ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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 第二話です。




第二話

 

 

「で、何なのアンタ達」

 

 玉座の間を抜け出したガリィは、廊下の壁に背を預けそう呟いた。

 

(えっと……守護霊的な何かですかね)

(というかガリィちゃん声に出さなくても多分意思疎通できるよ)

(≪できるか!アタシは人形だ!≫の時にできてたよな)

 

≪ふぅん、こう?≫

 

(OKOK、聞こえてまーす)

 

 よかった、廊下で独り言を言い続ける人形というヤバい絵面は回避できそうである。

 そんな場面をキャロルに目撃されてしまえば、寛大な彼女もガリィを燃えるゴミの日に出すことを検討するところだっただろう、危ない危ない。

 

≪アンタ達が守護霊ねぇ……疫病神の間違いじゃないの≫

 

(大丈夫、私達がいなくてもこのままならバッドエンド一直線だから心配無用だゾ)

 

≪はぁ?どういう意味よ≫

 

(それについて今からがっつり説明するからよーーーく聞いてねガリィちゃん)

 

≪なんなんだコイツら……ガリィは忙しいんだから、さっさとしてよね≫

 

(この後検査があるからね、忙しいよね)

(尚、ガリィジョークが滑ったのが原因な模様)

 

≪うっさい!早くしろ!≫

 

(((はぁーい)))

 

 ガリィを煽る謎の声達であったが、これ以上怒らせると話を聞いてくれるかも怪しくなりそうなので、素直に現在の状況を語り始めるのだった。

 

(まず、私達はこの世界の未来を限定的にですが知っているんです。)

 

≪……はぁ、アンタ達詐欺師の集まりかなんかなの?≫

 

(違う違う、私達はこの世界とは別の世界の記憶を持ってんのよ。)

(その世界でね、『戦姫絶唱シンフォギア』って作品のアニメがあるんだけど)

(ちなみに私達が知り得る限りシーズン3まであるよ)

 

≪シンフォギア、ねぇ……≫

 

(その作品の中にガリィとかキャロルが敵役として出てくるんだよ)

(ガリィちゃんの出番は3期、シーズン3ね)

 

≪げっ、なんでガリィ達が敵役……あー、マスター世界壊そうとしてるわね≫

 

(それでまぁ長くなるから内容は省略するんだけど、結論だけ言えば)

 

(((オートスコアラー全滅した後にキャロルちゃんも消滅します。)))

 

≪……ガリィ達は分かるけどなんでマスターまで消滅してんのよ≫

 

(想い出全部焼き尽くして戦うんだけど負けちゃうんだよ。その後行方不明になっちゃう)

(で、その状態である女の子を助けて消滅、終わり!)

 

≪……くっだらない妄想、と言いたいんだけど≫

 

 ガリィはこの時、なぜかこの声達が嘘を語っているとは思えなかった。

 内容は狂人が語る妄想にしか思えないのに、である。

 

(嘘付いてないって分かるでしょ、私達もガリィちゃんの一部みたいなもんなんだし)

(我は汝……汝は我……)

(やっと話せるようになったから私達も嬉しいよ~)

 

≪ちょーっと待て、アンタ達いつからガリィの中にいんのよ≫

 

(え、わかんない)

(少なくとも五年くらいはガリィちゃんに話しかけてたゾ)

(ちなみに今も私達増えていってるからね、もう何人いるか分からない大家族だよ!)

 

 ガリィはこんなのに最低五年も寄生されていたことに絶望した。しかも現在進行形で増えているらしい、こんなことなら一生聞こえないままでいたかったが残念ながら時計の針は戻らない。

 

≪……で、それを聞いてガリィにどうしろっていうのかしら≫

 

 これ以上落ち込んでいても話が進まないので、ガリィは謎の声達が未来を伝えてどうしようというのかを聞くことにした。

 

(え、好きにしたらいいんじゃない?)

(私達はガリィに話しかける以外何もできないからさぁ、ガリィに任せるわ)

(ガリィちゃんはどうしたい?)

 

≪はぁ、どうしたいも何もガリィは人形よ?マスターの命令に従うだけ……ん?なにこれ、あれ、そんな≫

 

 そう、そもそもガリィはキャロルに作られた人形であり、その命令に何の疑問も抱くことはなく従うだけであった。そう、これまでは。

 

(ガリィちゃんどうしたの?)

