうして、マリアさんがメガ進化している事を知らないウェル博士からの助言を受けたチーム金髪幼女は、足早に地上へと帰還する。

 ……余談ではあるが、原作の方でもマリアとエルフナインは脳領域へとダイブし、その時点で死亡していたウェル博士(ただし、マリアの中の記憶に存在する幻影)の導きにより、リンカーを完成させる事ができたのだが……。

 

 

「……そういえば、脳領域に潜る事の危険性についての説明を忘れていましたねぇ。いやぁ、うっかりうっかり、歳をとるといけませんねぇ全く……」

 

 

 御覧の通り、原作とは違いウェル博士は健在なうえ、本来のGX編であったはずのマリアとの絡みが全て消滅しているため、マリアの記憶内でもそこまでの存在感は残っていないだろう。

 ……あれ?もしかして、これってすごくヤバい状況なのでは……?⦅戦慄⦆

 

 

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「司令。松代での解析を続けていた、バルベルデから持ち帰った資料の解析が全て終了しました」

 

「そうか、ご苦労だったな。資料については予定通りこちらで保管し、その後国連本部へと提出する」

 

 一方、こちらはS.O.N.G.仮説本部潜水艦内・司令室……この場所では現在、NINJA緒川が弦十郎へと調査終了の報告を行っていた。

 ちなみに原作ではこの資料全てが、アダムの隕石ズドンによって施設ごと破壊されている。しかしこの世界戦ではラスボス系チート金髪幼女と愉快な人形達が仲間に加わっているため、パヴァリア側にそんな事をしている余裕が無く資料全てが健在であった。やったぜ。

 

「了解です。それとは別に、資料の中で気になる記述を見つけたのですが……それがこちらです」

 

「ふむ、どれどれ……『神殺し』の槍……っ!? ガングニール、だとぉ!?」

 

「はい、資料には確かに、ガングニールについて書かれていました。 そして、この情報が真実であると仮定すれば……」

 

「以前、響君のアームドギアが不死身の怪物を退けた事に、全ての説明がつく……か」

 

「その通りです。そしてこれが事実であれば、我々はアダム・ヴァイスハウプトに対して強力なカードを手に入れた事になりますね」

 

 と、いう訳でガングニールに備わっている能力、『神殺し』のネタバレ解禁である。

 では何故、ガングニールにそんな能力が備わっているのか。それを簡単に説明すると――

 

 大昔のガングニールにはそんな能力は無かった。

 ↓

 ところが創作物やらの影響で『ガングニールには神殺しの力がある』と人々が信じ込む。

 ↓

 長い時間を掛けてそれが世界中に広がっていく。

 ↓

『コトバのチカラ』によりガングニールが一種の哲学兵装と化す。つまり、皆が信じたから本当にその力を宿してしまった、というのが今のガングニールの状態。

 

 

 と、いった具合である。うーん、この文句無しの主人公的能力、正に敵無しではないだろうか。

 これなら仮に『神の力』とかいう未だに意味不明なものが現れたとしても、響のガングニールで殴り飛ばせば一発解決である。よし、これは間違いなく我々S.O.N.G.の圧勝だな!⦅確信⦆

 

「状況証拠は揃っている、か。どうやら万が一が起こった場合、響君に頼る事になりそうだな」

 

「後は調さんと切歌さんについても、ですね。魂に作用すると言われているザババの刃なら、神の力という埒外の力にも通用するかもしれません」

 

「そうだな。まあ、二人についてはリンカーの完成が間に合うのが前提だが」

 

「そうですね……あの、僕の気の所為かもしれないのですが、司令室に来るまでの間、周りが少し慌ただしかった気がするのですが……」

 

「少し前にキャロル君から連絡があってな。今はその際に頼まれた機器準備の真っ最中、という訳だ」

 

「? 機器、ですか? それは、どのような……?」

 

 こうして『神殺し』という新たな手札を加え、リンカーの完成にも希望が見えたS.O.N.G.陣営。後はアダムによる襲撃がいつ始まるか、時間との勝負である。

 ……えっ、イグナイトモジュール……? いや、だってうんともすんとも言わないし……仮に起動したとしてもアダムに勝てるかというと疑問だし……ねぇ?

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「本日の夕刻に出航する豪華客船に客として紛れさせ、日本へと多数の構成員を送り込みます。後は全て、局長の指示通りに」

 

「任せるさ君達に、レイラインの破壊については」

 

「はい。六割をレイライン襲撃に、そして残りの四割をダミーを含めた儀式の準備に充てます。これにより敵の戦力分散、及び時間稼ぎが同時に叶うでしょう」

 

「どうすればいいのかな、僕は」

 

「時が来れば、私が直接ご連絡します。その連絡の後、局長は日本へと転移し我々の協力者と接触、我々が用意する車に乗って頂き儀式の場へとお越しください。そして――」

 

「ちょっと!いつまでアダムを独り占めするつもりなの!?これ以上は我慢できないんだから!」

 

「駄目だろう、ティキ……悪気はないんだよ、この子は」

 

「はっ、はい……。では、私はこのまま日本へと渡りますので、準備が整うまではゆっくりとお過ごしください」

 

「ああ。ここで祈っているよ、君達の無事を」

 

 前回の戦いから五日が経った夕刻……日本へと向け、一隻の豪華客船が出航した。その中にはたくさんの老夫婦や新婚旅行と思われるカップル、そして子供を含めた家族連れ等の姿があった。

 

「……こちら、異常なし」

 

「……こちらもです。気付かれた様子は無いし、順調そのものですね」

 

 そして前回の戦いから六日が経った深夜……横浜港に立ち寄ったとある外国籍の豪華客船内で、百人単位の集団失踪事件が発生する。

 しかし乗客が混乱するのを恐れた運営側はこの事実を隠蔽し、この事件がS.O.N.G.に伝わったのは襲撃が始まる僅か一時間ほど前の事だった……。

 

 





何を思ったのか、137~139話までを同時進行で書いていた所為で完成が遅れてしまうという……ですがとりあえず137、138についてはほぼ同時に完成したので投稿します。

次回も読んで頂ければ嬉しいです。


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