第百四十話です。
「社長~っ!レイライン解放部隊……でいいんだっけ? まあいいや、とにかく配置完了しやしたぜ!」
「各地点には警備が敷かれているようですが、配置した戦力で十分に攻略できる程度です」
「そうか、ご苦労様です。さて、後は儀式場の方ですが……そちらはどうなっていますか?」
「ダミーの三カ所については、既に部隊が到着しています。しかし本命の方は警備が展開されているようで、現在増援部隊との合流を待っている状況です」
パヴァリア光明結社によるレイライン解放作戦……その中でも最重要地点である寺社を攻略するため、とある名も無き錬金術師は最重要地点近郊へと自ら足を運んでいた。
自慢の金髪をオールバックにし、端正な顔立ちをしているこの名も無き錬金術師……実は彼、アダムを匿った組織の代表を務めており、アダムとティキをもてなしていたのも彼である。
そんな彼は代表を務めているだけあって錬金術師としての実力もピカイチ⦅彼の組織基準⦆であり、それ故にレイライン最重要地点の攻略指揮官として、二名の側近と共に参加していたのだ。
「成程、分かりました。おおよそ予定通りに進んではいますが、油断はせぬようにと全部隊に通達しておきなさい」
「了解です」
「それにしてもエラい大仕事になっちまいましたね……レイラインやら儀式やら、偉いお方が考える事はサッパリわかんねえや」
「統制局長が何もおっしゃらなかった以上、我々は知る必要が無いという事なのでしょう。まあ金銭は十二分に頂いていますし、それについて文句はありませんがね」
なお、彼の周囲についても側近を含めた実力者⦅彼の組織基準⦆で固められており、如何にこの拠点を落とすことが重要かが分かる布陣であるが……実はこの方々、アダムの目的とか敵の詳細についてはほとんど理解していない。
ちなみにアダムから教えられた事は、儀式の準備方法となんか公務員的な連中と揉めている、くらいのものである。
では何故彼らがそんな嫌な臭いがプンプンする依頼を受けたのかと言うと、その理由は大きく分けて二つあった。
一つは彼らのリーダーがクッソ強い錬金術師⦅彼の組織基準⦆である事。つまり『俺らのリーダーが負けるわけねぇ!!』的な感じと思って欲しい。
そして二つ目はアダムから貰った『大量のマネー』が原因、というか理由の九割がマネーである。つまり『一般人ボッコボコにして神社とか壊すだけで大金持ちや!勝ったなガハハ!!』と彼ら全員が思っているのだ。
……ちなみに表面上は冷静っぽく見える金髪オールバックのイケメンも内心ではこんな感じである、お金って怖い。
「そっすねー、まあこんなボロい仕事とっとと終わらせて、パーっと盛大に打ち上げしましょうや!」
「ええ、そうですね。私達がここにいる以上、敗北などは絶対にありません。 ふっ、ただ私の
「ガハハハハ! 社長があれ使っちまったら三秒で終わっちまいますって!」
と、いう訳でミッションクリアを既に確信している組織の皆さん、彼らの頭の中は終わった後の打ち上げと二次会のムフフなお店の事で一杯である。
……なお作戦が開始されてから僅か三分後、社長が
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「襲撃されている地点は……全部で四カ所の模様!」
「中央モニターに映像を転送します!」
「四カ所同時……敵の目的はこちらの戦力を分散する事、か」
一方、こちらはS.O.N.G.仮説本部司令室。
パヴァリア光明結社に先制攻撃を許してしまった彼らは現在、総力を用いて状況把握に努めていた。
「クソっ!あいつら嫌らしい手を打ってきやがる!!」
「落ち着け、雪音。 藤尭さん、アダム・ヴァイスハウプトの姿は確認されていないのですか?」
「そうみたいだな……多分、本物の近くに隠れてるんじゃないか?」
