第百三十八話です。ガリィちゃんによる変態紳士攻略講座のお時間。
「クリスちゃん右から来てるっ!」
「あっぶなっ!?――いけどあたしの仕事はこなしたぞ先輩っ!!」
「ああ分かっている!はあぁーっ!!」
「良い連携だぞお前達――だがまだ甘い!!」
響、クリス、翼の三人は近い内に来るであろう、アダム・ヴァイスハウプトとの決戦に備え、本部内のトレーニングルームで各自のシンフォギアを纏い、ユニゾン特訓を行っていた。
なお、訓練教官及び対戦相手役については風鳴弦十郎が務めている。
「三人ぽっちのユニゾンじゃたいして役に立たないでしょうけど、まあマスターの足を引っ張りたくないって気持ちだけは褒めてあげましょうか♪」
「役に立たないって……私から見たら、三人共凄すぎてよく分からないくらいなんだけど……」
「いやいやヤバさで言えば神獣鏡纏ってる未来ちゃんの方が一万倍――って何すんのよいきなり首は反則でしょ首はアタシが人形じゃなかったらそれ殺人未遂なんですけどだからやめなさいってばちょっと話聞いてる!?」
「忘れてって何回も何回もお願いしてるのにぃー!!うわぁぁぁぁん!!!」
(黒歴史って本当に怖い、私はそう思った)
(み、未来さんは真実の愛を歌に込めだだけだから……⦅目逸らし⦆)
(そ、そうだよ⦅動揺⦆)
そんな激化する訓練を他所に、トレーニングルームの端で戦いを見守っている女性が二人……学院が終わって響と共に本部に訪れた未来と、キャロルが忙しくて相手してくれないため、しゃあなしでここに足を運んだガリィの姿があった。
なお今のガリィは若干ふて腐れているので、例え相手が未来さんでも容赦無くイジり倒すという面倒くさい状態である。
「……それで話を戻すんだけど、敵の変態野郎は四人を同時に相手しながら、その中にいたミカちゃんを二発で落とせるくらいの規格外なの。どう?これを聞くと如何にヤバい敵か分かるでしょ?」
「ミカちゃんって確か……切歌ちゃん調ちゃんの二人と戦って引き分けだった……んだよね?」
「そう、しかもあの二人がイグナイトを起動した上で、ね。 つまり単純計算すると、ミカちゃん単体で最低でもイグナイト二人分の力があるって事……それにカリオストとロレイアちゃんファラちゃんの三人を加えた上で瞬殺された相手なのよ?」
「っ……つまり、響達が頑張ってもどうにもならないってこと……?」
「相手が悪すぎる、の一言に尽きるわね。はぁ、せめて役立たずのなんとかモジュールが使えたら、少しは違ったんでしょうけど」
(イグナイト>>>ガリィちゃん>>通常状態のシンフォギア、くらいは違うからねぇ……)
(流石にキャロルちゃんよりヤバいって事は無いだろうけど、なんか不気味なんだよなぁ……)
【ええ。限定解除状態のガングニールを平然と紙一重で躱し続けるなんて、危機感とか恐怖心が麻痺してるとしか思えないもの】
そんな面倒臭いモードのガリィなのだが、未来さんの反撃が首絞めというちょっとアレな手段だったためか、話を戻すことにしたようだが……どうやら未来さんは現在、ガリィの響達への評価が気になっているらしい。
それに対しガリィが言うには、『響達が弱いうんぬんではなく、今回の敵が強すぎる』という相対的な理由で、対アダム戦では三人のユニゾンが役に立たないと判断したようだ。
「……そう、なんだ」
「あら、不安にさせちゃったかしら?」
「あはは、ちょっとだけ――なんてのは嘘で……本当はすーーっごく不安で心配かも!」
「ふふっ、正直でよろしい♪」
(あら可愛いじゃないの)
【……どっちが?】
(悔しいけどどっちもだよチキショウ!)
そこまで言われては、未来さんが不安になるのも仕方ないだろう。
しかし一つお忘れでは無いだろうか……ガリィ・トゥーマーンの内部には、年中暇を持て余している数えきれない程のナニカが存在している事、そして彼らの役割がガリィのために戦略を練る事だという事を。
そう、彼らは前回の戦いから今日まで、対アダム戦で突破口を開くための戦略を昼夜問わずに練り続けていたのである。そしてその情報は全て我らがリーダーであるガリィに伝えられ、今か今かと実行の時を待ちわびているのだった。
「うん、もう自分一人で溜め込まないって決めたから――なんて、恥ずかしい事言っちゃったりして……」
「あら、そんな表情の未来ちゃんも可愛いわね♪」
「も~、そうやってまた虐める気なんで――」
「だから――意地悪するのはここまでにしましょうか☆」
「しょ……えっ?」
(説明しよう! ここ数日、我々ガリィ一行は対アダム・ヴァイスハウプト戦における戦略を模索していたのである!)
