ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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 第四話です。

ガリィ一行が買い出しに行きます。




第四話

 

 

 チフォージュ・シャトーから転移したガリィ一行は、それなりに賑わっている街に到着していた。現在のガリィの服装は、スカートの下にレイアから借りた(無許可)物を履いている状態である。これで足の関節は隠せるため人形だとバレる事は無いだろう、ありがとうレイアさん。(無許可)

 

 現在の時刻は十一時過ぎ、買い物客や観光客で賑わっている時間帯であり、ガリィもその中にさりげなく紛れ込むことに成功していた。

 まぁ顔が病的に白いぐらいでほとんど人間にしか見えないので、わざわざ話しかけてくるような物好きはいないのだろう。

 

(で、何買いに来たのさガリィちゃん)

 

 謎の声達が聞きそびれていた事を聞くと、ガリィは歩きながら答えるのだった。

 

≪これから色々外で調べる事とかあるでしょ、それに必要な物を買いに来たのよ≫

 

(え、ガリィちゃん真面目に考えててびっくりなんですけど)

(キャロルちゃん絡みは真面目になるのか…)

(でもミカちゃん放置は許されませんよ!)

 

 そう、ガリィが考えていたのは、世界ぶっ壊す系幼女のキャロルをどうにかするための計画に必要な物資を調達することだった。

 

≪とりあえず、できるだけ目立たない服と顔色を隠せるもの、この二つは欲しいわね≫

 

(服は確かにガリィちゃんフリフリの着てるから目立つよねぇ…)

(顔色も真っ白だなぁ)

(この二つは必須やな)

 

≪他に必要な物思い付いたら言いなさいよ、アンタ達無駄に数だけはいるんだから≫

 

(他に何か…双眼鏡とか?)

 

≪ガリィの目で十分よ、却下≫

 

(う~ん、一期と二期に介入するなら色々思い付くんだけどなぁ…)

 

≪はぁ、使えないわね。じゃあ店に着くまでその一期だか二期だかの事でも話してなさいよ、何かの役に立つかもしれないし≫

 

(え、語っていいんですか!?)

(店に着いても話し続けるけどいいよね?)

(まずは主人公の立花 響ちゃんについて話すからしーっかり聞いててくれよ!)

 

 ガリィは急にテンション爆上がりの連中にイラっとしたが、ペラペラと語り始めてしまったので仕方無く黙って話を聞くことにしたのだった。

 

 そして謎の声達がペラペラ話し始めて二十分ほど歩いたところで、ガリィは地味な服を売っていそうな店を発見したのだが、まだ謎の声達は楽しそうに話し続けていた。

「フィーネが…」「エクスドライブが…」とか言っているのでおそらく一期の終盤に差し掛かっているのだろうが、それを知らないガリィはうんざりしながら(フィーネの動機もマスターと同じくらい意味分かんないだけど…)と思っていた。

 

(こうして月の欠片は消滅し、地球は救われるのでした!終わり!)

(あ、装者の皆はちゃんと生きてるから心配しないでね)

 

 ようやく一期が終わったらしい、うんざりするガリィであったがその手にはいくつかの紙袋が握られていた。そう、この連中は店にいる間ずっと話し続けていたのだ。最終決戦の盛り上がりを迷惑なくらいガリィに熱く語り、謎の声達は大満足である。

 

≪本当にずっと語ってたわねアンタ達…≫

 

 会計を済まし外に出たガリィは次の店に向かおうとするが、(感想聞かせてよ!)とこいつらがうるさいので一旦ベンチに腰を落ち着け、一期の感想を話し始めるのだった。

 

≪…まず、フィーネ、うちのマスターより狂ってるんだけど≫

 

(あ、愛は人を狂わせるから…⦅精一杯のフォロー⦆)

(いやキャロルちゃんもいい勝負してると思うよ)

 

≪で、主人公…立花響だけど、気に入らない≫

 

(なんでや!ビッキーめっちゃええ娘やんけ!)

