第五話です。ミカちゃん待望の補給。
「お家にと~ちゃ~く、ガリィしっかりお仕事してきましたよマスタ~」
「お帰りなさい、ガリィちゃん」
「よくやった、ガリィ」
「…お腹と背中がくっつきそうだゾ…」
チフォージュ・シャトーに帰還したガリィ。購入した衣類を倉庫に押し込んだ後、キャロルの待つ玉座の間へと向かうと、開口一番息を吐くように嘘を吐いたのだった。
そんなガリィを仲間たちが労わってくれるのだが、遊んでいただけのその人形にはもったいない優しさである。
(おしごと…?)
(バレなければセーフ)
(ははは、こやつめ!)
「…ご苦労、ミカに想い出を渡してやるといい」
主にまで嘘を吐いているガリィであるが、その表情は自慢げであった。
自慢できることなど何一つしていないのにこんな顔ができる人形は、おそらく世界にコイツしかいないだろう。
「りょ~かぁ~い、では早速…ちゅっ♪」
(私達の想い出をお食べ…)
(我々がミカちゃんの血肉になるのだ…)
(申し訳無いが気持ち悪いのはNG)
ミカに想い出を渡すため口付けするガリィ。
畜生人形に散々振り回されたミカ、待望の補給である。
「おぉ…おおおぉぉぉぉ~」
補給を終えミカから口を離すガリィ。
するとミカが突然感動したような声を上げたのだった。
「どうした、ミカ?」
突然声を上げたミカにレイアが疑問に思い話しかけると、ミカは喜色満面で「想い出いっぱいだゾ!」と両手を上げ喜び始めた。
「あら、ガリィちゃんったら本当に頑張ったのねぇ。偉いわ。」
「いえいえ、ミカちゃんの為ならガリィこれぐらい朝飯前ですってぇ。ま、偉いのは否定しませんけどぉ~」
(一周回って尊敬するわこの人形)
(想い出無限タンクマジでチートすぎる…)
ファラに褒められ更に調子に乗るガリィ。ミカに至っては「ガリィ!アタシ一生付いて行くゾ!」などと言っている。駄目だ、そいつにだけは付いて行ってはいけない。届かぬ叫びである。
だが、そんな空気の中ガリィを止める者がいた。
そう、世界ぶっ壊す系金髪幼女のキャロルちゃんである。
「…この短時間でミカの腹が満たされるほどの想い出…ガリィ、分かっているとは思うが…」
「も~、心配性ですねぇマスター、後始末はちゃんと済ましてますって~」
「…なら、問題は無い。後は好きにするといい」
最後の希望であったキャロル、気になったのは後始末の事だったようだ。
そもそも後始末も何もガリィは買い物しかしていない。したのはりんご飴の棒の後始末(ゴミ箱に捨てた)だけである。こうしてガリィに見事に騙される仲間達だった。
キャロルから暇を言い渡されたガリィであるが、オートスコアラーはキャロルの命令が無い時間は基本玉座の間で待機している。よってガリィも定位置に戻り目を閉じて待機するのだった。
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≪さて、それじゃあ原作とやらの続きを聞かせてもらいましょうか≫
待機している時間、ガリィは謎の声達にアニメの話の続きを聞き出す事にした。
(えーっと、二期の十一話、つまり最終決戦からだったよね)
(六人じゃない…私が奏でるこの歌は…)
≪セリフとかいいからさっさと話してくれない?≫
(ちっ、しょうがねぇな~)
(それじゃダイジェストで話しまーす)
- 一時間後 -
謎の声達はまだ話し続けていた。
話は既に三期の終盤に差し掛かっており、一期二期の話の時はうんざりしていたガリィも三期、自分達の未来については流石に興味があったのか、黙って静かに聞いていたのだった。
(こうしてエルフナインちゃんは生存!良かったね、終わり!)
(シンフォギアGX!完!)
≪…ガリィ達が惨めに敗北するのは分かったわ、で、どうするの?≫
(まずはキャロルちゃんの生存が第一だよね)
(あと精神的におかしくなってるからそれもどうにかしないとな)
(あ、人はできるだけ殺さない方針が良いと思います!)
