第十八話です。
作戦会議の時間。
風鳴弦十郎ショックから十日後、ガリィは本日の監視の仕事を終えシャトーに帰還。そして玉座の間へと向かっていた。
≪そろそろ平和なのにも飽きてきたわね~≫
(まずい、畜生に戻りかけてる)
(な~んにも起こらないからねぇ…)
ここ最近は実に平和なものでノイズの出現はゼロ。ガリィはただ街を眺めていただけであった。
≪明日は確実に何か起こるのよね?≫
(うん、明日はアーティストフェスの日だから夜にノイズが出てくるはずだよ)
(翼さんの復帰ステージやね)
≪ふぅん、じゃあ響ちゃん一人? 大丈夫なの?≫
(クリスちゃんと共闘するから大丈夫、なはず)
(ガリィちゃんも見に行くでしょ?)
≪そうね、退屈しのぎくらいにはなるでしょ≫
そう、明日は翼がライブに復帰する日であった。謎の声達は明日ノイズの襲撃が起こる事を知識として知っているので、ガリィにライブの日程を調べさせていたのである。
≪それじゃ、今日もマスターに代わり映えの無い報告しましょうか≫
玉座の間に到着したガリィは、早速キャロルに今日の報告をするべく話を切り出すのだった。
「お仕事終了で~す。ガリィ今日も退屈で死にそうでしたよぉ、ぐすん…」
「戻ったか、ガリィ」
「お帰りなさい、ガリィちゃん」
「今日も地味な監視だったようだな」
「みんなでガリィを待ってたんだゾ」
「皆で出迎えなんてガリィったら愛され過ぎじゃないですかぁ♪ って待ってた? もしかして何かありました?」
ガリィを出迎えるキャロルとオートスコアラー達。ガリィは総出で迎えられた事に機嫌を良くするが、どうやら皆でガリィの帰りを待っていたらしい。何かあったのだろうか。
「それは今から話す。ファラ」
「はい、マスター。私がマスターからの命で調べていた米国の不審な動き、その結論が出ました」
「そういえばファラちゃんそんなの調べてたわねぇ。ガリィ全然興味無いから忘れちゃってました、てへっ☆」
「ガリィ、アタシも忘れてたゾ!」
「ワタシは地味に覚えている」
レイアしか覚えていなかった事に遠い目になるファラ。しかし彼女はもう慣れてしまっていたのでそのまま続きを話すのであった。
「ミカちゃんにも分かるように簡潔に言いますね、米国は『クロ』です。金の流れを辿った結果、広木防衛大臣の襲撃の裏に米国が絡んでいる痕跡を見つけました。更に二課本部への度重なるハッキングを仕掛けていた事も分かっています」
「あらら、随分ヤンチャしてるじゃない。」
「ですがフィーネとの直接的な繋がりは見つける事ができませんでした。大量に流れている金銭の一部がフィーネに繋がっているとは思うのですが、膨大に枝分かれしている為総当たりするしかない、というのが現状です」
米国について調べた結果を報告するファラ。しかしフィーネとの直接的な繋がりを発見するには時間が足りなかったようだ。
「ファラの報告で見えた事を話す。米国の目的は聖遺物及びシンフォギア装者の情報で間違い無いだろう。大方日本が聖遺物を多数所持し、その上研究で日本に劣っているのが気に食わないといった所か」
「えーっと、つまり米国が悪さをしていてフィーネとは別って事ですかぁ?」
「いや、それは無い。偶然にしては動きが重なりすぎている。その上、もう一つ両者の繋がりを推測する要素が浮上した。ファラ」
「はい。ここ二週間ほどの間、妙に内部で動きが活発になっています。目的は不明ですが、日本に十人単位の人間を送り込むなど何か直接的な行動を取る動きを見せています」
米国とフィーネは無関係なのでは?と考えるガリィであったが、それは即座にキャロルに否定される。どうやらキャロルはもう一つ両者の繋がりを疑う要素があるらしい。
「ここ二週間にあった事…? 大体退屈な毎日だったしガリィ分かんないんですけど…」
「確証は無いが、俺はフィーネが姿を現した事が原因だと推測している」
「?? 姿を見せたらダメなのカ?」
「先日も話したが姿を現したという事は潜伏する必要が無くなった、つまり事を起こす準備が整ったという事。フィーネは準備段階では米国と組み支援を受ける必要があったのだろう。しかし準備は整い最早支援は不要、となればどのような行動に出るか。ガリィ」
「えーっと、米国と手を切ったって事ですかぁ?」
キャロルに問われ自信無さ気に答えるガリィ。実は先に手を切ったのは米国の方なのだが、どちらが裏切ったかは大した問題では無いのでここはスルーで構わないだろう。
