第百四十五話です。
次の百四十六話にて、色々と慣れない事を行ったために遅くなってしまいました。
「……亜空間内に装者達を隔離し、限定解除に至らせる事を阻止。そして同時に、あわよくば亜空間内で排除される事に期待している――といったところか」
アダムの仕掛けた罠により、装者達とガリィは亜空間内へと隔離されてしまった。
それはつまり、戦力を分断されたという事……しかしキャロルは特に取り乱すことも無く、敵の目的を分析するくらいには冷静な様子だった。
「倫理観等を抜きに考えれば、悪くはない策だと思います。ですが――この場においては一番の悪手ですわね」
――ただし、表面上は。
「叩くなよ、減らず口を。悔しいんだろう、本当の所は」
「勘違いもここまで来ると滑稽なものだな……ファラ――」
「はい、マスター」
実はキャロルは少しだけ、ほんのすこーしだけ怒っていた。故に自身へと限界まで身体強化術式を施し、さっさと目の前のにやけ面を殺――処分する事にしたのである。
「……教えてあげるさ君にも、この僕が!身の程というものを!」
その際に漏れだした殺気を感じ取ったのか、キャロルから距離を取るアダム。そして彼は安全地帯まで退くと、戦いの開幕を宣言――。
「黙れ外道――」
宣言し終えた瞬間、アダムへと向け放たれる無数の火球と氷塊。風の術式を併用し驚異的な速度に達していたソレは、アダムの下へと一瞬で到達し彼の身体を貫かんと牙を剥く。
「っ!? 甘いんだよ、その程度の考えは!」
その速度に驚きながらも、無数に迫る弾丸に対しアダムは迎撃を選択――自身の前方へと力任せに炎の弾幕を構成する。
その結果……炎と氷の弾丸、その全ては弾幕に阻まれ、アダムの身体に届くことは無かった。
「届くとでも思ったのかい、そんな豆鉄砲が……この僕に」
――完封できるね、僕一人で十分に。
奇襲まがいの攻撃をしたにも関わらず全て撃ち落されたキャロルと、見事に対応してみせたアダム。
という目の前で展開された一連の流れに気を良くしたのか、アダムは一層笑みを深め自身の勝利が近づいていると慢心するのだが……。
「……ファラ」
「……はい、流石はガリィちゃんですわね」
実は、それは大きな勘違いだった――いやそれどころかアダムは今の一連の攻防だけで、自身の弱点を晒してしまっていたのである。
――アダム・ヴァイスハウプトの制御能力には致命的な欠陥があり、それ故に錬金術による一切の防御行動を取る事ができないのではないか?
その仮説を検証する為にキャロルは、命中したとしても掠り傷すら付けられぬような
そして、それに対する手段として確実性、展開速度、消費する力……そのどれを比べても、最適解は間違いなく『障壁を展開し、防御する事』。しかし
「あのポンコツが推測した通り、少なくとも得意という訳では無さそうだな」
「そして火属性しか使えない彼には、次善策である身体強化術式も使用不可……正に攻撃特化の術師、という事ですわね」
攻撃力は世界最高クラス、ただし狙いが大雑把なため自分よりも上位の相手には当たらない。そして防御力は恐らく、改造した肉体頼り。
ただでさえキャロルという強敵が相手にも関わらず、初手で完全に看破されているアダムパイセン⦅ドヤ顔継続中⦆であった。同じラスボスにも関わらず、全く良い勝負に見えないのは何故なのか……。
「もう飽き飽きしているんだよ、僕は……君達の遊びに付き合う事が!」
まあ状況を理解できずに、こういう事を堂々と言えてしまうのが原因の一つなのだろう。そしてちなみにだがアダムの希望通り、遊びが終わる時間は刻一刻と近付いている模様⦅悲しみ⦆
「……次は奴の肉体強度を確認する。ファラ、お前は攪乱に徹し、安全圏から奴の集中力を乱せ」
「了解致しました、マスター」
色んな意味で丸裸にされつつあるアダムが大逆転勝利を目指すには、最早『神の力』に頼る他無いこの状況。
しかし頼みの綱であるレイラインからのエネルギー供給はミカ、レイアによる妨害で想定の半分程度しか届いておらず、この状況で儀式を行ったとしても『神を降ろす門』を開く事は難しい。
「くだらないんだよ、その薄っぺらな正義感が!」
しかし、まるでその状況を理解していないかのようにアダムはキャロル達への戦意を剥き出しにしている。その理由だけが不思議で、そして同時に不気味だった。
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「なーんだぁ、ビビって損したじゃーん♪ ほらほらノイズ君、ちゃっちゃと片付けっちゃってくださ――」
「……な、なんだ、この異形は……おい!そっちに行けば助かるのか!?」
「ま、待ってください!!誰か私に早く説明を、そして私を安心させて――」
亜空間内に転送されたアタシ達を待っていたのは、
で、そんな事を考えてたらゴミカス共の内の何人かが、いきなり自分からデカブツの下に走って行くのが見えたんだけど……。
「守りはアタシがやってあげる、アホ共の目覚ましは任せたわよ翼」
「っ、承知した!」
(ちょっ、あの人達やばくない!?)
