ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百三十九話です。




第百三十九話

 

 

「力が、欲しいか?⦅迫真⦆」

 

「えっ――ち、ちから?」

 

 突然本部に呼び出され、足早に駆け付けたマリア・カデンツァヴナ・イヴを待っていたのは、通路を通せんぼするかのように立ちはだかる、両腕を組んだ二人の金髪幼女だった。

 

「力が、欲しいですか?⦅迫真?⦆」

 

「ちょ、ちょっと何なのよいきなり……私、司令に呼ばれて急いでるんだけど……」

 

 何故自分はこんな意味不明な状況に巻き込まれてしまったのか……もしかして、昨日ガリィに渡された差し入れ(プリン)が、エルフナインの私物だったのでは……それで怒りが限界突破して、こんな事になっているの……?⦅疑心暗鬼⦆

 

「心配無用。何故なら私達と風鳴司令の目的は同一だからな……エルフナイン、本題を」

 

「はいっ! マリアさん……ボクと一緒に、脳領域に潜ってくださいっ!!」

 

「の、のうりょういき?? ちょっ、ちょっと一旦待って、私にも分かるように説明してちょうだい!」

 

 

 

 ――この後、二人の金髪幼女から丁寧に説明された。

 

 

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「あ、頭の中に潜るなんて、本当に大丈夫なんデスかね……?」

 

「いい、エルフナイン。いざとなったらマリアを見捨ててアンタだけでも帰って来るのよ?」

 

「えぇ……⦅困惑⦆」

 

「貴方に心配されなくとも、エルフナインと二人でちゃーんと帰って来るから大丈夫よ!⦅半ギレ⦆」

 

「……うん、皆で待ってるね」

 

(脳領域に潜るとか、そんなトンデモな事できるんすねぇ……)

【あたし達人形の記憶を見るならまだしも……科学って意味不明すぎて凄いわね】

(というかウェル博士に教えてもらいに行ったはずなのに、なんでこんな事になってるのさ?)

 

 金髪幼女から説明を受けて数十分後……本部の一室では、頭部に専用の機材を取り付けられたマリアとエルフナインの姿があった。なおその周囲には弦十郎、ガリィ、切歌、調、キャロルの姿も見えている。

 

「脳領域に侵入した後の想定プロセスは、全てエルフナインが理解している。ただ、もしも危険だと思う事象が発生した場合、例え成果が無くとも早急にこちらに帰還せよ、いいな?」

 

「はい、分かっています」

 

「承知したわ」

 

 と、いう訳で脳領域への侵入開始のお時間がやって来たようだ。

 とはいえこのエピソードは原作でも無事に帰還を果たせたものなので、こちらでもクリアできる事は間違いないだろう、多分きっとメイビー⦅ウェル博士が健在な事から目を背けつつ⦆

 

 

「では、行ってきます!」

 

 

 二人の大冒険が今……始まるっ!⦅迫真⦆

 

 

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『強く、なりたい……』

『弱い自分は見せたくない……』

『本当は、嘘なんて吐きたくない……』

 

 

「これは、マリアさんの内的宇宙……?」

 

 脳内領域――この場所はマリア・カデンツァヴナ・イヴの過去が記憶という形で、全て保存されている領域である。

 そして今、脳内へと潜ったばかりの二人に聞こえている声は、過去のマリアそのもの……強さを求め、弱い自分を恥じ、それを必死に偽っていた姿であった。

 

「っ! マリアさん!大丈夫で――」

 

 だそれをマリアの横で聴いていたエルフナインは、すぐに『この記憶を見聞きする事は、マリアさんの精神に良くない』と気付き、マリアへと声を掛けようとするのだが――

 

 

 

 

 

「そ、そうよ……こ、これが私、マリア・カデンツァヴナ・イヴ……ガリィに散々馬鹿にされたというか今も馬鹿にされてる情けなくて弱っちくてそのくせ見栄っ張りで年上の威厳が無くて直情的で弱くて弱くてとにかく弱いマリアの姿なのよぉ!!」

 

 

