ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第二十二話です。




第二十二話

 

 

≪あ、落ちた。まぁ死んでないならどうでもいいわね。それより老害が口開けてアホ面晒してるわよ、今の内に袋叩きにしなさいよ早く≫

 

(あっさりしすぎぃ!)

(もっとこう、さぁ…)

 

 クリスが地上に落下するのを見届けた感想がコレである。フィーネと翼は動揺して動けず、そして響は泣き崩れて膝を着いてしまっているというのにこの人形は…。

 

≪はぁ? なんでこんな時に泣いてんの頭お花畑のどんくさ娘、死んだ仲間の仇を討ちなさいよ! ほらグズグズしてるから老害が再起動しちゃったじゃない!≫

 

(死んでないです⦅半ギレ⦆)

(ガリィには人の心が分からない…)

 

 膝を着いて泣き崩れる響、その傍で寄り添う翼。動揺するフィーネ。

 この三者の中で最も早く動き出したのは、フィーネであった。

 

 動揺から立ち直ったフィーネは泣き崩れる響に、クリスの行動は所詮無駄であったと語り、嗤う。仲間を馬鹿にされた翼は怒りを露にする。しかし…。

 

 

≪前に見たわね、あれ≫

 

(暴走…だね)

(仲間を否定されて負の感情が限界を超えた、って事かな?)

 

 泣き崩れていたはずの響の様子がおかしい。目の焦点が定まらず、唸り声を上げ始める。そこで翼が異変に気付くが次の瞬間、フィーネへの怒りを叫びながら響の全身は黒い影に包まれた。

 

≪あの状態なら勝てるんじゃない? 相手はハズレ聖遺物の老害なんだし≫

 

(パワーだけなら負けてないと思うよ)

 

 そして程無くして暴走した響がフィーネに攻撃を開始、驚異的な速度でフィーネに肉薄しその腕を振るうが、ネフシュタンの武器である鞭で防御され逆に弾き飛ばされてしまうのであった。

 

≪なるほど、アンタ達の言う通りパワーだけね。あれなら普段の方が百倍マシよ≫

 

(真正面から突っ込むだけだからねぇ)

(破壊衝動だけで動いてるから仕方ないんだけど)

 

 弾き飛ばされた響はすぐに体勢を立て直し再びフィーネに突撃する。それに対しフィーネは鞭を網のように交差させ防御、またも響を弾き飛ばそうとするが…なんと響のパワーが勝り網を破壊し、更にそのままフィーネの胸に一撃を叩き込んだのである。

 

≪あれ、終わり? ちょっと、仕事する前に死ぬとか…アンタ達、どうすんのよこれ≫

 

(死んでないんだよなぁ…)

(君が散々馬鹿にしたネフシュタンの恐ろしさ、とくと味わうがいい)

 

 響の腕に貫かれたフィーネの胸には大きな亀裂ができており、誰がどう考えても致命傷であった。しかしフィーネは倒れたり吐血する事も無く、平然と笑っていたのだ。驚愕する翼、そしてそれを遠距離から見つめる人形もまた驚愕していた。

 

 

≪はぁ!? アレで死なないとか反則でしょ! ネフシュタンが大した事無いって言ったの誰よ、あんなの実質無敵じゃない!≫

 

(おまえや)

(君だけです)

(だから一番やばいって言ったのに…)

 

 ネフシュタンの鎧と人体が融合すれば一体どうなるのか、その答えが現在のフィーネであった。

 致命傷すら回復する驚異的な再生力、そして完全聖遺物の戦闘力、この二つを備えたフィーネは最早無敵と言っても過言では無かったのだ。

 

≪…一応聞いとくわ、ガリィで勝てる?≫

 

(無理)

(こっちはエネルギー無限だけどそもそも向こうはHP無限だから無理)

 

≪…正直あの女がここで死んでくれる事にホッとしてる≫

 

(その気持ちは分かる)

(ビッキー達に勝ってもらわないとね!)

 

 フィーネとネフシュタンの恐ろしさをようやく理解したガリィの表情は、先程までとは違い真面目なものになっていた。

 

 

 一方、暴走した響はなんと味方であるはずの翼へと襲い掛かっていた。もはや敵味方の区別もつかなくなった響の攻撃をなんとか受け流し続ける翼、しかしその体には徐々にダメージが、そして無視できない程の疲労が積み重なっていた。

 

≪一対三がなんで二対一に逆転してんのよ馬鹿じゃないの!≫

 

(今はほら、フィーネのターンだから…)

(ほら座って座って、ね?)