(ガリィちゃんとは正反対だからなぁ)

 

≪趣味は人助け、話をすれば分かり合える…アハハハハ!頭の中はきっとお花畑なんでしょうね≫

 

(頭の中で高笑いとか器用やなぁキミ)

(私達に寄生されてるガリィちゃんも大概頭お花畑だと思うゾ)

 

≪で、残りの装者はどうでもいいわ、問題は風鳴弦十郎、コイツよ≫

 

(あぁ~、OTONAかぁ)

 

≪アンタ達嘘言ってんじゃないの、ただの人間なんでしょ?≫

 

(嘘…だったらいいね…⦅遠い目⦆)

(ノイズを…ノイズをぶつけるのです…それしか勝機はありません…)

(まぁ機会があれば見に行けばいいじゃない、そして絶望しよう)

 

≪チッ、マジでそんな面倒臭いのがいるのか…まぁいい、とりあえず化粧道具買いに行くわよ≫

 

 腰を上げて歩き出したガリィであったが、実はこの時点で彼女はまだ風鳴弦十郎の戦闘力を信じていない。謎の声達が盛り上げるため話を盛ったと思っているのだ。

 後日その戦闘力を目の当たりにする機会があるのだが、その時彼女はどう思うのだろうか。

 

(錬金術師でも無いただの人間がそんな力持ってるわけないでしょうが、作り話が下手ねこいつら)

 

 知らぬが仏である。

 

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(で、マリアさんが「私たちはフィーネ!そう、終わりの名を持つ者だ!」ってライブ中に言うんだよ)

 

 ガリィはうんざりしていた。なぜなら歩き始めてすぐに謎の声達が二期の内容をそれはもう楽しそうに話し始めたからだ。

(マリアって誰だよ…)とガリィは思っていたが、「あなたの将来の因縁の相手です」と言ってもこの時点ではさっぱり意味が分からないだろう。 

 

 それから三十分程立っても、まだ謎の声達は二期の話を語り続けていた。ガリィは既に化粧道具を手に入れており、帰路に就くところであった。

 

(で、ビッキーが「こんなの脱いじゃえ!未来ー!!」って未来さんを捕まえて神獣鏡の放った光に突っ込んだんだよ)

(結果ミクちゃんは無事&神獣鏡の特性によって響ちゃんの体を蝕んでいたガングニールの破片も消滅!)

(やったぜ)

 

≪ご都合主義が過ぎる…あと小日向未来が怖いんだけど≫

 

 現在は二期の十話まで進んでいるらしい。

 ガリィは都合が良すぎるとバッサリ切り捨てるが、こうでもしないと主人公が死んでしまって放送事故になってしまうのだからどうか納得して頂きたいものである。

 

(未来さんは少しだけ愛が深いだけの良い子だよ、本当だよ!⦅目逸らし⦆)

(死にかけてた親友を救ったヒーローやぞ!⦅結果論⦆)

 

 謎の声達がフォローすればするほど、ガリィの中で小日向未来は要注意人物としてのランクが上がっていく。

 フィーネといい小日向未来といい愛が重い人間は恐ろしい、ガリィはそう結論付けるのだった。

 

「可愛いお嬢ちゃん、一つ買って行かないかい?」

 

 そんなガリィ一行に声を賭けたのは、屋台でりんご飴を売っている老人だった。

 ガリィはキャロルによって作られた高性能な人形ではあるが、流石に味覚は搭載されていない。よってりんご飴を見ても何も思わないので、そのまま通り過ぎようとはしたのだが、(ガリィちゃんりんご飴買ってあげようよ!)(甘くておいしいよ~)と謎の声達に言われ、思わず足を止めてしまったのだった。

 

≪アンタ達うっさい、人形のガリィがりんご飴買ってどうすんのよ≫

 

(り、りんご飴は見ても楽しめるお菓子だから…⦅反論⦆)

(おじいさん「逃がさん…貴様だけは…」)

 

 立ち止まりはしたが何も言わないガリィに、おじいさんは悩んでいると思ったのか「ほほ、綺麗でどれにするか悩むじゃろう?」と人の良さそうな笑顔で言ってきた。

 

≪…この老いぼれは何言ってんの?≫

 

(どれにするか悩んでるように見えたんじゃね?)

