ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百四十四話です。




第百四十四話

 

 

≪気色悪いにやけ面浮かべやがって……あの露出狂、絶対なんか企んでるわよ≫

 

(イケメンなのに全然惹かれない不思議)

(それより企んでるって言っても、この状況で何ができるのさ?)

【狙いがマスターだとは限らないわね……警戒しておかないと】

 

 マスターに続いていたアタシ達が地上へと降り立ち、その目で見たものは……にやけ面を浮かべているアダムと、その周囲を囲むように立っていた四人の錬金術師の姿だった。

 恐らくあの連中が、アダムが新たに用意した敵の主力……レイアちゃんの話から考えると、響ちゃん一人でどうにかなるレベルのゴミカス錬金術師共なんでしょうね⦅暴言⦆

 

「最早貴様に逃げ場は存在しない。覚悟せよ、アダム・ヴァイスハウプト」

 

「望む所さ、僕達にとっても……付けようじゃないか決着を、この場所で」

 

 

《最善手は……マスターとアタシ達が時間を稼いでいる間に、装者達がゴミカス共を片付ける。で、そのまま人形をぶっ潰せば後は消化試合、なんだけど……》

 

(なーんか嫌な感じがするよねぇ)

(あの四人が実はすごく強いって事は無いかな?)

【可能性はあるけど……それならレイラインの方に援軍を送らない理由が分からないわね】

(まさか、変態紳士にはまだ変身が残されている? 全裸の先に、何かがあるというのか……?)

(アーマーパージ⦅全裸⦆の後に変身とか、もう下ネタしか思いつかないんですがそれは……)

 

 まあそんなゴミカス共の事はどうでもいいんだけど……さーて、このまま予定通りに進めて本当に大丈夫なのか、それが問題よねぇ。

 とはいえこの感覚を言語化しろって言われても無理だし、予定通りに進める事になると思うんだけど……。

 

 

「君達の相手は、私達が引き受けましょう」

 

「……いいだろう、受けて立つ」

 

「なんかさー、歌いながら戦うらしいじゃん? ギャハハハハ!何それ超ウケるー!」

 

「舐めてんじゃねーぞおい……」

 

「まっ、局長はんに殺されるか、俺らにボコられるかの違いだけやし……手加減くらいはしたるさかい、堪忍な?」

 

「……身の程を知らぬ愚かな者達よ、覚悟するがいい」

 

「私が決めた覚悟は、絶対に皆を守る事だけ……だから、あなた達には負けません!!」

 

 

《ゴミカス共の言動にも不審な点は見当たらないし……仕方ないわね、今はマスターのサポートに集中しましょうか》

 

(向こうから理想的な展開を持って来てくれるなんて……なんか余計に嫌な感じががが)

(もう考えても無駄だから仕方ないよ)

【こっちが圧倒的優位なのは変わらないでしょうしね。まあ、臨機応変に対応していきましょうか】

 

 と、そんな事を考えていたら……なんとゴミカス共の方から装者の相手を名乗り出たんですけど……なんなのよコイツら、もしかして本気で自分達がシンフォギア装者に勝てると思ってるのかしら?

 ……まあ結果的にはこっちの思い通りの展開になりそうだし、別にいいんだけど……なーんか上手く行きすぎて気持ち悪いのよねぇ……。

 

「ねえねえ!どうせ歌うんならあっちの広い場所にしなよ!そんでウチがお遊戯会の撮影係してあげるからさ!ギャハハハ!!」

 

「何がお遊戯会だ!――おいてめぇ、待ちやがれ!!」

 

「クリスちゃん!? お、追いかけないと!!」

 

「っ!? 雪音!一人で離れるな!!――ってお前もか立花!?」

 

「いやいや、いきなりなんやねんあいつ……すんまへんなぁ脳足りんの馬鹿たれが粗相してしもて――なに勝手な事しとんねん調子乗んなやボケェ!!」

 

「……やれやれ、これだから教養が無い方達は嫌なんですよ……」

 

「……うむ」

 

 その上わざわざ向こうから距離を取ってくれる、ねぇ……。

 ……もしかしてコイツら、アホな上に何も聞かされていないんじゃ……もしそうだとすれば、一応辻褄は合うけど――いやいや流石にそれは無いわよね、無い無い。

 だってそれだけであの胡散臭い変態に付いてくるとか、いくらなんでも頭がお花畑過ぎると思わない?

