ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第五十二話です。長くなりそうなのでまずはキャロル陣営。




第五十二話

 

 

「おかえりなさいませ、マスター」

 

「風鳴翼、雪音クリス両名との交戦、及びギアペンダントの破壊も完了しております」

 

「ガリィ、待ってたゾ…」

 

 キャロルとガリィがシャトーへと帰還し玉座の間に到着した時、そこには既に帰還していた三体の人形が揃っていた。

 

「ご苦労。ガリィ、ミカに想い出の補給を。それが済み次第、今後の話を始めるとしよう」

 

「も~、しょうがないですねぇ…ミカちゃん、補給してあげるからこっちに来なさいな」

 

「いいのカ!? すぐ行くゾ!」

 

 どうやらキャロル達は帰還して早々に今後の話を始めるようだ。今回は戦場が三カ所に分散していたので話が長くなりそうである。

 

 

 -  五分後  -

 

 

「まずは戦闘の詳細を、ファラ」

 

「はい。 私はイギリスで風鳴翼、マリア・カデンツァヴナ・イヴ両名との接触を果たしました。そして我々の予想通りマリアの方はシンフォギアを所持しておらず風鳴翼一人との交戦の結果、予定通りギアペンダントを損傷させる事に成功致しましたわ」

 

 まずはファラの報告であるが、これは文句無しに百点満点と言ってもいいだろう。その証拠に、静かに報告を聞いていたキャロルも満足気に頷いていた。

 

「ファラちゃんったらやるじゃないのこのこの~♪」

 

(パーフェクトですよこいつぁ!)

(ブラボー!ブラボー!)

(さすがの安定感やな)

 

「な、なんだか照れるわね…ありがとうガリィちゃん」

 

(かわいい⦅確信⦆)

(かわいい⦅確信⦆)

 

「ご苦労だった、ファラ。次はガリィ、貴様だ」

 

 ガリィにちょっかいをかけられていたがファラは嬉しそうである。それを見たキャロルはファラに一言だけ声を掛け、ガリィへと順番を回すのだった。

 

「はいはーい♪ ガリィが街に着いた時には火災が思ったより酷くて、それで必死に消火活動をしていました。その途中でミカちゃんとはぐれちゃって後はマスターの知っている通りでーす☆」

 

(今回はすごい真面目に働いてましたね…)

(あわや大火災になってたからね、仕方ないね)

 

「…迷惑を掛けたな、ガリィ」

 

「ミカの件については貴様に非はないだろう。ガリィ、ご苦労だった」

 

(やったぜ)

 

 ガリィは全体的に仲間のフォローに走り回っていたようだ。ファラの時と同じくこちらも報告を聞く限り特に問題は無さそうで、キャロルも特に言う事は無さそうだった。

 

「やった♪ 結果的にマスターに褒められたし気にしなくていいわよ、レイアちゃん♪」

 

(このチョロさよ)

(レイア姉さんも困惑しとるやんけ)

 

「そ、そうか…」

 

 ネチネチ言われる事を覚悟していたレイアだったが、ガリィの機嫌が最高潮に達していたため難を逃れたようだ。キャロルに褒められた瞬間のこの変わりようで如何にガリィが普段褒められていないか分かるのが悲しい。

 

「レイア、次は貴様だ。報告を」

 

「…はい」

 

 次に指名されたレイアである。しかし彼女はいつも通り無表情でありながらもどこか気まずそうな様子だった。

 

「エルフナインを追跡しその後現れた雪音クリスとの交戦の結果、ギアペンダントを損傷させる事には成功しました。ですが…」

 

(どうしたのかなレイア姉さん)

(ここまでは百点満点だけど…)

 

 ファラと同じく百点満点の報告をするレイアだが、何故か途中で言葉に詰まってしまい黙り込んでしまう。一体その後に何があったというのだろうか…。

 

「どうしたのよレイアちゃん、何かまずい事でもあったの?」

 

 黙り込むレイアの様子に何か不測の事態でも起きたのかと思ったガリィが先を話すように促し、レイアはやがて何が起きたのかを話し始めるのだった。

 

 

「その…目的を完遂し帰還しようと思ったのですが、装者二人とそれを追い掛けていたミカが現れてしまい…」

 

