ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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 番外編その一です。
キャロルちゃんがトチ狂った人形に翻弄されるお話。




番外編その一

 

 

 キャロル・マールス・ディーンハイムは数百年を生きている優秀な錬金術師である。

 しかし、そんな優秀な彼女を現在、非常に困らせている存在があった。

 

 

「できましたよマスタ~、ガリィ特製カレーでっす☆」

 

 

 コイツである。

 

 

 このガリィというのはキャロルがある目的の為に作った人形である。

 オートスコアラーと総称されるこの人形は全部で四体存在し、キャロルの精神構造の一部を組み込んで作られている。

 キャロルの命令に忠実に従い戦うためにこの人形は存在しているのだが、なぜかその人形の内の一体は現在、エプロンを付け主にカレーを振る舞っているのであった。

 

「ガリィ…貴様は何を言っている…」

 

 キャロルの反応は正しい。人形にカレー作りましたよと言われても、「やったー!頂きます!」とはならないのが普通だろう。

 おまえ味覚無いだろ味見できねぇじゃねぇかと突っ込まれても文句は言えない。

 

 しかしこの人形、実は間接的ではあるが味覚が存在するのだ。

 

 ガリィ本体は人形なので味覚など存在しないのだが、ガリィの頭の中にいる連中には味覚があり、ガリィが口に入れた物の味を彼らを通して判別することができるのだった。

 非常にややこしいが、簡単に言えば寄生虫には味覚が有るが宿主には無い、という事である。

 この状況を知ってガリィは絶望したが、今では「人形に味覚とかいらねぇんだよ!」と開き直っていた。

 寄生虫より劣っている事は絶対に認めない。

 それがガリィという人形であったが、使えるものは使う主義なので、現在主に振る舞っているカレーの味見は頭の中の連中に任せていた。

 

 そして完成したガリィ特製カレーであるが、そもそもなぜこんな事をしているのか。

 それは前日、ガリィが想い出の回収に外出していた時まで遡る。

 

 

 

 - カレーの日より一日前 -

 

 

(ガリィちゃんガリィちゃん)

 

≪…何?くだらない事だったらアンタの想い出全部ミカちゃんにぶち込むわよ≫

 

 今日も今日とて想い出の回収を命じられ街へ赴くガリィ一行、本日は特に用事も無いため、適当に街を彷徨っているところであった。

 

 ガリィは人間に近い容姿をしているが、関節などは人形の物であるし、顔色も病的に白い。

 そのため万が一にも人形と見破られる事の無いよう、街で購入した化粧道具で顔色を調整し、服装もロングスカートの下にレイアからプレゼントされた物を履いている。

 上半身も長袖のニットのセーターを着ているため、目立つことなく群衆に溶け込む事に成功しているのだった。

 

 そんなガリィ一行であるが、謎の声達がガリィを呼び止めると、ガリィも冗談を返して聞くことにするのだった。冗談…ですよね?(疑心)

 

(キャロルちゃんの精神を立ち直らせる方法、一つ思い付いたんだけど)

(よろしい、発言を許可する)

(くだらない事だったら…分かっているね?⦅脅迫⦆)

 

≪…ま、言うだけ言ってみればいいんじゃない?≫

 

 謎の声はキャロルを正常に戻す方法を思いついたと言うが、ガリィは全く期待していなかった。

 なぜなら、現在のキャロルは絶対世界破壊するガールと化しており、説得などとてもできる状態では無い。

 ガリィが真正面から説得したとしても、おそらくスクラップにされるか記憶を全て消され初期化されるかのどちらかだろう。キャロルの闇は深い。

 

 

(キャロルちゃんに毎日料理を作ってあげよう!)

 

 

(はぁ~⦅クソでか溜息⦆)

(そんなにミカちゃんの餌になりたいのか…)

 

≪なんでそんな無駄な事ガリィがしなきゃいけないのよ、あと面倒臭い≫

 

 おそらく面倒臭いのが九割のガリィである。しかしなぜ料理がキャロルの正常化に繋がるのか、謎の声はその理由を話すのだった。

 

 

(アニメでキャロルちゃんの回想で父親の料理作ってる描写があったんだけど、それに近い状況を再現して昔の自分を思い出せればもしかしたら…って)

 

 

(あぁ、ありましたねぇ…)

(ここにいるのは父親じゃなくて畜生人形なんですがそれは大丈夫なんですかね?)

 

 そう、問題はガリィにあの善人を絵に描いたような父親の代わりが務まるのか、という事である。

 ガリィが「料理作ったので食べてくださいよぉマスタ~」と言えば、キャロルはまず変な物が混入されていないか警戒するだろう。

 そのくらい父親とガリィには信頼度の差があるのだ。普段の行いがまたもガリィの足を引っ張っていたのであった。

 

≪ガリィの料理なら喜んで食べてくれるに決まってるでしょ?アンタ達マスターの事分かって無いわねぇ≫

 

(それはギャグで言っているのか…?)