 

 

 

「マ、マリアさんしっかりしてください! あ、あれは過去の話ですから!大事なのは今ですからぁ~!!」

 

 

 ――時既に遅し……そう、マリアは精神に致命的なダメージを負っていたのである⦅悲しみ⦆

 そう、プルプルと震えながら顔を真っ赤にして、正面から聞こえる声を涙目で睨みつけているマリアの姿は正に満身創痍……羞恥心が限界突破寸前だったのだ⦅迫真⦆

 ……もしこの後もマリアの精神がゴリゴリ削られ続けるようならば、マリアさんが発狂する前に帰った方がいいのではないだろうか……そう思ってしまうくらいには、顔の赤さが既に危険域である。

 

「かーこはぁ、かーわらないでもっみーらいはかーえらーれるぅー……」

 

「なんですかその歌!?ボク初めて聞いたんですけど!?」

 

「はなってぇーすーべてっをー、つみっあーげたちかぁーらすぅーべてぇー……」

 

「積み上げた力全て!? まさかあの声に向かって放つ気なんですか!?」

 

 なお、そのすぐ後にマリアさんの精神は羞恥により崩壊した模様。つまりある意味では原作より大ピンチな光景が、そこには広がっていたのであった。

 

 

 

 -  五分後  -

 

 

 

「心配を掛けたけどもう大丈夫よ……私はピンシャン!マリア・カデンツァヴナ・イヴっ!!」

 

 

「……あっはい、それは本当によかったです……(一曲全部歌いきるとは、流石に予想できませんでした……)」

 

 

 それから五分後、何故か原作のユニゾン曲を一曲丸ごと歌い切ったマリアの頭はハイになっていた……まあ開き直ったとも言うのだが、とにかく元気にはなったので結果オーライだろう。

 

「……そういえば、いつの間にか声も聞こえなくなっているわね」

 

「そうですね。では今の内にナスターシャ教授関連の記憶……マリアさんが研究所にいた時の記憶を確認しに行きましょう」

 

「確か私が、その時の事を強く思えばいいのよね?」

 

「はい。そうすれば心象風景が変化し、ボク達もその時代に飛ばされるはずです」

 

 という事で仕切り直しのここからが本番、マリアの幼少期、研究所時代の記憶へのアクセスである。

 ちなみに特定の場所に向かいたい場合、ややこしい手順などは無くマリア自身が強くその場所の事を願えばいいらしい。

 

「成程分かったわ、ここは私に任せて頂だ――」

 

 記憶領域内を移動する術を再確認したマリアは、若干テンションが高いまま研究所時代を頭に浮かべようと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ちょっと待ちなさい。 貴方達、時間が無いんでしょう?それなら私が、近道を案内してあげてもいいわよ』

 

 

 

 

 

 

 

「っ!? なっ、なんですかこれ!?」

 

 

「っ!? エルフナイン!私の後ろに隠れなさい!」

 

 

 ――した瞬間、二人の目の前に突然、黒いモヤのようなものが現れたのだ。その声を聞き、慌ててエルフナインを自分の身体の後ろに隠そうとするマリアだが……。

 

 

『……ちょっと、その反応は酷くないかしら? 確かに仕事ができていなかったのは事実だけど、それには海より深い事情があったのだから仕方ないと思うんだけど?』

 

 

「……っ! 貴方、まさか……!」

 

「黒い霧が、一カ所に集まって……?」

 

 

 マリアは気付いた。黒いモヤのようなものが発する声、それに聞き覚えがある事に……そして、呆然とするマリア達を他所に、モヤは次第に一カ所に集まっていき、やがて人のような形へと変化していく。

 

 

『もう一度会う機会が来るとは思っていなかったけれど……久しぶりね、マリア』

 

 

「……マリアさん……? この人は、脳領域に存在する過去のマリアさん、なんですか?」

 

「いえ、それは少し違うわ……久しぶりね、もう一人の私……いえ、ダインスレイフと呼んだ方が正しいのかしら?」

 

 