 

 とうとう立ち上がったガリィを落ち着かせようとする謎の声達。今はフィーネのターンなのでガリィには我慢して頂きたいものである。

 

 

 ガリィが立ち上がる程に圧倒的優勢なフィーネ、しかし彼女は疲労している翼に何故か攻撃を加えようとはしない。その理由は…。

 

 

「…まさか!」

 

 

 驚愕する翼。その視線の先には、再びチャージを開始したカ・ディンギルの姿があった。

 

 

≪成程、これじゃ確かに無駄死にって言われても仕方ないわね…≫

 

(何発でも打てるんだってさぁ⦅白目⦆)

(不死身に近いボスに打ち放題のビーム兵器。なんやこのクソゲー)

 

 勝ちを確信したのかは分からないが、翼にそのカラクリを親切に話し出すフィーネ。

 カ・ディンギルは何故これほど短時間で二射目を撃てるのか。その答えはデュランダル、不滅の聖剣をエネルギー源として設置しているからであった。そのためにフィーネはデュランダルを奪取したのである。

 

 

≪あの老害また説明してるんですけどなに、聞いてほしいの? ずっと一人で寂しかったの?≫

 

(十二年間の集大成だからそりゃあ聞いてほしいよね)

(冥土の土産だよ言わせんな恥ずかしい)

 

 手品のタネを話しきりご満悦な表情のフィーネ。それに対し翼は剣の切っ先をフィーネに向け今だ闘志が衰えていない事を示すが、その姿を見たガリィはどこか既視感を感じるのであった。

 

≪あの目、前と比べて澄んでいるけど根元は一緒よ。何かやらかす気ね≫

 

(正解…)

(もう取れる手段が…)

 

 それから程無くして響が翼に突撃を始めるが、翼は迎撃する様子を見せない。フィーネが不審に思っていると次の瞬間、なんと翼は武器を地面に突き刺し無防備な姿を晒したのだ。

 

 しかし響は止まらない。戦意を捨てた翼にも容赦無く襲い掛かり、その腕を振るい翼の肩を貫く。

 貫かれた翼の肩から鮮血がほとばしるが、翼は痛みなどまるで感じていないかのように

 

 

 

 響の体を優しく抱きしめた。

 

 

 

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≪ねぇ≫

 

(どうしたの?)

 

≪アイツってあの後どうなるの?≫

 

(言っていいの?)

 

≪言いなさい≫

 

(…カ・ディンギルに特攻して破壊に成功するんだよ。だけど…)

 

≪そ、分かったわ≫

 

 そう言い終わると突然立ち上がるガリィ。

 

(ガリィちゃん?)

 

≪錬金術は使ったら老害にバレるでしょうし、走って行くしかないわね≫

 

(あの、どこへ…?)

 

 

 

≪喜びなさい。退屈なのにも飽きたし、アンタ達の大好きな原作を守りに行ってあげる≫

 

 

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「ウ…ウゥゥ…」

 

(ニクイ、ニクい、にくい、コワス、こわス…)

 

 影縫いによって動きを止められた響は、翼がカ・ディンギルに向かうのをただ見つめていた。

 

(ニクイ、こわす、クヤシイ、カナしい…かな、しイ…?)

 

 赤く光る響の両目からは、何故悲しいのかも分からないのに涙が溢れていた。

 

(くりスちゃン、ツばサさん、いヤだ、いやダ…)

 

 焦燥感が響を包む。しかし体は動かない、何をすればいいのかも分からない。そして…。

 

 

 

「立花ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 

 立花響が守りたかったものが、また一つ散った。

 

 

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 崩壊したカ・ディンギルの頂上付近で、翼はまだ生きていた。とはいえ既にギアは解除されている上、先程ネフシュタンに攻撃された傷から血が流れている状態で、意識は朦朧としていた。

 

 

 

(体が…動かない…)

 

 カ・ディンギルを破壊する事は成し遂げたものの、一番大変な仕事を後輩に残してしまった。今すぐにでも助けに向かいたいが、その意思に反して体はほとんど動いてくれはしない。

