第四十二話です。
誤字報告して下さっている方々、本当に助かります。
この場にて感謝を、ありがとうございます。
≪はぁ、まだかしら…。もう海の中は飽きちゃったわよ…≫
(こればっかりはねぇ…)
(あ、綺麗な魚)
ガリィが現在いる場所、それはなんと海の中であった。
≪潜水艦なんかで移動してんじゃないわよ、全く…≫
そしてガリィは潜水艦の外部に腰を下ろしていた。そう、二課仮設本部である。
(今回は場所が全く分からなかったからなぁ…)
(キャロルちゃんが調べてくれてよかったね)
ガリィ一行には今回の戦闘が起こる場所の特定ができなかった。なのでガリィはキャロルに二課仮設本部の停留している場所を特定してもらい近場で監視していた。そして動き出したところで自分も海に入り共に移動する事にしたのである。
≪…あら、や~っと出てきたわね。それじゃ行くわよ、アンタ達≫
(((りょ~か~い)))
ガリィの視線の先には海上へと浮上して行く二人の装者が見えていた。彼女はそれを見て自分達も動く事を決め、装者達とは別のルートで海上へと向かうのだった。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
ガリィが海上へと浮上した時、そこには衝撃の光景が繰り広げられていた。
≪えぇ…せっかく上がって来たのにもう終わってるんですけど⦅不機嫌⦆≫
(まぁまぁ…)
(ここから! 多分ここからが本番だから!)
海中から鼻より上だけを出し状況を確認しようとしたガリィ。しかしそこにあったのは、ギアを纏っていない状態でクリスに羽交い絞めにされている調、そして喉元に剣の切っ先を突きつけられている切歌の姿であった。
≪本番ねぇ…。まぁ未来ちゃんの事だからたいした――――…これは、歌?≫
(…あぁ、やっぱり出てきちゃった…⦅震え声⦆)
(み、みんな!予定通りだから喜ぼう!⦅震え声⦆)
(そ、そうだよ⦅震え声⦆)
どうせ今回も大したことないんでしょ。そう言いたげな表情のガリィの耳が捉えたもの、それは歌であった。
そして次の瞬間、ナニカが装者達の側に着地する。その衝撃で発生した煙の中から姿を見せたもの、それは…。
「未来…」
響が司令室のモニターで見たもの、それは見た事の無いシンフォギアを纏った小日向未来の姿だった。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
「…」
「小日向っ!?」
「なんで…そんな恰好してるんだよっ…!」
二課の装者達は混乱の極みにあった。行方不明であるはずの小日向未来が突然目の前に現れただけでなく、その身に未確認のシンフォギアを纏っていたのだ。この状況では混乱しても仕方ないだろう。
「あの装者は、リンカーで仕立てられた消耗品。私達以上に急ごしらえな分、壊れやすい…」
クリスに捕縛された調が未来の状態を語るが、それでも納得などできるわけがない。装者達、そして二課の面々は混乱したまま動く事ができないのであった。
「――っ! こういうのは私の仕事だっ!」
膠着状態の中、最初に動いたのはしびれを切らしたクリスであった。彼女は調を手放し未来へと攻撃を開始、彼女に弾幕を浴びせようとするが…。
「…」
「なっ!?待ちやがれ!! (速い!?)」
未来は地面を滑るように高速で動き、更に動きに跳躍を混ぜる事でその全てを回避する。クリスはその俊敏な動きに内心驚愕するが、それでも未来の背を追いかける事を優先し駆け出すのだった。
「(これで…止まれ!!)」
歌いながら未来へ向けガトリング砲を斉射するクリス。そしてその何発かが未来へと着弾し、クリスは動きを止める事に成功したと確信するのだが…。
「…こんなもの」
「――っ!?(なんでっ!?)」
未来は弾幕が当たっても微動だにせず、それどころかクリスへと反撃を繰り出したのだ。なんとか回避する事はできたものの、クリスの表情は困惑一色に染まっていた。
「(こいつ! なんで怯みもしないんだよ!)」
「…」
その後もクリスは撃ち続けるが、未来はいくら被弾しようとも怯まずクリスへと撃ち返す。そしてそれが何度か繰り返された後…。
