ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第百四十六話です。

めっちゃ時間掛かった……初めて歌詞を文章に載せてみたはいいものの、中々上手くはいかないものですね。
というか今更になって軽い気持ちで「よっしゃ!歌詞乗せたろ!」と思った自分は、まごう事無きアホだと思います(真顔)




第百四十六話

 

 

「準備は良いわね?」

 

 亜空間に捕らわれたガリィ達がこの場所を脱出するには、正面に待ち構える巨大アルカノイズ(タコみたいなの)を撃破する必要があり、彼女達はその手段として装者三人によるユニゾン攻撃を選択していた。

 

 そして今、作戦は決行の時を迎えたのである。

 

 

 

 ――いざ飛ばん(let's fight) 空へ

 ――いざ行かん(let's fight) 明日へ

 

「よし――それじゃ行くわよ、しっかり付いて来なさいアンタ達!」

 

 

 まずガリィが巨大ノイズへと向かい滑走を開始。それと同時に響、翼、クリスの三人も旋律を奏でながら、ガリィに続き巨大ノイズへと向かい疾走する。

 

 ――最上のシンフォニー 声を一つに束ね

 

「ガリィの邪魔をするなんて、覚悟はできてるんでしょうね!退きなさい!」

 

 装者達よりガリィが僅かに先行した理由は、三人がユニゾンによる効果を最大限発揮できるよう、進路上の障害物(アルカノイズ )を駆逐する事が彼女の受け持った仕事だからである。

 

 ――胸に夢は(let's fight) あるか

 ――熱い歌が(let's fight) あるのか

 

「目算で残り400ちょっと!ガリィが一気に駆け抜けちゃうんだからっ!!」

 

 そして勿論、アルカノイズ如きがガリィ・トゥーマーンを止められるはずも無く……彼女が手を払うだけで道が開けて行き、後に残るのは無数に砕け散った氷の欠片のみ。

 

 ――迸るほど(君の)

 ――強き熱(爆ぜる)

 

「残り360! なによあのデカブツ、あれじゃただの木偶の坊じゃない!(あんな役立たずを配置したりして、この空間作った奴は何考えてんのよバッカじゃないの……!?)」

 

 その光景が確実に見えているにも関わらず、依然として何の動きも見せない巨大ノイズ……その異常さに疑問を抱きながらも、ガリィは速度を緩めることなく滑走を続けていた。

 

 ――無限大の(ソウル )が 手と手を繋ぐよ

 

「というか一人で喋るのすっごく虚しいんですけど!――という訳でアタシも混ぜなさい!」

 

 そしてその間にも、装者三人によるユニゾン効果でフォニックゲインはどんどんと高まって行く。

 ……ここからは何故かガリィも合唱に参加するようだが、人形である彼女が歌ったところでフォニックゲインが発生する訳も無く、プラス効果は驚愕のゼロである。しかしガリィは周りが忙しい所為か、誰も相手にしてくれなくて寂しかったので、無理矢理割って入る事にしたようだ。

 

 

「「「「激唱インフィニティ!(激唱っインフィーニティーッ!!)」」」」

 

 

 実はガリィ、ユニゾン特訓を見学していた時に三人が歌うこの曲(激唱インフィニティ)を聴いていたため、歌の事を把握していた。

 もっとも、特に興味も無く聴き流していただけなので歌詞はほとんど分かっていない、というか上の部分しか把握していないニワカである。

 

「……なによ、何か文句あるの?」

 

「えぇ……⦅困惑⦆」

「わっ、私はそんな事思ってないから!えっと、むしろ嬉しいくらいだよ!」

「入りたいなら最初からそう言えよ!? マジで面倒くさいなお前!」

 

 という訳で一瞬だけ合唱に参加したガリィなのだが、そのすぐ後に歌は間奏へと突入。僅かの間ながら装者達とのコミュニケーションが再び取れるようになった。

 

「うっさいわね馬鹿クリス!面倒臭いとかコミュ症のアンタにだけは言われたくないんですけど!」

 

「はぁ!? あたしよりと、友達少ないお前に言われたくねーよ!」

 

「うわーん!こんな時にケンカしないでよぉ~!」

 

「はぁ……時と場所を考えろと、あれ程言っているというのに……」

 

 しかしその僅かな時間で、いつものように揉めだす二人。ちなみにガリィは器用にアルカノイズを駆逐しつつ、そしてクリスは周囲を警戒しながらケンカしているので、翼はもう放置しておくことにしたようだ。

 

 ――レッドゾーンガン振りして 捻じ込む拳

 ――一点の曇りなく防人れる剣 ゼロ距離でも恐れなく、踏み込めるのは

 

「アタシが少ないならマリアなんてどうなるのよ可哀想すぎるでしょうが――って残り200!そろそろ危ないかもだし警戒しなさいよね!特にアンタは気を付けなさいよ馬鹿クリス!」

 

「はぁ!? んな事いちいち言われなくても分かってるっての馬鹿人形!」

 

 そうこうしている内に巨大ノイズまでの距離は200メートルを切り、流石にガリィとクリスも喧嘩を中断し警戒を強めて行く。

 

 ――背中を託して 番える

 ――君を感じるから

 

「残り150! ちっ、なんで動かないのよあのデカブツ……まあいいわ、50切ったらアンタの出番よ分かってんでしょうね馬鹿クリス!」

 

 が、巨大ノイズは動かない。

 その事に不気味さすら感じ始めるガリィだが、ここまで来て攻撃を中止する訳にもいかず、不安を振り払うかのように声を張り上げる。

 

 ――二度と(来ない) 今日に後悔なんてしないために

 ――闇さえも ハートの力へと

 

「残り100!――動いた! でももう……遅いのよ!!」

 

 そして残り百メートルを切った瞬間、遂に巨大ノイズが動き始めた。装者達の方へとその巨体を向け、動こうとする素振りを見せ始めたのである。

 しかしそれは――遅い、遅すぎる。

 

