第百四十七話です。
サボっててすいませんでした……筆が全然進まんのや(白目)
なお、一番の原因はシンフォギアXDを再開した事な模様……あのゲームやる事多すぎぃ!
『やはり、攻めきれんか……』
「はい。響ちゃん達が離脱したのを除いて、現状はマスターが想定した流れに進んでいますわね」
『……つまり、敵はまだ隠し玉を持っている可能性が高い、か……』
「ええ。この状況で撤退を選択しないという事は、取れる手段がまだ残されているのでしょう」
キャロルがアダムを相手取っている間、ファラは敵に牽制を行いつつ本部との情報共有役を務めていた。
現在空中では、キャロルが繰り出す弾幕に晒されたアダムが、為す術も無く釘付けにされている。更にファラとの連携によりアダムは反撃に転じる事もできず、一見するとこちら側が圧倒的有利に見える状況である。
『レイラインからのエネルギー供給が半減し、自身も行動を封じられているという圧倒的不利な状況……その状況で取れる手段とは……まさかこの状況で逆転の一手、「神の力」を顕現させる事が可能なのか……?』
「だとしても、アダムを打倒する為にマスターを危険に晒す事は絶対に承知できかねます。 これはオートスコアラーとしての意志でもありますが、それ以上にマスターが倒れる事は絶対に避けなければいけないからです」
『アダムという圧倒的な「個」を前にして、同様の存在であるキャロル君が倒れてしまえば、残された我々は近い未来に瓦解する……そういう事か』
「はい。マスター以外にアダムと戦える戦力は現状、私達の中は存在していませんから……」
しかし、その状況はキャロルという圧倒的戦力が健在だからこそ成立しているものであり、その状況で無理にキャロルを前線に出し、万が一彼女が倒れてしまえば……戦線は瓦解し、一気に形勢逆転を許してしまう事は明白である。
……もしもダウルダブラが消失していなければ、この瞬間にも戦いはS.O.N.G.の勝利で幕を閉じていたかもしれない。しかし鎧を失った今のキャロルでは攻撃力以上に防御力、耐久力が大幅に低下しているため、強引な手段を取る事は不可能だったのだ。
『そうか、そうだな……。よし、ファラ君はキャロル君と共に現状を継続、響君達の帰還及び増援の到着までの時間稼ぎを頼む』
「承知致しました。マスターは手が離せませんし、司令からの指示については私からお伝えしておきますわね」
『ああ、すまんな』
なので現状はとにかく戦力が揃うのを待ち、アダムの防衛を掻い潜り儀式場と自動人形ティキを破壊する――というのが基本方針となるようだ。
……だが、キャロルとファラがこのような攻め方を選択しているのだから、それくらいはアダムも気が付いているのではないだろうか?
では、それに気が付いているにも関わらず戦闘を継続するアダムには、何か手段が残されているという事なのだろうか……?
「みっともない人間だな、君は! 恥ずかしくはないのかい、こんな戦い方で!」
「ふっ、凡庸な村娘にはお似合いの戦い方だろう?」
「……(村娘……マスターって、かなり重度の天然さんよねぇ……)」
そのように思考を回転させながら錬金術師の激突を見つめるファラの頭上には、満点の星々が輝きを放っていた。
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キャロルやファラの推測通り彼――アダム・ヴァイスハウプトには勝算があった。
――僕の勝ちだよ、追いかけっこは
そしてキャロルの弾幕による被弾が五十を超えた頃……アダムに歓喜の瞬間が訪れ、彼は自身の勝利を確信するに至った。
――理解できているのかな、君の敗因を
突如、空中に立つアダムの後方に現れたのは……地上から伸びる光の柱。
それこそ彼が待ち望んでいたもの……全ての準備が完了した合図であった。
――『甘さ』だよ、君を敗北に導いたものは
『門』を開放し、神を出迎える……レイラインからの供給が不足している分はアダム自身の力と、天の星々から拝借すればいい。勿論、それを行えば自身の力はほぼ全て『食われる』だろうが、その程度の事は最早問題ではない。
――そう、甘さだよ……
