ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第五十六話です。

今回は原作との変更点について後書きに書いていますので、そちらも読んで頂けたら嬉しいです。




第五十六話

 

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴは現場に到着した途端、車外へと飛び出していた。

 

「マリアさん!」

 

「貴方はそこで待っていてちょうだい! すぐに響達を連れて来るわ!」

 

 事の発端はS.O.N.G.司令室がアルカノイズの反応を検知した事だった。マリアはその時丁度司令室に到着し、響の救出に向かう緒川の車に同行して来たのである。

 

「(…あの人形、響に何を!? それにあの子は何故ギアを纏っていないのよ!)」

 

 走り出したマリアが最初に見た光景、それはガリィが響へと何かをしようとしている瞬間だった。

 

「(…あの子達、確か響の友達だったはず…。 まさか、人質に取られているの…?)」

 

 マリアは響が無防備な理由をこのように解釈していた。なので当然ガリィへ向く敵意は鋭く、そして大きくなる一方である。その結果…。

 

 

「そこの貴方! 響から離れなさい!!」

 

 

 敵意マシマシでガリィを睨み付けるマリアの出来上がりである。そして更に…。

 

「貴方、確かガリィとかいう名前の人形だったわね…(この人形が切歌と調を騙し、傷つけた元凶…)」

 

 妹のように思っている二人を傷ついた原因が目の前の人形だと理解した事で、更に怒りのボルテージは上がり続けていた。

 

「あの…マリアさん、これは――」

 

「何をやっているのよ貴方達、早く逃げなさい! 緒川さん、この子達の事を頼んだわよ!」

 

 マリアがヒートアップして行く中、マリアの姿に猛烈な嫌な予感を感じた未来が話し掛けようとするが、もはやマリアは取り付く島もない様子であった⦅悲しみ⦆

 

「あの!そうじゃなくて――」

 

「未来さん、早くこちらへ! 行きますよ!」

 

「――は、話を聞いてください~!」

 

 こうして未来達はNINJAに救出されフェードアウトしてしまった。そしてここに残ってしまった二人の人間と一体の人形の間に、これから何が起こってしまうのだろうか…。⦅震え声⦆

 

 

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≪なんだコイツ⦅直球⦆≫

 

(なんだろうね…)

(多分とんでもない勘違いしてるゾ)

(すっごい睨まれてるんですけど…⦅困惑⦆)

 

 ガリィ・トゥーマーンは目の前の女性の剣幕に戦慄していた。

 

「人質を取るなんて、随分とセコい真似してくれるわね…」

 

「ひと、じち?? えっ、ええっ???」

 

「…ねぇ響ちゃん、もしかしてこの女は日本語があんまり得意じゃないのかしら?⦅真顔⦆」

 

 響のお腹をプニプニして遊んでいたガリィもこれには思わず真顔である。ちなみに響は意味不明な状況に混乱してあたふたしており、すぐにマリアを説得できる状態では無い模様⦅ストッパー不在⦆

 

「え、えっと…マリアさんは日本語が大変お上手だと…⦅混乱中⦆」

 

「そう…⦅遠い目⦆」

 

 先程までの響との触れ合いで若干持ち直していたガリィのテンションは再び下降線を辿っていた。というかガリィはもう何も見なかった事にして帰りたかったが、それはマリアさんが許してくれない模様。

 

「…はぁ、どうしたものかし――っ!?」

 

「(っ!――今っ!) はぁっ!」

 

 どうしたものかとガリィは天を仰ぐが、なんとそれを見たマリアが突然ガリィへと拳を振るって来たのだ。

 

「――はぁ!? アンタいきなりなにしてくれんのよ!」

 

「マ、マリアさん」

 

「ふぅ…とりあえずは救出成功ってところかしらね」

 

 その突然の行動に驚いたガリィは反射的に回避行動を取ってしまう。そしてその結果、響はガリィの手から離れてしまうのだった。

 