(モブに厳しい世界だからね、仕方ないね⦅悲しみ⦆)
(そしてガリィちゃんは仲間が優先だからね、当然だし仕方ないね⦅悲しみ⦆)
ボケーっとしてる二人と合流するのが優先だし、当然放置するに決まってるのよね~♪
――あっ、触手?に捕まって分解されちゃった、しかも仲良く三人一緒に。という事はあのデカブツ、使用者の指示を素直に聞くタイプのノイズじゃないみたい。それに普通の
「あんのアホ共が……い、今の見たら分かるやろ!俺らも罠に嵌められた側なんや!」
なんて事を考えてたら、四人の中で唯一生き残ってたゴミが急に喚き始めたんですけど……いやいや、アンタ達が無様に騙されたお馬鹿さんってことぐらい分かってるわよ? ただ、それを把握した上で助ける気が無かっただけ。
「罠に……それってもしかして、サンジェルマンさん達と同じ……?」
「っ……まさかあの野郎、また躊躇無く味方を切り捨てやがったのか!?」
「最初から使い潰すつもりだったんでしょ、どうせ役に立たないのは分かりきってるし」
「これが外道の取る戦術、という事か……」
(変態な上に外道とか……)
【言っておくけどそんなものよ、何百年も生き長らえている錬金術師なんてね】
(普通の精神なら、人格の転送とか怖くて無理だもんね)
まっ、こうして結果的に閉じ込められちゃってるし、実はかなり有効な戦術なのよねコレって。
その証拠に、前の戦いであの変態がサンジェルマン達を切り捨てていなかったら、間違い無くマスターが勝って終わってたしね。だって獅子機が出た瞬間に終わりだし……万が一それを奇跡的に凌いだとしても、限定解除した装者六人が増援で来ていたんだもの。
「せや、嬢ちゃんの言う通りあの男は外道なんや!――つー訳で共闘や共闘!あのクソ気持ち悪いノイズ潰すんやったら協力すんで!」
「……は? いやいやアンタみたいなクソ雑魚、傍にいても邪魔なだけだし……そうだ、アンタ一人だけその辺の
(辛辣ぅ!)
【でも間違ってはないわよ? チームワークの関係もあるし、背中から撃たれないとも限らないしね】
(そうだよ⦅便乗⦆)
で、そんな有効な戦術を変態が使用するために、今回めでたく犠牲者に選ばれた四人なんだけど……既に三人がお空の上で、生き残ったのは態度が馴れ馴れしい男一人だけ。
……共闘したとして、響ちゃんがまたこじらせ始めたら面倒だし雑魚の相手でも任せておきましょうか。ええ、絶対にそれが最適解よねぇ。
「な、なんやて……どういう意味やそれ!?」
「そ、そうだよガリィちゃん!早くキャロルちゃんを助けに行くには、みんなで戦った方が――」
「お黙りなさい頭お花畑のどんくさ娘――あのね、だからこそそのクソ雑魚錬金術師が邪魔だって言ってんのよ分かる? というかたった今、無様に死んだ三人を見たら分かるでしょ?つまりコイツらって所詮そのレベルのクソ雑魚なのよ」
「それにしてもお前、言い方ってもんがあるだろ……」
(……まあガリィちゃんや装者の皆なら、触手に対応できてたよね)
【ええ。だからこの錬金術師にとっても悪い話じゃ無いはずなんだけど……言い方がちょっとね⦅遠い目⦆】
