ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第五十八話です。




第五十八話

 

 

「さ~て、そろそろ始めるけど準備はいいかしら?」

 

「ああ」

 

 ガリィとレイア、二体のオートスコアラーは住宅街のとある建物の屋上で作戦を開始しようとしていた。

 

「響ちゃんがすぐに来てくれると嬉しいんだけどね~♪ それじゃあ行きなさいな雑魚共」

 

 ガリィはレイアの返事を聞いてすぐにあらかじめ手の中に握りこんでいた結晶を地上に向けてばら撒き出した。すると…

 

 

「キャー!!」

「ノイズだぁー!!」

「逃げろ!早く逃げろーっ!!」

 

 周囲に大量のノイズが現れ、周辺にいた人間達を追い掛け回し始めたのである。どうやらガリィ達は騒ぎを起こして装者を誘き出すつもりのようだ。

 

「アハハハハ! ほらほらもっと悲鳴を上げて逃げなさいな♪ でないと分解しちゃうわよ☆」

 

(ミカちゃんかな?)

(ミカちゃんはこんな畜生みたいな事はしないゾ)

(ガリィちゃんが楽しそうならもうなんでもいいよ⦅目逸らし⦆)

 

「…ガリィ、随分と楽しそうだな」

 

「そりゃそうでしょ(即答) 見てよあの必死な顔♪ あ~楽しい☆」

 

「そうか、ガリィらしいな…⦅遠い目⦆」

 

 逃げ惑う人々を見てガリィはとてもご満悦な様子である。ここだけ見れば立派な悪者なのだが、その中身は…⦅悲しみ⦆

 

「ふふん、響ちゃんが来るまで目一杯楽しまないとね♪ …あの太ったおっさん足遅いわねぇ、仕方ないからガリィがダイエットさせてあ・げ・る☆⦅ロックオン⦆」

 

(おっちゃん逃げて!)

(ホントに性格終わってんなこの人形⦅呆れ⦆)

 

「…はぁ」

 

 周囲は人々の悲鳴とガリィの笑い声が響いており実にカオスな状況だが、レイアはもう何も言わずに装者の到着を待つ事にした。

 

 

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「いや~、なんだかんだでビッキーも復調したみたいだし良かった良かった!」

 

「あはは~、その節はみんなにご迷惑をお掛けして申し訳ない気持ちで一杯です、はい…」

 

「そんな、立花さんが気に病む事なんて何も――」

 

「駅前のアイス一個奢り、これで許してあげるわ」

 

「板場さん!?」

 

「こいつったら意外と気にする性格なんだからこれでいいのよ。ね、響?」

 

「う、うん! アイス、食べるよ!⦅食いしん坊⦆」

 

「響ったら、もう…⦅呆れ⦆」

 

 響は現在、下校中であり友人とともに校門へ向かって歩いているところだった。ここ数日様子のおかしかった響だが、どうやら完全に復調したらしく友人達もその事に安心していた。

 

「い、いいんですか立花さん…?」

 

「えっ、何が? そんな事より早く行こうよみんな~♪」

 

「…もう頭の中はアイスの事で一杯みたいだね、ビッキーらしいなぁ」

 

「そうね、こいつらしいわ」

 

「はいはい、分かったからそんなに慌てな――」

 

 話が纏まり駅前に向かおうとしていた響達。しかし…

 

「っ!?――はい、立花です」

 

 その時に鳴り響いた音、それはS.O.N.G.から装者達に支給されている通信端末の着信を示すものだった。それまでと違い真剣な表情で応答する響、そしてその用件とは…。

 

『住宅街にアルカノイズの反応を観測したわ。今そちらに車を向かわせているから、響ちゃんは至急現場に向かって下さい』

 

「――はっ、はい!」

 

『校門だと少し目立つわね…合流ポイントはこちらで指示するわ、申し訳ないけどそこに向かってくれる?』

 

「了解です!」

 

 どうやら住宅街でアルカノイズが出現したらしい。そう、どこかの高笑いしている人形が遊んでいる場所の事である。

 