 ――食いしばる痛みも握って

 

「クリスっ!!」

 

 目標までは既に70メートル……ガリィはクリスの名を叫ぶと同時、巨大ノイズに向けて無数の氷柱を射出する。

 

「§Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!!!!」

 

 氷柱は超高速で巨大ノイズへと迫り……やがて叫び声を上げるノイズの全身に無数の傷を刻み込むが、致命傷には至らない。

 しかし実は、ガリィにとってそれは想定通りの展開でしかなく、彼女の目的は最初からただ一つ――

 

 

 

「消し飛びぃ、やがれぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

 

 

 

 ――残り50メートル……作戦開始地点まで装者達を導く事、ただ一つ。

 

 

「行くぞ、二人共!」

 

「はいっ!!」

「は~い♪」

 

 まずはクリスによる一斉射撃、ミサイル、ライフル、ガトリングetc……様々な兵器がイチイバルから放たれ、その全てが巨大ノイズへと向かって行く。

 

 そして同時にガリィ、響、翼の三人は再び疾走を開始。アルカノイズを薙ぎ払いながら、巨大ノイズの懐へと迫って行く。

 

 ――全霊の(let's fight) 歌を

 ――全霊の(let's fight) 想いを

 

「§Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!!!!」

 

 クリスが放った攻撃が全て着弾し、迎撃する事すらままならない巨大ノイズ。

 更にその周囲を固めていたアルカノイズも、ガリィの手により次々と消滅していく……どちらが優勢なのかは、誰が見ても明らかだった。

 

 ――どんなにも 君への勇気を誓う

 

「йыЦБЛщж§Θ℆Ω!!!!!」

 

「っ! 合わせなさい翼っ!」

「っ――承知!」

 

 だがその状況で巨大ノイズは、身体に無数の損傷を負いながらも自身へと迫る三つの敵対存在に向け、無数の触手を放つ。

 そしてそれを確認したガリィはその場で急停止を行い、膝を着き地面へ両手を付ける。すると次の瞬間――。

 

 ――再び今(let's fight) 風を

 ――再び今(let's fight) 覚悟を

 

「命名、インフェクションウィップ――ってところかしら、ねっ!」

 

 地面から無数の水の鞭が飛び出し響へと迫る巨大ノイズの触手、その全てを捕らえ絡みつく。

 

「ΨζБйыЦБЛщж§Θ℆Ω!!!!!」

 

 それが気に障ったのか、鞭を振り払おうともがく巨大ノイズ。しかし鞭を振りほどくどころか、捕らわれた部分から触手が凍結し始め、やがて全く身動きが取れなくなってしまう。

 

 ――何度涙を 流し

 

「千の、落涙っ!!――足場を使え、立花!」

 

「はいっ!!」

 

 そして四人の攻勢はまだ終わりではない。

 ガリィと共に停止していた翼が、触手が凍り付いた絶妙なタイミングで『千の落涙』――無数の剣刃を触手に向けて放つ。すると――

 

 ――愛と呼べる日々まで

 

「ΨйыЦБж§Ω!!!!!」

 

 触手はいとも簡単に砕け散り、その影響で空中へと無数の氷塊が舞い散った。そしてそれを足場として使い、一人の装者が上空へと駆け上がって行く――最後の一撃を、叩き込むために。

 

 ――築いたと思うか

 

「自慢の馬鹿力を、ぶちかましてやりなさいな!」

 

 巨大ノイズはただ見つめていた――自身へと迫るガングニールの装者、立花響の姿を……攻撃手段を奪われ、何の行動も取れないままに。

 触手は砕かれ、修復まで後数秒は掛かる( ・・・・・・・・・・・)だろう。しかし既に、ガングニールの装者は自身を射程圏内に捉えている……打てる手は、何一つとして存在しなかった。

 

 

 

げきしょおっ、インフィニティィィィィ( 激唱インフィニティ) っっっ!!!!!!」

 

 

 

 それから一瞬の後……既に傷だらけの巨大ノイズにとって致命的な一撃が、身体の中心へと突き刺さった。

 

 

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「おいおいやるやんけ嬢ちゃん達! さっきまでは生意気なクソガキやなぁ思てたけど、えらい見直したで!!」

 

「あっ!良かった無事だったんですね!」

 

「ノイズの殲滅は無事、完了しました。これで我々は元の場所に戻れるはずです」

 

「なんだよおっさん、意外とやるじゃねーか」

 

「あほ、いくらなんでもノイズ程度に負けるわけないやろ。まっ、あのデカいのと戦うは正直キツかったやろうけどな」

 

 巨大ノイズの撃破を果たした後、響達は生き残りの錬金術師と合流し空間が消滅するのを待っていた。

 

「……既に一分以上経ってるはずなのに、おかしいわね」

 

(……もしかしてあの大タコノイズって、偽物だったり?)

(あれだけ盛り上がったのに最初からとか、アニメで良くある引き延ばし展開じゃないんだからさぁ……)

【これだけの空間を維持するには普通サイズのアルカノイズじゃ不可能でしょうし、偽物って事は無いと思うんだけど……】

 

 しかし既に一分以上が経過しているにも関わらず、空間が崩壊する様子は欠片も見られない。

 その事について、今の所響達は疑問を抱いていないようだが……錬金術の知識があり、アルカノイズについても多少知識を持っているガリィだけは、この状況が異常だと気付いていた。

 

「ガリィ、何か気付いたのか?」

 

「あのね、変なのよ。 未だに空間が維持されている事が……それにあのデカブツの残骸が、消えずに残っている事もね」

 

「……おいおい、もしかしてハズレを引かされちまったのか?」

 

「えぇーっ!? ハズレって、じゃあもう一回やり直し!?」

 

「うへぇ、マジかいな……しかし妙やな、あのクソデカノイズ以外にそれっぽい奴なんか、一つもおらんかったと思うで?」

 

【ああ、そういう事。 だから挙動が変だったのね】

(えっ、なに、どうしたの?)

