第四十六話です。本日投稿分その1。
「――こうしてバビロニアの宝物庫は閉じられ世界に平和が戻ったのでした、めでたしめでたし♪」
「…」
「帰って来るのが遅いとは思っていたけど、そんな大事になっていたのねぇ」
「ガリィ、よくやった」
「アタシも戦いたかったゾ…」
現在、シャトー玉座の間では恒例の作戦会議が行われていた。今は丁度ガリィの報告が終了したところであり、ここからは全員で話し合いをする時間である。
「ガリィ、立花響についてだが」
(そりゃやっぱり気になるよねぇ)
(全世界に中継しちゃったから…)
まず話を始めたのはキャロルだった。彼女は響について何か気になる事があるらしい。
「あらあら、やっぱり気になるんですねぇマスター♪ いいですよ、なんでも聞いて下さい☆」
(なんでも答える⦅嘘を吐かないとは言っていない⦆)
(詐欺かな?⦅率直な意見⦆)
「…奴は神獣鏡の発した光に飲まれ、生還した。これに間違いは無いな?」
ガリィのテンションに軽くイラッとしたキャロルだがここはスルーを選択したようだ。なおこの程度はジャブですら無い模様。
「はい、光に飲まれた後は元気になっていましたよ。ただその後は装者では無くなっていたみたいですけど」
「俺が引っ掛かったのはそこだ。奴が鎧を纏った経緯については把握しているが…そもそも立花響は融合症例であり適合者では無かったはず」
(あ~、そこかぁ…)
(奇跡が起きたとしか言い様がないんだよなぁ…)
響がマリアのガングニールを自分のものとした経緯は全世界に中継されていたためキャロルも把握していた。しかし彼女はそれを見た上で困惑している事があるようだ。
「――マスター、立花響は適合者としての才能も有していたのでは?」
(さすがレイア姉さん、真面目な意見だ)
(でもそれもしっくり来ないんですよね)
(『奇跡』でいいじゃんもう)
「その可能性は否定できん。が、そうだとしても作為を感じる程によくできた…そう、まるで物語の主人公のようだ」
(正解!)
(さすがキャロルちゃんやで)
キャロルの感じていた疑問、それは響が適合者しか纏えないはずのギアを何故纏えたのかという事だった。レイアがそれについて自分の意見を述べるが、結局その結論は出なかったようだ。
「あらら、響ちゃんってばやっぱり主人公だったんですねぇ」
「そういえば、ガリィちゃんがそんな風に言っていたわね」
「そうだけど、ほとんど冗談で言ってたのにビックリだわ。それでマスター、結論は出そうです?」
「…いや、俺の話は終わりでいい。それで、次だが…」
(あ、もういいのね)
(結論が出ないからね、仕方ないね)
キャロルはこの事については結論が出ないと判断し打ち切る事にしたようだ。そして彼女が周りを見渡すと…。
「はいっ! 次はアタシがいくゾ!」
(あら、意外なところから手が)
(これはどんな質問が来るのかワクワクしますねぇ)
なんと手を上げたのはミカであった。あまり難しい話が得意ではない彼女は普段は聞いているだけなのだが今回は違うようだ。
「あら、ミカちゃんが話に付いてきているなんて珍しいわね。いいわよ、言ってみなさいな」
「えっと!アタシと戦えそうな奴はいたのカ!?」
(はぁ~⦅くそでか溜息⦆)
(いるわけねぇだろ⦅真顔⦆)
(キミは強すぎるんや…)
ミカの質問、それは六人の装者の中に自分といい勝負ができる相手はいるのかというものだった。期待を隠せない表情でガリィを見つめるミカだが、しかし…。
「いないわよ⦅即答⦆ あのね、ミカちゃんと互角に戦えるような連中ならそもそもガリィの助けなんていらないでしょうが」
「しゅん…つまんないゾ…⦅落胆⦆」
(かわいそう…)
(チューしたら多分ご機嫌になるゾ⦅経験則⦆)
ガリィの返答は無情にもNOであり、それを聞いたミカは残念そうにうつむきそのまま黙ってしまうのであった。
「しょうもない質問に時間を使っちゃったわね。それで、ファラちゃんやレイアちゃんはいいの?」
「私は特に無いわね」
「私も地味に気になるところは無い。が、これからの動きについては相談しておきたいと思っている」
(一期と比べるとトンデモ展開は少なかったからなぁ)
(まぁ仕方ないよね)
「あ~、それもそうね。マスター、準備が終わるまで後どのくらいかかりそうです?」
フィーネの時とは違いオートスコアラー達は特に気になる事は無いようだ。そしてレイアの発言により話題はこれからの事へと移って行く。
「そうだな、恐らく来春…いや、夏にずれ込むやも知れぬ」
(ここは原作と変わりなしだね)
(まだかなり先だなぁ)
「あらら、ガリィは雰囲気的にもう完成間近だと思っちゃってたんですけど…」
「ガリィちゃんがそう思うのも無理は無いけど、シャトーの建造にはデリケートな作業が多すぎるのよねぇ…」
「マスター以外には手を付けられない部分も多いからな」
「アタシは退屈だゾ…」
まずはシャトーの完成時期であるが、ガリィの予想とは違いまだ時間がかかるようだ。彼女とは違い建造に関わっているファラとレイアはなんとなく気付いてはいたようだが。
「貴様等の仕事は今迄と変更は無い。ガリィは監視と想い出の回収、他は俺の補佐を命じる」
(やばいぞ…)
(何も起こらない事が分かっているのに来年の夏まで監視を…?)