【サンジェルマン達、響ちゃん、それにマスターからアダムの情報を聞いて、それを元に突破口を探っていたのよね】
(そうすると……見えてきたのです、いくつかの戦略が! そう、ヒントは最初から……アダム・ヴァイスハウプトを見れば一目瞭然だったのだ!⦅迫真⦆)
と、いう訳でここからはガリィ一行監修による『全裸の変態攻略法(仮)』大公開のお時間である。
ちなみにこの攻略法はアダムと交戦した響、キャロルの二人に加え、元パヴァリア光明結社の三人から情報を集め導き出しており、その信頼度が高い事は間違いない⦅ガリィ基準⦆のだ。
……なお、攻略法における最重要キーワードは『全裸』。そう、実は『全裸』であることがアダムの弱点を露呈しているらしいのだが……もしかして寒さに弱い、とか――と、とにかくガリィ一行の出した結論に注目である。
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「まず響ちゃんやマスターとの戦いで、変態男は一発も直撃を受けていない。ここまではいいわね?」
「えっと、うん……つまりすごく強いって事だよね?」
「ええ、それで正解♪――なんだけど、実はアタシ……気付いちゃったのよ」
「気付いたって……何か変な所があったの?」
「う~ん、変と言えば変だけど……実はね、変態男が響ちゃんやマスターと戦った時……一つだけ不思議な点があるのに気付いたのよ」
(私達がね!)
(というか主に軍師とガリィさんがね!)
(全裸がヒントになってたとは、流石に盲点だったわ)
そして始まったガリィによる解説によると、彼女はアダムと直接交戦した響とキャロルの話を聞き、一つ違和感がある事に気付いたらしい。
その違和感とは――
「変態男はね……『防御行動』を一度も取っていなかったみたいなの。マスターの時は迎撃だけ、そして響ちゃんの時は回避行動を取るばかり……ねえ、どうしてだと思う?」
「えっ、避けたりするだけって事は……当たってしまうと危ないから……とか?」
(ほぼ正解、だよね?)
【ええ、そうね。後はこれにサンジェルマン達から聞いた話を合わせれば、見えてくるものがあるはず】
――そう、アダム・ヴァイスハウプトは戦闘中、防御行動を一度も取っていなかったのである。
この事に違和感を持ったガリィ一行は一つの可能性を考え、その裏付けを取るためにサンジェルマン達からも話を聞いた。そして――
「ええ、それも正解だと思うわ。 でも、アタシが立てた推測は少しだけ違って――」
ガリィはいつもの意地悪な笑みを浮かべ――
「――アダム・ヴァイスハウプトは錬金術による一切の防御行動を取らないのではなく、
【アダムが錬金術を使って防御したところは、サンジェルマン達も一度として見た事が無いと言っていたのよね】
(彼が全裸だった理由は、自身が紙装甲である事をアピールしていたからなんだよ!)
(自分から弱点をアピールしていくのか⦅困惑⦆)
(でもマジで一発デカいの当てれば勝てるんじゃね? それこそビッキーの全力パンチとか!)
――『弱点み~つけた』と言わんばかりの表情で自身の推測を打ち明けた。
「錬金術が、使えない……? でも、凄い錬金術師の人なんだよね?」
「ええ、才能について
「そ、そうなんだ……なんだか勿体ない気がするね」
(勿体ないというか、不思議な人だよねぇ)
【毎回服が燃えてるのに、どうにかしようと思わなかったのかしら?】
(サンジェルマンさんが教えてあげようとしても、全然聞いてくれなかったみたいだし……よくわかんね)
ガリィ一行が推測したアダムのウイークポイント、それは『アダムが防御手段を持っていないのでは?』というものだった。
ではその結論に至るには、どのような過程を経たのだろうか。それを説明するのにはまず、アダムという歪な錬金術師について再確認してみるとしよう。
アダム・ヴァイスハウプトという男性は絶大な才能と力を有している反面、術式制御能力は素人に毛が生えたレベル(サンジェルマン談)という珍妙な錬金術師である。
ではここで一つ想像して頂きたい……そんなゴミカスレベルの制御能力で、錬金術を用い構築する防御壁――それも響(限定解除)やキャロルの攻撃を防ぎきれるレベルの強度を誇るものを作ろうとすればどうなるか……。
――そう、下手をするとボカン!!……つまり自爆する羽目になるのではないだろうか?
