ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第三十七話です。




第三十七話

 

 

≪はぁ…≫

 

 秋桜祭から数日経ったある日、ガリィ・トゥーマーンはフラフラしながら街を彷徨っていた。

 

(元気出してガリィちゃん…)

(原因が分からないからねぇ…)

(嫌ってるって感じでは無いんだよなぁ)

 

≪マスターに避けられ始めてもう三日目よね…。 …あれ、四日目だったかしら…?≫

 

(三日目だよ!)

(色々とダメになっている…)

 

 ここ数日ガリィはキャロルに避けられ続けていた。添い寝した翌朝にキャロルが悲鳴を上げた時から避けられ続けているのだが、ガリィにはその原因がさっぱり分からず八方塞がりであった。

 

≪はぁ、今日も帰還したらマスターにアタックしないと。 全く、監視なんてしてる場合じゃ無いのよこっちは…≫

 

(ここ数日はまともに監視すらしていないんですがそれは…)

(魂が抜けたような顔で街を彷徨ってただけだからね…)

 

 避けられていてもガリィは諦めておらず、今日もシャトーに帰還次第キャロルにアタックするつもりであった。とはいえショックはショックだったので、ここ数日は仕事が手に付かなかったのである。

 

≪次は何が起こるんだったかしら…? 確かなんとか博士が何か仕出かすのよね?≫

 

(アバウトすぎぃ!)

(ウェル博士ね、ウェル博士。響ちゃん達と遭遇するんだよ)

(ソロモンの杖とネフィリムの心臓を持って現在逃走中のはず、なんだけど)

 

 この先起こる事を声達に確認するガリィ。次に起こる事、それはウェル博士と二課情報部の激突、そして響達との遭遇であった。

 

≪ふぅん、じゃあ響ちゃんの所に行った方がいいかしら…あ、でも昨日までに終わってたら無駄足になるわね、どうしましょうか?≫

 

(周辺で黒煙とかは上がってなかったからまだだと思うよ)

(だから行った方がいいんじゃないかな?? 装者同士の戦いになるし)

 

≪へぇ、そうなのね。 ちなみに誰が出てくるの?≫

 

(調ちゃんに切歌ちゃんデス!)

(二人もこの街に来てる頃だと思うけど…)

(さすがにどこにいるかまでは分かんないかなぁ)

 

 調と切歌の二人が介入して来る事を語る声達。ガリィはそれを興味無さそうに聞いているのであった。

 

≪つまり小競り合いなのね。一応見に行くけど、つまらなさそうでガッカリだわ≫

 

(いや、そうでも無いかもよ?)

(響ちゃんがえらい事になってるんだよなぁ…⦅悲しみ⦆)

 

≪えらい事になってるのはアンタ達から聞いてるから知ってるわよ。それより何が――≫

 

 

 

「あーーーーー!!!!!」

 

 

≪…うるさいわねぇ、なによ一体…≫

 

 話をしていたガリィと声達であったが突然後方から叫び声が聞こえ会話を中断されてしまう。イラっとしたガリィが後ろを振り向くとそこには…。

 

 

 

「似てると思ったらやっぱりデス! こんな所でなにをしてるんデスか?」

 

「き、切ちゃん、今は…」

 

 

 そこにいたのは切歌と調。ガリィが共に秋桜祭を楽しんだ装者の二人であった。

 

≪…ねぇ、こいつらガリィに構ってる暇なんてあるの…?≫

 

(さ、さぁ…?⦅冷や汗⦆)

(調ちゃんは止めてた感じだけど…⦅推測⦆)

(切歌ちゃんは止まらなかった模様⦅遠い目⦆)

 

 彼女達二人はウェル博士を捜索しているはずなので、本来であればガリィを見つけても声をかけず離れるのが正解である。しかし友達を見つけて嬉しくなってしまったのだろうか、切歌は調が止める前に叫んでしまったようだ。

 