(買ってあげれば?それが多分一番早いと思うんだけど)

 

 なんだかもう面倒臭くなったガリィは、一言「…これにするわ」と言って一番シンプルなものを買い、りんご飴を受け取ると足早にその場を立ち去ったのであった。

 

≪で、どうすんのよこれ。捨てていい?≫

 

(もったいないから食べて見たら?)

(ガリィちゃんの歯ギザギザだから簡単に噛み砕けそう)

(今のガリィちゃんなら奇跡的に味覚が生えてるかもしれない⦅適当⦆)

 

 りんご飴を捨てると主張するガリィであったが、食べろ食べろと頭の中でうるさい連中が言うので、≪はぁ、人形に味覚が生えるわけ無いでしょうが…≫としぶしぶ口にリンゴ飴を含むと、

 

 

(((あま~~~い!!!)))

 

 

 なんと、奇跡が起こったのだ。

 

 

≪………は?≫

 

 

 そう、ガリィ以外に。

 

 

(ガリィちゃん甘いよ、おいしいよ!)

(久しぶりに感じる甘さ、最高やで)

(あれ、ガリィちゃん?)

 

 りんご飴の甘さにテンションが上がる声達だったが、ガリィの様子がおかしい事に気付く。

ガリィは甘いお菓子が実は苦手だったのだろうか、そう声達がざわついているとガリィは消え入りそうな声でこう呟くのだった。

 

「味…しないんだけど…甘いってこれでいいの…?」

 

(えっ)

(これはいけません)

(ガリィちゃん人形だから…⦅無慈悲⦆)

 

 そう、ガリィは何も感じなかった。甘いも辛いも無く無味である。

謎の声達もこれには絶句していた。寄生している彼らに味覚があるのに、宿主のガリィにはこの仕打ちである。

 いくらパワーアップしても人形は人形、無慈悲な現実であった。

 

≪…さ、マスターの所に戻るわよ、ミカちゃんも待ってるんだから≫

 

 ガリィはそう言うと足早に歩き出した。

寄生虫の方が宿主より優れているという事実を認めるわけにはいかない、ガリィはこの話を無かった事にしようとした。

 

(アッハイ)

(ガリィちゃんりんご飴食べようよ)

(ガリィの分まで私達が味わってあげるからさぁ⦅煽り⦆)

 

≪………≫

 

(ガリィちゃん?)

(おーい、どうしたんですかー?)

 

 無かった事にしたいガリィであったが、りんご飴を食べたい声達がうるさいので、その要望を叶えてあげることにした。

 

≪いいわよ、食べてあげる(ニタァ)≫

 

(あの…ガリィちゃん?)

(イヤ~な予感がするゾ)

 

 不穏な空気を感じ取る声達であったが、彼らは声を届ける以外無力であるためガリィが何をするのか戦々恐々としていることしかできないのであった。

 

 そしてガリィは口を大きく開けると、

 

「ガリガリバリボリガリバリっっ!!!!!」

 

 一気にりんご飴を噛み砕いた。

 

 ガリィの人形生でギザギザの歯が初めて役に立った瞬間である。

 

(あぁぁぁぁ!もったいない甘いもったいなぁぁぁい!)

(んまぁー!なんてお行儀の悪い娘なんざましょ!!)

(これがオートスコアラーの力なのか…⦅戦慄⦆)

 

≪ふぅ…スッキリしたわ。さ、戻るわよ≫

 

(う~ん、この畜生)

(まぁ目的は全部達成できたから)

(りんご飴もおいしかったしな)

 

 なんだかんだで目的は果たせたので後はキャロルの下に戻るだけだけである。

畜生行為で少し気分が晴れたガリィは人気の無い路地に入ると、転移結晶を使いキャロルの居城へと帰還するのであった。

 

 

(そういえばさ、ガリィちゃん)

 

≪何よ≫

 

(ミカちゃん放置してまでわざわざ今日行かなくても良かったんじゃないかなって…)

(あっ)

(ちょっとガリィさん!どういう事なんですか!?)

 

≪……善は急げって言うでしょ≫

 

(うーん、この畜生)

 

 

 次回 ミカ待望の補給 に続く

 

 





 マリアさんがガングニールのギアを纏っていた時のマント、便利すぎやしませんかね…



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