ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第四十話です。




第四十話

 

 

 ガリィ・トゥーマーンは東京スカイタワーへと足を運んでいた。

 

≪ふふ、楽しんでらっしゃい♪ 嵐の前の一時をねぇ!⦅畜生⦆≫

 

(とうとうこの日が来てしまいましたね…⦅戦慄⦆)

(響ちゃんが助かるには必須とはいえ大丈夫だろうか…⦅心配⦆)

(ガリィのサポートもあるし大丈夫やろ⦅適当⦆)

(逆に心配なんですがそれは…⦅反論⦆)

 

≪響ちゃんってば嬉しそうにしちゃって、微笑ましいわねぇ♪≫

 

(ソッスネ)

(この後が無ければほのぼの回なのに…)

 

 ガリィの視線の先には、並んで歩く響と未来の二人の姿が見えていた。どうやら二人で遊びに来たらしい。

 

≪正確な日付は分からなかったけど、アンタ達が二人の服を覚えてくれてて助かったわ≫

 

(役に立ててうれしいゾ)

(なのでガリィちゃんも役に立って、どうぞ)

 

 響達が東京スカイタワーに遊びに行く日を声達は知らなかったが、彼らの中に当日二人が着ている服を覚えていた者がいたのである。なのでガリィはそれほど苦労する事無く、今日を迎えることができたのだった。

 

≪はいはい、マスターに許可ももらったしある程度はガリィが助けてあげるわよ。 …さて、そろそろガリィ達も移動しましょうか≫

 

(タワーの外で見届ける? それとも…)

(中で不測の事態に備えるか、だね)

 

≪う~ん、そうねぇ…≫

 

 事態を見届ける場所の選択を迷うガリィ。その選択は果たして…。

 

 

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「ねぇねぇ未来、ほんとに、ほんとに見てないの?」

 

「…またその話? 見ていないって何度も言ってるじゃない、もう」

 

「そっかぁ~…ねぇ未来、どう思う? あの子だと思うよね、ねっ?」

 

「そんな事言われても知らないよ、私はその子の姿を見ていないんだから…」

 

 響と未来の二人は、スカイタワーの内部に設置されている水族館に足を運んでいた。

 今の話題は例の魔法使いについてのようだが、未来は既に散々その話をされていたようでうんざりしたような表情だった。

 

「だって未来は新しい友達できたんでしょ~? だから私も魔法使いさんと友達になりたいんだよ~!」

 

 同一人物である。 もう一度言う、同 一 人 物 である。(念押し)

 

「もう、滅茶苦茶言うんだから…。ガリィちゃんの事は響を紹介しようとしてもタイミングが合わないんだから仕方ないじゃない」

 

「二人で秋桜祭を楽しんじゃってさぁ…いいなぁ~、いいなぁ~!」

 

「ふん、響が私を置いていったのが悪いんでしょ。 でもそのおかげで二人で楽しめたんだから、響には感謝してあげる♪⦅挑発⦆」

 

「ななっ、何それ!? うわ~ん!未来が私をいじめるよぉ~!!」

 

 和やかに休日を満喫している二人。響も悲壮感などは感じさせない様子で、未来は内心安堵していた。

 

「…響、大丈夫なの? 痛いところとか…無理してない?」

 

「おりょ? なになに、どうしたの?」

 

 しかしやはり心配なのだろう、突然心配そうな表情になった未来に驚いた響。体の調子は大丈夫なのだろうか…。

 

「ううん、響が元気すぎて少し心配になっただけ。大丈夫ならいいんだ」

 

「もー、心配性だなぁ未来は~。私はそれより翼さんの方が心配だよぉ…」

 

「確かに、そうだね…」

 

 病室を退出した日から数日経っているが翼はいまだに落ち込んだ様子を見せており、響はそれを心配していたのだ。

 

「響が元気なところを見せていれば、きっと翼さんも安心してくれると思うよ? だから…」

 

「ん~? 私?」

 