【あのノイズが、弄られ尽くした末の結果だって事よ。何かを得た代わりに、本来の機能を喪失してしまったんでしょうね】

 

 ガリィの視線の先、そこにはガングニールの一撃により身体の上半分を吹き飛ばされた巨大ノイズの残骸が、そう――

 

「……いえ、違うわ。可能性があるとすれば――」

 

 ――何故か未だに消滅する事無く、存在している残骸の姿が映っていた。

 

「あるとすれば、なん――っ!」

 

 その原因について何かを察した様子のガリィに対し、理由を問いただそうとする翼。しかしその答えを得る前に、事態は動き始める。

 

 

 

 

 

「§Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 ――空間内に響いたのは、撃破したはずの巨大ノイズの咆哮……その咆哮が引き金となるかのように、散らばっていた細かな残骸と、周囲に残っていたアルカノイズが最も巨大な残骸に、吸収されていく。

 

 

 

「ガ、ガリィちゃん! あ、あれ……何!? 何が起きてるの!?」

 

 

「やっぱり……あのね響ちゃん、あのデカブツはまだ死んでいなかったみたいよ。 ちっ!不良品にしか見えなかったのは これ( ・・)が原因かよ……」

 

 

(ファッ!?)

(な、ななななにあれ魔〇ブウの親戚か!?)

【耐久力、再生能力だけに特化させたノイズみたいね】

(道理であっさり片付きすぎだと思ったよチクショー!!)

 

 それから僅か十秒後、ガリィ達の目に映っていたのは……まるで時が巻き戻ったかのように、傷一つ無い巨大ノイズの姿だった。

 

「おいどうするんやコレぇ!――ってアカン、明らかこっちに敵意持っとる!一旦撤退や撤退!!」

 

「今度は考える時間も無しかよっ!! くそ!とりあえずあたしのイチイバルで――」

 

「無駄撃ちすんな馬鹿クリス!! そんな事して消耗してたらあの変態の思う壺でしょうが!!」

 

(1、身体の中に核みたいなものがある。2、身体全部を一気に消滅させないと駄目。 さあ、どっちかな?⦅他人事⦆)

【どちらにせよ、身体全部を破壊するしか無いでしょうね。修復中に全員で攻撃すれば、なんとかなるはずよ】

(なら、まずはさっきみたいに動きを止めないと!)

 

 しかも最悪な事に、巨大ノイズは明らかにこちらを敵視している。これではゆっくり作戦を練っている余裕も無く、このままでは消耗戦――ガリィ達が最も避けたかった展開にもつれ込んでしまうだろう。

 

「だが逃げているだけでは埒が明かないのも事実!早急に打つ手を考えねば、いずれ……!」

 

「えっと、えっと……っ!そうだ、S2CAトライバースト!これなら前みたいに倒せるかもしれな――」

 

「お馬鹿!S2CAはアンタに掛かる負担が大きすぎて使い物にならなくなっちゃうでしょうが! ああもうそんな事するくらいならガリィがやってやるわよ!⦅半ギレ⦆」

 

「ちょっ、何する気だお前!?って待てよおい!!」

 

(行った行ったガリィが行ったぁー!!)

【動きを止めたいのなら全部――体中を凍らせてしまえばいいのよ】

(腕の一本くらいくれてやるよぉ!!)

 

 故にガリィは後退するのを止め、再び巨大ノイズへ向かい滑走を開始。敵の自由を奪い取るために、切り札の使用を躊躇無く決断した。

 

「『雪化粧』でデカブツの動きを止める!だから絶対に近付くんじゃないわよアンタ達!」

 

「っ!――だが、聞いた話ではお前の腕を――待てガリィ!!」

 

「ガリィちゃんっ!!」

 

(実は計画が狂ってちょっとテンパってない?大丈夫?)

(多分大丈夫じゃないゾ)

(あっ、そっかぁ……⦅傍観⦆)

 

 そして動き出したガリィは、徐々に遠くなる装者達の声を背に受けながら巨大ノイズへと一直線に滑走を続ける。

 

「ЮЁйыЦΨζБЛщ!!!!!」

 

「そんなカスみたいな攻撃で、ガリィを止められるわけねぇだろボケが……すぐにアタシが殺してやるから、震えて待っていやがれ雑魚が!!」

 

【最悪の場合、落ち着くまであたしと交代するのも考えておかないとね……】

(あれ、でもガリィさんって……)

【戦闘は初めてになるわね。でもこの程度の相手なら問題無いわよ】

(ほんとぉ?⦅心配している眼差し⦆)

 

 巨大ノイズが放つ触手を回避し、時には迎撃しながらガリィは距離を一気に詰めて行き……そして――

 

 

 

「お届け物、ここに置いておくわね♪」

 

 

 

 そのまま装度を緩める事無く、巨大ノイズを抜き去って行く……その途中に、切り取った自身の左腕を置いて。

 

 

「ΩΨζΨζБЛщж¢ЮЁйы!!!!!」

 

「さーん、にーい、いーち……ボカン♪」

 

 

 それが何を意味するかを理解できない巨大ノイズは、ガリィを追いかけるため、その巨体を反転させようと動き出す……が、その数秒の間に、導火線に着いた火は既に根元まで至っていた。

 

 故に、決着――

 

 

 

 

 

「――――」

 

 

 

 

 

「残念だけど、アンタみたいなクソ雑魚のターンなんて一生来ないんだから♪ さっ、これからは楽しい楽しい、解体作業のお時間よ☆」

 

 

 

 

 

 白銀に染まった世界の中、巨大ノイズはその動きを完全に停止している。

 

 

 

 

 

「Лщж……」

 

 

 

 

 

「大体ねぇ、身の程をわきまえないからこうなる――えっ……嘘、でしょう……?」

 

 

 

 