そう、神の力の前ではキャロル・マールス・ディーンハイムなど他の塵芥達と同様に、最早何の脅威にもならないのだから……。
――さて、始めるとしよう……まずはそうだね
薄く笑みを浮かべながら、アダムは行動を開始する。
まず視線に映ったのはキャロルの姿だが……ここまで散々好き勝手にしてくれた彼女は、『神の力』により絶望の底へと叩き落とさなければ気が済まない――アダムはそう判断し、弾幕を回避しつつ視線を移した。
――まあいいかな、あれで。十分だろう、余興程度には
次にアダムの視線が捉えたものは一機の輸送ヘリ……そして今にも地上へと降下しようとしている、三人のシンフォギア装者の姿。距離が遠すぎて普通の人間では捉えられないその姿を、アダムの眼球ははっきりと鮮明に映していた。
――恨むといい、自分達の弱さを
「そうと決まれば……排除させてもらおうか、シンフォギア!」
「っ!?」
「あれはガリィちゃんの……氷の障壁!? まさか炎以外の術式を使える事を、ここまで隠し通していたのですか!?」
標的を定めたアダムは、明らかに今までとは違う行動を展開する。
まずは目障りな弾幕を排除する為と、キャロルの視界から自身を逸らすため前方に氷の障壁を構築する。その際、制御が上手く行かず自身にも被害が及んでいたが……最早
そして間髪入れず輸送ヘリへと無数の火球を放ち、更に風の術式によりその速度を急加速させる。その際、やはり制御が上手く行かず身体が傷ついてはいたが……
何故なら……既にアダムは
「っ!? 風の術式まで……マスター!」
「ダメ、もう間に合わない……――逃げてっ!!」
制御が上手く行えず自身へと被害が及ぶため、アダムはこれまで全くと言っていい程、炎以外の術式を使用して来なかった。
しかし今ここに至り、その事を気にする必要が無くなったため、彼はお構い無しに炎以外の術式を使用し始めたのである。
その結果は上々――虚を突かれたキャロルとファラは対応できず、それはヘリから降下しようとしている装者達も同じ……この一撃で三人纏めて屠る事ができるかは微妙だが、
「――届かないよ、その叫びは」
それを察知したのだろうか、キャロルは表情に焦りを浮かべ、窮地に晒された仲間達へと叫び声を上げる。
「何故なら……知っているのさ僕は、君達の勇敢さを……そして、救い難い愚かさを、同時にね」
――しかし残酷にも、その声は届く事は無く……輸送ヘリの乗員を守ろうとしたのだろうか。三人の装者はヘリから飛び出すと、迫る火球とヘリの間へと立ちはだかったのである。
「いけません! 今のマリアさん達では防ぎきれません……!」
そして次の瞬間……キャロルとファラが見つめる中、火球はマリア、調、切歌の三人を飲み込み、包んだ。
「あ、ああっ……」
その光景を見て、最悪の未来を想像したのだろうか……キャロルの顔は真っ青に染まり、うめき声のようなものを上げながら、彼女は思わず膝を着いた。
「ハッ、ハハハハハッ!!祈るといい、彼女達が生き永らえている事を!そしてその上で――絶望しろ、無慈悲な現実に」
キャロルに散々苦しめられた腹いせだろうか、アダムはそんな彼女に対し、心無い言葉を使い追い打ちをかけ始める。
もう間も無く、装者達の亡骸が爆炎の中から姿を現すだろう……それを見たキャロルがどのような反応をするか、アダムは今から楽しみで仕方がなかった。
「しっかりして下さいマスター!大丈夫です、マリアさん達ならきっと……!」
「う、うん……ごめんね、ファラ」
しかしこの時、動揺が大きかった彼女達は気が付けなかった。
「……おかしいじゃないか、そんな事は」
故に最初に気が付いたのは、敵であるアダム。
彼が気付いた当たり前の事実、それは……もしもマリア達が被弾し戦闘不能に陥っていたとして、彼女達が被弾した場所は『空中』である。
であるならば、重力に引かれ地上へと落ちるのは必然……それは例え被弾を免れていたとしても同様であるにも関わらず、彼女達三人の姿は依然、煙の中に隠されたままなのだ。
「空は飛べないはずだろう、蛆虫風情の君達には……!」
では、マリア達三人は煙の中で滞空し身を潜ませているのだろうか……?