 一旦言葉を切り響の目を見つめる未来。彼女の言いたい事とは…。

 

 

「もう絶対に無茶な事はしないで、お願い」

 

 

「――っ! 未来…」

 

 その真剣な表情と声に圧倒される響。未来が如何に響の身を案じているか、響はそれを身を持って理解したのだった。

 

「そっ、その…ど、努力します!」

 

「――はぁ…もう、響ったらほんと強情なんだから…」

 

 しかし響の答えはコレであった、響の返答に呆れたような様子の未来、どうやら響の答えに毒気を抜かれてしまったらしい。

 

「ごめんね未来…」

 

「ふん、謝ったって許してあげないんだからね。 ――あ~、上の階で期間限定ケーキフェアやってるんだって。食べたいな~、どうしよっかな~?(チラ見)」

 

 深刻そうに謝る響だが、未来はそれを無視して壁に貼られているポスターの内容をわざとらしく読み上げる。どうやら上の階でケーキのフェアが開催されているらしい。

 

「ケーキ…? ――はっ、はい! 立花響、奢らせて頂きます!」

 

 未来のわざとらしい様子にさすがの響も察したようだ。ご機嫌を取るため未来にケーキをご馳走する事にしたようだ。

 

「あはは、冗談だよ♪ ほら、一緒に食べに行こう」

 

「未来…ありがと~♪」

 

 未来は響へと手を差し出し、響はその手を握る。そして二人は上の階へ向かうのであった。

 

「よ~し! いっぱい食べるぞぉー!」

 

「こーら、お給料もらってるからってそんなに食べたらお腹壊しちゃうよ?」

 

 戦いの無い平和な時間を満喫する二人。だが、残酷にも波乱の足音が近づいている事を二人はまだ知らない。

 

 

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≪…始まったみたいね≫

 

 そう脳内で語るガリィの目には、スカイタワーへと向かうノイズの群れが見えていた。

 

(結局外で待機する事にしたんだねぇ)

(ガリィちゃんの事だからてっきり突入すると思ってたゾ?)

 

 声達の言う通りガリィは外でその事態を見届けており、突入すると思っていた声達は拍子抜けした様子であった。

 

≪馬鹿ね、中にいたら響ちゃんに会っちゃうかもしれないでしょうが≫

 

(あっ、そっかぁ)

(一応ちゃんと考えてたんだねぇ⦅安心⦆)

 

 ガリィは響と会ってしまう事を警戒していたようだ。声達は彼女が一応ちゃんと考えていた事に安心していた。

 

 

≪だから今から突入するわよ♪ ガリィに続きなさいアンタ達!≫

 

 

(ファっ!?⦅予想外⦆)

(続きなさいも何も私達は付いていくしかできないんですがそれは…⦅戦慄⦆)

(今回も駄目みたいですね…⦅諦め⦆)

 

 故に次のガリィの言葉に声達は戦慄した。時間差で内部に突入、それがガリィの選択であり彼女が思う最適解だったのだ。

 

≪待っていなさい二人とも、今すぐガリィが駆け付けてあげるわ!≫

 

 

 

 お願いだから来ないでください、なんでもしますから!(届かぬ願い)

 

 

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 …どうして、こんな事になったのだろう。

 

「響…」

 

 展望台で響と外の景色を見ていた時、急にノイズが現れて周囲はパニックに陥った。逃げる人達の群れ、そんな中私達は親とはぐれた子供を見つけて…。

 

「どうして…」

 

 子供の親を見つけて安心した私達、だけど…。

 

 

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 子供を親に引き渡し見送った私達は避難しようとした。だけど…。

 

「っ!!」

 

「響っ!」

 

 突然爆発が起こり、響の頭上へと落ちてくる瓦礫を見た私は響を守ろうと駆け寄り、そして…。

 

 

「…なに、これ…」

 

 その不思議な現象を見た。私達を守るように出現した半透明のナニカ、それはまるで瓦礫から私達を守っているようで…。

 

