ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第四十八話です。本日投稿分その3。




第四十八話

 

 

「あーっ!」

 

「っ!?――な、なにっ!?」

 

「…どうしたの、切ちゃん」

 

 突然大声を上げた少女は暁切歌、イガリマのシンフォギア装者である。現在彼女はマリア、調と共に政府の監視下に置かれていた。そんな中、突然叫び声を上げた彼女にマリアは驚き調はその理由を聞くのだが…。

 

「ガリィにまた遊ぼうって言ったのにこれじゃ不可能デス! しらべぇ~、どうしたらいいんデスかぁ…」

 

 切歌が大声で叫んだ理由、それは今のままでは友達と会えないという事に気付いたからだった。

 

「切ちゃん、今になって気付いたんだね…⦅生暖かい目⦆」

 

「…がりぃ? 遊ぶ? 何の事?」

 

「私達の友達だよ。リディアンに行った時の話、マリアにもしたよね?」

 

「その時にできた友達の話は聞いたけど…そんなに心配なら二課の誰かに頼んで伝えてもらえばいいじゃない」

 

 マリアはどうやら二人に友達ができた話は聞いていたようだが、彼女は切歌が何故そんなに焦っているのかは分からないままだった。

 

「連絡先…知らないデス!ついでに住所も分かんないデェース!!」

 

「えぇ…⦅困惑⦆ どうして聞いておかなかったのよあなた達…」

 

「秋桜祭の時は私達が舞台に飛び込んでそのままサヨナラしちゃったんデス…」

 

「次に会った時は私達、ウェル博士を探して急いでたから…」

 

 切歌が焦っていた理由、それは友達の連絡先と住所を聞いていなかった事だった。これでは流石にどうしようも無いとマリアも困惑していた。

 

「そう…。 今の私達の立場を考えると二度と会えない可能性もある…か。せっかく二人にできた友達だし、私もなんとかしてあげたいんだけど…」

 

「そっか。仕方、ないよね…自分達のやった事は自分達で責任を取らないといけないもの」

 

「うぅ~! 分かってる、分かってるけどあたしは諦めたくないデス! だって、調以外にできた唯一の友達なんデスから…」

 

「…(二人をなんとか陽の当たる場所へと出してあげたい…でも、今の私の力では何も…)」

 

 二人をなんとかここから出してあげたいと考えるマリア。しかし今の彼女にできる事はなく今はただ待つ事、それが彼女達にできる唯一の選択だった。

 

 

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≪はぁ、今日も暇ねぇ…≫

 

(平和だねぇ…)

(歩いてる人がみんな厚着になってきたな)

(もうすぐ冬、だね。)

 

 フロンティア事変から数カ月経ち季節は冬に差し掛かっていた。ガリィは相変わらず監視を続けていたが、何も起きない事が分かっているだけに彼女は退屈そうに街を眺めていたところである。

 

≪下に降りて遊んでようかしら。あ~、でも今は別に買いたいものは無いし…≫

 

 最近のガリィは緩み切っていた。しょっちゅう街で買い物をして時間を潰し、その時に未来やクリス、翼と会えば挨拶したりお喋りしたり遊んだりとやりたい放題である。ちなみに響の姿が見えた時は全力で逃走していたので正体はバレてはいない。

 

(最近ちょっと油断しすぎだと思うんですけど⦅警戒⦆)

(年が明けたらFIS組が帰って来るだろうし多分もっとカオスな状況になるゾ)

(えぇ…⦅困惑⦆)

 

≪そういえばあの子達ってまだ牢屋の中にいるんだったわね。ガリィと会えなくて寂しがってるでしょうし、出てきたら遊んであげないと⦅使命感⦆≫

 

(⦅寂しがって⦆ないです)

(いや、案外分かんないかも…)

 

 実は二人はガリィに会いたがっているという事を声達は知らない⦅悲しみ⦆ 外の世界で初めてできた友達だからね、仕方ないね。

 