「…散策していただけよ。そういうアンタ達こそ、何やってんのよこんな所で」

 

「わっ、私達デスか!? そ、それはデスね…」

 

「ちょっと人を探してるの。そうだよね、切ちゃん?」

 

「そっ、そうデス! やましい事は何もないデスよ!」

 

「…そう、まぁどうでもいんだけど。それで、ガリィに何の用かしら?」

 

≪きっと用なんて無いんでしょうけど、一応聞いておいてあげるわ≫

 

 ガリィに質問を返され挙動不審に陥る切歌。そんな彼女を助けたのは調、切歌と違い冷静だった彼女は、淡々と無表情でガリィに返事を返すのだった。

 

「えっ、特に理由なんて無いデス、けど…」

 

「切ちゃん…⦅ジト目⦆」

 

「アンタねぇ…⦅ジト目⦆」

 

「な、なんデスか二人して!? ちょっと声をかけただけじゃないデスか!」

 

 二人からの冷たい視線を受け動揺する切歌。どうやらここに彼女の味方はいないようである。

 

「ごめんねガリィ、私達ちょっと急いでるから…」

 

「あ~はいはい、分かってるから気にせず行っていいわよ」

 

「うん、ありがとう。切ちゃん、行こう?」

 

「それは分かったけど…無視するのはやめてほしいデス…⦅悲しみ⦆」

 

 ガリィに急いでいる事を伝え歩き出そうとする調。そして切歌も落ち込みながらもそれに付いて行くのであった。

 

 

「ガリィー! また今度遊ぶデース!」

 

「…⦅手を振っている⦆」

 

「あーはいはい! 分かったから早く行きなさいよ!」

 

 少し離れた所で振り返り再び声を掛けてくる切歌にガリィは早く行けと急かす。そして二人が見えなくなった頃、ガリィは動き始めるために脳内会議を始めるのであった。

 

≪さて、ガリィも行かなきゃいけないわね。あの二人が来たって事は時間はそんなに無さそうだし≫

 

(そうだねぇ、響ちゃんを探しに行こう)

(黒煙が上がったらそこに向かえばいいゾ)

 

≪はぁ、どいつもこいつも慌ただしくて嫌になるわね。 さ、行きましょ≫

 

(((りょ~か~い)))

 

 こうしてガリィ一行は現場へと向かうため動き始める。その先に待つ展開とは、一体…。

 

 

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「…あっ、やっちゃった」

 

(ファーー!!!⦅絶叫⦆)

(あひぃ…⦅失神⦆)

(ガリィが悪いよガリィがー!⦅有罪⦆)

 

 ガリィ・トゥーマーンは過去最大にやらかしていた。

 

 まずは現在の状況を整理しておこう。

 ガリィの視線の先には響と対峙する調と切歌、そしてその後ろにいるウェル博士が見えている。しかし戦況は二対一にも関わらず響が優勢であり、それを見たウェル博士が薬品が入った注射器を切歌と調の二人に打とうとしたところで…。

 

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

 

「…博士?」

 

「何をする気だったデスか!?」

 

 飛来して来た何かが注射器を弾き飛ばし、それに気付いた二人がウェル博士に詰め寄るのであった。

 

 

≪いや、なんか注射器ってその…危ない気がするっていうか、ほら…分かるでしょ?⦅目逸らし⦆≫

 

(⦅分から⦆ないです)

(この距離から当てるとは…スナイパーか君は⦅呆れ⦆)

(原作壊れる! 壊れるぅ!!⦅発狂⦆)

 

 とうとう致命的なミスを仕出かしたガリィ。なお本人はたいして反省していない模様。

 

 

「あぁん!? リンカーですよ り・ん・かぁ!! 二人掛かりで勝てないなら、勝てるように強化するしかない!! 違いますか?」

 

「…過剰投与で私達の力を引き上げるってわけデスか! そんなの無茶苦茶デス!!」

 