(そんな退屈にガリィちゃんが耐えられるわけないでしょうが⦅半ギレ⦆)
「了解しました」
「命令、承りましたわマスター。…あの、二人はどうしてそんな嫌そうなのかしら…?⦅困惑⦆」
これからの仕事をキャロルに命じられ了承するレイアとファラだが、彼女達は気付いてしまった、明らかに納得していない表情をしている人形が二体存在することに。
「監視に飽きたからよ⦅不機嫌⦆」
「退屈なんだゾ!⦅我慢の限界⦆」
(そうだよ⦅便乗⦆)
(オートスコアラーは主に絶対服従だったんじゃ…)
(それ、デマだよ⦅適当⦆)
『飽きたし退屈だから嫌』 二体の主張は実に分かりやすいものだった。
「拒否権など貴様等には無い⦅一刀両断⦆」
(知ってた)
(残当)
(キャロルちゃんもなんだか逞しくなってきましたね…)
そしてキャロルの返答も分かりやすいものだった。人形に拒否権など最初から無いのである。
「「そんなぁ~…」」
「あの、二人の役割を交換してあげ――」
(あっ)
(それは駄目だぁ…)
「ファラ、貴様はガリィが大人しく俺の補佐をつとめられるとでも? ついでにミカについても大人しく監視をできると思っているのか?」
「――あっ⦅察し⦆」
(気付いてくれて嬉しいです)
(キャロルちゃんの言う事が正論すぎて草)
「無理ですね⦅正直な感想⦆」
(そうだよ⦅便乗⦆)
落ち込む二体を心配して役割の交代を提案しようとするファラだが、キャロルの完璧な反論によって色々と察してしまうのだった。
「「ひ…」」
それを聞いた二体の人形はわなわなと震えていた。その理由は…。
「酷いですよマスター!ミカちゃんはともかくガリィはちゃんとできますってばぁ!」
「酷いんだゾ!ガリィと違ってアタシは監視くらいできるに決まってるんだゾ!」
「「「…⦅遠い目⦆」」」
(君たち本当に仲良しだね)
(周りの目を気にしないところとかソックリだゾ)
(あ、これはいつもの流れでは…?)
その理由はクッソしょうもないものだった。二体の言いたい事はつまり『コイツと一緒にしないでほしい』というものなのだが、はっきり言って二体とも同レベルの問題児である。
「はぁ!? アンタみたいな野蛮な人形と一緒にしないでほしいんだけど!」
「マスターに付き纏って嫌がられてるガリィに言われたくないんだゾ!!」
(あっ、これ鬼ごっこコースだ)
(今日も負けましたね…⦅先行入力⦆)
そしてもはや何度目か分からない低レベルの争いが始まった。彼女達は『争いは同じレベルの者同士でしか発生しない』という事を知らないのだろうか…。
「…また始まってしまいましたわね…」
「このままでは我々も巻き込まれるな⦅確信⦆」
「…これより建造作業に向かう、貴様等も来い⦅緊急避難⦆」
「「はい、マスター⦅嬉しそう⦆」」
(今日のキャロルちゃんはいつもより冴えてるなぁ)
(人形も連れて行ってあげるキャロルちゃんは良い主である⦅確信⦆)
キャロルは二体が争っている間に撤退する事を決断したようだ。その賢明な判断に二体の人形は嬉しそうである。
「はぁ!? ミカてめぇ…それを言ったら戦争だろうが!!⦅半ギレ⦆」
「あれれ~? 怒るって事はそれが事実って認めてるようなものなんだゾ~♪⦅煽り⦆」
(あ、ミカちゃんがトドメさしにいった)
「…いいわ、かかってきなさい。きょうがあんたのめいにちよ⦅全ギレ⦆」
(い つ も の)
沸点の低いガリィは噴火した。これでまた黒星が一つ増えてしまうのだろうか…⦅悲しみ⦆
「いいゾ! 勝ったら今日もチューしてもらうんだゾ!」
(…あれ?)
(もしかして…)
(これって誘導されて…⦅戦慄⦆)
「できるものならやってみなさいよ! 今日のガリィは一味も二味も違うわよ!⦅いつも通り⦆」
…あれ? これ、もしかしてミカの掌の上で踊らされているのでは…?と声達はとんでもない事に気付いたが、噴火しているガリィに彼らの声は届かない。
「ニシシ、計画通りなんだゾ」
「は? なにか言った?」
「なんでもない! それよりさっさと廊下でガリィを倒すんだゾ!」
「…あまり強い言葉を言うものじゃないわよ、弱く見えちゃうんだから⦅ブーメラン⦆」
こうして玉座の間を出て行く二体の人形、前を行くガリィを見るミカの表情はご機嫌そのもだった。
「ニシシ!捕まえたゾ!!⦅笑顔⦆」
「う、嘘でしょ…ガリィのフェイントがこうも簡単に破られるなんて…⦅戦慄⦆」
(今日も駄目だったよ…⦅未来予知⦆)
「?? どっちに逃げても追いつけるから意味ないゾ?⦅無慈悲な指摘⦆」
(はいクソゲー)
(チートや!そんなんチーターや!)
「はぁ!? そんなの反則じゃない!!アタシは絶対に認めな――って近付いて来るんじゃないわよ!助けてマスター!」
「ちゅ~っ!⦅接近⦆」
「聞きなさいよ! クソっ!これで勝ったと思うんじゃないわよ次は絶対にアタシが勝――いやぁぁぁ!!⦅発狂⦆」
(⦅次も勝て⦆ないです)
ちなみにいつの間にか勝負は鬼ごっこになっていた模様、もちろん勝敗についてはお察しである。今日もシャトーは平和であった。⦅強弁⦆
次回も読んで頂けたら嬉しいです。