「基礎なんて十年もあれば誰でも習得できるようなものなのに、勿体ないと言うよりはアホね。 ま、とにかくアタシが言いたいことは『当てれば勝てる』可能性があるんじゃないかって事」
「当てれば……でも、それってすごく難しいんじゃないのかな?」
「ええ、そうね。だからこそイグナイトが使えればって感じなんだけど……実はアタシ、それ以外で変態に一撃叩き込む方法を一つだけ思いついちゃったの♪」
「えっ、本当?」
(翼さん、君に決めた!!)
(あのキャロルちゃんすら驚かせたからね、ここで使わない手は無いね)
【制御が苦手という事は、身体強化の類も使えないはずだもの。つまりアダム自身の耐久力は、そこまで高くない可能性が高いわ】
では次に、ガリィ一行の推測が当たっていたとして『攻撃をどうやって当てるの?』という問題が出てくるわけなのだが……実は装者の中に一人、それを可能とする技能を持つ者がいたのである。では、その装者とは誰の事を指すのだろうか?
「ねえ、未来ちゃん……SAKIMORIブーストって知ってる?」
「サキモリブースト……? それって確か、翼さんがファラさんと一緒に特訓してる技……だよね?」
(違うゾ、イグニッションだゾ)
(でも、翼さん以外みんなSAKIMORIブーストって言ってるし……)
(実際に翼さん自身が加速する技だからしっくりくるんだよな)
SAKIMORIブースト(翼さんだけはイグニッション呼び)――それは風鳴翼がキャロルとの戦いで発現させた、天羽々斬の性能を一時的に超強化する切り札である。ただし使用後は身体にかなりの負担が掛かるため、使い所が難しいという欠点も。
「そうそう、それで合ってるわよ♪ で、その翼ちゃんが特訓してるSAKIMORIブーストなんだけど……実はこの技、とんでもなく凶悪な初見殺しなのよね~☆」
「初見殺し――もしかして、相手の人はどんな技なのかを知らないから……対応できない?」
「そっ、つまり奇襲にはもってこいって技なわけ♪ しかも外見上はほとんど変化がないオマケ付きなんて、正にあの変態をぶっ叩くために生まれた技と言っても過言じゃないわよね☆」
(全裸の変態紳士が油断してくれそうなのも有難いよね)
(で、後の問題は……響ちゃんが言っていた話ですな)
【ええ。そこだけが引っ掛かっているのよね】
(当たれば一撃必殺の拳を前にして、防御も身体強化も行わずに紙一重で避け続ける……それも自然体を維持したままで、です)
そんな使い所が難しいSAKIMORIブーストだが、どうやらこの技を使えばアダムに一撃を叩き込めるとガリィは推測しているらしい。
ちなみに、ガリィの脳内での流れを簡単に説明すると……
シンフォギア装者三名、アダムに全く敵わない
↓
アダム慢心、キャロル以外は無警戒に
↓
突然のSAKIMORIブースト
↓
「いいってもんじゃないぞ、ハチャメチャすれば!!⦅二回目⦆」が聞ける
という流れである。まあ本当に防御や身体強化できないのか等問題は残っているのだが、まず一撃を入れてみないとそれすら分からない以上、試す価値はあるという事なのだろう。
「そ、そうなんだ……」
『未来~、終わったよ~!!』
「――あら残念、時間切れみたいね。それじゃこの後は、三人と筋肉ダ――おじ様も交えて続きを話しましょうか♪」
(採用されるといいね!)
(……そういえばガリィちゃんって次の戦いどうするの?本部待機?)
(現場組じゃない? というかこの状況で待機とか、チャ〇ズじゃないんだからさぁ……)
【まあマスターと響ちゃん達のサポートくらいはできると思うわよ? あたし達って搦め手は得意だし】
という訳でガリィによる『全裸の変態攻略法(仮)』は、ここで一旦中断するようだ。
そしてこの後は響達三人を集めた上で、再度同じ話をし実際にこの方法を試すのかを判断するのだろう。
「それで、変態が油断しだした所でSAKIMORIブーストを――」
「イグニッションだ間違えるな」
「……SAKIMORIブーストを翼ちゃんに――」
「イグニッションだ間違えるな」
「SAKIMORIブーストした翼ちゃんを見てSAKIMORIブーストに驚いた変態がSAKIMORIブースト的な――」
「イグニッションっ!!!⦅憤怒⦆」
(馬鹿野郎お前ガリィは勝つぞお前!!)
(イグナイト君が生きていれば即死だった……)
(あ、でもそれでもすっごい速い!ヤバいこれ普通に負けるってば!!)
【ちょっと頭だけはやめてよ下手したらあたし死んじゃうんだから!!ねぇ翼ちゃん聞いてる!?】
なお、その途中で仲間割れが発生したため、案が採用されるまでにはかなりの時間を要した模様。ガリィくんさぁ……⦅呆れ⦆
こんな話ばっかり書いてるからいつまで経っても終わらないんでしょうね……(遠い目)
次回も読んで頂けたら嬉しいです。