実は切歌のイガリマ、そしてマリアのアガートラームにはブースターが搭載されているため、短期的な飛行については可能である。そして調のシュルシャガナについても、丸鋸を高速回転させ浮力を得るという力技を使えば、飛行自体は可能なため、僅かな間であれば身を潜ませる事は不可能ではない。
しかし仮に、彼女達がブースターを起動させ丸鋸を高速回転させていたとすれば……既に現状、かなりの音を周囲に発しているはずである。
だがアダムの優れた聴力をもってしてもそのような音は一切聞こえてはおらず、彼は表情に不快感を浮かべながら、ようやく煙が霧散し始めた地点を睨みつけていた。
「っ!? マスター、あれは……」
「黒い、球体……まさか、イグナイトを……?」
そして僅かの後、煙の中から姿を現したのは……空に浮かぶ謎の黒い球体、そして――
「な、ななななななななななんなんデスかこれはぁぁぁぁーーーーっ!!!」
「……マリア、説明して⦅激おこ⦆」
「ほ、ほら、私もその、あれよ……い、色々あって慌てていたから……そ、それより今は戦いに集中しましょう、ねっ?⦅目逸らし⦆」
やがて球体は、一枚の黒一色に染まった布のようなモノへと変質し、その内部から現れたのは――両腕に抱えこんだ二人の少女から非難の視線を向けられ、たじろいているマリア・カデンツァヴナ・イヴの姿。
「マリアさん……あの姿は、呪いを……? いえ、ですが……」
「ううん、イグナイトじゃないよファラ。 あんな何でもありの出鱈目な制御能力、イグナイトじゃ絶対に不可能だもん」
「マスター……(「だもん」って……動揺しすぎて口調が戻りきっていませんわね……)」
そんなマリアが纏うシンフォギアは、以前とは明らかに変質していた。
まずアガートラームは銀の左腕を除いたあらゆる場所に黒のラインが走り、アガートラームの原型を留めながらも明らかに黒色の面積が増している。
そして黒い球体が変質した黒色の布は、マリアの背に収まるとその姿を消失させ……その代わりにマリアの背から現れたのは『黒色の翼』。その翼をはためかせ、マリアは切歌と調を抱えたまま、地上へとゆっくりと降下を始めていた。
「……」
一方、その衝撃的な光景を目の当たりにした所為で、せっかく上がっていたアダムのテンションは急降下しており、彼は呆然とその光景を見つめていた。
以前といい今回といい、何故こうも奇跡のような出来事が敵ばかりに起こり続けるのか……アダムは不公平さを感じずにはいられず、そして――。
「……終わらせなければ、今すぐにでも……このような茶番は」
同時にこの戦いを早急に終わらせ、敵を全て始末する事を決意した……そう、『神の力』を以て。
「……与えてあげよう君達に、真の絶望というモノを……」
その為には、敵が動揺している今が好機……そう判断したアダムは神を顕現させるため、夜空へと向かい手を翳し――
「翼さん!あの人、何かするつもりです!早く止めないとっ!!」
――が、その前に排除せねばならない障害が二つ……ミサイルに乗り空を駆けるという力技を用い、いつの間にか亜空間から帰還していた二人のシンフォギア装者が、アダムへと迫っていたのだ。
「また君か、
僅かに前を行くのはガングニールのシンフォギア装者、立花響。ただし、彼女が纏うシンフォギアはマリアと同様に、ガングニールの原型を残しつつも明らかに変質していた。
「ああ、行くぞ立花……推して参る!!!」
その僅か後ろに続くのは天羽々斬のシンフォギア装者、風鳴翼。彼女もまた響と同様にミサイルの上に立ちながら、剣を構えアダムへと刃を向けていた。
「虚をついたつもりか、その程度で!!」
アダムはその攻勢に対し、冷静に対処法を思考する。
――立花響のシンフォギアが変質している?
――彼女は後々の脅威になりかねない。ここで潰しておくべきだ。
――もう一人はどうする?
――ただの数合わせだろう、後回しで構わない。それよりも神殺しの早急な排除を。
――そして勿論、キャロル・マールス・ディンハイムへの警戒も続けなくては。僕ほどでは無いとはいえ、彼女は優秀な錬金術師だからね。
――儀式場は?