(多分ちょっとどころじゃないゾ)
って既に手遅れだったみたい。はぁ、相変わらずこじらせてるんだからこの子は……。
「こ、このガキ……後で俺の力が必要になっても知らんからなボケェ!」
「あっ、行っちゃった……あの人、大丈夫かなぁ……」
「普通の
「……
【あいどる大統領……ってなに?】
(思い出したかのように突然原作セリフ言うのやめて⦅真顔⦆)
【……ああ、そういう事なのね】
(ちなみに言う人間違えてます……いや、多分わざとなんだろうけど)
という訳でこじらせてる響ちゃんを黙らせつつ、とりあえず厄介払いはこれで完了ね。
で、次はこの後どうするのかっていう話なんだけど……まあ選択肢なんて数えられる程しか無いわけで、翼ちゃんもそれくらい分かってるわよね。
「ん~、そうなんだけど……策っていっても
「はいっ! キャロルちゃんが心配なので、脱出した方がいいと思います!!」
「あたしもこいつに賛成だ。大体、ノイズだらけの場所に引き籠るのなんて御免だっての」
「……だ、そうよ?」
(引き籠るのは無いかなぁ。ここも安全とは限らないし)
【んー、響ちゃんの体力を温存したいなら雪化粧一択なんだけど……】
(それで倒し切れなかったら面倒だよねぇ)
選択肢は大きく分けて四つ……ユニゾンで潰すか、ガリィ一人で潰すか、普通に攻撃するか、そしてしばらくこの場所で様子を見るかの四つね。といはいえ四つめについては誰も選ばないでしょうけど。
「そうだな……」
「ユニゾンか地道に攻撃を選んだ場合、『神殺し』の可能性を持つ響ちゃんが多少消耗してしまう。で、アタシが大技を使う場合は四肢の内一本……まあ腕のどちらかを犠牲にする必要があるわ」
「……よし、攻め手は私達が引き受けるとしよう」
「ふーん、そう。で、どっちに決め――ってああもう鬱陶しい!あのデカブツみたいに大人しくしてなさいよ!!」
(アルカノイズさんは元気だなぁ)
(つーか前のノーマルノイズの方が厄介だよな? シンフォギア以外はまともにダメージ通らないし)
(せやせや)
ちなみにデメリットはこんな感じなんだけど、要は響ちゃんを温存したい場合はガリィの出番ってわけなの。
……それにしても
「ガリィ、お前はそのまま露払いを頼む――立花、雪音!特訓の成果を見せるぞ!」
「っ! はいっ!」
「っ! りょーかい、一発で決めてやるよ!」
で、結局は装者達のユニゾンで潰す事を選んだみたいね。まっ、デカいだけで何もして来ない不良品っぽいし、多分一発で終わるでしょ。という訳でさてさて、ガリィは楽~に雑魚狩りしつつ待たせてもらいましょうか♪
(えぇ……⦅困惑⦆)
(うせやろ……?)
(完全に元通りとかチートじゃん⦅真顔⦆)
【……ノイズの挙動がおかしかった理由、こういう事だったのね……】
……そーんな甘い事を思っていた時期が、ガリィにもあったのよねぇ……⦅遠い目⦆
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突然だが――バトル漫画などに存在する『王道パターン』、またはお約束とも言われるものを知っているだろうか?