 そしてモヤの変化が治まった頃、そこに立っていたのは……マリア・カデンツァヴナ・イヴと瓜二つ……いや、マリアそのものの姿をした一人の女性だった。

 

 

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『私に聞きたい事があるのは重々承知しているわ。でも今はまず、貴方達が求めている場所に行くのを優先しましょう』

 

 もう一人のマリア――ダインスレイフが現れたことに動揺する二人を他所に、ダインスレイフは彼女達を導き脳領域の海を泳いで行く。

 

 

「マム……!」

 

『そう……貴方が苦しんでいる時、ナスターシャ教授もまた苦しみ、心で泣いていた』

 

『そう……ナスターシャ教授は全てが終わった後、子供達すべてに救いの手が及ぶよう、全力を尽くしていた』

 

『すべては、貴方達を生かすため……それだけを考えてナスターシャ教授は、常に激痛が走る身体を引き摺りながら、残り少ない命を使い潰していた』

 

『優しさだけでは、貴方達が乗り越えられない事が分かっていたから……だから自分を隠し、涙を心にしまい込んでいた』

 

『答えはもう分かったでしょう? そう、その裏にあるのは全て――』

 

 

 ダインスレイフの導きにより、マリアとエルフナインは過去の辛い光景……その裏に隠されたナスターシャ教授の真意を、抱いていた感情を知る……そう、それこそが――

 

 

 

「愛……ぐすっ……そうだ、マムは私達を……こんなに愛してくれていた……」

 

 

『そう、それこそが貴方達が求めていた答え……誰かを思いやる深い感情こそが、シンフォギアと装者を――貴方達を結び付ける唯一無二のもの……』

 

 

 

 ――それこそが『愛』……そう、『愛』なのである⦅大事な事なのでry⦆

 

 

 

「これが、ウェル博士が言っていた……熱くて深い、この場所にリンカーを作用させる事ができれば……!」

 

『ええ、これで貴方達の望んでいた場所に手が届くはず……ほら、急ぐんでしょ?貴方はもう行っていいわよ』

 

「ふぇっ!? でっ、でも、マリアさんは――」

 

「……私はこの子と話をする必要があるから残るわ。……リンカーの事、お願いね」

 

「……わ、分かりました!任せて下さい!」

 

 紆余曲折あったものの、晴れてリンカー開発における最後のピース、ゲットだぜ!である。

 これで後は脳領域から帰還するだけ――あっ、そういえばまだ問題が残っていましたね……。

 

 という訳でエルフナインはここで帰還し、二人は居残りで話をするようだ。

 ……果たして、サボり魔疑惑が浮上しているダインスレイフ君はどのような弁解を行うのか、要注目である。

 

 

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「……う、うぅん……」

 

「おはよう、エルフナイン。調子は……問題無さそうね」

 

「ガリィ……? えっと、他のみんなは……?」

 

(ギリセーフっ!)

【まだよ、今からリンカーの最終調整をしないといけないんだから完成はその後】

(パヴァリア暴れんな、暴れんなよ……!⦅切実⦆)

 

 エルフナインが脳領域から帰還を果たした時、彼女の傍にいたのは何故かガリィだけであった。

 その理由とは――

 

「……アンタ達が寝てからすぐ、『パヴァリアの連中が大勢国内に入り込んでる可能性がある』って情報がこっちに流れてきたのよ。それでレイアちゃんとミカちゃんを除いた戦闘要員と見守り係のアタシ以外は全員緊急招集されて、今は司令室で説明を受けているわ」

 

「っ!? そ、そんな……は、早くリンカーを完成させなきゃ、間に合わなくなっちゃう!!」

 

(百人以上が同時に失踪とか……いやー、臭いっすね)

【ええ。八割方、パヴァリアの仕業でしょうね】

(狙いはやっぱりレイラインかな? でも最重要ポイントにミカちゃん達がいるから、全裸の紳士以外が突破するのはほぼ不可能なはず、なんだけど……)

 

 ――パヴァリア光明結社による開戦の兆し……その可能性を感じさせる出来事が既に発生していたのである。

 