(お医者様ー!私達の中にお医者様はいませんかー!?ガリィちゃんの性根が……性根がぁ……)

(性根については不治の病なので無理ですね)

 

≪あのさ……マスターはなんで世界破壊しようとしてんの?ガリィわかんないんだけど≫

 

(世界を識るため⦅超拡大解釈⦆)

(私達にだって、わからない事くらい……ある……)

(奇跡を殺す、らしいっすよ)

 

≪今まで何も思わなかったのに……はぁ、アンタ達が原因か≫

 

 これまでとは違う自分に戸惑うガリィであったが、原因など探す必要も無いだろう。タイミング的にこのうるさい連中が原因なのは明白であった。

 

(私達の影響でガリィちゃんがパワーアップしたって事かな?)

(存在するだけで役に立つ私達、有能)

(さて、それじゃあ改めてガリィちゃんはどうしたい?)

 

 謎の声に改めて意思を聞かれたガリィは、しばらくの間黙っていたが、やがて思考が纏まったのかその結論を話し始めるのだった。

 

≪マスターはどうにかしなきゃね≫

 

(せやな)

(まずはそれでいこうか)

(次は?)

 

≪終わり≫

 

(は?)

(は?)

(は?)

 

≪終わり、後はどうでもいいわ、ガリィに関係無いし≫

 

 そう、ガリィにとってはシンフォギア装者だのFISだのは現時点では顔も知らない他人である。正直そいつらがどうなろうがどうでもいいガリィからすれば、一期二期の内容など聞くまでもなくスルーであった。

 

(ウッソだろお前、一期二期の内容語るの楽しみにしてたのに……)

(黙ってた間何考えてたの?寝てたの?)

(七十億の絶唱……見たかったゾ……)

 

≪うっさい!アタシに任せるって言っただろーが!≫

 

(ソッスネ)

(じゃぁ、一期と二期はスルーってことで)

(私たちの知識が全部合ってるか分からないから情報だけは仕入れといた方が良いんじゃない?)

 

≪そうね、アンタ達信用できないし≫

 

(信用できないのは~、ガリィちゃんの心がぁ~、汚れてるからじゃないんですかぁ~?)

(うむ、ガリィの言う事も一理ある。ならば後の行動で信頼を勝ち取らねばな)

(方針はとりあえずこれでいいかな。ふぅ、みんなお疲れ様でした)

 

 なんか纏まったみたいな空気を醸し出しているが、実際決まったのは「キャロルをどうにかして後は全部スルー」これだけである。まぁ一期と二期は下手に介入して失敗したら世界が滅ぶ可能性があるので、ある意味これが正解かもしれないのだが。

 

≪じゃマスターの所に戻るわよ、アンタ達のせいでこの後検査受けなきゃいけないのよね≫

 

(はいはい私達のせい私達のせい)

(あとミカちゃんに補給してあげないとね)

 

≪イヤよ、ミカちゃんに渡せるほど想い出残ってな……はぁ!?なんで!?……またアンタ達か!≫

 

(え、なに?)

(全部私達のせいとかひどくなぁい?)

(で、今度は何が起こったんだ?)

 

≪ガリィ達の動力源が想い出って事は知ってるわよね?≫

 

(うん、知ってる)

(人間から奪うってのもね)

 

≪さっきまでガリィの中の想い出は、ミカちゃんにあげる余裕無いくらいだったのよ≫

 

(ふむふむ、それで?)

 

≪今、満タン、なんなら溢れそう≫

 

 想い出の残量を確認した途端驚愕したガリィ、本日何回目だ、表現豊かな人形である。

 何故ガリィが驚いたのか、実はガリィの中に蓄えられている想い出、その残量がえらい事になっていた。原因は……もう探さなくてもいいか。

 

(ふぁーwww)

(想い出、ガリィちゃんの中の私達……あっ⦅察し⦆)

(チートやこんなん!)

 

≪……わぁーい、ガリィお仕事が減ってうれしいわぁー≫

 

 想い出を人間から回収するのはガリィの仕事である。つまり思い出を回収する必要が無くなれば仕事が減るのだ、良かったねガリィちゃん。

 

(棒読みっすね)

(これキャロルちゃんには黙ってた方がいいね、それで想い出回収の時間を情報収集に充てよう)

 

≪……はぁ…………≫

 

(ガリィちゃん元気出して!)

(そうそう、これで動きやすくなったよ)

(無限エネルギータンクと化したガリィ、これにはミカもニッコリ)

 

 もう溜息しか出ないガリィであったが、なんとか「ガリィ、がんばりまース……」と言葉を絞り出し玉座の間へと足を進めるのだった。

 アニメでの「ガリィ、がんばりまぁ~す☆」とはえらいテンションの差である。なお、謎の声達は原作セリフに喜んでいた。

 

 

 次回 キャロルの検査 に続く

 

 





めっちゃ書いたと思ったら3000字しか書けていませんでした…。



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