ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第四十一話です。

多分読まなくてもいい部分です。それでも読んで頂ける方はどうぞ。




第四十一話

 

 

≪さてと、現状とこれからの話をしましょうか≫

 

 シャトーへと帰還したガリィ一行は、玉座の間でキャロルに報告を済ませた後、定位置で作戦会議を行っていた。

 

≪未来ちゃんは生存しているものの、神獣鏡の装者となり二課の敵として現れる。そうよね?≫

 

(うん)

(そうだね)

 

≪一方テロリスト陣営は米国と組む事に失敗。その影響でなんとか博士となんとか教授の亀裂は深くなっている、ってところかしら?≫

 

(多分ね)

(ウェル博士とナスターシャ教授な)

(私達の知ってる通りならそうだよ)

 

≪切歌は自分をフィーネの器と勘違いして空回り。そして調は自分がフィーネの器だとは気付かずに普段通り生活している≫

 

(ブラボー!全問正解!)

(ガリィちゃん、フィーネについてはいいの?)

 

 声達はガリィがフィーネの器である調に対して何か仕出かさないか心配していた。一期の最後、月の欠片の件が理由である。

 

≪今度こそ完全に死んでくれるんでしょ? なら問題無いわ、ガリィにはあんな過去の亡霊に構ってる暇なんてないんだから≫

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(ほっ…)

(なら今は響ちゃんと未来ちゃんを助ける事に集中だねぇ)

 

 ガリィにとってはフィーネの存在は既に過去のものとなっているらしい。声達は安堵していた。

 

≪そうね、あの空回りコンビも心配だけど後回しでいいでしょ。という訳で分かったわねアンタ達、次が正念場よ≫

 

(オッケー)

(必要な物があれば買っておかないとねぇ)

 

≪う~ん、何が必要かしらね…?≫

 

(えーっとね~…)

 

 こうしてガリィ一行は準備を整えていく。親友同士の争いに道化が加わる事で何が起きるのか…戦いの時は近い。

 

 

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 マリア・カデンツァヴナ・イヴは捕縛した少女の側で監視をしていた。

 

「助けていただいてありがとう、ございました…」

 

 うつむいたまま感謝の言葉を呟く目の前の少女。だがマリアはその事よりも彼女に聞きたい事があった。

 

「…貴方、あの状況でどうして手を伸ばさなかったのかしら?」

 

 マリアが少女に声を掛けた時、この少女は手を伸ばさず絶望したような顔でただうつむいていた。それに気付いたマリアが慌てて彼女を担ぎ上げ、難を逃れる事には成功したのだが…。

 

「手を煩わせてしまって、ごめんなさい…」

 

「あなたを責めているわけじゃないんだけど…私はただ――」

 

 

「そこまでですよ、マリア」

 

 

 様子のおかしい少女に語り掛けるマリアだったが、どうやら横槍が入ったようだ。会話に割り込んだその人物とは…。

 

「ドクター…」

 

「僕にも彼女と話をさせてくれませんか? そう、とっても重要な話を、ね」

 

 割り込んで来た人物、それはドクターウェルであった。警戒する少女に対して、彼は人の良さそうな笑顔を向けて近付いて行く。

 

「この子を助けたのは私だけれど、ここまで連行する事を指示したのは貴方よ。一体何のために…?」

 

「勿論、今後の計画遂行の一環ですよ」

 

 そう言うと博士は更に少女へと近づいて行く。そしてとうとう目の前に少女を捉えた博士は、本題を切り出すのであった。

 

「少し、お話しませんか? きっと、貴方の力になりますよ?」

 

 優しい口調で少女へと語り掛ける博士。しかしこの時、少女の目が危険な光を放ったことに彼は気付かなかった。

 

 

「…こんな、こんな私に力を、貸してくれるんですか?」

 

 

「えっ、えぇ…もちろんですよ(なんだこのガキ、気味が悪い…)」

 

 少女の予想外の反応に僅かに動揺する博士。しかしそれでも彼は気付かない、気付く事が、できない。

 

「話を、聞かせてください…」

 

「――おっと、そんな簡単にいいんですか?」

 

 少女の言葉にさすがの博士も困惑気味である。まさかこんなトントン拍子に話が進むとは思っていなかったのだろう。

 

「はい…(この人は、悪人かもしれない。私を騙そうとしているのかもしれない、だけど…)」

 

「――貴方! そんな安易な――」

 

「し・ず・か・に! 今は私とこの娘が話しているんです、部外者は黙っていてくれませんかねぇ! それともぉ、貴方は計画の邪魔をしたいのですかぁ!?」

 

 マリアを一喝し黙らせる博士。彼にとっては説得する手間が省けるチャンスなので邪魔をされたくないのだろう。

 

「くっ…」

 

「すいませんねお嬢さん。それで、どうしますか?」

 

 再び少女の方に振り返り笑顔を向ける博士。しかし、そんな事は少女にとってはもはやどうでもいい事なのだろう。まるで気にしていない様子で少女は言葉を発するのだった。

 

 

「聞かせてください。私に、力を貸してください(きっとこれは、役立たずな私にとっての最後のチャンス…だから)」

 

 

 少女は博士の目を真っ直ぐに見ながらその答えを告げる。それを見た博士は一瞬珍しいものを見るような目で少女を見るが、すぐに優しい笑顔へと戻り話を切り出すのだった。

 

「ふぅむ、話を聞いてもらうだけでも大変かと予想していたのですが…まぁいいでしょう。ではよーく聞いていてくださいね、私の話を」

 

「…」

 

 こうして話を切り出す博士、それを険しい表情で見つめるマリア。そして…。

 

 

「お願いします(私は拾う。そう、響を守れるなら私は…なんでもしてみせる)」

 

 

 少女を絶望の淵から掬い上げたもの、それは悪魔の囁きだった。

 

 





次回:神獣鏡

畜生と主人公、少女を救うため二つの力が共鳴する。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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