「…(まぁ、これで帰れると思えば悪くはない展開かしらね) あらら、なんてことなの~! せっかくひとじちをとったのにとりかえされてしまったわ~!」

 

「――へっ? ガ、ガリィちゃん!?」

 

 誤解されたまま響を奪取されたガリィが次に取った行動は悪役ムーブを再開する事だった。どうやらこの場を適当にやりすごしそのままシャトーに帰るつもりらしい、実に安易な考えである。

 

「――なんて外道…響、ガングニールを! この人形はここで倒すわよ!」

 

 

「…えっ?なにそれ怖い⦅震え声⦆」

「…えっ、ええぇぇぇ!?」

 

 

(ガリィが悪い⦅確信⦆)

(いや、マリアさんも大概…)

(響ちゃんが完全に被害者な件について)

 

 そしてガリィの安易な考えは粉々に打ち砕かれ、更に響にも流れ弾は飛んで行き事態はどんどん混沌と化して行く。もうガリィは下手に口を開かないほうが良いのでは…?⦅震え声⦆

 

「まっ、マリアさん!?何を言って――」

 

「貴方こそ何を言っているのよ、こんな人形放置して置けるわけないじゃない!」

 

「でっ、でも、私は…」

 

 窮地を脱したのにも関わらずギアを纏おうとしない響に苛立ちを募らせるマリア。そしてそんな二人をガリィはただ静かに見つめていたが…。

 

 

「その子、歌えないわよ」

 

 

 相変わらず我慢ができないガリィは当然すぐに口を割り込ませた。グダグダと揉めて時間が経つのが嫌だったからである。

 

「――歌えない、ですって…?」

 

「…はい」

 

 驚愕した表情でマリアが響へと問いかけると、響は俯きながら首を縦に振るのだった。

 

「響…どういう事なの?」

 

「…聖詠が、胸に浮かんでこないんです…」

 

 正直に自身に起きている事を話す響だが、それを聞いたマリアはまたもある勘違いを起こしてしまい…。

 

「――貴方っ! 響に何をしたのよ!?」

 

 そしてまたもマリアの敵意はガリィへと向いてしまう。確かに状況を見ればそう考えても仕方ない部分はあるのだが、それにしても声達には今日のマリアはどこか焦っているように見えていた。

 

≪…ねぇ、だんだんムカついてきたんだけどどうしてやろうかしらねこの女≫

 

(我慢!我慢して!⦅必死⦆)

(…なんかマリアさんいつもより焦ってるというか、うーん…)

(余裕が無い感じだね…)

 

「違うわよ、なんでもかんでもガリィのせいにするんじゃないっての。――それでどうするのかしら?ガリィはもう帰ってもいいんだけど」

 

(帰ってもいい⦅すごく帰りたい⦆)

 

「そうですマリアさん! ガリィちゃんのせいじゃなくて、というかそもそも私達は戦ってなんか無いんです!」

 

「…(響はガングニールを纏える状態ではない…それなら!)」

 

 ガリィと響はそれぞれマリアへと語り掛けるが、この時の彼女には二人の話は聞こえておらず彼女はある決意を固めていたところだった。

 

「…響、少しの間だけギアペンダントを貸してもらうわね」

 

「――へっ? ま、マリアさん、何を――あっ!」

 

「…ごめんなさい、少し借りるわよ」

 

 マリアは響のギアペンダントを手に入れると、真剣な表情でガリィを睨み付けた。

 

「…やめなさい、アンタみたいな雑魚じゃガリィには勝てないわよ」

 

≪はぁ!? 何しようとしてるのよこいつ!≫

 

(原作通りだぁ…⦅遠い目⦆)

(マリアさんの体壊れちゃ~う!⦅やけくそ⦆)

 

 なおガリィ一行は脳内で大混乱中である。まさかここで原作通りの展開になるとは想定していなかったのだろう。

 

「だ、駄目ですマリアさん!リンカー無しでギアを纏えば切歌ちゃん達みたいに――」

 

