ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第二十七話です。プロローグ的なもの。




  G編
第二十七話


 

 

 ガリィ・トゥーマーンは偉大なる錬金術師、キャロル・マールス・ディーンハイムに作られた女性型人形である。

 彼女含めキャロルに作られた四体の女性型人形はオートスコアラーと呼称され、主へ絶対の忠誠を誓っているはず、なのだが…。

 

 

「うわぁぁぁぁん! 買ってくれるまで絶対に離さないんだからぁ! 買って買って買ってぇ~!」

 

 

「腰にしがみつくな馬鹿者! あとその胡散臭い嘘泣きをやめ――おい変な所を触るな! やめろ!」

 

 なんとガリィは主に反逆していた。見かけは幼女であるキャロルの腰にしがみつき駄々をこねているその姿は、誰が見てもドン引きする事間違いない絵面であった。

 

 

「えぇ…⦅困惑⦆」

 

 

 そしてここにとんでもない場面に遭遇してしまった人形が一体、名をファラ・スユーフという。

 彼女はオートスコアラーの中でお姉さん的存在なのだが、元々はもう少しクールというか冷たさを感じさせる性格だった。しかし目の前にいる人形が数年前からおかしくなった影響を受け、現在はかなり丸くなってしまっているようだ。

 

 

「…」

 

 介入するか、それとも見なかった事にして立ち去るかをファラは頭脳をフル回転させ思考する。

 本来であればすぐに主を助けるのが正しい選択だろう。しかし主にしがみついているのはガリィなのだ、下手に引き剥がせば今よりも面倒臭い事態に発展しかねないのである。

 

「――ガ、ガリィちゃん、一体何をしているのかしら」

 

 とがいえさすがにこの状態を放置するわけにはいかないと、面倒臭い事態になる事を覚悟したファラは悲壮な決意でガリィに問いかけるのであった。

 

「買ってくれるまでぜーったい諦めませんからぁ!――――あれ、ファラちゃん? どうしたの、そんな険しい顔しちゃって」

 

「だから俺はそんなもの微塵も興味無いって言っとるだろうが! ファラ、この馬鹿を引き剥がせ、早く!」

 

「あの、一体何が…?」

 

 ファラは全く状況に付いていけなかった。ガリィがキャロルに何かを買ってもらおうとしている事くらいしか分からないのでまずは説明してほしい、そしてできれば面倒臭い事に発展しないでほしいと彼女は心から願っていた。

 

 

「あのねファラちゃん…マスターったらライブチケットの一つも買ってくれないんですよ、ガリィはこ~んなに頑張ってお仕事してるのに!」

 

「ライブチケット…? マスター、それを入手するのはそれほど難しいのですか?」

 

「違う、手に入れる事は容易だがこいつは、この馬鹿は…」

 

 ガリィを見ながらわなわなと震えるキャロル、一体ガリィは彼女に何を言ったのだろうか…?

 

「え~、ガリィはチケットを二枚買って欲しいってお願いしただけじゃないですかぁ」

 

「そう、チケットを――――えっ、二枚? どうして二枚必要なのかしら?」

 

 ガリィから納得できない単語が出てきて困惑するファラ。彼女は何故自分の分だけではなく二枚チケットを要求しているのか、それがファラには疑問だったのだ。

 

 

「はぁ、そんなのマスターと行くからに決まってるじゃない」

 

 

「そ、そう…⦅遠い目⦆」

 

「貴様だけで行け、俺を巻き込むな⦅断固拒否⦆」

 

 ガリィの『なんでそんな当たり前のことを聞くの?』と言わんばかりの表情に遠い目になるファラ。

 そしてキャロルはそんなものに興味は無いとばっさり切り捨てるのだが、そもそもこの人形は何故一体で行こうとしないのだろうか。

 

 

「それじゃガリィが友達いないみたいに見られるじゃないですかぁ! 大事な人形がぼっちと思われてもいいんですかマスターは!?」

 

 

「どうでもいいわそんな事! なんで変な所で繊細なんだよお前は!」

 

「ガリィちゃんって人目を気にしたりするのね、意外だわ…」

 

 ガリィがキャロルを誘った理由は非常にくだらないものだった。というかこの人形が人目を気にするというのが一番の驚きである。

 

「それにライブには風鳴翼が出るんですよ、つまりこれは立派な偵察任務なんですマスター。という事で一緒に行きましょうよ~」

 

「肝心の戦闘力が分からん偵察に何の意味があると言うのだ貴様は…」

 

「風鳴翼…シンフォギア装者ですか」

 