「ちょっと落ち着きなさいなオバカナイン。はぁ……アンタなら絶対そうなると思ったから、残っててよかったわほんと」

 

「で、でも……!」

 

(ゴールが見えた時こそ冷静に、だね)

【既にレイライン上の建物については警戒態勢が敷かれているはずよ。だから――】

(残った問題は『儀式』が行われる場所の特定、ですね)

 

 しかし、今はまだ戦いが始まっているというわけではない。故にガリィはエルフナインを落ち着かせ、冷静な頭で最終調整に臨んでもらおうとしていたのだ。

 

「まだ戦いが始まったわけでもなければ、パヴァリアが原因だとも確定してないでしょ。それに響ちゃんの家族とか関係者にも異常は無し……つまりまだ、時間的な余裕は残っているはず」

 

「あっ、そ、そうなんだ……えっと、マリアさんは今、少し用事があって内部に残ってるんだけど……ボクはリンカーの最終調整に行かなきゃだから、ガリィに任せちゃっていいかな?」

 

 ちなみにこの時点ではレイラインの襲撃や、装者達の関係者が襲撃されたという報告は一つも入ってはいない。

 いや、それどころか全員の無事が確認され、レイライン上に位置する建物も静かなものである。

 故に、リンカーの最終調整を行うだけの時間的余裕は残っている……そうガリィはエルフナインへと根拠を話し、彼女を落ち着けることに成功したのだった。

 

「あーはいはい分かったわよ。だからアンタは焦らず騒がず、リンカーの完成に全力を尽くしなさい――という事でアタシは、もう一人の寝坊助が起きるのを気長に待ってるわね♪」

 

「うん、任せて……! それじゃボクは研究室に行ってるけど、何かあったら教えてね」

 

「はいはい、それじゃ頑張ってね~♪」

 

(頼んだよ~!)

(リンカーについてはこれで大丈夫だな)

(……イグナイト君は?⦅小声⦆)

【次回に期待ね……まあ、次はしばらく来ないと思うけど⦅悲しみ⦆】

 

 とにもかくにも、リンカーについての目途がついたのは、S.O.N.G.にとっては喜ばしい事だろう。

 後はこの流れに乗って、イグナイトモジュールが突然復活したりすれば最高なのだが……まあそんな都合が良すぎる奇跡なんて起こるわけないか、ハハハハハ!⦅爆笑⦆

 

 

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「状況を説明する。今から半時間程前……昨日の深夜、横浜港に停泊していた豪華客船内で百人以上の集団失踪事件が起こっていたという情報が入った」

 

 緊急招集が掛けられガリィ、ミカ、レイア、マリアの四名を除いた全員が集められた司令室では、ブリーフィングが行われ、先日の深夜に起きていた事件の詳細が伝えられているところだった。

 

「集団失踪……まさかっ!結社構成員が乗客に紛れ、国内に潜入したという事ですか!?」

 

「……確定では無いが、その可能性を想定した上で我々は動かなければならん」

 

「……昨日の深夜に起きた事件なのに、どうして今まで分からなかったんですか?」

 

「船舶を所持する運営会社が、他の乗客が混乱するのを恐れたようだ。更に運営会社が海外の企業であることも重なり、情報伝達が遅れてしまったという事らしい」

 

 既に事件の発生からは丸一日以上経っており、もしもこれが光明結社による襲撃準備だとすれば最早一刻の猶予も無い可能性がある。

 故にS.O.N.G.は戦闘要員を招集すると同時に、保護対象とレイライン上の建物の警護を厳重に展開。光明結社を迎え撃つ準備を急ピッチで行っていた。

 

「ちなみに現時点でレイライン上の建物、装者全員の関係者に異常は起きていません」

 

「今も全力で神奈川や東京周辺の監視カメラを使って行方を追っているんだけど……連中、かなりの広範囲に散らばっているみたいだ」

 

「散らばっている……つまり狙いは、やはりレイラインの解放なのでしょうね」

 