(ガリィちゃんは間違い無く自分の事が分かって無いですね…)

(ま、まぁ万が一…億が一あっさり食べてくれる可能性もあるから…)

 

 ガリィは自信満々に言い放つが、それは普段の自分を見るキャロルの視線を知っていて言っているのだろうか。

 時々ガリィを見る視線が何かを考えているようなものになるのは、初期化するか悩んでいるのだろうと、謎の声達はそう判断していた。

 想い出を集める能力だけは死ぬ程優秀(というより無限タンクである)なので未だに生かされてはいるが、この先は分からない。謎の声達はキャロル以上にガリィが正常になるのを願っていたのだった。

 

 そして自信満々なガリィはそのまま計画の実行を決意し、食材を購入した後にチフォージュ・シャトーへと帰還するのだった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 そして現在、キャロルはトチ狂った人形にカレーを振る舞われている所である。

 

(こ奴…何を考えている…?)

 

 ガリィはキャロルの精神構造の一部がベースであるがこの人形、最近の行動がキャロルの理解を超えるものばかりであった。

 想い出の回収に向かうと言って化粧を施し、更に服を着替えて行き、その癖想い出は大量に集めてくるのだ。

 最近ではミカだけで無くレイア、ファラの分までガリィが供給しており、非常に扱いに困っていたキャロルであった。

 そんな時に「カレー作りました」と来たのだ、キャロルが困惑するのも致し方無しである。

 

「ガリィ…」

 

「はぁい、なんですかぁマスタ~?」

 

 

 

「…何を混ぜた…?」

 

 

 

 悲報:ガリィちゃん、主に信頼されていなかった。

 

 

 

(残当)

(誰だって疑う、私達だって疑う)

(ミカちゃんならワンチャン…?)

 

 

「カレー粉に玉ねぎ、じゃが芋、人参、牛肉、ですけど。それがどうしたんですかマスタ~?」

 

(違う、キャロルが聞きたいのはそういう事ではない)

(信頼度ゼロじゃ無いですかヤダー!)

 

 目を細めガリィを睨み付けるキャロルだが、残念ながらガリィには微塵も通用しない。

 見当違いな事を言う人形に、キャロルはもう一度問いかけるのだった。

 

「…俺を陥れる為に何を混ぜたと言っている」

 

 言いたい事が伝わらない人形にも分かるように言ったキャロルであったが、ガリィは数秒間黙るとようやく理解したのか、反応を返すのだった。

 

 

 

「…………………は?」

 

 

(ガリィちゃん顔怖っ!声も怖っ!)

(キャロルちゃんビクっ!てなってるから!やめてあげて!)

 

 

 突然豹変するガリィにビクッ!と震えるキャロル。

 まぁ、普段おちゃらけている人形に突然こんな反応をされればこうなってしまうのも仕方無い。

 というか普通に怖い、首をほぼ九十度傾げながら言っているから余計に。

 

「……!?」

 

「……ハッ!イ、イヤですよぅマスタ~、ガリィがマスターにそんな事するわけ無いじゃないですかぁ」

 

「…そ、そうか…」

 

(なんだこの空気)

(おい何とかしろよ元凶)

(キャロルちゃんは何も悪く無いんだよなぁ…)

 

 なんだか微妙な空気になってしまい、十秒ほど無言が続いた後、ガリィはポツポツと話し始めるのだった。

 

「ねぇ、マスター。ガリィ最近想い出の回収頑張ってますよね?」

 

「あ、あぁ、そうだな」

 

(嘘乙)

(この空気でも平然と嘘をつけるのか…⦅驚愕⦆)

 

 突然頑張ってるアピールを始めるガリィ。嘘を吐いている事は置いておいて、その意図は何なのだろうか。

 

「ですからぁ…ご褒美にガリィの料理を食べてほしいんですけど…ダメですかぁ?」

 

「…料理を…か?」

 

(ちょっと何言ってるか分からないですね)

(ガリィちゃんのいつものゴリ押しやろ⦅適当⦆)

 

 結局いつものゴリ押しに切り替えたガリィ。しかしなぜそれがご褒美になるのか…キャロルは疑問だった。

 

「待て、何故それが貴様の褒美になる、理解できん」

 

「実はガリィ、街でご主人に料理を作ってるメイドさんを見たんです…。それを見て思ったんですよぉ、『いいなぁ』って」

 

「…それでこの奇行か…狂っているのか、貴様は」

 

(間違い無く狂ってますね)

(ほぼ全部嘘、だからなぁ)

 

 謎の声達が言うように全部嘘である。だがキャロルはこの時、「ガリィならこの奇行もあり得る」と思ってしまっていた。キャロルとの信頼の賜物である。

 

「ひどいですよぅマスター!もぅ、食べてくれるのかくれないのか、どっちなんですかぁ!」

 

「…よかろう、食べてやる。だがガリィ、オートスコアラーの使命、忘れては」

 

「もちろん忘れていませんとも。その身に呪いの旋律を刻む事こそがオートスコアラーの使命…ガリィにおまかせでっす☆」

 