「……準備が終わったら姿を現すつもりなのかな?」
「それってつまり本物が分からないって事じゃないデスか! こ、これはもう四分の一に賭けるしかないのでは……?」
「よ、よんぶんのいち!? それってたったの25――じゃなくて20パーセントしか無いって事ですよね!?」
「……25パーセントで合ってますよ響さん」
現状、司令室にはレイライン上に位置する防衛地点、そしてそれ以外の数カ所からパヴァリア光明結社によると思われる襲撃の報告が続々と舞い込んでいた。
その中でレイラインについては、想定通りなので防衛部隊に任せればいいのだが……問題はそれ以外に襲撃されている数カ所である。
恐らく、この数カ所の内一つが『神の力』を顕現させるための儀式を行う場所で、残りはS.O.N.G.をかく乱するためのダミーだと思われる。しかしこの四カ所は多少距離が離れている上、各地点には錬金術師がいると思われるため響達以外では攻略は難しい。更にアダムと戦う上で戦力分散も難しい事から、S.O.N.G.司令である弦十郎は難しい選択を迫られていたのである。
「……戦力分散は愚策中の愚策。ならば……犠牲が出る前提で現場に職員を派遣し、偵察を行うしか――」
取る手段を悠長に選んでいる余裕は無い……だからこそ弦十郎は、自身が選択しその全ての責任を負うことに躊躇しなかった。そう、結社の野望を阻止するため犠牲者を許容することを、苦虫を噛み潰したような表情で彼は決断し――
「――一つ、ここにきて分かったことがある」
しかしこの時、弦十郎は二つの事を見落としていた。
「アダム・ヴァイスハウプトという男が、私達を舐め腐っていた訳では無く……ただ、何も考えていなかったのだという事」
一つ、アダム・ヴァイスハウプトという男が人類最高クラスの大馬鹿者だったという事。
「キャロル君……?」
「……前提として、私は国内のレイラインを全て把握している。その上で言わせてもらうが、まずこことここ……この二地点は儀式の場としては論外も論外――こんな無意味な場所では、霊脈の恩恵など僅かすらも受けられぬからな」
そしてもう一つ――このキャロルという少女が、レイラインについて全て知り尽くしているという事。故に――
「っ! つまり、残りは二地点……このどちらかが本物と――」
「風鳴司令、急ぎサンジェルマン達をここへ――どちらが正解かは九割九分九厘確信しているが、念のため三人の意見を聞きたい」
光明結社が企てた策は、そのほとんどが事前に潰されることになり、そして止めに――
「私もキャロルと同意見よ。この二地点を比較すると、霊脈から受ける恩恵が違いすぎる」
「アダムがこんな搦め手を考えられるとは到底思えない……つまりこれは、アダムと一緒に攻めてきている連中が考えた策というワケダ」
「アダムが何もしないから自分達で、ってところでしょうね。はぁ、まるでちょっと前までのあーし達を見ているみたいで、テンション下がるんだけどぉ……」
アダム自身が切り捨てた者達の協力によって、完全に崩壊した。
……ちなみに光明結社が立てた策が何故、こんな杜撰な事になったのかを今の内に説明しておこう。
まず、アダムが何も言わないので気を利かした名も無き錬金術師が、妨害工作を提案する。
↓
「素晴らしいね、その提案は」アダム快諾、ただし情報は一切与えない。
↓
レイラインや儀式について一切分からないままなので、とりあえず適当な場所にダミー地点を用意する。
↓
アダム「いいんじゃないかなそれで」
……この金髪オールバックの名も無き錬金術師、どう考えてもマネーに目が眩んで依頼主の選択を間違っている。
だが貰うものを貰った以上、最早舞台を降りることは許されないのである、ああ無情⦅悲しみ⦆