 

 ――ように、見えた。

 

 

 

「っ! まずい!今の内に仕掛けるぞ!!」

 

「はっ、はいっ!!」

 

「ああクソっ!!これでも駄目なのかよ!!」

 

 

 その状況を察した装者達は、ガリィの左腕の犠牲を無駄にしないため攻撃を開始する。

 

 

「ΨζБЛщж¢ЮЁйы!!!!!!!!!!!」

 

 

「生物じゃないから凍らされても平気へっちゃら♪――って訳かよクソったれが!返しなさいよアタシの左腕!!⦅憤怒⦆」

 

 

 ――が、遅い。氷の棺を突き破り現れたのは、身体の至る所から氷の刃が突き出したままの巨大ノイズ……しかしその致命的に見える損傷も、周囲のアルカノイズを吸い寄せる事でやがて塞がっていく。

 

「……ならば周囲のアルカノイズを全て……いや、数が多すぎる。それに先程から全く減っている気がしない……」

 

「あの変態野郎、ここまで考えてあたしらをここに閉じ込めたのかよ……?」

 

「こんなのもう、S2CAしか……」

 

 その絶望的な状況を見せつけられ、表情が陰る装者達。

 ちなみに余談だが、アダムはこのような状況を想定していたわけでは決して無い。そもそもアダムはこの試作品ノイズの性能など把握していなかったし、サンジェルマン達が使った物にも、この試作品ノイズは搭載されてはいなかった。

 五つの試作品アイテムにはそれぞれ、無茶な研究の過程で偶然誕生し複製が不可能なアルカノイズ……致命的な欠陥を抱えてしまったモノが封入されている。

 つまり今回はその内の一つ……使用者の指示に従わずノイズ以外の物体が射程圏内に入らない限り動かない(ただし一度認識すれば、その後は対象を追い掛け続ける)。その上触手以外の攻撃手段を持たず、速度も非常に遅いという不良品。ただしそれと引き換えに、異常なまでの生存能力を獲得したノイズが封入されていたのだった。

 要はアダムは五種の中で偶然、大当たりを引いたのである……なお、そのしわ寄せに不幸が彼に訪れている模様⦅悲しみ⦆

 

「……ちょっと交代しなさい。中で静かに考えたいから」

 

【……えっ? もしかして、あたし?――ってちょっと待ってまだ心の準備とかそういうのがいやあああああ!!】

(ガリィさん、頑張って!!⦅他人事⦆)

(姫様の初陣じゃあーっ!!)

 

 その最中、自身を一旦落ち着かせ、そしてなによりこの状況を打開する策を早急に考えるためガリィは自身の内部へと移動する。

 ちなみにガリィの代わりに表に放り出されたガリィさんだが、戦いについてはこれがまさかの初陣である、頑張れ。

 

≪さてと、どうしましょうか。ユニゾンはパワー不足、凍らせても駄目、S2CAは使いたくない……それを踏まえてほら、アンタ達もさっさと考えなさいな≫

 

(はいっ!一つ浮かびました!)

 

≪あら、良い返事♪ ちなみにくだらない事だったら、花壇の水やりにアンタを使ってあげるわね☆≫

 

(あ、じゃあやっぱりいいです……花壇の水やりは流石にその、悲しい⦅遠い目⦆)

 

≪……冗談よ、いいから早く話しなさい≫

 

(あ、はい。えっと……ノイズの周りを氷の檻で囲んで、クリスちゃんのミサイルをぶち込むのはどうですかね? 上手くいけばノイズの身体全部を破壊できるかもですし)

 

≪ふむふむ、まあ悪くは無いわね……で、他にはいないのかしら?≫

 

(はい!)

(はいっ!)

(はいぃ!)

(はーい♪)

(はいはいっ!!)

 

≪なんでそんな簡単に思いつけるのよアンタ達は……まあいいわ、とりあえず順番に話しなさい≫

 

 そして始まる巨大ノイズ対策会議なのだが……鬼畜軍師とガリィさん頼りのいつもと違い、何故か盛況な様子である。まあ今回の相手がメガ進化したマリアやサンジェルマン達と比べると、数段どころじゃない程に格下なのでそれが影響しているのだろう。

 

「ちょっと待ちなさいってばこのクソ雑魚ノイズ!こっちは初心者だって言ってるのに――調子に乗ってんじゃねぇぞテメェぶち殺されてぇのかっ!!⦅激怒⦆」

 

(ガリィさんもやっぱりガリィちゃんなんすねぇ~⦅哲学⦆)

(戦場は人格を変えてしまうものだからね、仕方ないね⦅悲しみ⦆)

 

≪はいはい、楽しそうだし放っておいてあげましょ♪ それより続きよつ・づ・き☆≫

 

 なお、表側ではガリィさんが早速キレ散らかしており、巨大ノイズへと鬼のような攻撃を続けている。それでヘイトが溜まった所為なのかは分からないが、巨大ノイズは装者達ではなくガリィさんをメインターゲットに絞っているようだ。

 

「死ね死ね死ね死ねくたばりやがれぇっ!! こっちはテメェみたいな雑魚相手に消耗したくねぇんだよ空気くらい読めやこのゴミカス野郎がっ!!」

 

「ζБЦБЛщж§Θ!!!!!」

 

(おい、そろそろ誰か止めろ。キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ⦅真顔⦆)

(作戦会議が優先だからね、仕方ないね⦅満面の笑み⦆)

(結果的に完璧なタゲ取りできてるからおk⦅効率厨⦆)

(エネルギー無限のチームガリィがタゲ取りするのは義務だからセーフ⦅謎理論⦆)

 

 しかしガリィさんはその後も勇敢に巨大ノイズへと立ち向かい、自らが派手に攻撃する事で仲間達を守っていたのである⦅好意的解釈⦆

 これには我らがガリィちゃんも超ニッコリ、これで安心して作戦会議を続けられるというものであった。

 

≪よし、それじゃさっさと多数決取るわよ!≫

 

(うい~っす!)