 場面は変わり、無茶な提案を愉快そうに語るウェル博士に対し怒りを露にする切歌。しかしウェル博士は不敵な笑みを崩さないままニヤニヤと切歌を見つめているのであった。

 

「無茶苦茶でもなんでも、君達が勝つにはそれしかありませぇん! いいんですか? ここで私が捕まればあのオバハンは死にますよぉ、確実にねぇ!!」

 

≪あのおっさんいい性格してるわねぇ。ただの人間であそこまでできるのってなかなかいないわよ≫

 

(えぇ…⦅困惑⦆)

(畜生同士は惹かれ合うんですかね?⦅予想⦆)

 

「ふざけんな! マムの事が無かったら、お前なんかあたしが切り刻んで――」

 

「…待って、切ちゃん」

 

 今にも爆発寸前の切歌であったが、突然横からストップがかかる。切歌を止めたのは…調であった。

 

「ウェル博士、リンカーを渡して」

 

「しっ、調!?」

 

「…ふふ、ふふふふふ。 そちらの物分かりの悪いガキと違って君は優秀な子のようですねぇ! どうぞどうぞ、存分に使って! そしてYOU!絶唱しちゃいなYO!!」

 

 切歌を止めた調はウェル博士にリンカーを要求する。驚愕する切歌を余所に、調はウェル博士からリンカーを受け取ってしまうのであった。

 

≪というか響ちゃんが待ってるんですけど…ん?響ちゃんったらなんだか苦しそうね≫

 

(浸食が進んで…)

(体は相当発熱してるはずだよ)

 

 切歌達が揉めている間にも全く手を出さない響、それを疑問に思いガリィが響の方を見ると、彼女は立っているだけで発汗し息が激しくなっている状態であった。これでは動けないのも無理はないだろう。

 

「…待って、私一人の分だけでいい」

 

「はて? それはまたどうして」

 

「私一人で時間は稼げる。切ちゃんは隙を見てウェル博士を連れて逃げて」

 

「何を言い出すんデスか! そんなの…絶対駄目デス!!!」

 

「…うぅ~ん。 まぁいいでしょう、君の献身に免じて採用してあげるとします」

 

「…あなたの事なんかどうでもいい。マムと、マリアと、そして…切ちゃんのために私はやるんだ」

 

「調、話を聞いて!そんな事されてもあたしはちっとも嬉しくない!」

 

 

≪あらら、なんだか揉めてるわねぇ⦅他人事⦆≫

 

(君がいらん事したせいやで⦅半ギレ⦆)

(あぁもう滅茶苦茶だよ…⦅諦め⦆)

 

 揉めているのを見て他人事の様な感想を語るガリィに声達は怒り、そして呆れていた。なお待たされている響が一番辛い模様。

 

「…ごめんね、切ちゃん」

 

「調っ!?」

 

 切歌に謝り、調は首に注射器を突き立てる、そして…。

 

 

「待ってくれた事には感謝…だけど貴方は私が倒す」

 

 

 調は一人、響と対峙する。大切な物を守るために、それだけを考えて。

 

「うっ、うぅ…。…えっ、何をする気!?」

 

 苦しんでいた響も調の様子がおかしい事に気付く。しかし…既にそれは遅かったのである。

 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl…」

 

 

「っ!?――まさか、この歌って…」

 

「調ぇーーー!!!」

 

 その聞き覚えのある歌詞に驚愕する響。そしてもう一人、切歌は絶望の未来を想像し調に手を伸ばすが…。

 

(これが私達に…私にしかできない事。だから!)