――人形が一体、向かう姿が見える。あの青い人形程度では守りを崩すことは不可能なはずだが……万が一を考え、意識の隅には置いておかなくては。
――とはいえまずは神殺しを排除してからの事だね。よし、今は神殺しの排除に全力を注ぐとしよう。
この場に存在する敵の中で一番の脅威は何か……それは自身に迫っているシンフォギア装者、立花響――どの程度のモノかは不明だが、ガングニールが『神殺し』という逸話を持っている以上、彼女の危険度は他の者とは比べるまでも無く最高である。
故にアダムは、放っておいてもどうとでもなる風鳴翼を無視し、立花響への対処を全力で行う事を決断した。
「するものじゃないぞ背伸びなど……地を這う蛆虫如きが!!」
すると彼は、それをさせまいとマリアが繰り出した
「なんのぉ! こんなのへいき、へっちゃ――あっ、あーーーーっ!ツルツルして滑るーーーっ!」
「……その結末は想定外だったよ、流石の僕も(困惑)」
通常状態のシンフォギアでは、迎撃すらままならない高威力の弾幕だが、響は見事にそれを正面から打ち倒していくのだが……しかしその途中、激しく動きすぎた所為かミサイルの上から足を踏み外し、なんとか復帰しようとするものの……健闘虚しく脱落し、地上へと落下し始めてしまうのだった。
「うわぁーん!ちょっとは慣れてきたと思ってたのにぃーっ!!」
『あーあ、一瞬の慢心が命取り、だね~♪』
ちなみにその光景を見つめていたダインスレイフの疑似人格さんには、響がまだ強化形態の動きに慣れていない事が分かっていたため特に驚きは無いようだ。
そして分かっていたなら伝えてやれよ、と思うかも知れないが疑似人格さんは普段響とコンタクトが取れない為、伝えたくても伝えられないのである。なお、これについてはマリアの方も同様のようだ。
「……行きたいところだけどね、反撃と。だけど、その前に――」
という訳で重力に引かれフェードアウトしていく響に対し、攻撃を仕掛けるため手の平を彼女に向けるアダム。
しかし僅かの後、彼は錬金術を行使する事無く、響から視線を逸らし違う場所へと移した。
「戦場で敵から目を逸らすなどっ、言語道断! はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「……教えてあげようか、現実を。身の程知らずの小娘に……」
そう、アダムが視線を移した先に存在していたのは、剣を構えた一人のシンフォギア装者、風鳴翼の姿。神殺しを持つ響を攻撃する前に、今にも自身へと斬りかからんと距離を詰めていた彼女を排除する必要があるとアダムは判断したのである。
「捻り潰せるんだよ片手間に、三級錬金術師に後れを取るシンフォギアなど!!」
故にアダムは、実力差すら分からない、愚かなシンフォギア装者を片手間に叩き潰す事にした。
ただし勿論、落下する立花響、地上にいるキャロル、そして儀式場に向かっている青い人形……これらに意識を割くことも忘れない。何故なら、脅威度が皆無である目の前の装者と違い、この連中は何をしでかすか分からないからだ。
だからこそ彼は、迫る翼に対し何の警戒も抱かず……緩慢な動作で右手を前方に差し出し、適当に練り上げた火球で彼女を排除できると、そう確信していたのである。
『な~んて――ヒビキはちょっと失敗しちゃったけど……これはこれで、結果オーライだよね、ねっ?』
だが――
「アンタの判断は決して間違いじゃないわ――そう、敗因はただ知らなかっただけ……アンタが歯牙にもかけていないその装者が、芋虫のフリをしただけの……鋭い牙を持つ一匹の狼だってことをね」
アダムは把握していなかった。目の前に迫るシンフォギア装者が、キャロルとの激戦の中で新たな力に目覚めていた事を……そして戦闘を行った立花響、そして儀式場へ向かう素振りを見せたガリィ・トゥーマーン……この両方共が、アダムの意識をそちらへ逸らすための陽動であった事を。
「翼さんっ!!」
「先輩っ!!」