 そう、ガリィが行きたいライブには風鳴翼がメインのライブなのだ。実はメインはもう一人いるのだが、今はその話は置いておいていいだろう。

 

「だって一回ライブとか行ってみたかったんですもん! それにこれなら装者も見れるしお得じゃないですかぁ」

 

「だから行くなら貴様一人で行けと…いや、待て」

 

 しつこく追いすがるガリィに対して拒否の姿勢を崩さないキャロル。決着が付くのはまだ遠いと思われたが、どうやらキャロルは何か思い付いたようだ。

 

「ガリィ、貴様はライブとやらに行きたいが自分だけでは不満。そうだな?」

 

「不満というか寂しいじゃないですかぁ、しくしく…⦅嘘泣き⦆」

 

「成程、把握した。ファラ」

 

「はい、いかがなさいましたかマスター」

 

 胡散臭い嘘泣きをするガリィを無視して話を進めるキャロル。彼女の考えとは果たして…。

 

 

 

「貴様がガリィの供をしてやるといい。それでこの馬鹿も文句は言わんだろう」

 

 

 

「えっ、なにそれは⦅戦慄⦆」

 

 突然の流れ弾に驚愕するファラ。この場面に出くわしたのが彼女の運の尽きであった。

 

「ファラちゃんと、ですか…?」

 

「これでもまだ文句を言うならこの話は終わりにするが。どうする、ガリィ」

 

「えっ、あの、私の意思――」

 

「マスターと行きたかったんですけど…まぁファラちゃんと行くのも楽しそうだしそれでオッケーです♪」

 

 この流れはまずいと思いどうにか流れ弾を回避しようとするファラ。しかし無情にも時既に遅しであった。

 

「そうか。券は二枚購入しておいてやる、後は好きにするがいい」

 

「さっすがマスター♪ お礼にぎゅ~ってしちゃいますよぉ、ぎゅ~♪」

 

「なっ!? やめんか馬鹿離せ!」

 

「…にんむ、うけたまわりましたわますたー」

 

 これはもう回避できないと諦めるファラ。じゃれ合う主従を見つめる彼女の目は、ガリィに絡まれた時のキャロルのように死んでいた。

 

「はぁ、はぁ…俺は部屋に戻る。後は貴様等で決めておくがいい」

 

「は~い♪ それじゃファラちゃん、玉座の間で話しましょうか」

 

「…はぁ、分かったわ。これも装者を間近で見るいい機会と思うしかないわね…」

 

 

 キャロルと別れ玉座の間へと向かう二体の人形。このライブの主役の一人である風鳴翼が将来、自分と戦う相手になる事を今のファラはまだ知らない。

 

 

 

≪ねぇ、ライブに出て来るもう一人ってガリィに絡んでくる奴なんでしょ?≫

 

(絡むのはガリィちゃんの方なんだよなぁ…)

(原作ではストーカーみたいだったゾ)

 

≪ふ~ん、ガリィの好みなのかしら? 今から楽しみね♪≫

 

(メンタル弱ってる時とか完璧にガリィの好みだと思うよ)

(見るだけにしてね、お願いだから)

 

≪分かってるわよ、ガリィにおまかせです☆≫

 

(その不安になるセリフを言うな!)

(分かっている⦅分かってない⦆なんでしょ!?)

 

≪ライブ当日が待ち遠しいわね♪ それまでお仕事がんばりま~す≫

 

(おい、話を聞け!)

(これはもうファラ姉さんが止めてくれる事を願うしか…)

 

 ご機嫌のガリィを警戒する謎の声達。彼女は自重する事ができるのか、そして死んでしまったファラの目は生き返るのか、果たして…。

 

 

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「何故…何故これほど人気なのだ、まさか俺がここまで手こずるとは…」

 

 後日談ではあるが、キャロルはチケットを入手するのにかなり苦労したらしい。それでもなんとか二枚を入手する事に成功し、彼女は何食わぬ顔でガリィにチケットを渡すのであった。

 

「さっすがマスター♪ こんなに簡単に手に入れちゃうなんてガリィ尊敬しちゃいますよぉ~♪」

 

「ふん、当然だろう。俺の手にかかればこの程度、造作もない事だ」

 

「ありがとうございますマスタ~。そうだ、チケットのお返しにぎゅ~ってしてあげますね、ぎゅ~♪」

 

「――はっ? やめろ! 恩を仇で返すな馬鹿者!」

 

 

 今日もシャトーは平和である。彼女達が表舞台に立つ日は、まだ遠い。

 

 





次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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