 

「……気が引けるだろう、彼らを巻き込んでしまう事は。お互いにね」

 

「貴様がそれを言うか……(仲間を巻き込むくらい平気な癖に!この二枚舌!)」

 

「サンジェルマン達をあっさり切り捨てた癖によく言うわねぇ……その二枚舌、アンタ英国人かなんかなの?」

 

「こら、駄目よガリィちゃん。英国人の皆さんに失礼でしょう?」

 

「……言ってくれるじゃないか、不出来な人形風情が」

 

(もうこれ絶対なんか企んでるじゃん……追い込まれてる人間の雰囲気じゃないよ明らかにさぁ)

(いっその事、キャロルちゃんと別行動で人形を壊しに行くか?)

(キャロルちゃんから離れるのは死亡フラグだゾ⦅警告⦆)

【それよりかは、隙を見て儀式場に『雪化粧』を叩き込む方がいいと思うわよ。また腕が取れちゃう事になるけど……】

 

 ……まあいいわ。向こうは気に掛ける程度にしておいて、今は変態の対処を優先しましょう。

 まずアタシとファラちゃんの仕事は、マスターが自由に遭戦える状態を保つ事……要は余計な邪魔が入る事を阻止したり、変態の矛先が響ちゃん達に向いた場合のサポートをする、って感じね。

 あと、隙を付いて儀式場をぶっ潰すのもアリっちゃアリなんだけど……儀式場の周囲は玩具(アルカノイズ)の群れで固められていて、更にその中心では二十人くらいのゴミが必死で結界張ってるし、更に更にレイラインからのエネルギー供給で結界自体が強化されてるっぽいのよねぇ……はぁ、めんどくさ……。

 ああもう全部ぶっ殺せれば簡単なのに上の連中が大量殺戮はNGだの技術の占有は世界の発展を妨げるだのピーチクパーチクうるさいのなんのって……どうせこのカス共から錬金技術掠め取りたいだけだろーが全部筒抜けなんだよあの平和ボケ共が!状況把握すらできないのなら今すぐ死んじまえ鬱陶しい!《憤怒》

 

 

 

 

 

 

半径十メートルくらいって言ってたしぃ……この辺でいっか♪――とゆー事でぇ……」

 

 

 

 

 

 

 ――そんな事を思っていたら、まさかの急展開。

 もしもこの時、意識の片隅でゴミカス共を警戒していなかったら……きっとアタシが踏み出す一歩目は、ファラちゃんより遅れていたでしょうね。

 

 

 

 

「ファラちゃん!マスターを頼んだわよ!!」

 

 

「――っ! ええ、任せて!」

 

 

(ほらやっぱりぃ!!)

(というかそっち狙いかよぉ!?)

【大丈夫、間に合うわ!】

 

 アタシ達から距離を取ったゴミカス錬金術師の一人が、懐から何かを取り出そうとしたのが見えた。

 

 あれは恐らくなんらかの罠。そして、狙いはアタシ達ではなく響ちゃん達――

 

 そう判断したアタシは、ほぼ同時に動き出そうとしたファラちゃんを制し、装者達の方へと全力で駆け出す。

 何故なら罠の性質が分からない以上、マスターが動くのはまず論外――それが分かっているからこそ、マスターは 変態(アダム )から目を逸らす事無く牽制を続けている。

 で、そうなると残されたアタシとファラちゃんの内、どちらが行くかだけど……これは単純に、戦力として価値が低い方が行くのが正解とアタシは判断した。それにファラちゃんよりアタシの方が、歩幅一歩分くらいは近かったしね。

 

「あん?なんやあれ……?」

 

 そして駆けだしたアタシだけど……その途中、あの女以外のゴミカス錬金術師共の反応を確認する事も忘れない。

 

 その結果――他の三人の反応はシロ……つまりあの女が単独で考えたか、もしくは何者か(・・・ )に唆された可能性が高いわね。

 

 

「っ!? なんだこ――」

 

「クリスちゃん、手を――」

 

 