例えば……主人公と敵対しながらも共に成長する、ライバルキャラの存在。
例えば……主人公を遥かに凌駕する力を持つ強敵の出現、からの修行の日々。
例えば……自身や仲間に死が迫った瞬間、覚醒する主人公。
等々、挙げればキリが無いくらいには色々な王道パターンが存在しているのである。ちなみにこれを用いる事で読者は心をドキドキさせ、キャラに親しみを覚えてくれる……らしい⦅適当⦆
そのように作者も読者もwinwinになれるという素晴らしいものが王道パターンなのだが……。
――『ラスボスに対して、主人公は苦戦する』
その中の一つ、これもよく見る展開だと思わないだろうか。
例えばラスボスに対して主人公やその仲間達が挑むものの、苦戦を強いられ物語によっては仲間が犠牲になる。そしてその先で、主人公達は紙一重の勝利を掴み取りエンディングへ……といった展開である。
いやラスボス相手に主人公が無双してしまうと、一番の盛り上がり所であるラストバトルがすぐに終わってしまう上に読者が置いてきぼりになり易いので、王道も何も当たり前だと思うかもしれないが……。
「っ!? ……いい気になるなよ、掠り傷程度で!!」
まあつまり、わざわざこのような例を上げて何が言いたいのかというと……。
「想定していたよりは上だったが……これで強度については、凡そ把握した」
この世界には既に、王道パターンなどは存在しない……本来辿るはずだった道を否定したが故に、この物語のシナリオはとうの昔に崩壊しているという事。
「がっ!? い、一方的だと、この僕が……あのような人間風情に!!」
そう、誰にも看取られる事無く世界から消えるはずだった一人の少女……その少女が健在であり、しかも全ての制限から解放された上で、主人公陣営に味方として加わっている時点で完全に崩壊しているのだ。
「自身が犯した致命的な失策にも未だ気付けず、それどころか喚き散らす始末とは……ここまで来るとなんというか、憐れに思えて来ますわね……」
「だからといって、外道の叫びを悠長に楽しむ趣味など私には無い」
更に言えば、そもそもこの少女とアダム・ヴァイスハウプトでは文字通り『格』が違いすぎる。それこそ少女が制限から解き放たれていなかったとしても、その結果が変わらない程に。
「互角――いや、上だったじゃないか僕の方が!数日前までは!」
だがアダム・ヴァイスハウプトという人物がその事実に気付く事、認める事は絶対にあり得ない。
何故なら彼はそういう風に
故に理解する事ができず、彼には子供のように声を上げるという選択肢しか存在しない。
「……」
そして彼の惨めな叫びに応えてくれる者、また彼を助けようとするも者もここには誰一人として存在しない。
……故に、残された手段はただ一つ――アダム・ヴァイスハウプトが唯一、自身より上位であると認める存在を降ろす事、それだけである。
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「っ!? こんなもので!」
――気付けばいつの間にか、弾幕をすり抜けて豆鉄砲が当たるようになっていた。
「見せてあげるよ、非力な君とは違う力を……そう、この世界の頂点に立つ僕の力を!!」
「――あら、守りを疎かにしてもよろしいのですか? ふふ、それでは遠慮無く……」
――大技を繰り出そうとすれば、決まって人形が姿を消す能力を発動し、儀式場に向かう様な素振りを見せた。それを探知するために僕は仕方なく大技を繰り出すことをやめざるを得なかった、何度も、何度も、何度も……!
「邪魔なんだよ、人形の分際で――がっ!?」
「生憎だが、邪魔な存在は間違いなく貴様の方だ」
――その事に苛立った僕が人形の方を先に蹴散らそうとすれば、もう一人の錬金術師が確実に攻撃を加えて来る。それこそ完璧とも言える連携を取り、まるで二者が意識を共有しているのかと思うようなタイミングで。
「見慣れたんだよもう、馬鹿の一つ覚えは!容易く躱せるぐらいにぐぁっ!?」
「そうか、奇遇だな……私も貴様の動きは見慣れたよ、それこそ動きの先がある程度予測できるくらいには、な」
――それから交戦を続け……挙句の果てには、錬金術師の攻撃を回避する事まで難しくなっていた。
いつの間にか錬金術師の放つ攻撃の威力は上がり、誘導弾のようなものまで混じり始めていた所為で避ける事も難しく……恐らく気の所為だと思うが、こちらの動きまで読まれ始めているような気分になって来ていた。
「レイラインも……足りないじゃないか、今のままでは」
……そういえばあの役立たず共は何をやっているんだ全く。彼らがレイラインをさっさと解放していれば、僕がこのような苦労を背負わずに済んだというのに……。
「……そうさ、負けるはずが無いだろう。あり得ないのだから、完全な存在が敗北する事など……」
……まあいいか。僕が負ける事は絶対に無いが、彼らが失敗した場合には備えておかなければね。
――そう、天を巡るレイライン……もう一つの門を開くために、力を残しておかなくては。
「そうさ、勝ちなんだ……どちらにせよ、僕の……ハハハ、ハハハハハハハぐはっ!?」
できれば力を消耗するこの手段は選びたくなかったよ……だけど仕方ないのさ。不出来な部下達が起こした不手際は、上司である僕の力で補うしか無いのだから。
「喚くな、喧しい」
やれやれ辛いものだね、全く……情けない部下ばかりを持つとさ。
色々と考えた結果、どう考えてもサブタイトルが「老人虐待」にしかならないため、五期を書ける気がしません(白目)
次回も読んで頂けたら嬉しいです。