「そうだ。飼い犬に手を噛まれた米国は慌ててフィーネの排除に回った、と俺は推測している」
「なるほどぉ。で、どうしますマスター?」
「放って置いて構わん。どちらが潰れても俺の計画に影響は無い」
どうやらキャロルは米国とフィーネがぶつかった場合放置する事にしたらしい。まぁキャロルからすれば勝手にやってろ、というのが本音なのだろう。
「マスターがお決めになった事ならば、異議はありません」
「私も同意見ですわ」
「分かんないけど、分かったゾ!⦅分かってない⦆」
「潰し合って両方死んでくれたら楽なんですけどねぇ。あっ、ガリィも賛成で~す♪」
オートスコアラーも異議は無い様だ。こうしてキャロル陣営はフィーネと米国に対しては放置する事が決定したのだった。
「これで問題はあと一つ、フィーネと櫻井了子の目的。それだけが不明だが、ガリィ」
「は~い」
「奴等が事を起こせばその目的も判明するだろう。恐らく二課とも激突するはず」
「そうですねぇ、響ちゃん達と戦う事になると思いますけど…」
「奴等の目的が判明し、それが俺の障害となるものであったのならば…」
「ならば? どうするんですかマスター?」
「二課が奴等に敗走した段階で、我々が介入し排除する」
「っ!?」
キャロルはフィーネ達の目的が邪魔なものであったなら介入し、排除する事を決定した。
「未だシャトーの完成は成っていない。だが奴等が俺の悲願を邪魔する壁であるのならば、例え表に姿を現してでも踏み潰してくれる」
「い、良いんですかぁ? 今表に出ちゃったら計画が狂っちゃうかもですよぉ」
「二課が勝利し装者達が成長する。それが理想だが最悪の事態を想定しておくに越した事はない」
「相手が装者でない以上、我々は破壊されないよう立ち回らなけばなりませんわね…」
「ミカの切り札は地味に使えない、という事ですね」
「ガリィが心配なんだゾ…」
焦るガリィに対していざ戦闘になった場合のプランを考える仲間達。即対決という最悪の事態は避けられたが、二課が敗北したと判断された場合介入する事になってしまったのであった。
「ガリィ、貴様は奴等と二課の戦闘を見届け二課が敗北した段階でシャトーに帰還、報告せよ。その時点をもって介入し奴等を排除する」
「は、はぁ~い。ガリィにおまかせでぇ~す…」
「大変な仕事だけど、頑張ってねガリィちゃん」
「頼りにしている」
「戦うのはアタシに任せてほしいんだゾ!」
どうやらガリィの判断次第で介入するタイミングが決まるらしい。キャロルはガリィの働きについては高く評価しているので任せる事にしたようだ。
「…以上だ。自由にしていい。ガリィは明日からも監視を怠るな」
「はい、マスター」
「了解しました」
「はぁ~い。それじゃ、ガリィ失礼しま~す」
「ガリィ、後でチューして欲しいんだゾ…」
「はいはい、後でしてあげるから待ってなさい」
玉座の間をそそくさと出ていくガリィ。そう、作戦会議の時間である。
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≪首の皮一枚繋がったのよね!? これはセーフよね!?≫
(落 ち 着 け)
(原作通り二課が勝てばセーフだね)
(フィーネの目的が判明してたら詰んでたな…)
フィーネの目的は簡単に言えば月を破壊する事である。月を破壊すれば当然地上も無事では済まないので、キャロルの障害と判断されるだろう。正に首の皮一枚残った状態で原作は守られたのである。
≪すっごい焦ったんですけど! マスターが『今からフィーネ潰しに行く』とか言い出したらガリィの今までが全部水の泡になる所だったじゃない!≫
(私達もてんやわんやだったよ!)
(っていうか完全聖遺物三つ相手じゃキャロル陣営全員でも負けるかもしれないという…)
(三期どころか二期始まる前に全滅とか原作の方がマシなんですがそれは…)
≪はぁ、後は響ちゃん達が勝ってくれればいいだけなんだけど…≫
(なんか怖くなってきたよね…)
(信じるしかない…そうだ、神社に行こう!⦅神頼み⦆)
(神社行ってる時点で信じて無いと思うんですけど⦅名推理⦆)
原作崩壊の危機をかろうじて乗り越えたガリィ一行。後は装者達が無事にフィーネに勝利してくれれば大団円であるが、果たしてどうなってしまうのだろうか。ガリィの原作を守る戦いは続く。
≪未来ちゃんもギア纏えるんでしょ? どうにか調達できない?≫
(神獣鏡はダメです⦅断言⦆)
(愛が…重いからね…⦅遠い目⦆)
次回も読んで頂けたら嬉しいです。