≪シャトーの準備もまだかかりそうな感じだし…早く帰ってマスターと戯れ――あっ、未来ちゃんみっけ。よし、お一人様みたいね♪≫

 

(何がよし、なんですかね…⦅震え声⦆)

(よーし、今日も親睦を深めにいくぞー!⦅やけくそ⦆)

(もう私達も慣れちゃったね…)

 

 退屈の中ガリィが眼下に見つけたもの、それは一人で歩く未来の姿だった。そして声達の予想通り、そのすぐ後にガリィは未来のいる方へと移動を開始するのだった。

 

 

「そこの可愛いおねーさん? 私とお茶でもしませんか♪」

 

 

「――えっと、ナンパはお断りです♪ こんにちは、ガリィちゃん」

 

 

 大体ガリィはこんな感じで親睦を深めていた。なお後の事は全く考えていない模様。⦅悲しみ⦆

 

 

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「ガリィ、貴様にこれをやろう」

 

 年が明けて数日経ったある日、ガリィは信じられない事態に遭遇していた。

 

「――えっ? ママママスター!?これってまさかプ、プレゼント!ガリィに、プレゼントですかぁ!?⦅興奮⦆」

 

「そうだ、早く開けるといい」

 

 なんとそれはキャロルがガリィに贈るプレゼントであった。ガリィは恐る恐るその封筒を受け取り…。

 

「や、やったー! さ、早速開けますね!開けますからね!!⦅テンション最大⦆」

 

「あぁ⦅不敵な笑み⦆」

 

 封筒を受け取って中身を確認しにかかるガリィの顔は緩みきっていた。そして中身はなんと…。

 

 

「えーっと…――風鳴翼、にゅーいやーこんさーとちけっと…ますたー、なんですかこれは?」

 

 

「ファラに頼まれて二枚手に入れておいた。貴様のせいであぁなってしまったのだ、最後まで責任は取れ」

 

 中身は風鳴翼ニューイヤーコンサートと書かれたチケットが二枚入っていた。そう、ガリィはキャロルに一杯食わされたのである。

 

 

「だ、騙しましたね、ガリィの純粋な心を弄んで騙しましたね!! マスターの…鬼!悪魔!幼女!金髪!服の丈が合ってないくせに!⦅必死⦆」

 

 

「やかましい! たまには俺が反撃して何が悪い! 馬鹿!バーカ!ポンコツ!畜生!」

 

 ガリィは噴火した。そしてキャロルも噴火した。⦅負の連鎖⦆

 

「…う、うわぁぁぁぁぁん!! マスターがガリィの事バカって言ったぁー!」

 

「ポンコツと畜生はいいのか⦅困惑⦆ と、とにかくファラにも伝えておけ。俺は部屋に戻る」

 

「…つーん!」

 

 ガリィは小学生並の不機嫌な雰囲気を出していた。しかしキャロルはそれを無視しそのまま部屋に戻ろうとするが…。

 

 

「…ちゃんと最後まで確認しないのは貴様の悪い癖だ。これを機に直すといい」

 

 

「…えっ?」

 

 その途中、キャロルは謎の言葉を残し去っていったのである。ガリィがその意味に気付かず困惑していると…。

 

(ガリィちゃん、封筒の中もう一回確認してみて)

(そうだよ⦅便乗⦆)

 

≪封筒? チケット以外に何か…あっ≫

 

 声達がガリィに助け船を出し彼女がもう一度封筒の中を確認すると、そこには…。

 

 

「これ、ヘアピン…?」

 

 

(あらあら、可愛いデザインじゃない)

(よかったねぇガリィちゃん)

 

「…」

 

 封筒の底に入っていたのは可愛いデザインのヘアピンであった。どうやらガリィは底に入っていた事に気付かなかったようだ。

 

「う、嬉しい…! アンタ達、ガリィは今嬉しいのよ分かる!?ねぇ!⦅感動⦆」

 

(声!ガリィちゃん声に出てるから!)