「――っ!? ぐぁっ!?」
「…」
遂にクリスが被弾する。それを見届けていた二課の面々は驚愕していた。なぜ戦闘経験の無い未来にクリスが押されているのか、そして未来はなぜ攻撃に怯みもしないのか…彼らは理解不能な状況に手を打てないでいた。
「――ちっ!」
たまらず態勢を立て直そうと後退するクリス。それを見つめる未来の反応は、これまたクリスの予想外なものだった。
「なんだよそれ…アタシを舐めてんのか!?」
「――冷静になれ雪音、今の小日向は恐らく正気を失っている!」
「…」
未来はクリスをすぐには追わず、ゆっくりと彼女達がいる船の方へと移動を始めたのである。その余裕さえ感じさせる行動に激昂するクリス、だが未来の様子がおかしい事に気付いた翼が彼女を宥めようと声を掛けるのだった。
「クソ! どうしちまったんだよあいつ!?」
「分からない、だが…」
状況が分からず混乱したままの装者達。
「どうやら考えている暇は無さそうだ」
翼がそう呟いた直後、未来が跳躍し再び目の前に現れる。この状況を覆す手は…翼は必死に思考を巡らせるが、再び未来が動き出すまでその答えが出る事は無かった。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
≪えぇ…⦅困惑⦆≫
ガリィは困惑していた。その理由は、戦闘初心者であるはずの未来が予想外の強さを見せていたからである。
≪ねぇアンタ達、何よアレ聞いてないわよ≫
(…⦅絶句⦆)
(そんな…⦅呆然⦆)
(なんで、なんで未来さんが…⦅混乱⦆)
≪…? アンタ達、どうしたのよ?≫
『こんなに強いなんて聞いていない』と声達を非難しようとしたガリィだが、声達の様子がどこかおかしい事に気付く。声達は絶句する者や呆然とする者などが続出しており、ガリィは深刻な事態が起きている事に気付いたのだった。
(こ、こんなの原作には無かった)
(未来ちゃんの強さが、おかしいんだよガリィちゃん…⦅震え声⦆)
(なんで、なんでクリスちゃんを圧倒してるんだよ!)
≪――なんですって? アンタ達詳しく教えなさい、早く!!≫
何かが起こっている事を確信したガリィは、声達の知識と現状の違いを確認するため慌てて説明を要求するのだった。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
戦況は悪化の一途を辿っていた。未来によって放たれる聖遺物殺しの光線により、装者達は手も足も出ず回避する事しかできず、更にウェル博士がソロモンの杖を使い船上にノイズをばら撒いていく。打つ手が無い装者達、そしてあっさりと消えていく命、状況は正に最悪の一言であった。
「…」
そんな中、未来が突如戦場を離れ始める。優位を捨ててまで未来が向かった場所、そこは…。
「――一緒に帰ろう、未来!」
立花響、彼女にとって最も大切な人がそこにいた。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
≪状況は分かったわ。でも馬鹿ねアンタ達、そんなに焦る事なんて何もないじゃないの≫
(そ、そうかな?)
(ガリィちゃん、ここからどうすればいいかな?)
声達の話を聞き終えたガリィであるが、彼女は声達と違いどこか余裕を感じさせていた。
≪つまり未来ちゃんにその光線を撃たせて集束させたものを、響ちゃんごとぶつけちゃえばいいんでしょ? 簡単じゃない≫
(いや、未来さんが何故か強くなってるからそれが難しいんだって!)
(響ちゃん、負けちゃうかも…)
楽観的なガリィに対して危機感を抱く声達。しかしガリィはそんな彼らを鼻で笑い、こう言ったのだった。
≪本当に馬鹿ねアンタ達、向こうが強化されたならこっちも戦力を増やせばいいだけでしょうが≫
(そ、それって…)
(もしかしてガリィちゃんが戦う気なの!?)
(駄目だよ!そんな事したら一発でバレる! この戦いは司令室のモニターで見られてるんだ!)
ガリィのとんでも発言に驚愕する声達。しかしガリィは余裕の表情を崩さない、彼女の思惑とは…。
≪はぁ、ここがどこか忘れたのかしら?≫
(ここ…海、だよね?)