(民意が反映されるなんて、とっても良い職場じゃないか!⦅お目々ぐるぐる⦆)

(あくまで参考にするだけだゾ⦅諦め⦆)

 

 そしてそれから僅かな時間が経ち……ガリィさんの活躍によって作戦会議を続けられていたガリィは、結論を出すため多数決を取る事にしたようだ。

 

「皆! これだけ穴だらけにしても駄目って事は、やっぱり一発で潰すしか無さそうよ!!」

 

「あ、ああ……そ、そうか……!⦅ドン引き⦆」

 

「つーかお前はどっちなんだよ!? 馬鹿の方か、それともまともな方なのか!?」

 

「……えっ、どういう意味かしら? あたしはその、あたしなんだけど……?」

 

 ちなみにその頃、ガリィさんはようやく落ち着きを取り戻し装者達との合流を果たしていた。

 その際何かよく分からない事を聞かれたりもしたが、ガリィさんには何がなんだかサッパリだった模様。

 

 

「§Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!!!!」

 

 

「いや、だってさっきのアレが、その――」

 

「――バカ、そんな事どうでもいいでしょ! それより作戦よ作戦、アタシがとっておきのを考えてあげたんだから全員でやるわよ!」

 

「っ、戻って来たかガリィ」

 

【はぁ、緊張したぁ……】

(えっ)

(えぇ……⦅困惑⦆)

(つまり私達は何も見ていなかった、それでイイネ?)

(アッハイ)

 

 そしてそのすぐ後、ガリィが表側へと戻り話を聞くと、どうやらガリィは巨大ノイズを倒すための策を練っていたらしい。巨大ノイズの咆哮が木霊する中、装者達とガリィの最後の作戦が開始されようとしていた。

 

 

「いいからさっさと説明するわよ! あのね、まずはガリィがあのデカブツを引き付け――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Balwisyall nescell Dáinsleif tron……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――はっ?」

 

 

 

 

 

 だが、ガリィは言葉を途中で止めた――いや、止めざるを得なかったのだ。

 

 珍しく大人しいわね、とは思っていた。ギアペンダントに両方の手の平を当てているのを見て、何やってんのコイツ、とも思ってはいた。

 

 

 

 

 

 ――だけど、流石にこの展開は予想できるはずもないじゃない……まさか、この土壇場で響ちゃんが――

 

 

 

 

 

「ウウウ……ウアアアアアアアアッッッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 ――あの時の(・・・・ )マリアみたいになっちゃうなんて、ね……いやいやガリィにどうしろっていうのよこんな状況……。

 

 

 

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 ――時間は僅かに遡る。

 

 

 

 

「翼さんっ!ガリィちゃんが……は、早く助けに行かなきゃ!」

 

「分かっている! だが策を思い付くまでは、消耗する心配が無いガリィに任せるのが最も効率的……そしてそれを分かっているからこそ、あいつはあのように過剰な程の攻撃を繰り返し、敵の注意を引き付けているのだろう」

 

「ちっ……カッコ付けやがってあの馬鹿!」

 

 私達の視線の先には、必死の形相で巨大ノイズと戦う大切な仲間……ガリィちゃん(勘違い)の姿が映っていました。

 

「でも、だけど……!」

 

「心配すんな。大体、あの程度のヤツにやられるアイツじゃねーって、お前も知ってるだろ?」

 

「う、うん……それは、そうだけど……えっと、ごめんねクリスちゃん」

 

 ガリィちゃんを助けるために私達がすべきことは、あの大きなノイズを倒すための作戦を考える事。

 でも冷静な二人とは違って、私はこういう時いつも焦ってばかりで……全然役に立てません。

 現に今も、翼ちゃんクリスちゃんに迷惑を掛けちゃっているし……なので私は、これ以上二人の邪魔をしないように少し静かにする事にしたんです。

 

「もう一回ユニゾン、S2CAが駄目ならこれしかねーだろ実際!」

 

「そうだな、次は全ての攻撃を同時に叩き込む……例えそれが困難だとしてもやるしかない、か」

 

「……(未来はいつも、こんな思いを抱いて私達を見守ってくれているのかな……)」

 

 それから二人が話し合いをしている中、私は何を考えてたかというと……あはは、怒られちゃうかもしれないけど、一番大切な親友――未来のことを考えていました。するとなんだか胸が辺りが苦しくなって、私は自分でも気付かない内に胸に手を当てていたんです。

 では何故こんな時にそんな事を考えていたかというと……実は未来が言っていた言葉を、思い出していたからです。

 

 

 ――あのね響……私、皆が危ない目に遭っているのを考えたりした時、今でも思う事があるの。

 

 ――『私に、あの時みたいな力があれば』って。

 

 ――私一人が加わった所でどうにかなるとか、そんなんじゃないの……何もできないのがただ辛くて、苦しくて、悲しくて……それだけ。

 

 ――あはは……吐き出したらちょっとすっきりしちゃった。やっぱり単純だなぁ、私って。

 

 

『力があれば』『何もできないのはただ辛くて、苦しくて、悲しい』、未来はそう言っていました。

 

 

 ガリィちゃんが必死で戦ってくれてるのに……早く、早くなんとかしないと!

 キャロルちゃんとファラさんは大丈夫かな?ケガ、してないよね……?

 

 

『力があれば』……イグナイトモジュ-ルが使えたら、ガリィちゃんを助けられるのに……!

『何もできないのはただ辛くて、苦しくて、悲しい』……辛いよ、苦しいよ……悲しいよ――

 

 その言葉を今になって、私はようやく理解する事ができたみたいです……そう、私は――立花響は役立たず……皆のように考えられない、そして未来みたいに心を強く持つ事もできない価値の無い――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒビキっ!飲み込まれちゃダメっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………?