 

(ファッ!?⦅想定外⦆)

(装者二人って…⦅戦慄⦆)

(消去法であの二人しかいませんね…⦅遠い目⦆)

 

「…なんだと?」

「…えっ」

「…はぁ?」

「鬼ごっこしてたんだゾ!⦅得意気⦆」

 

 上からキャロル、ファラ、ガリィ、ミカの順番である。彼女達もまさか想定外の事態が味方によって引き起こされていたとは思わなかったのだろう。

 

「その後ミカは装者二人を相手に戦闘し、これを退けました。私の報告は以上です⦅目逸らし⦆」

 

「二人とも弱すぎてつまんなかったゾ…⦅不機嫌⦆」

 

(そらそうなるわな⦅確信⦆)

(二人が可哀想…⦅悲しみ⦆)

(イグナイト搭載してから戦ってあげてくださいよ…⦅届かぬ願い⦆)

 

 そしてミカ以外の仲間達が呆然としている間にレイアの報告は終了したが、今の報告で確実に分かるのはレイアは完全に被害者だという事だった⦅同情⦆

 

「このお馬鹿!何をどうしたらそんな事になるのよ!?」

 

「?? ガリィとはぐれてから会ったんだけど、そしたら急に逃げ出したから追いかけたんだゾ!」

 

「…それでレイアちゃんの所に乱入したってわけね…」

 

「ガ、ガリィちゃん、その二人の装者っていうのは…」

 

「暁切歌と月読調、この二人で間違いないでしょうね」

 

 これがミカが起動している事で起こってしまった事態の全容である。不幸中の幸いだったのはミカが軽く暴れただけで済んだという事だろうか…。

 

「…これは俺の落ち度だな。レイア、すまない」

 

「いえ、ミカを遊ばせた私の落ち度です。申し訳ありませんでした」

 

「ガリィも目を離しちゃってすいませんでしたぁ…」

 

「…アタシ、悪い事しちゃったのカ?」

 

「えっと、ちょっと巡り合わせが悪かったというか…」

 

 気付けば玉座の間はお通夜のような空気になっていた。唯一イギリスにいて関係が無かったファラが必死に空気を戻そうと頑張っているが、それには少し時間がかかりそうだった。

 

 

 -  十分後  -

 

 

「今後このような事態が起きる事が無いよう、意思疎通を行える機能を貴様等に搭載する」

 

 十分後、ファラの頑張りにより空気が元通りになった後、キャロルの第一声がこれだった。どうやら彼女はオートスコアラーの動きを遠距離にいても把握できるような機能を搭載するつもりらしい。

 

「えっ、いつでもどこでもマスターとお喋りできるんですか!? い、一番に搭載するのはガリィでお願いします!」

 

「えぇ…⦅困惑⦆」

 

「ガリィらしい…」

 

「アタシもお話するゾ!」

 

 当然ガリィは一番に立候補し、その表情はとても輝いていた。

 

「…⦅察し⦆」

 

 そしてそれを見たキャロルは察した、『コイツは絶対に用の無い時にも話しかけて来る』と。

 

「…ガリィ、任務以外の通信をしないと誓えるか?⦅疑いの目⦆」

 

 そしてキャロルは念のためガリィへと釘を刺すが、しかし…。

 

 

「え、そんなの我慢できるはずないじゃないですか。 も~マスターったらなにを分かり切った事――」

 

 

「通信機能はガリィ以外の三体に搭載する。この決定は絶対に覆る事は無い⦅断固たる意志⦆」

 

(知ってた⦅遠い目⦆)

(正直者だなぁガリィちゃんは!⦅やけくそ⦆)

 

 ガリィは嘘を吐かなかった。その結果がこれである。⦅遠い目⦆

 

「りょ、了解しました」

 

「ガリィちゃん…⦅遠い目⦆」

 

「?? ガリィはダメなのカ??」

 

「ど、どうしてそんな事言うんですかマスター! ガリィはただおはようからおやすみまでマスターと楽しくお喋りしたいと思っただけなのに!!!」

 

 …ここまで全てガリィの本音である。控えめに言ってもやはり故障しているのでは…?⦅戦慄⦆

 

「以上でこの話は終わりにする。次はこれからについて話すとしよう⦅完全無視⦆」

 

「無視っ!? うえぇーん!マスターがガリィに意地悪するぅー!!」

 

「ま、纏わりつくな馬鹿者! 貴様の狂った言動が原因だと何故気付か――変な所を触るんじゃない!やめろ!!」

 

(い つ も の)

(今日はシリアス展開が続いたからね、仕方ないね)

(ガリィちゃんの表情、この時が一番輝いてるよね…)

 

 

 そしていつものこのオチである⦅遠い目⦆ 早く次の話をしよう、なっ!