「…未来! 大丈夫!?」

 

「…う、うん…」

 

 響が顔を上げた頃にはそのナニカは消えていた。魔法使い…私の頭にはその言葉がよぎったが、今はそれどころではない事に気づき、後回しにする事にした。

 

「と、とにかく今は早く逃げないと! 響、こっちに――」

 

「っ!? うわわわわ!」 

 

 とにかく今は避難を、私がそう思い響に声を掛けた瞬間地面が崩壊し、響が外に投げ出されてしまった。慌てて追いかける私、そして…。

 

「うっ…くっ…」

 

「――未来! ここは長く持たない!手を離して!!」

 

 私は響の手を掴む事に成功していた。とはいえ腕一本で人間を支えるのはやはり厳しいようで、私は自分の腕が長く持たない事を内心では理解し焦っていた。

 

「駄目! 今ここで響を守れるのは私だけなの!だから、だから!」

 

「未来…」

 

 そう、それでもこの手を離すわけにはいかない。ここには翼さんもクリスもいない、そして魔法使いは姿を見せない…ここには、私しかいない!だから!

 

 私は決意を込め響の手を強く握り直す。だけど…。

 

 

 響は手を離して行ってしまった。弱い私に響を守る事は、できなかった。

 

 

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「どうして…」

 

 私は一人、思考する。もしもここにいたのが翼さんだったら?クリスちゃんだったら?

 

「…きっと、響を」

 

 守る事ができた。私と彼女達の違い、それは…。

 

「…わたしは、よわい」

 

 そう、私は弱い。ガリィちゃんのように心は強くない、翼さんやクリスちゃんのような力もない。

 

「あはは、役立たずじゃない、私…」

 

 あの時、響を守るためならどんなものでも拾うと決めた。だけど、そもそも弱い私に拾えるようなもので響を助ける事などできるはずが無かったのだ。

 

「こんな体たらくじゃガリィちゃんに怒られちゃうかな、あははは…」

 

 楽しくも無いのに笑いがこみあげて来る。あはは、あはははは…。

 

 

 

「死にたくなければ来いっ!」

 

 

 

 そんな事を考えていた私に掛けられた声、それは…。

 

 

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 ガリィ一行はタワーから離脱するマリアの姿を見届けていた。

 

≪…行ったわね、ガリィ達も撤収よ≫

 

(了解…)

(今は耐える時…)

 

≪…そうね、ここからはガリィも本気でやるわ≫

 

(頑張って!)

(期待してるゾ!今回は本気で!)

 

 どうやらここからは本気のガリィが見れるらしい。なお今までは…⦅悲しみ⦆

 

≪はぁ!? アンタ達も手伝いなさいよ!≫

 

(エネルギー供給と口を出すしかできないんですがそれは…⦅悲しみ⦆)

(ガリィちゃんを応援すればいいんじゃない?)

 

 突然声達に食って掛かるガリィ。彼らにできる事が少ないというのはガリィも分かっているはずなのだが…。

 

≪そこのアンタ、正解よ! ガリィを良い気分にさせるのがアンタ達の仕事、分かったわね♪≫

 

(褒めるところ、褒めるところなぁ…⦅難問⦆)

(あるでしょ!ほら、えっと…パス!⦅思考放棄⦆)

(無いです⦅一刀両断⦆)

 

 ガリィの言う手伝いとはご機嫌取りの事であったが、この難問に声達は苦戦していた。ガリィの普段の行いの賜物である⦅残念⦆

 

≪…やる気無くなっちゃったわ、もうお家で引き籠ろうかしら…≫

 

(ま、待って! 今考えてるから待って!⦅必死⦆)

(ひ、一晩ください! 結果を出して見せますよ!⦅提案⦆)

 

≪そう…≫

 

 もはやガリィのテンションは地に落ちていた。彼女はこの調子で響を、そして未来を助ける事ができるのだろうか、果たして…。

 

 





次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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