 

 

 

『わたしと繋がったせいで、後ろ向きな思いを餌に呪いが蝕み始めているの!! だからっ!心を強く持ってヒビキ!』

 

 

 

 …………こころを、つよく……?

 

 

 

『思い出して!ヒビキの本当の想いを――ミクやキャロルと戦った時、最後まで折れなかったあなたの真実を!!』

 

 

 

 …………キャロル、ちゃん……未来……

 

 

 

『ミクが神獣鏡に支配されていたとき、ヒビキがどんな気持ちで戦っていたか、わたしは知っているもの!』

 

 

 

 …………みくは、ぜったいにたすけなきゃ、って……たすけたい、って……

 

 

 

『キャロルとの絶望的な戦いで、ヒビキはどうして倒れなかったの!?』

 

 

 

 …………だってわたしがたおれたら、キャロルちゃんとてをつなげないとおもったから……あのはしのうえで、ないていたキャロルちゃんをたすけたいっておもったから……

 

 

 

『じゃあ今は!?ガリィが、キャロルが、ツバサが、クリスが、ファラが――みんなが戦っているんだよ!? それなのにヒビキは一人で俯いているだけでいいの!?』

 

 

 

 ………………みんな、が……?

 

 

 

『力があるとか無いとか、そんなの関係無い! だって一番大事なのは、自分らしくある事……俯いてるだけなんて、そんなのヒビキらしくないよ!!』

 

 

 

 ……私、らしく…………?

 

 

 

『思い出して、ヒビキが本当に望んでいる想いを……暗闇の底にいたわたし達すら包み込んだ、光を取り戻してっ!!』

 

 

 

 私の、望み……翼さん、クリスちゃん、マリアさん、調ちゃん、切歌ちゃん、キャロルちゃん、ガリィちゃん、ファラさん、レイアさん、ミカちゃん、エルフナインちゃん、師匠、緒川さん、藤尭さん、あおいさん、お父さん、お母さん、お祖母ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃん、弓美ちゃん、サンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティさん……了子さん。

 

 

 

 

 

 そして――未来

 

 

 

 

 

 そうだ――私は、立花響は……。

 

 

 

 

 

「みんなを、守りたい……誰かが傷ついたり、いなくなったりするところは――もう絶対に見たくない……!」

 

 

 

 

 

 その事に気付いたと同時……暗いナニカに包まれていた私の世界が、光を取り戻す――。

 

 

『ヒビキ……』

 

 

 光を取り戻した世界で最初に見た光景は、私の手を両手で包み込んでいる涙目の、私そっくりの少女……そっか、私の手をずっと握ってくれていたんだね……。

 

 

『うん……』

 

 

 今まで気付いてあげられなくて、ゴメンね……。

 

 

『……わたしのお願い、一つだけ聞いてくれたら許してあげる』

 

 

 うん、いいよ。

 

 

『……わたしを呼んでほしいの。 それはきっと簡単な事じゃないけど……ヒビキがみんなを守りたいように、わたしもヒビキを守りたい』

 

 

 私と一緒に、戦ってくれるの?

 

 

『うん!響とガングニールと……わたしで!!』

 

 

 ……ありがとう。 よーし、そうと決まれば一緒に!頑張ろうねっ!!

 

 

『おーっ!!』

 

 

 ……あれ、そういえば……ここって何処なの!? どうやって帰れば――あれ、なんか崩れてるような……うわわわわわわ!?

 

 

 私がそう決意した途端、仮初の世界は崩壊を始め……立花響そっくりの姿をした少女一人を置いて、やがて私の身体は宙に浮き、この世界から離れて行きます。

 

『ヒビキっ!! わたし、待ってるから!!』

 

 でも前に見た夢とは違い、少女に手を伸ばす事はしませんでした。だって――今の私達は、離れていても繋がっているから……きっとまた、すぐに逢えるから。

 

 

 

 

 

「……っ!」

 

 

「傷が、消えて行く……!」

 

「あんなの、どうすりゃいいんだよ……!」

 

「はースッキリした♪ 翼ちゃんクリスちゃん、お待たせ~♪」

 

「……クリス、チャン? 先輩、こいつ今あたしの事を……」

 

「っ……まさか、ガリィさん、なのか……?」

 

 そして、白昼夢?から目が覚めて戻ってきた私が見たのは、どう見てもご機嫌なガリィちゃんと……何故かすごく驚いた表情をしている二人の姿でした。

 

「……ちょっとだけ、待っててね」

 

 どうしてそんな表情をしているのかは気になったけど、今の私にはそれより優先しなきゃいけない事がありました。……胸に両手を当てると、さっきまでは全く分からなかった繋がりを感じます。

 

「私が信じる、胸の歌を……」

 

 だからその繋がりを信じて私は――歌う。

 

 

 

 

 

「Balwisyall nescell Dáinsleif tron……」

 

 

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「立花っ!? なんだこれは……この僅かな間に、何が起こっているというのだ!?」

 

「まさか、イグナイトモジュールが暴走していやがるのか!?」

 

 何の前兆も無く、突然始まった響の変貌……彼女の全身は黒い霧のようなものに包まれており、誰が見ても明らかな程に危機的な状況だった。

 

「§Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!!!!」

 

 だがそんな状況でも、巨大ノイズにこちらを待つ義理などあるわけも無く……混乱しているこちらに向けて、巨大ノイズは無数の触手を放とうとしていた。

 

「ちっ、とりあえず作戦は中止ね――翼は響ちゃんを守りなさい!クリスはアタシとデカブツの相手するわよ!」

 

「っ!? わ、わかった!先輩、その馬鹿は任せたからな!」

 

「あ、ああ……任せておけ!」

 

(……展開が急すぎて付いていけてないんだけど、イグナイト君が復活したって事でおk?)