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl…」

 

 

「マリアさん!?」

 

「…全く、いい歳した大人が子供の玩具取って遊んでんじゃないわよ…⦅呆れ⦆」

 

 制止しようとした響を無視しマリアは聖詠を唱え始める。リンカー無しでギアを纏う事は危険だと知りながら…。

 

「…ガング、ニール…マリアさん…」

 

「すぐに片付けるから少しだけ待っててちょうだい。 行くわよ!」

 

 そしてマリアはガングニールのギアを纏いガリィと対峙する。リンカーの事があるためマリアは短期決着を目指し、突撃を開始するのだが…。

 

「すぐに片付ける――そうね、その意見にはガリィも賛成よ」

 

「っ!――何を――っ!?」

 

 

 

「遅い」

 

 

 

「ぐぁっ!」

 

 その攻撃はガリィに簡単に躱され、それどころかマリアは頬を思い切り殴られてしまう。

 

 

「脆い」

 

 

 

「がはっ!?」

 

 更に間髪入れずに今度は逆側の頬を殴られマリアの意識が朦朧となる。そして…。

 

 

「そして…弱いわね」

 

 

「…」

 

 

 ガリィは止めのアッパーをマリアの顎に叩き込む。この一撃でマリアの意識は完全に断ち切られ、ガングニールのギアはあっさりと解除されたのだった。

 

 

「…次はもう少し頭を冷やしてからかかってきなさいな。 ってもう聞こえてないみたいね、ざ~んねん♪」

 

≪これなら体の負荷も最小限で済んだでしょ。ったく、いい歳した奴が手間かけさせてんじゃないわよもう…≫

 

(強い、強くない?⦅驚愕⦆)

(ほぼ毎日ミカちゃんとやりあってるからね⦅成長⦆)

(ミカちゃんならガリィちゃんの拳なんか目を瞑ってても平気で避けるゾ⦅絶対強者⦆)

 

「マリアさんっ!!」

 

「手加減してるから多分大丈夫だとは思うけど、一応後で診てもらった方がいいかもね」

 

「ガ、ガリィちゃん…」

 

 倒れ伏しているマリアに慌てて響が駆け寄るが、ガリィは平然とそれを見下ろしていた。

 

「この女に言っておいてくれるかしら? 『勘違いしてる今のアンタじゃ百年かかってもガリィには勝てない』って」

 

(意味深なセリフ残すのやめーや)

(案の定響ちゃんが混乱してるし…)

 

「ど、どう言う意味――」

 

 

「マリアさん!響さん!」

 

「ひびき~!ガリィちゃーん!」

 

 謎の言葉を言い残すガリィにその意味を響が問い質そうとするが、その時新たな乱入者が現れたのだった。

 

「――緒川さん、それに未来も…?」

 

「未来さんから事情をお聞きして戻ってきました!…しかし、この状況は一体…」

 

 やって来たのは緒川と未来、先程撤退したはずの二人だった。

 

「えっと、これは――」

 

「子供の玩具を取り上げちゃう悪い大人をちょっと懲らしめただけよ、大した事は無いわ。」

 

「っ…あなたは何故、我々に敵対して――」

 

 未来から話を聞いた事でガリィの意思が分からなくなりそれを問う緒川だが…。

 

「それより早くこの雑魚女を連れて行ってくれない? 見てるとなんかムカムカしてくるのよねぇ」

 

「…緒川さん、ガリィちゃんの言う通り今はマリアさんを助けませんか?」

 

(未来さんは理解してくれてるな)

(さっき全部バレたからね…⦅遠い目⦆)

 

 どうやらガリィには答える気が無いらしく、それを察した未来は緒川にマリアの救助を優先する事を提案するのだった。

 

「未来さん…そうですね、分かりました」

 

「そう、分かってくれて嬉しいわ♪ それじゃこの辺でガリィは帰宅しまーす☆」

 