 するとほぼ半径十メートル。ゴミカス女錬金術師が言った通りの範囲に結界が突然発生し、アタシを含めた八名を隔離する。

 更に間も無くその中央から漆黒の闇が広がり始め、まず中央付近にいたクリスが飲み込まれた。それに続いて響ちゃんも同様に飲み込まれ、これで被害者は二名。

 

「あひゃひゃひゃひゃ引っ掛かった引っ掛かったぁ~♪ それ、ウチら以外の全部を飲み込むんだってさ、局長がプレゼントしてくれたんだよね~!ってもう聞こえてないかぁ~、ごめんねごめん――あれ、なんかウチまでヤバくない?ちょっ、ちょっとどういうこ――」

 

 その後も浸食は止まらず、次はゴミカス女の番みたいね。

 ……あの変態、騙すためにゴミカス女を選ぶなんて意外と見る目あるじゃない。ええ、アタシが同じ立場でも間違いなくコイツを選んでいるもの。

 

 

「……ガリィ、あれは命に関わるようなものなのか?」

 

「あら、流石はリーダーね。落ち着いてて偉い偉い――多分だけど、範囲内の対象を別空間に隔離する類のモノだと思うわよ――って言ってる内にガリィ達の番が来ちゃったし……マ~スタ~!ちょっと行ってきますねぇ~!」

 

(これ悪手じゃない? だってキャロルちゃん、絶対激おこじゃん?)

(ええ、私もそう思います。この状況での最適解は、どう考えても爆弾を持たせて錬金術師を自爆させる事でしょうに……そうすればキャロルさんが手負いの装者を守らざるを得なくなるのに、もったいないですね)

【えぇ……⦅困惑⦆】

(うーん、この畜生⦅誉め言葉⦆)

 

 そして次はアタシと、警戒して足を止めていた翼ちゃんの番なんだけど……これってさ、サンジェルマン達がマスターを一瞬だけ閉じ込めたっていうアレよね? 中に玩具(アルカノイズ)がわんさかいて、空間を維持しているノイズを倒すまで解放されないってヤツ。

 あのさぁ……あれだけドヤ顔しておいて持ってきたのがくっだらない二番煎じなんて……変態な上にしょうもないとか、もうどうしようもないわねアイツ。さっさと死ねばいいのに。

 

 

「な、なんですかコレは!? こんなもの私は聞いてませんよ!?」

 

「わ、我を今すぐここから出せ! きょ、局長!!」

 

「気付けやアホ共!俺らはハメられたんやあの男に!」

 

 

 っと、そんな事はどうでもいいわね……心を落ち着けるために、醜い断末魔でも聞きながら待ちましょうか――ってあら、一人だけマシなのがいるみたいね……まあ中に入ればどうせ全滅するでしょうけど、精々必死に足掻きなさいな♪

 

 

《……一つ気になったんだけど、あの変態ってどうやってマスターに勝つつもりなのかしらね?》

 

(……さぁ?)

(こっちが聞きたいんだよなぁ……)

 

 とまあ、そうこうしてる内にアタシの身体も飲み込まれ始めちゃってるし、それが終わるまではお喋りでもしていましょうか。

 

《言っとくけどあんな大雑把な攻撃、一万発撃ってもマスターには掠りもしないわよ? ちなみにファラちゃんも前とは違って回避に徹する事になってるから、唯一勝ち筋があるとすれば……殴り合いくらい?》

 

【防御が得意じゃないみたいなのに、殴り合うの?】

(いや、だってそれしか無いし……⦅悲しみ⦆)

(ラスボスが味方になっちゃうと、こんな雰囲気になるんすね……《遠い目》)

(こんなのもう打ち切りじゃん……掲示板炎上不可避だわ)

(そこで『神の力』じゃよ⦅延命策⦆)

(『神の力』ってなんだよ⦅哲学⦆)

(サンジェルマンさんが言うには、少なくとも不死身の怪物の性質を引き継いでる可能性が高いらしいから……とりあえずダメージ無効スキルはありそうだよね?)

(神殺し、分解術式……⦅小声⦆)

(あっ⦅察し⦆)

(全然無敵じゃないんですがそれは……⦅震え声⦆)

(やっぱり駄目みたいですね……⦅諦め⦆)

(待って、他にもスペシャルな能力が備わってるかもしれない……そう私は胸に期待を膨らませた)

(ほんとぉ?⦅疑いの眼差し⦆)

(っと、あんた達雑談はそこまでにしな!)