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「お前達にはこれより、パヴァリア光明結社による『神の力』を顕現する儀式、その阻止及びアダム・ヴァイスハウプトの身柄確保に向かってもらう!」
「了解しました。パヴァリア光明結社の企てた策など最初から無かった、そういう事ですね」
「そんな体たらくなのに、なんでこいつら(サンジェルマン達)を平気で切り捨てられたんだよあの変態野郎……」
「それは私達の方が聞きたいくらいなワケダが……⦅遠い目⦆」
と、いう事でパヴァリアの策なんて無かった状態のS.O.N.G.陣営、気を取り直してブリーフィング再開である。
まず目標地点は、都心部に存在する小じんまりとした神社……その場所こそが『神の力』を顕現するための儀式を執り行う場所にほぼ間違いないだろう。
よって、戦闘要員はこれよりヘリに乗り現場に急行、同時にS.O.N.G.職員と自衛隊を派遣し周辺の避難誘導を開始する。
そして現場に到着した時点をもって戦闘を開始、パヴァリア光明結社の企みを阻止すると共にアダムの身柄を押さえる(ただし周囲の避難状況によっては、広範囲攻撃を控える等の制限が課される可能性もある)
なおアダムが死亡した場合において、この戦闘に参加した全ての者へは如何なる罪も適応されない。つまりアダムについては殺害が許可されている、という事である。
「基本的にアダムの相手はキャロル君に、そしてサポートをファラ君とガリィ君に務めてもらう。残る装者の三人はユニゾンを駆使しつつ、錬金術師とアルカノイズを掃討……そして可能ならば、儀式の要となる自動人形ティキの破壊を頼む」
「……把握した」
「お任せ下さい。この戦いで、前回の汚名を返上させて頂きますわ」
「「「はい!(あいよ!)」」」
彼女達はこれより現場に向かった後、『アダムを押さえる元キャロル陣営三名』と『自動人形ティキを含めた、その他の脅威を排除する装者三名』という役割に分かれる事になる。
キャロルがアダムを倒せなくとも、彼女が押さえている間にティキを破壊できれば最悪は阻止できる。そう考えての布陣なのだろう。
「そして最後に最悪のケース、『神の力』の顕現を許してしまった場合だが……攻撃が通じる類のものである場合に限り響君を中心に戦闘を続行し、活路を切り開いてくれ」
「ガングニールの隠された力……以前ヨナルデパズトーリが消滅した事実からも、可能性は十分に考えられるはず。賭けてみる価値はあるわ」
「はいっ!任せてください!」
そして最後に最悪のケース――『神の力』の顕現を許してしまった場合にはガングニールの『神殺し』の逸話が事実であるかを検証することになっている。
なおガングニールによる攻撃が通じなかった場合については、一時撤退を含めた作戦行動が再検討されるようだ。
「作戦については以上だ。お前達は出撃準備、切歌君と調君はガリィ君と交代し、マリア君の見守りを頼む」
「……あーし達、できればここにいたいなー、なんて思ってるんだけど……やっぱりダメ?」
「構わんさ。今更君達が裏切るとは、誰も思ってはいないだろうからな」
「ワーオ♪ おじ様っては器が大きくて素敵ね~☆」
という訳で簡易ブリーフィングはこれで終了である。
これよりS.O.N.G.戦闘要員は輸送ヘリが到着次第現場に急行し、切歌と調についてはリンカーが完成した段階でマリアと共に出撃、仲間との合流を目指す予定が組まれている。そしてサンジェルマン達については潜水艦外に出る許可が出ていないため、司令室で戦況を見守る事となったようだ。
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「ヒヒヒッ!! 歯ごたえの無いカス共だなぁオイ!!」
「弱い者イジメたーのしー!!」
「放っておきなさい!それよりもターゲットの破壊を優先して!」
「「へ~い!」」