そう、亜空間から帰還し、奇襲を敢行した彼女達の本命は……風鳴翼の持つ切り札だったのだ。
「落ちるといいさ、悔いながら……超越者に盾突いた事への、愚かさをっ!」
そんな事は露とも知らず、アダムは翼に向け火球を放とうとするが――
「イグニッション!!!!!」
それよりも僅かに早く……それまで捉えていたはずの翼の姿が突如、アダムの視界から完全に消失した。
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「策が閃いたというのは本当なのか、ガリィ?」
「そうよ☆ この聡明で可愛いガリィちゃんが、あのキモい変態の鼻っ面をへし折るとーってもナイスな作戦を思い付いたの♪」
「はぁ、そんなややこしい事せずに正面から突っ込めばいいだろ? 大体、ヤバいのはあのアダムって奴だけで人数では勝ってるんだし」
「クリスちゃんの言う通りだよ!は、早くキャロルちゃんを助けにいかなきゃっ!」
(正面突破は多分無理ゾ)
(ビッキーってば慌ててるせいで、あの変態紳士がミカちゃんを瞬殺したって事忘れちゃってるねぇ)
【それより作戦の方は大丈夫なの? 最悪の場合、怪我人が出るだけじゃ済まないわよ?】
(その可能性を踏まえて、クリスさんは後方支援に徹してもらいます。それで、残りのお二方については――)
時間は少し遡り、マリア達が戦場に到着する少し前……実はこの時点で、響達は亜空間から帰還していた。
そして帰還早々、キャロルが奮闘している姿を確認した響が慌てて援護に向かおうとしたのだが……飛び出す寸前、ガリィに首根っこを掴まれ、物陰に引き摺られてしまったのである。
その行動に疑問を抱きつつも、翼とクリスが後を追うと……そこでガリィはなんと、アダムに手痛い一撃を浴びせるための策を思いついた、と言い放ったのだった。
しかし周りの反応はあまり芳しく無いようで……ガリィは溜息を一つ吐くと、やがてその真意を語り始めた。
「お 黙 り 。あのねぇ、アンタ達の言う通りに正面からノコノコ出て行ってどうなると思う?そんな事も分からないからゴリラなのよアンタ達は……」
「で、でも!ここで隠れててもなんにもならないし……」
「はぁ……まずクリス、翼、そしてアタシは参戦した所で片手間に瞬殺されて終わり。で、響ちゃんもパワーアップしたとはいえ、空にいる相手へはその馬鹿力も届かない……もういいでしょ、これでアタシの言いたいことが分かったわよね?」
(ダインスレイフ君が脳筋すぎて辛い⦅悲しみ⦆)
(文字通りにパワーアップしたみたいだね、ははは……)
【当たらなければ怖くない、って事よねぇ】
まずアダムの持つ実力についてだが、彼は前回の戦闘においてカリオストロ、レイア、ファラ、ミカの四者から攻撃を仕掛けられたものの、これを全て一蹴している。
……ここで重要なのは、この場にいる響以外の三者の実力が、上記の四者全てに劣っている事……つまりこのまま正面から戦闘に参加した所で、カリオストロ達と同じ末路を辿る可能性が非常に高いのである。
そして唯一例外であるダインスレイフの覚醒を果たした響も、限定解除時のように空を飛ぶ事はできないため、空中に立つアダムへの攻撃手段がほとんど存在しない。
ちなみに、ガングニールに搭載されているブースターを使用すれば不可能では無いのだが……空中では当然、直線的な動きしかできないため良い的になるだけである。よってガリィは、響単騎での攻撃については高確率で失敗すると判断していた。
「確かにあの戦いについていけると言える程、自惚れてはいないつもりだが……では、『儀式場』の方に奇襲を仕掛けるのはどうだ、それならばアダムと交戦する必要は無いだろう?」
「それはえっとー、防衛してる
(アルカノイズ君もたくさんいるしね)
(というか各個撃破されて人質にされるパターンが一番ヤバい、今のキャロルちゃんなら多分それで詰む)
【……否定できないわね】
ではアダムではなく儀式場の方に向かい、自動人形ティキの破壊を目的とするのはどうだろうか?