(嬉しすぎて心の中で抑えきれなかったのか…)

 

 それを手に持ったガリィは嬉しさで感情が爆発してしまっていた。

 

「ふふん♪ さーて、ファラちゃんにチケットを渡しに行くわよアンタ達! 付いてきなさい♪」

 

(ちょ、ちょろい…)

(声に出すなって言ってるでしょ!)

 

 超ご機嫌になったガリィは封筒を持ち玉座の間へと向かう事にした。なおこの後ファラは延々この話を聞かされる模様⦅悲しみ⦆

 

 

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「むむむむむむむ…」

 

「すいません、遅れまし――えっと、立花は何故唸っているのでしょうか…?」

 

「おはようございます翼さん、実は…」

 

 年が明けてからのある日、呼び出しに応じた翼が司令室に辿り着くと、そこには唸り声を上げる響とその対応に困っている緒川慎次の姿があった。その後困惑する翼に慎次が説明を始め、それによると…。

 

 

「はぁ…つまり立花は自分だけガリィという少女に逢えなくて不貞腐れていると…」

 

「はい、そうです…⦅心労⦆」

 

「だって…未来やクリスちゃんはその子の事楽しそうに話してるんですよ!私は全然逢えないのに!」

 

「そ、そうか…(私も時々街で出会っているという事は言わない方が良さそうだな…)」

 

「響さんの気持ちは分かりますが…タイミングが合わない以上、どうしようも無いのでは…」

 

 響が不貞腐れている理由、それは未来とクリスが友達になった少女に自分がいまだに出会えていない事だった。しかも二人が時々その少女の話題を話しているのを横で聞いていた響は疎外感を感じて寂しかったのである。

 

「分かってますけど…寂しいものは寂しいんです! うわーん!翼さーん!」

 

「もう、いきなり抱き着かないの。その内機会があるわよ、きっと」

 

「そうですよ響さん、そのうち逢えると思いますし気長に待ちましょう」

 

「未来やクリスちゃんに会わせてもらえるように頼もうかなぁ…でもいつ逢えるか分からない子みたいだし…」

 

 残念だが気長に待っても機会は来ないんです、何故なら相手が避けているから…⦅無慈悲⦆

 

「それがいいかもしれないわね。私も今度あの子に会ったら頼んであげ――――はっ!⦅手遅れ⦆」

 

「…ツバササン?イマナンテイイマシタ?⦅無表情⦆」

 

「ぼ、僕は司令に二人が到着した事を伝えてきますね。そ、それでは御免!⦅NINJA⦆」

 

「口を滑らせるとはなんという不覚…た、立花、これはだな!」

 

「師匠が来るまでまだ時間がありますし、ゆっくりお話ししませんか?そう、ゆっくりと…⦅笑顔⦆」

 

「お、落ち着け立花! 話す、話すから!(叔父さま、早く!早く来てください!)」

 

 うっかり口を滑らせた事を後悔しながら翼は話し始めた。なお話を聞いている間、響はずっと笑顔だった。⦅笑顔とは本来…⦆

 

 

 

「――と、いうわけで翼さんが大変な事に…」

 

「ふむ、つまり――」

 

 司令室での事を慎次から聞いた弦十郎は僅かの間考え、そして…。

 

 

「俺たちはここでコーヒーを飲み干してから向かえばいいってわけだな⦅満面の笑み⦆」

 

 

「…お供します!⦅満面の笑み⦆」

 

 

 自販機のコーヒーのボタンを押した。なお慎次もそれに同調した事で翼は完全に見捨てられた模様⦅悲しみ⦆

 

 

 

「私だってしょっちゅう街を歩いてるんですよ? それなのにどうして私だけ逢えないんですかぁ…」

 

「そ、それはだな…⦅叔父さま達はまだなのか!? 早く!早く来てくれ!⦆」

 

 

 そして翼の苦境は続く。がんばれ、がんばれ♪⦅応援⦆

 

 





次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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