 キャロルが話している途中、割って入りその使命を語るガリィ。

 なお、使命は忘れていないが遂行する気は無い模様。

 

(ま~た嘘吐いた)

(ここは嘘吐かないといけない場面だからセーフ)

(なんだかんだで食べてくれる辺り優しいなキャロルちゃん)

 

「ならば良い、さっさとそれを寄越せガリィ」

 

「りょ~か~い♪ささ、テーブルに着いてくださいよぅマスタ~」

 

 椅子を引きキャロルを座らせるガリィ。しかしキャロルはこの時致命的なミスを犯していた。

 

 人形であるガリィは味覚が無い=味見ができない という事を指摘するのを忘れていたのだ。

 

 椅子に腰を下ろしてしまったキャロルに、もはや退路は無い。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「ささ、どんどん食べちゃってくださいよぉマスタ~」

 

「………」

 

 椅子に座らされ目の前にカレーを置かれたキャロルであったが、自分が犯してしまった重大なミスに気付き冷や汗を流していた。

 

「ガリィ…」

 

「はぁい、なんですかぁ?」

 

「味見は…」

 

「してませんよ?というかできるわけないじゃないですかぁ。マスターがガリィを作ったのに忘れちゃったんですかぁ」

 

「……そうか、そうだな…」

 

(まぁここで味覚ありますとは言えないからね、仕方無いね)

(これキャロルちゃんからしたら滅茶苦茶恐怖なんじゃ…)

(しかも作ったのがよりによってガリィ・トゥーマーンであるという…)

 

 香ばしい匂いを放っているシンプルなカレー、であるが味見はしていない。

 

 だがキャロルは覚悟を決めた、椅子に座ってしまった以上退路は無いのだ。

 キャロル・マールス・ディーンハイムは数百年を生きている優秀な錬金術師である。よってカレー如きに恐れを抱くわけにはいかない、キャロルはカレーを口に含んだ。

 

「どうですかぁマスター、ガリィの愛情がたーっぷり詰まったカレーの味は?」

 

「……平凡…」

 

(そりゃそうだ)

(市販のルーにシンプルな具材ぶち込んだだけだからな)

(重要なのはこのシチュエーションよ)

 

 覚悟を決めてカレーを食べたキャロルであったが、その味は平凡そのもの、拍子抜けであった。

 

「辛口ですねぇマスターは、カレーは甘口なのに」

 

(は?⦅殺意⦆)

(ガリィジョークは滑らんなぁ!⦅錯乱⦆)

 

「まぁ…食えん味では無い」

 

「はいはい、今日はそれで許してあげますから、ちゃんと全部食べてくださいね?」

 

 そうガリィが言ったのを最後に、彼女達に会話は無かった。

 さすがのガリィも食事中は自重するようだ、良かった。

 そして、カレー皿が空になると、キャロルは椅子から立ち上がりガリィに一言だけ言うのであった。

 

「馳走になった」

 

「いえいえ、お粗末さまでした♪お皿はガリィが洗っちゃいますから、マスターは作業に戻ってくださいな」

 

「…そうか」

 

 そう短く言うとキャロルは部屋を出て行き、作業に戻るため廊下を一人歩いて行く。

 

(ガリィの奇行にも慣れたと思っていたが…)

 

 キャロルはガリィの奇行を思い返していた。

 あの人形はどこか変わっている、だがキャロルは不思議と初期化する気にはなれなかった。

 

(…誰かがいる場所で食事をしたのはいつ以来だったか…)

 

 そう思考するキャロルの脳裏に浮かんだのは、幼少期のキャロルが父親に料理を振る舞っている光景だった。

 

(パパは料理が下手だったな…ガリィよりもよっぽど…)

 

(…作業に戻らねば…俺には絶対に成さねばならぬ事があるのだ…)

 

 そうして思考を打ち切ったキャロルは、一人歩みを進めるのであった。

 

 

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≪で、ホントに意味あるのこれ?マスターほとんど何も言わなかったんだけど≫

 

(い、一回じゃ効果は薄いから…)

(毎日やるんだよオラァ!)

(ガリィちゃん暇だし毎日できるでしょ?)

 

 そしてこの反省会である。

 ガリィはイラっとしていた、何の手応えも感じる事ができなかったからである。

 

≪はぁ、なんでガリィがこんな事を…≫

 

(できるできる大丈夫ガリィならできるどうしたもっと熱くな)

(う る さ い)

(現状他に良いアイデアが無いから…なんとか頑張ろうよガリィちゃん)

 

≪はいはい、分かったわよ。でも結果出なかったらアンタ達、覚悟はできてるんでしょうねぇ?≫

 

(わ、私達とガリィちゃんは一蓮托生だから…⦅震え声⦆)

(ダイジョーブワタシタチウソツカナイ)

 

 こうしてキャロルに毎日料理を作ることになったガリィ一行。

 

 

 この地味な行動が実を結ぶのは、ずーっと先の事である。

 

 

 





 次は本編に戻ります。


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