 

 

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「はぁ、はぁ…これからの、話を始める…」

 

(キャロルちゃんお疲れ様です)

 

 十分間熾烈にガリィと争いなんとか引き剥がす事に成功したキャロルは次の話を始めるのだった。

 

「マスターとの触れ合いを堪能できて、ガリィは満足です♪⦅満面の笑み⦆」

 

「ふ、触れ合い…?⦅見解の相違⦆」

 

「ほ、微笑ましい光景だったな⦅遠い目⦆」

 

「ん~、まだなんか話すのカ??」

 

 ガリィはとても満足気な様子だったが仲間達⦅ミカを除く⦆はいつもの遠い目をしていた。本番が始まったというのにこんな調子で大丈夫なのだろうか…。

 

「…エルフナインがシャトーより持ち去ったドヴェルグ=ダインの遺産。連中は我々に対抗する力を得るため、遠からずその中身に頼るだろう」

 

(イグナイトモジュールだね)

(あれ無いとどうしようもないからなぁ)

 

「それがこちらの想定通りだという事に気付かないままに…ですよねマスター?」

 

「そうだ。 我々はそれを急かしてやればいいだけの事」

 

 S.O.N.G.へと保護されたエルフナインとその手に持つドヴェルグ=ダインの遺産。だがそれは全てキャロルの計画通りであった。

 

「なるほどなるほど~、じゃあ次に仕掛けるのはいつにします?」

 

「エルフナインが知る全てを連中に伝え終わってからになる。俺の予想では…三日程度になるか」

 

「あの子、自分の事が全て筒抜けになってるなんて思いもしていないでしょうね」

 

「お陰でこっちは地味にやりやすいがな」

 

「?? つつぬけ?」

 

(エルフナインが可哀想だゾ)

(でもレイアさんの言う通りやりやすいのも事実だよ?)

 

 実はエルフナインの見ている景色や音は全てキャロルに筒抜けになっていた。これは勿論エルフナインの脱走を計画の内に入れたキャロルの策であり、それ故にキャロル陣営はかなり動きやすくなっていたのである。

 

「ふむふむ…マスター、最初はガリィが行っていいですか? ちょっと気になる事があるんですよぉ」

 

「…気になる事?」

 

「響ちゃんなんですけど、マスターのえげつない精神攻撃で落ち込んでいたじゃないですかぁ? だから様子を見てこようと思ったんですけど」

 

「………好きにするがいい⦅目逸らし⦆」

 

「は~い♪ ガリィにおまかせです☆」

 

(あ、目を逸らした)

(やっぱ気にしてたんすねぇ⦅生暖かい目⦆)

 

 キャロルは思わず目を逸らした。彼女もやり過ぎたと思っていたのだろうか…。

 

「…聞かない方が良さそうね」

 

「そうだな。ここはガリィに任せるのが良さそうだ」

 

「アタシはあいつらが強くなってからでいいゾ!」

 

 どうやら仲間達にも反対意見は無さそうであり、こうして次はガリィ一体が出陣する事に決まったのであった。

 

「これで話は終わりだ。後は自由にするといい」

 

「お疲れ様でした」

 

「次は派手に立ち回りたいものだが…⦅ミカを見ながら⦆」

 

「…ン? なんダ?」

 

「…いや、なんでもない(ミカが心配だな…)」

 

「気にしてもしょうがないわよレイアちゃん。あっ、お疲れさまでーす♪」

 

 こうして今後の方針を決定したキャロル陣営。果たして装者達は無事に彼女達に対抗する力を手に入れる事ができるのか…そして次に響と出会う時、ガリィは…。

 

 





主人公陣営の方は今書いている途中で明日までには投稿できると思います。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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