 

 

 はい、お喋りタイムしゅ~りょ~♪

 という訳でアタシ達は見事に敵の罠に嵌められてしまい、抵抗虚しく亜空間に閉じ込められたのでした――まあこの程度なら想定内の範囲だし、どうとでもなると思うんだけど。

 

 

 ――ってあらら、ゴミカス共が早速死んじゃってるんですけど……ナイスよアルカノイズ、面倒な手間が省けてガリィ感謝感激です♪⦅満面の笑み⦆

 

 

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「ガングニール、イチイバル、天羽々斬の反応が消失しました!」

 

「あれは……キャロル君が閉じ込められた時と、同じ類のものか!」

 

「ああ、それで合っているワケダ。詳しく説明すると亜空間に閉じ込めた後、内包されたアルカノイズを使い対象を殲滅する、それがアレの持つ性能なワケダね」

 

「あれってサンジェルマンが使い切ったはずじゃ無かったの~!?」

 

「隠し持っていた、という事でしょうね……。大方、アダムに恩を売る目的で渡された賄賂か何かだとは思うけれど」

 

 司令室で大型モニターを見つめていたサンジェルマン達。彼女達が見つめているモニターには現在、九名もの姿が消失した戦場が映っていた。

 その原因は以前、サンジェルマンがキャロルに使用した試作品ノイズ、それが封じられた結晶が起動した事によるもの……全て使い切ったはずだったそれが、戦場に立つ敵錬金術師の手により起動されたのである。

 その出所は恐らく、サンジェルマンとは別口でアダムが受け取っていたものだと推測されるが、詳細についてはまあどうでもいい事だろう。

 

「エルフナインちゃん、響達は大丈夫……なんだよね?」

 

「はい、キャロルに使われた物と同じであれば、亜空間を管理しているノイズを撃破する事で戻って来られるはずです」

 

 ちなみに一度キャロルが体験した上にサンジェルマン達も味方になっている今、その攻略法は完全に判明している。

 そのためアダムの目的は恐らく時間稼ぎだと思われるのだが……。

 

「そうそう、そこの双子ちゃんの言うとーり♪ その内戻ってくるから大丈夫だってば☆」

 

「あっ、はい……ありがとうございます、カリオストロさん」

 

「双子ちゃん……? もしかして、ボクとキャロルの事でしょうか……?」

 

「だって双子みたいにそっくりだし、しかも仲良しじゃない♪ 見てて微笑ましい~っ可愛い~!って思ってたのよねぇ☆」

 

 

 ――えっ、キャロルの方はどうする気なの?

 

 その疑問に辿り着いていない未来とエルフナイン、そして気付いてはいるもののガールズトークを優先したカリオストロが他愛無い会話をする中、この場にいる数人はアダムの行動に疑問を感じていた。

 

「……で、アダムのクソ野郎はキャロルの方をどうするつもりなワケダ? というか装者を優先的に狙った理由が謎なワケダが……」

 

「可能性としては……ガングニールの神殺し、それを把握していたからこそ優先的に狙ったのかもしれないし、限定解除を警戒していた可能性もある。とはいえ私も、アダムが本当に考えなくてはならないのはそちらでは無いと思っているけどね」

 

「もしかして……また味方の錬金術師を狙うつもりでは?」

 

「いや、敵が気絶していた前回とは状況が違う上に、今回はサポート要員としてファラ君が付いている。よって以前のようにはいかんさ……不気味だとは思うが、な」

 

 どっちがとは言わないが、誰がどう考えてもほぼ詰んでいる状況にも関わらず、自信満々な様子を崩さないアダム・ヴァイスハウプトに対し、なんだか気味悪さの様なモノを感じ始める弦十郎以下数人。

 そして、司令室の面々が見守る中――

 

 

「――っ!始まったか!」

 

 

 三期ラスボス(キャロル・マールス・ディーンハイム ) 対 四期ラスボス(アダム・ヴァイスハウプト ) その第二章が幕を開けた。

 

 





Q.どうしてこんな空気になってるの?

A.作者が四期のパワーバランスを全く考えずに書き始めたからです(威風堂々)


次回も読んで頂ければ嬉しいです。


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