(ガリィちゃんにとっては得意なフィールドだと思うけど…)
やはりガリィの考えが分からない声達、どうやら海が関係しているようだが…。
≪想い出使い放題が初めて戦闘で役に立つわね♪ さぁ、派手にやるわよ!≫
声達に答えを返さず何かを始めるガリィ。彼女のそれは戦況を覆す一手となるのか、果たして…。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
「っ!? (未来のこの戦い方はなに!?どうして避けないの!?)」
未来を説得しようとした響だったが、失敗し現在は戦闘に突入していた。歌いながら果敢に攻撃を繰り出し続ける響、しかし内心では未来の戦い方に戦慄していた。
「…痛くない」
「…えっ?」
一旦距離を取った響だが、未来の呟いた言葉によって再び動揺させられてしまい、動きを止めてしまう。
「痛く、ないんだよ? あの絶望した時の心の痛みに比べれば、そして響の感じている痛みに比べれば…」
「――こんなもの、全然痛くないよ♪」
「――っ!?(そんな、そんなの…)」
涙を流し、それでも歪な笑顔で語る未来の姿に響は戦慄する。彼女が痛みを感じていない理由、それは体の痛み以上のものを知っているからであった。
「…響、もう大丈夫だよ。私がこの力で貴方を守る、だから…」
「…未来っ!?」
響を守るための力、そう語る未来は空中へと舞い上がり響を射程に収める。そしてクリス達を絶望に叩き落した光線を響へと放とうと…。
「(っ!? あれはダメだ!避けなきゃ)」
光線を避けようと一瞬遅れて空中へと飛び上がろうとする響。しかしその一瞬の遅れが命取りとなり、このままでは響に光線が直撃してしまう…その戦況を見つめる誰もが響の敗北を覚悟した時、それは起きた。
「うわっ! わわわわっ!!!」
響に光線が直撃する寸前、ナニカが響の体を持ち上げ空中へと逃がしたのだ。突然空中へと運ばれた響が慌てて下を見ると、そこには…。
「へっ、蛇…水の…?」
そこにいたのは半透明の大蛇であった。いきなり押し上げられた響は、その現実感の無い状況に体の痛みも忘れ驚愕していた。
「どうして、どうして…!」
一方、未来は激しく取り乱していた。ようやく響を守る事ができる力を手にしたというのに、邪魔が入った事で動揺したのだろう。しかしその様子は、彼女の精神が崩壊し掛けている事を予感させるものだった。
「わっ、私、上に乗ってるの!?」
響は大蛇の上で尻もちをついていた。よく見ると響の足元だけが凍り付いている事が分かる、どうやらそれが理由で響が座っても平気なようだ。
「…もしかしてキミ、魔法使いさんの…?」
「…」
水と言うキーワードで魔法使いが絡んでいると当たりを付けた響。しかし大蛇はその答えを返さず、代わりに未来の方を向き彼女と対峙する様子を見せるのだった。
「…手伝ってくれるの?」
「…」
大蛇の行動の意味に気付いた響がまた話しかけると、蛇は黙ったまま首を少しだけ縦に振りその意思を示す。どうやら響に協力するつもりらしい。
「どうしてどうして、どうしてぇぇぇ!!!」
「(未来も、そして私も限界が近い…)」
異常な様子の未来を見て危機感を募らせた響は、彼女を助ける事だけを考え決断する。
「お願い、私と一緒に戦って! 未来を助けて!」
そう響が叫んだ直後、大蛇は未来がいる方へと突撃を開始した。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
≪あらら、やっぱり想い出の消費量が半端じゃないわね…ま、どうでもいいんだけど≫
(怪獣だぁ…⦅遠い目⦆)
(二課のみんながどんな表情で見てるかメッチャ気になるゾ⦅好奇心⦆)
(エネルギー無限のガリィちゃんにしかできない戦術だよねぇ)
≪助けて…ね。はいはい分かってるわよ。未来ちゃんにも助けるって言っちゃったものね≫
ガリィは響が叫んだ直後、蛇を未来へと突撃させる。蛇を操作する彼女の表情は真剣であり、同時にどこか楽しんでいるようなものだった。
≪さぁ、かかって来なさい! ガリィが二人まとめて人間に戻してあげるわ!≫
主人公と魔法使い⦅畜生⦆、二つの力が少女を救うため動き出す。その先にあるのは悲劇か、それとも…。
主人公勢が真面目すぎてギャグができないじゃないか!いい加減にしろ!(半ギレ)
次回も読んで頂けたら嬉しいです。