(復活というか、暴走してるようにしか見えないんですが……)

【呪いを克服したはずの響ちゃんが、どうしてこんな事になってるのよ!?】

 

 今の状態で一箇所に固まるのはまずい……そう判断したガリィは巨大ノイズの意識を響から逸らすため、クリスと共に別行動を取る事にした。

 

「グウゥ……ミンナヲ、マ、モ……ガアアアアッ!!!」

 

「しっかりしろ立花! これは、なんだ……本当にこれは、イグナイトモジュールが起こしている現象なのか……!?」

 

 そして残された翼の方はというと……彼女は響の全身に纏わり付く、黒い霧のようなナニカの凄まじい禍々しさに、これは本当に自分達が乗り越えた魔剣・ダインスレイフの呪いなのか……そう疑問を抱いていた。

 

「グ、ガッ……ギッ!……マケ、ル、モンカ……アアアアアッ!!」

 

「負けるもんか……? 立花、お前は何かと戦っているのか……?」

 

「イッショ、ニッ、タタカオウッテ……ヤクソク、シタンダ……!」

 

「一緒に戦う……それに、約束?」

 

 しかしそれ程の禍々しいナニカに蝕まれ、精神の崖っぷちにありながらも……響は未だ、自我を保ち続けていた。

 

「イタイ、クルシイ……ヒトリジャ、トテモタエ、ラレナイ……ダケド……」

 

「っ……霧が消えて――いや違う、これは……立花の中に、吸収されているのか……?」

 

「ワタシハ、ヒトリジャナイ……そして……っ!!」

 

 いやそれどころか……黒い霧は徐々に勢いを失い、響の胸の中へと吸収され始めていたのである。

 その信じられない光景を呆然と見届ける翼……天羽々斬を構えてはいるものの、彼女の意識は完全に響へと向いていた。

 

 

 

 

 

「君ももう一人じゃないから――一緒に行こう、ダインスレイフっ!!!」 

 

『これにて契約は成立した……わたしの呪い(ダインスレイフの祝福 )をヒビキ、全て貴方に捧げましょう』

 

 

 

 

 

「霧が、全て……っ!?」

 

 

 だからこそ翼はその変化を見逃さずに、全て見届ける事ができたのだろう。

 

 

「立花っ!?」

 

 

 翼は見た――響の胸から黒い波紋が広がり、ガングニールへと広がっていく瞬間を。

 

 翼は見た――黒い波紋が、ガングニールと同化していく光景を。

 

 翼は気付いた――変化が収まった後……ガングニールの上半身から脚部まで、ギアの至る所に黒色のラインが巡っている事を。

 

 

「たち、ばな……それは、そのシンフォギアは……ガングニール、なのか……?」

 

 

 イグナイトモジュールを起動して呪いを纏う場合に比べると、明らかに地味と言っていい程度の変化。

 まず戦う姿を見てもいない、そもそも何が起こっているのかも分かっていない……そんな状況では、期待などできるはずも無い。

 

 

 だが、翼は本能で感じていた――。

 

 

 

 

 

「……(背筋に寒気を感じるにも関わらず、伝う汗が止まらない……なんだ、この感覚は……?)」

 

 

 

 

 

 ――以前のイグナイトとはまるで別物……文字通り、格が違う。

 

 

「えっと、ダインスレイフとガングニールが合体?じゃなくてダインスレイフが居候? あっ、あはは……すいません、私もどうしてこうなったか詳しくは分かんなくて……」

 

「そう、なのか……そ、それで、戦闘を継続する事は可能なのか?」

 

「はいっ、それはバッチリです! なんなら今すぐにでも行けます!!」

 

 その状況に激しく動揺しながらも、普段通りの響と接した事で幾分落ち着きを取り戻した翼。

 そんな彼女が響に問いかけたところ、どうやら身体に問題は無いようだ。

 

「……問いたいことは山という程残っているが……とにかくまずは――立花っ!?」

 

「はいっ!行きましょう翼さん!!」

 

「ああもう! 話は最後まで聞きなさいといつも言っているでしょう!?待ちなさい!!」

 

 それならば、まず今は仲間との合流を果たす。そう判断した翼だが、その指示を伝え終わる前に響は巨大ノイズの方へと駆け出してしまった。そしてそれを見た翼は後を追うため、響の背を追い掛け始めたのだが……。

 

 

 

 ――速いっ!?

 

 

 

 差は一向に縮まらない……いやそれどころか響は更に速度を上げており、まだ余力を残してすらいるようだった。

 現存するシンフォギアの中でも、トップクラスの機動力を誇る天羽々斬……それを遥かに凌駕するスピードを、響がなんとなしに起動したガングニールのブースターは、軽々と叩き出していたのである。

 

 

 ――一番槍のコブシ 一直線のコブシ

 ――Gan×2『進めっ!』 Gan×2『歌えっ!』

 ――激槍ジャスティス

 

「っ!? なによあれ……!イグナイトモジュールが復活したんじゃなかったの!?」

 

「そんなのあたしが知るか! ああもうあのバカっ!あんなのを隠し持ってるなら先に言っとけよ!!」

 

(なんやあのスピード頭おかしい……⦅驚愕⦆)

【結局、何がどうなってこんな事になってるのよ……?】

(雰囲気はマリアさんの時と同じものを感じましたが……その後の変化が別物なので、今の所は全く……)

(さっきのって多分聖詠だよな? 既にガングニール纏ってるのに、なんでビッキーはそんな事を……?)