その提案についての答えは、実はガリィ(とわたしたち)も既に考えてはいたのだが……防衛部隊の存在や自分達の立場を考慮した結果、それについても難しいと判断していた。
「成程、そうだな……それに、無用な死者を出すのは私達としても望む所では無い」
「ちっ、八方塞がりじゃねーか……それで、あたし達はどうすればいいんだよ」
「ガリィちゃん、教えて! それで早くキャロルちゃんを助けてあげよっ!」
「あーはいはい、今から説明するから落ち着きなさいってば……」
(ガリィちゃんは焦ってないよね)
【それはそうよ。だって今のマスター、全然ピンチに見えないんだもの】
(どんだけ撃ちまくっても、
と、いう事でここからが本番、ガリィによる奇襲作戦の説明が開始されたのであった。
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『いい、もう一回だけ説明するわよ? まずベストなタイミングを見極めて、クリスが大型ミサイルを変態に向けて二発発射する。で、アンタ達二人にはそれを足場にして変態の所まで向かってもらうわ』
――私達の存在に気付かれたようだが……ガリィの予想通り、私に対してはまるで警戒していないようだ。
『それと同時に、アタシは変態の注意を引き付けるために儀式場へ向かう素振りを見せるから。 分かってると思うけどアタシが攻撃されても絶対助けに来るんじゃないわよ、つーかそんな事したら後でぶっ殺すから肝に命じておきなさいな♪』
――最初はてっきり、私が囮役を務める事になると思っていたが……。
『で、そうなったらあの変態の意識はマスターとアタシ、それに響ちゃんに集中するはずよ。だからこそ、完全に舐められてるアンタこそが主役に相応しいのよ、翼』
――そうではなく私の役目は……意識の外から奇襲を仕掛け、渾身の一太刀を浴びせる事。
『例えば、芋虫が地面を這ってるとするでしょ。で、それを上から見つめている人間はどう思うかしら?』
――地を這う芋虫と思われている私だからこそ、通せる刃があると……ガリィは意地悪な笑顔を浮かべ、言った。
『ふふ♪ その芋虫が一秒後、自分の首を噛み切っている光景を想像できると思う?』
――そう、私にはたった一つ……僅かの間だけ牙を持つ狼となれる『
『アンタの初見殺し、ここで使わない手は無いわ。 そうね~、どうせならその剣で容赦無く、アダム・ヴァイスハウプトの首を文字通り刈り取ってやんなさいな♪』
――いける……何故ならここまで迫っても尚、敵の意識はキャロル、立花、ガリィ、そして増援のマリア達に向けられているのだから。
「呪いながら落ちるといい……君自身の愚かさをっ!」
――そうだ、信頼し大役を任せてくれた友のために……そして私自身の誇りにかけてこの一撃は、絶対に外せない。
「イグニッション!!!!!」
――そう決意を胸に、私は足を力強く踏み出し……そして、全力でアームドギアを振り抜いた。
「僕の……」
自身の身体から斬り離された事で、重力に導かれ地上へと落ちて行く右腕を呆然とした表情で見つめるアダム・ヴァイスハウプト。そんな彼が今回犯した失策は三点。
「僕の、腕が……」
まず一点。この後の事を考え、消耗を抑えるため翼への対処を疎かにしたこと。更にもう一点、シンフォギアの性能を「この程度だ」と自分の中で決めつけ、想定外の速度を叩き出した翼の姿を、一瞬とはいえ完全に見失ってしまった事。
「シンフォギア……蛆虫如きにこの、僕の……」
そして最後の一点、それは――
「さっすがリーダー♪ ガリィのマスターに勝っただけはあるわね、偉い偉い☆」
自分自身が最も警戒していたはずの、小さな錬金術師……そんな彼女が
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番外編その一……その頃、足を滑らせ落下していた響はというと……。
「よかった、なんとか間に合ったよぁ……」
「キャ、キャロルちゃん!?」
「もう!なんでそのまま落ちてくるの!? ガングニールにはブースターついてるんでしょ!?」
「……あっ、ほんとだ……エヘヘ、うっかりうっかり」
「エヘヘ、じゃないでしょこのおバカ!! 響ちゃんが怪我しちゃったらみんなが悲しむって事、分かってないの!?」
「ご、ごめんなさいぃ、悪気は無かったんだよぉ……」
地面スレスレでキャロルにダイビングキャッチされ、どうにか難を逃れていた。
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番外編その二……連続する急展開を見守っていた司令室の面々の反応。
藤尭君、友里さんの場合
「イグナイトモジュールの起動、確認できません! ど、どうなってるんだよこれ……」