 

「ハハハハハ!! これならどうだぁ!!」

 

 調は止まらない。戦場には調の歌とウェル博士の笑い声だけが響いていた。

 

 

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≪…これ、ガリィのせい?≫

 

(そ う だ よ⦅全ギレ⦆)

(調ちゃんが大怪我したら責任取れよ⦅全ギレ⦆)

 

≪…ご、ごめんなさい?≫

 

(なんで疑問形なんですかねぇぇぇぇ!?⦅全ギレ⦆)

(地べたに頭をこすりつけるんだよ、あくしろよ⦅全ギレ⦆)

 

 なお、今更ながらにやらかしてしまった事を謝罪するガリィ。だがこれは許されない、声達は満場一致で怒っていた。

 

 

≪ガッ、ガリィを助けて響ちゃん!!! 主人公なんでしょ!?≫

 

 

(はぁ~~~⦅クソでか溜息⦆)

(ぺっ⦅軽蔑⦆)

(こんな時だけ頼るんじゃないよ馬鹿!⦅憤怒⦆)

 

 どうしようもなくなったガリィは響へと助けを求め出した、その情けなさと言ったら…。

 と、とにかくこのままでは調の命が危険であり、響に頼るしかない状況である。

 

 

「っ!!!」

 

 

≪や、やった! 偉いわ響ちゃん!ガリィのためにありがとう!⦅満面の笑み⦆≫

 

 その結果は…情けないガリィの願いは叶ってしまう。響が調の絶唱エネルギーを肩代わりし、空へと逃がす事に成功したのである。これにはガリィもニッコリであった。

 

(ちっ! 命拾いしよってからに!)

(悪運の強い奴め…)

(調ちゃんは無事みたいでよかったねぇ⦅安心⦆)

 

≪…でも響ちゃんが限界みたいね。無理しちゃって、もう…≫

 

(体が、光ってる…熱で)

(これは早くなんとかしないとマズいですよ!)

 

 響の体はとんでもない熱により発光していた。これは流石にマズいと焦る声達であるが…。

 

≪あいつらは撤退したわね。よし、やるわよアンタ達≫

 

(やるって…そうか!⦅察し⦆)

(許可! 今回は許可!!!)

(えっ、なになに!? 何をするの!?)

 

 切歌達が撤退したのを確認し、何かを行うと言うガリィは響のいる場所へと近づいて行く。

 

「響っ!!」

 

 そこで見たのは響に近付いて行く未来の姿だった、しかし…。

 

 

「そこの女! 止まりなさい!! 邪魔よ!!」

 

 

「っ!?」

 

 突然掛けられた声に驚き、思わず停止してしまう未来。そして一瞬の後…。

 

 

≪ガリィ特製の冷水よ! よーく味わいなさい!!≫

 

 

 

 とんでもない量の冷水が、勢いよく響へと降り注いだ。

 

 

 

≪撤退!撤退よアンタ達!! 転移結晶!転移結晶を掲げて! 早く撤退するのよ!!≫

 

(テンパるなら最初から準備してなよぉ!!)

(逃げろっ!逃げろぉぉぉ!!)

(未来さんがすごい顔してるんですけどぉぉぉぉ!?)

 

 

 なお、相変わらず混乱すると弱いガリィは逃げるのに手間取っていた。

 

≪あった!転移結晶…じゃない! 飴玉!これ飴玉! なんで袋から出てるのよぉぉぉぉ!!≫

 

 ちなみに帰還するのにいつもの倍の時間が掛かったものの、奇跡的にバレる事は無かった模様。悪運の強さは相変わらずなガリィであった。

 

 

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「これは…」

 

「なんだよこれ…」

 

 援軍として響の下へと駆け付けた翼とクリス。しかし現場へ到着した二人が見たのは、なんとも不思議な光景であった。

 

「おい! なんでこんな事になってんだよ!?」

 

「立花! 無事か!?」

 

 ギアが解除され倒れ伏している響を助け起こす翼、それに対してクリスは未来に状況の説明を求めていた。

 

 

「…水が、水が響に、降り注いで…」

 

 

「はぁっ…? 水?」

 

「雪音、話は後だ。早急に立花を治療しなければ」

 

「…分かった。 ったく、なんなんだよこれは…」

 

 そう語るクリスの見ているもの、それは水で濡れている響と水浸しになっている周囲の景色であった。

 

 

 





次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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