一方、S.O.N.G.陣営が出撃を待つ間にもレイラインは光明結社の手により次々と落とされ、解放され続けていた。
とはいえ一つの例外を除けば、レイライン防衛に派遣されているのは特殊な力を持たない者達だけなので、そうなって当然なのだが。
しかもS.O.N.G.が彼らに出している指示は『錬金術師の存在を確認した時点で即撤退を許可する』であるため、ほとんどフリーパスで拠点を明け渡している状態だった。
「既に五つの地点で任務を完了しました。他地点についても、我々の脅威は存在しないとの報告が入っています」
「錬金術が使えねぇんじゃそうなるわな!ガハハハハ!!」
「順調でなによりですね。さて、我々も仕事を片付けるとしましょうか」
そしてここはレイライン上に位置するとある寺社……そこには『お味方の勝利は目前ですぞ!』という感じの順調すぎる報告を部下から受けつつ、レイライン攻略を行おうとしている者達がいた。
「ふふ、この分なら損害はゼロで終われそうですね」
一人は長い黒髪を一つに束ね、眼鏡を装備した知的そうな美女……彼女はアダムを匿った組織の、社長秘書的なポジションにいる人物だった。ちなみに錬金術師としての実力はSSSSS級(彼らの組織が認定した基準)らしい。
「いやぁわかんねーぜ? こんな温い仕事じゃあ、油断する馬鹿の一人や二人出てもおかしくねぇからな!」
一人は全剃りスキンヘッドに眉毛まで全剃りという、お前は何処の世紀末の住人だと言いたくなるような巨漢の男……彼はアダムを匿った組織の社長付きボディーガード的ポジションにいる人物だった。ちなみに錬金術師としての実力はSSSSSSS級(彼らの組織が認定した基準)らしい。
「損害が無いというのは喜ばしい事ですが……遠路はるばる足を運んだ以上、少しは歯ごたえのある相手とやりあいたいものですね」
そして最後に金髪オールバックのイケメン……彼はアダムを匿った組織の社長であり、同時に組織内でぶっちぎり最強の実力を持つ人物だった。ちなみに錬金術師としての実力はG級(ゴッド級、測定不能、つよい⦅確信⦆)らしい。
「社長が歯ごたえを感じる相手ですか……そんなもの、この国に一人として存在しているとは思えませんが」
「四天王に俺ら二人合わせても全然勝てねぇからな!ガッハッハ!!」
「こら、あまり私を買いかぶるのはよしなさい。例え本当の事だとしても照れてしまうでしょう?⦅ドヤ顔⦆」
そのようなとてつもない実力を備えた(彼らの組織が認定した基準)錬金術師が三人も揃っている以上、後はどれだけ早くこの拠点を攻略できるか、それだけの話となるだろう。
そう、寺社へと続くこの石段を登り終えるまでの後一分足らず……それがこの拠点が崩壊するまでの死のカウントダウンとなるのだ。
「相変わらず社長は照れ屋ですのね……ふふ、流石は愛されキャラと言われるだけはあります」
「愛されキャラ……そういや昔はよく女と間違えられて、気付かず社長に惚れちまう連中が続出してたっけ!ガハハハハ!」
「おぉいゴンザレスぅ!!その事は忘れろって何回も言ってるダルルルォ!!」
石段を登りきるまでは後僅か三段……にも関わらず彼らは警戒すらせず、和気藹々としながら雑談を続けていた。
しかしそれは無理も無いだろう、何故なら彼ら三人は錬金術師の中でも最高峰のSクラス以上が二人と、それを遥かに凌駕するG級の使い手なのだから……。
――そう、例えシンフォギアとやらが現れたとしても……我ら三人が揃っている以上、絶対に敗北は無い。
「……派手に愉快なのが来たな」
「ぶ~っ!ず-っと待ってたのに遅いんだゾっ!!」
――さて、目標は……余裕を持って五分以内に設定しておきましょうか。ふっ、少しくらいは楽しみたいですしね。
知的眼鏡 → キャサリン
スキンヘッド → ゴンザレス
金髪オールバック → トリスタン
次回も読んで頂ければ嬉しいです。