 

(だが…それでも行かなければ…)

 

 立花には情けない姿ばかり見せてしまったが、それでも彼女は私を慕い、そして私を救ってくれた。

 立花は強い、私よりも余程。しかし今回は相手が悪い、だから行かなければ…私が…。

 

 

 

 

「馬鹿ね、動かずじっとしていなさい。あなたの出番はまだ後よ」

 

 

 

 

 無理矢理体を動かそうとした瞬間、体に何かが当たる感触と同時に掛けられた声。驚いた私はその相手を見ようと目を開けようとする、だが…。

 

 

「目を閉じて楽にしてなさい。ほら、止血するわよ。包帯なんて無いし私の服を破いたやつで我慢しなさいよね」

 

 

 その声は私にそう言うと、テキパキと私の体に何かの布を巻いてしまったのだ。

 

 

「…あなた…は…?」

 

「あなたのファンよ。ま、曲は一つも知らないんだけど」

 

「…はは、なによそ…いっ!」

 

「ほら、まだ痛むんでしょ。じっとしてなさい」

 

 彼女?はそう言うが、まだ立花が戦っているのだ、這ってでも助けに行かなければ…。

 

「だが、仲間がまだ戦って」

 

「だからこそ今は休みなさい。何度も言わせないで、まだあなたの出番は終わってないのよ」

 

「…それは、どういう…?」

 

 気になった私は目を開き相手に尋ねる。しかし…。

 

 

 

 

「誰も…いない…?」

 

 

 

 そこには誰も居なかったのだ。そもそも私がいる場所は崩壊した塔の頂上、人間で登ってこられるのは司令くらいだろう。しかし先程の声は女性の声だった。という事は…

 

 

「幻聴…それとも幻覚…?」

 

 

 幻覚を疑う私。だがそれは即座に否定される。何故なら…

 

 

「止血、されている」

 

 

 腹部に包帯代わりに巻かれた布、その存在が幻覚で無い事を証明していた。

 

「あの声の言っていた、私の出番は終わっていないという事。もしそれが真実であるならば…」

 

 冷静になり考える。ギアを纏えずまともに動く事すらできない今の状態では立花の足手纏いになるだけだろう、それならば…。

 

「今は体力を温存し、その機を待つ」

 

 状況は絶望的。だが立花ならば、あるいは…。私は奇跡にも近い可能性を信じて、再び目を閉じた。

 

 

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 ガリィは来た道を全力疾走で戻っていた。

 

≪あぁもう、錬金術使っていい!? ちょっとくらい使ったってバレやしないわよ!≫

 

(ダメです)

(いいから走れ)

(みんな避難してるから静かなもんだねぇ)

 

 避難が完了し閑散とした街を走り続けるガリィ。果たして彼女は一期の名シーンと言ってもいいあの場面に間に合うのであろうか。

 

≪ちょっと、向こうで光の粒みたいなのが浮いてるんですけど! なによあれ!?≫

 

(フォニックゲイン…かな)

(こりゃ間に合わねぇな!⦅諦め⦆)

(おらガリィも歌うんだよあくしろよ)

 

 走り続けるガリィが見たのは、未来達が響の為に歌い発生したフォニックゲインである。それを見て間に合わないと謎の声達は悟ったのだった。

 

(ガリィちゃん! そこのビルの屋上! 早く!)

(もう間に合わない!)

 

≪はぁ!? あぁもう分かったわよ!≫

 

 謎の声達に急かされたガリィは急停止し手近にあったビルの屋上へ上り、フォニックゲインが発生している方を視界に定めた。

 

≪全く、人形使いの荒い奴らなんだから…≫

 

(まあまあ)

(っと、始まったね)

 

 ガリィが文句を言い終わると同時に、三つの光の柱が立ち昇る。そして…。

 

 

 

 

 

 

「シンフォギアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 反撃の狼煙を上げる咆哮が、戦場に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 なお、ガリィ達は

 

 

(つよい⦅確信⦆)

(勝ったな⦅確信⦆)

(この戦場、我々の勝利だ!⦅慢心⦆)

 

≪さぁ死になさい老害! ガリィの未来の為に!≫

 

 

 その光景を見て、フラグを建てまくっていた。

 

 

 





次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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