 

 巨大ノイズへと迫りながら、響は想いを旋律に乗せ、更に速度を上昇させて行く。

 大切な人達を守る事。その強い想いと新たな力を原動力にして、ガングニールの出力は更に限界を突破する。

 

 ――私が選ぶ正義 固め掴んだ正義

 ――離さないこと此処に誓う

 

「言葉を信じるのなら、あれは激槍ガングニールと魔剣ダインスレイフ――二種の聖遺物が融合した姿……立花はそのような奇跡を、この土壇場で成し遂げたと言うのか……?」

 

 限界を優に突破した脅威的なスピードにより、既に響は巨大ノイズを射程圏に捉えつつあった。

 後はその想いを胸に、この右拳を叩き込むのみ――

 

 ――突っ走れ 例え声が枯れても

 ――突っ走れ この胸の歌だけは絶対たやさない

 

「ΩΨζΨζБЛщж¢ЮЁйы!!!!!」

 

 だが、巨大ノイズも黙ってはいない。ノイズは急激に自身へと近付く何かを察し、敵をこれ以上好きにはさせまいと響に向け無数の触手を放つ。

 

 ――一撃必愛『ぶん守れ!』 愛は負けない

 ――『全力!』ぐっと 『全開!』ぐっと

 ――踏ん張れ鼓動よ

 

「正面から、それも最短距離を突っ切りやがった……! あの馬鹿は色々とお構いなしかよ!?」

 

「はぁ……なんかよく分からないけど、これなら期待してもよさそうね」

 

 だが全ての触手が、響の残像すら捉えられずに空を切った頃――既に響は、巨大ノイズの真下へと到達していた。

 

 ――稲妻を喰らい『雷(イカズチ)を』 握り潰し

 ――熱き『ハート』 駆ける『ハート』

 

 そして響の歌に合わせるように、ガングニールのアームドギアへと漆黒の魔剣――ダインスレイフの力が流れ込んで行く。

 

 ――ジャッジした空を

 

「ΨζБЛщж¢Ю――」

 

 響はその力を限界まで蓄え、そして――。

 

 

 

 

 

ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!(『ぶっ飛んじゃえぇぇぇぇぇぇっ!!!』)

 

 

 

 

 

 ――我流・黒火撃葬

 

 足元から突き上げるように全ての力を拳に乗せ、解き放った。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「БЛщж¢~!!!!!」

 

「ああもう、ほんっと空気の読めない奴なのね……!」

 

「はぁ!? あのノイズ、まだ動けるのかよ!?」

 

(ほとんど木端微塵状態だし、放っておいても大丈夫じゃない?)

【いえ、きちんとトドメは刺しておいた方がいいと思うわよ。特にこのノイズは念入りに、ね?⦅満面の笑み⦆】

(ガリィさんが根に持っていらっしゃる……)

 

 ガングニールの一撃により、その身体を粉々にされた巨大ノイズ……しかし、それでもノイズは生き残っていた。

 

「ЮЁйыЦ…………!!」

 

 とはいえ満身創痍である事には変わりはない。よって肉片を搔き集めすぐにでも再生に取り掛からなければ、数十秒の内に消滅してしまうだろう。

 

「まずい! 私が――」

 

「大丈夫です、翼さん」

 

「行く――なに……?」

 

「もう大丈夫なんです。だって、ほら――」

 

 もしここで再生を許せば、再び事態が振り出しに戻ってしまう……それを危惧した翼は、散らばった肉片を完全に滅ぼさんと剣を構えようとした。

 

 だがしかし、戦いは既に終わっていたのだ。そう、響が巨大ノイズに攻撃を叩き込んだ瞬間に。

 

 

 

「Лщж§!? §Θ℆ΩΨζБЛщж¢ЮЁйыЦ!!!!!」

 

 

 

「お、おい……なんだよ、あれ……!」

 

「アタシが知るわけないでしょ……うわぁ、黒い炎なんて作られてから初めて見たわ……」

 

 翼は、クリスは、そしてガリィは見た。再び一つになろうと集まり始めていたノイズの肉片……それらが突然、黒い炎に包まれた瞬間を。

 

「ΩΨ……ζЮЁйыЦ……」

 

 そして炎に焼かれ、ノイズの肉片が一つ残らず消滅していく光景を……彼女達は最後まで見届けたのだった。

 

「っ!? おい、これって……!」

 

「っ……これは、空間そのものが軋みを上げているのか……?」

 

「ええ、今度は間違い無くアタシ達の勝ちね。これでようやく、元の場所に戻れるわよ」

 

(えっ、ちょっ……疑問は解消しなくていいの?)

(変態紳士をどうにかしてから考えた方がいいと思うよ……多分ややこしい事になってるんだろうし……)

【……マスターやファラちゃん、きっと驚くでしょうね……⦅遠い目⦆】

 

 すると最後の肉片が消えてからすぐに、空間の崩壊は始まった。まず未だに残っていたアルカノイズが全て消滅し、次に空間の至る所に亀裂が走り始める……どうやら、元の場所に戻れる時が訪れたようだ。

 

「……ありがとう二人共。もうちょっとだけ力を貸してね」

 

『もちろんっ、次が本番だもんね! よーし、今度は加減無しのフルパワーで頑張っちゃうよー!!』

 

 だが、戦いがこれで終わるわけでは無い……そう、元の場所にはアダム・ヴァイスハウプトという、一番の強敵が残っているのだ。

 だからこそ、例え言葉は聞こえなくとも……響は胸のギアペンダントを両手で包み、共に戦う仲間達へと言葉を掛ける。

 

 

 

 空間は完全に崩壊し……響達は無事、この世界を脱出する事に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんやねんあいつ……お、俺らはあんなバケモンに喧嘩売ってもうてたんか……貧乏クジどころの騒ぎやないでホンマ……!」

 

 

 なお、途中からフェードアウトしていた生き残りの錬金術師についてだが……彼は無事に帰還した後、S.O.N.G.へと投降した事を追記しておく。

 

 





今回使わせて頂いた歌詞は

・激唱インフィニティ
・負けない愛が拳にある

の二曲のものです。

実は投稿する寸前まで『負けない愛が拳にある』の歌詞を小説の雰囲気に合わせるため、改変していました。
ですが最後の確認でガイドラインを読んでいた時、気付いたんです。


禁止事項……歌詞を訳詞・替え歌など改変して掲載


あっ(察し) という事ですぐに直しましたが、本当に迂闊でした……。


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