 そしてこれを好機と見たガリィはそそくさと転移結晶を取り出した。ようやく帰宅できるチャンスを逃すわけにはいかない、ガリィは内心必死だった。

 

「ガリィちゃん…」

 

「あ~っ! 待ってよー!」

 

 まだ聞きたい事がたくさんあるのだろうか、去ろうとするガリィを引き留めようとする響だが、しかし…。

 

 

 

「だーめ、待ってあげない♪ 響ちゃん、次は素敵な歌を聞かせてくれると嬉しいわ☆ お姉さんもまたね♪」

 

 

 

 ガリィは別れの言葉を残し消えてしまった。響はガリィが去るのを見送った後…やがて未来へと話しかけるため口を開いた。

 

 

「行っちゃった…」

 

「…うん、行っちゃったね」

 

「…ダメだなぁ、私…こんなんじゃ――」

 

「こーら! こんな所で後ろ向きにならないの! 話なら夜にゆっくり聞かせてもらうから、今はマリアさんの心配をする事、いい?」

 

「未来…」

 

「話、聞かせてくれるんでしょ?」

 

「…うん、ありがとう」

 

「どういたしまして♪ それじゃ行こう、響」

 

「うんっ!」

 

 未来に手を握られた響はその暖かさに心が安らいでいくのを感じていた。そしてこの夜、ガングニールの装者立花響は復活する事となる。その影響は、果たして…。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

≪ねぇ、ガリィとんでもない事に気付いちゃったんだけど…⦅震え声⦆≫

 

(なになに?)

(どうせしょうもない事やろ?)

 

 ガリィはシャトーへと帰還し廊下を歩いている途中、とんでもない事に気付いてしまった。

 

≪気のせいだったらいいんだけど、ガリィとまともに戦ってくれるのって…もしかしてあの雑魚女しかいないんじゃない?⦅震え声⦆≫

 

(今更!?)

(未来さんから色々伝わったらそうなるゾ)

(なんでや!原作通りやんけ!)

 

 ガリィは気付いてしまったのだ。今回未来にバレてしまった事が装者達に伝わってしまうとまずいという事に。⦅手遅れ⦆

 

≪えぇ…見ててイラつくからあの雑魚女にもう会いたくないんだけど≫

 

(向こうもガリィちゃんにイラついてるからお相子やろ?⦅謎理論⦆)

(ちゃんと最後まで面倒見てあげなさい、いいね?)

(覚醒したらすんごい強くなるから!)

 

 ガリィはどうやらマリアとはもう会いたくないようだが、声達は何故かマリアを猛烈に推していた。

 

≪…後の事は後の事で考えましょうか。 クリス辺りは怒らせたら戦ってくれそうだし≫

 

(またクリスちゃんが激怒してしまうのか…⦅悲しみ⦆)

(ミサイルぶち込んでくるから気を付けてね~⦅他人事⦆)

 

 

 こうして今日の仕事を終えたガリィ一行は雑談しながら玉座の間へと向かうのだった。

 

 

 

 

 ガリィ・トゥーマーンとマリア・カデンツァヴナ・イヴ、この二人の初戦はガリィの圧勝という結果で終わった。

 しかし、これがまだ彼女達の長い戦いの序章に過ぎないという事をガリィは知らない。

 

 

(弱さが強さ、ねぇ…)

 

 

 彼女が真の強さに目覚める時、それはまだ遠い。

 

 





原作との変更点:マリアの呼称について。(感想欄で指摘を頂きました)

マリアは原作では響の事をフルネームで呼んでいますが、この小説では名前のみで呼んでもらう事にしました。
その理由は単純なもので、フルネームだと緊迫した場面で名前を呼ぶときに違和感が出るのではと思ったからです。

なので今のところはこのままで行くつもりですが、もし読者さんの中に違和感があると言う方がおられましたら教えて頂けたら嬉しいです。

あと、最近感想が増えてすごく嬉しいし励みになってます。書いてくれている方々には感謝でいっぱいだゾ~⦅ハイテンション⦆。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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