 では、最低でも百人以上を国内に送り込んだ光明結社の目的は何か……そう、レイラインの破壊及び解放作業を行う事だろう。

 今後恐らく、光明結社は一カ所に複数人の錬金術師を送り込みレイラインを襲撃するつもりなのだろうが、拳銃で武装しただけの警備が果たして、結社の襲撃を退けられるのだろうか。

 

「えっと……レイラインを解放しないと儀式?はできない、ってサンジェルマンさんが言ってました! つまりファラさんの言う通りレイラインが危ないと思います!」

 

「でも、レイラインの警備はどこも超厳重になっているはずデス! だからそう簡単には壊せないデスよ!」

 

「暁切歌、お前の言葉は基本的には間違っていない――そう、敵が錬金術師で無ければの話ならな」

 

「残念ですが、警備の方々が所持している拳銃だけでは、複数の錬金術師に襲撃された場合退ける事は難しいでしょう。彼らにはアルカノイズという武器もありますからね」

 

「……錬金術師の集団ってことを、すっかり忘れていたのデス⦅反省⦆」

 

 その答えはファラが語る通り、かなり厳しいと言わざるをえない状況である。

 故に鍵となるのは最重要地点を守る二体の人形――レイアとミカがレイラインの破壊を阻止し続ける事、そして同時にアダムの所在を早急に掴み、精鋭をぶつけ彼を倒す事……この二点。

 

「ファラ君や響君の言う通り、レイラインの襲撃が結社の目的だろう――が、既にレイア君とミカ君をそちらに割いてしまっている以上、我々は当初の予定通りアダム・ヴァイスハウプトの撃破を目標に動く。いいな?」

 

「了解しました。こちらは私、立花、雪音、キャロル、ファラ、ガリィの六名で迎え撃ちます」

 

 その目的を果たすためには、これ以上の戦力分散は間違いなく悪手。故にS.O.N.G.はレイラインの防衛を警備と二体の人形に任せ、残りの戦力を全てアダムの撃破に費やす事を選択していた。

 ……これは裏側の話だが、実は足りない戦力の補填案としてサンジェルマン達をレイライン(ミカ、レイアとは別の場所)の防衛に当てる、という声が上層部の中で上がっていた。しかしこのドタバタの所為でその案も棚上げになってしまい、サンジェルマン達は今も軟禁状態が続いている。

 

「ああ、頼む。 それで今後についてだが、敵の大将が発見され次第お前達は現地に向かい、キャロル君を中心にアダムの企みを阻止するよう動いてくれ」

 

「把握した。あの錬金術の『れ』の字も知らぬような未熟者に、私が現実の厳しさを叩き込んでやるとしよう」

 

「キャロルちゃん、頼もしいよぉ……!」

 

「まっ、キャロル達が上の連中に睨まれないよう、あたしらもちょーっとは活躍しねーとだけどな」

 

 と、いう訳で後は捜査班の手でアダムが発見されるか、敵が動き出すのを待つだけである。

 

「……でも昨日の事件が結社と全然関係無い、って可能性もあるんですよね?」

 

「勿論、その可能性もある……が、むしろこちらとしてはその方が有難い」

 

 ちなみに一応、昨日の事件が結社とは無関係の可能性も残っているので、リンカーの完成を待ちわびているマリア、調、切歌が参戦できる芽は残っている。

 もしもそうなら三人の装者が戦線に加わり、ユニゾンによる強化幅も跳ね上がるので、S.O.N.G.としては理想的な状態で決戦に臨むことができるのだ。

 

 

 

 

 

 

「――っ! レイラインの襲撃、開始されました!」

「それ以外にも、レイラインとは関係の無い複数地点が襲撃されているようです!」

 

 

 

 

 

 ――その僅かな希望を踏み躙るかのように事態が急変したのは、それから僅か十分後。

 

 

 

 

「……落ち着いて、ボク……正確に、確実に……!」

 

 

 

 

 ――最後の戦いが、幕を開けた。

 

 





そろそろ処刑用BGMの準備しとかなきゃ……(無慈悲)

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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