「あれって確か、マリアさんがガングニールを纏っていた時に使っていたマント……よね?」
「いやいやマントであれを防ぐとか絶対おかしいでしょ――って今度はマリアさん飛んでるんだけどぉ!?」
混乱の極み。
OTONA、NINJAの場合
「ギアを纏った状態での聖詠……その対象となる聖遺物など、俺は一つしか考え付かん」
「ダインスレイフを呼び起こす……出立前にマリアさんが言っていたのは、この事だったんですね」
「ああ、どうやらそのようだな」
割と冷静。
サンジェルマン達の場合
「あんなの、前に戦った時は無かったはずよね~?」
「え、ええ……」
「この土壇場であんなものを持ち込むなんて、相変わらずとんでもない連中なワケダ……」
少し取り乱している。
エルフナイン、未来の場合
「は、離してください未来さん!理解不能な現象が発生した場合、ガリィがまた何かやったに決まっているんです!だから早く問い詰めないとボクは、ボクはぁ!!」
「落ち着いてってば!今は皆の邪魔しちゃだめだよエルフナインちゃん!⦅ガリィが原因じゃないとは言っていない⦆」
てんやわんや状態。
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番外編その三……地上に降りた後も頑張るマリアさん。
「あれは響と翼……?――っ! 二人共、私達も援護するわよ!」
「そんな事言われても、ダインスレイフ?の声なんてどうやって聞けばいいんデ――って援護、デスか……?」
「でも、あんなに離れてるのにどうやって……」
戸惑いを隠せない切歌、調の二人を他所に、マリアはギアの左腕部分を巨大な砲身へと変化させ、アダムにその銃口を向けていた。
「大丈夫よ、今度は絶対に外さないから……!」
「そ、そうデスか……――って何を考えてるんデス!? そんなの撃っちゃったら、響さん達まで巻き込んでしまうに決まっているデス!!」
「それに、遠すぎて当たらないと思うよ……?」
しかしその判断は切歌達二人からすれば、到底理解不能なものだった。
何故なら、マリアが放とうとしている技は明らかにHORIZON†CANNON……高い威力を誇る広範囲砲撃だったからであり、響達を巻き込む恐れがあったからである。
「ええ、そうね。 少し前までの私なら、この判断は間違い以外の何物でも無い……だけど!! (今の私……いいえ、今の私達なら――やれる!)」
「あぁー!撃っちゃったのデス! こ、このままじゃマリアが殺人犯に――」
「っ!? き、切ちゃん、あれ……」
だが、マリアは二人の抗議に対し薄い笑みを浮かべるだけで、アダムに向け躊躇無く砲撃を放ったのだ。
次の瞬間、仲間殺しの犯行現場に居合わせてしまった切歌が最悪の未来を確信し、顔を背けるのだが……もう一人、視線を逸らさなかった調は見ていた、驚愕の光景を……。
「砲撃範囲を限定し、その分の余剰エネルギーを制御、操作して……射程距離を大幅に伸ばす!!」
「……シンフォギアの制御って、ここまで細かくできるものなんだね……」
「マ、マリアがいつの間にか、トンデモ人間枠に入門しちゃっているのデス……!」
なんとマリアの左腕の砲口から発射されていたエネルギーは、直径三十センチ程しか無いものだったのである。
実は先程盾として使用したマントも、地上に降下するための黒い翼も、そしてこの現象も……全ては強化されたアガートラームの制御能力によるものであり、そうなった原因には勿論、新たにマリアの力となった聖遺物が絡んでいる。
『説明下手なマリアに代わって、私が二人に説明するけど……装者とシンフォギアの間に私が立つ事で繋がりを強化、ポテンシャルを限界まで引き出したのが今の姿よ――って言っても聞こえていないわよね……はぁ、マリアとすら話ができないのは、流石に不便を感じるわね……』
そう、この現象はダインスレイフの疑似人格……シンフォギアに統合された彼女によって、シンフォギアと装者の繋がりが大幅に強化された事により引き起こされたものである。
そのため全体的なスペックは勿論、アガートラーム特性である「エネルギーを調律」を始めとした制御能力全般が特に強化されており、先程を含め様々な場面に対応する事が可能となっているのだ。
「っ、防がれたか……切歌、調、私達も急いで皆と合流しましょう」
「は、はいデス」
「う、うん……」
そのような理由で発射されたマリアの砲撃だが……アダムの錬金術による防御壁を突破する事は叶わず、マリア達は仲間との合流を急ぐのだった。
アニメのAXZ編を見れば見る程思うんです……局長って、弱くね?って(遠い目)
そして展開に悩み筆が止まりソシャゲを楽しみ……今に至ります。
という感じで更新が不安定な作品ですが、次回も読んで頂けたら嬉しいです。