≪はぁ?何か意味あるの、それ≫
(全部終わった後に人殺しまくってたらキャロルちゃんマトモに生きられないじゃん)
(物的損害だけなら司法取引に持ち込めるかも。キャロルちゃんの技術とかガリィちゃん達の戦闘力を提供するとかで)
(改めて考えると難易度高すぎるわこれ…)
(アルカノイズ使わないとOTONAが出てくるからね…)
≪…詳細はアンタ達に任せるわ、人形のガリィには荷が重いんだから≫
(一期始まるまでまだ二年近くあるしゆっくり準備しよう)
(情報収集も欠かさずにね)
(それじゃ今日は解散!お疲れさまでした!)
どうやら方針はある程度纏まったようだ。まだ二年近く時間があるので詳細はこれから詰めていくのだろう。
話が終わりガリィが目を開けると、こちらを見ている一体の人形と目が合った、レイアである。
「ガリィに何か御用かしら?レイアちゃん」
そう問いかけるガリィに、レイアはいつも通りの無表情でこう言い放つのだった。
「ガリィ、なぜワタシの物を地味に履いている」
(…あっ!)
(忘れてた!忘れてたぁ!)
(レイア姉さんツッコミが遅ぉい!!)
「……あっ」
そう、ガリィ痛恨のミスである。
レイアに借りた物(無許可)が思った以上に履き心地が良かったため、脱いで元の場所に戻すのを忘れてしまっていたのだ。一声掛けていれば問題無かったのに…後の祭りである。
(断罪の時だ…覚悟せよガリィ・トゥーマーン)
(ガリィちゃん可愛すぎかよ)
(可愛いじゃなくて馬鹿の間違いでは…?)
「実はガリィ、レイアちゃんの服に憧れてて…せっかく外に出る機会だし一回着て見ようかなって、勝手に借りちゃってぇ…ガリィ悪い子でごめんなさいぃ、うぇーん!(泣き真似)」
なお、憧れてるうんぬんは真っ赤な嘘である。
(しね⦅直球⦆)
(レイア姉さん銭投げするのにちょうど良い的がここにあります!)
「別に怒ってはいない。だが次からはワタシに言え、地味に貸してやる」
畜生に対してこの聖人である。なお、畜生人形ことガリィは≪あひゃひゃひゃ!レイアちゃん超チョロいんですけど!≫と爆笑している模様。
(オートスコアラーってガリィだけ突然変異か何かなの?)
(絶対君だけ生まれた場所違うでしょ)
(レイア姉さん優しすぎぃ!)
「ぐすっ…ありがとうレイアちゃん、ガリィ嬉しい…」
(そら君は無断で借りたのに許されたんやから嬉しいやろなぁ)
こうしてまたも窮地を乗り切ったガリィは、再び目を閉じ何事も無かったかのように待機に戻るのだった。
なお、今履いている物は後日レイアがプレゼントしてくれた。聖人かよ。
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ある程度の方針が決まり、一期二期はスルーしながらゆっくり準備を進める予定だった謎の声達であるが、彼らは一番重大な事を忘れていた。
自分達の宿主がガリィ・トゥーマーンである事に。
そして天邪鬼な彼女が二年もの時間を待てるはずが無い事に…。
その最初の被害者に選ばれるのはもちろんあの少女である。
立花 響
戦姫絶唱シンフォギアの主人公であり、ガリィとは正反対と言ってもいい程の善人である。
彼女はツヴァイウイングのライブでの負傷は癒えるのだが、心臓には聖遺物の破片が刺さったまま生きていかなくてはならなくなってしまう。
更に世間ではライブの生存者に向けて攻撃が始まり、立花響もその例外ではなく攻撃の対象とされるのだった。
更に更に、学校でも同級生(サッカー部のキャプテンだったらしい)が亡くなった事でいじめの標的とされてしまい、更に更に更に、色々あって父親が逃亡してしまうなど、不幸の何倍役満だよ!と言いたくなる程の悲惨な目に遭ってしまうのである。
そして、そんな彼女を畜生人形ことガリィ・トゥーマーンが見逃すはずがあるだろうか?いや無い(断言)
次の舞台は半年後、謎の声達が不用意な事をガリィに伝えてしまう所から始まる。
(そういえば今頃ビッキーすごいイジメ受けてるんだっけ確か…)
≪ふぅ~ん、詳しく聞かせなさいよその話≫
次回 介入しないって言ったでしょこの馬鹿人形! に続く
次回主人公やっと登場(の予定)。