「――ごめんみんな…行けなくな――」

 

 通信を終え、友人達に謝罪をしようとする響だが…

 

「なーに言ってんの!アイスは逃げないんだから早く行った行った!」

「帰ったら皆で遊びに行きましょう。だから無事に帰って来て下さいね」

「前の分まで大暴れしてきていいわよ、アニメのヒーローみたいにね!」

 

「みんな…」

 

 友人達は笑顔で響を送り出してくれた。その事に嬉しくなる響、そして…。

 

「響」

 

「未来」

 

 

「…いってらっしゃい♪」

 

 

「――うん、行ってきます!」

 

 未来に背中を押され響は走り出す。その足取りは力強いものだった。

 

 

 

「…ねぇ、アンタあいつに何言ったのよ。いくらなんでも変わりすぎでしょ⦅ジト目⦆」

 

「それは気になるけど…どうなのさ、ヒナ?」

 

「ふ、二人ともそんな…確かに私も気になりますけど」

 

 響を見送った後、残った友人達は彼女の変化について話をしていた。

 

 

「え、えっと…恥ずかしいから秘密、かな♪」

 

 

 しかし未来の答えはコレである。一体どんな話をしたのだろうか…。

 

「あ~はいはい、ご馳走様でした⦅呆れ⦆」

 

「え~、余計に気になるじゃんか! 教えてよ~!⦅好奇心⦆」

 

「は、恥ずかしい事ですか…⦅赤面⦆」

 

 

「えぇ…⦅困惑⦆ ただ話をしただけなんだけど…」

 

 こうして友人達は楽しそうに会話を続けながら通学路を歩く。その表情からも復調した響の勝利を全員が信じている事は明白だった。

 

 

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「響ちゃんとの合流を確認、今から現場に急行させます」

 

「うむ」

 

 S.O.N.G.司令室はアルカノイズの出現を察知した事で大忙しになっていた。避難誘導のための人員の手配、怪我人の治療のための手配、上層部や装者達への連絡など仕事は山盛りである。

 

「司令、僕も現場に急行します。響さんのサポートはお任せください」

 

「ああ、頼んだぞ緒川」

 

「はい!」

 

 司令室が慌ただしくなる中NINJA緒川も単独で現場に向かった響のサポートのために動き出し、司令室の扉に手を掛けるのだが…。

 

 

「はぁっ、はぁ…ま、間に合った…」

 

「――ク、クリスさん!?」

 

 扉を開けた先に一人の人間がいた。そう、雪音クリスである。息を切らしている様子から彼女はどうやら本部へと急いで来たようだが、なぜそれ程急ぐ必要があったのだろうか…。

 

 

「あたしも連れてけよ、あの馬鹿一人じゃ何仕出かすか分かんないからな」

 

 クリスの目的は現場に同行する事だったようだ。こんな風に憎まれ口を叩いているが、彼女はおそらく響の事が心配なのだろう。

 

「で、ですが今のクリスさんは――」

 

「危険だぞ、分かっているのか?」

 

「当然、それでもあいつ一人を行かせる気はあたしには無いんだよ」

 

「ならば良し! 緒川、連れて行ってやれ」

 

 クリスの目を見て弦十郎はそれが本気だと悟り許可を出した。そうしなければ彼女は一人で飛び出してしまうだろう、と彼は推測したのも理由である。

 

「司令――分かりました、行きましょうクリスさん。詳しい状況は車内で話します」

 

「りょーかい…サンキューな、おっさん」

 

「――ふっ、礼は後で無事に帰って来てからで構わん。気を付けてな」

 

 こうして二人は司令室を飛び出し現場に向かった。それを見送った後、弦十郎はモニターを見てポツリと呟いた。

 

 

「…君の、君達の目的は一体何なのだろうか…」

 

 

 弦十郎が見つめるモニターの画面には、愉快そうに笑う一体の人形の姿が映っていた。

 

 

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「到着しました。どうぞ」

 

「は、はい、ありがとうございました。行ってきます!」

 

「はい、お気をつけて」

 

 現場近くに到着した響は車を降り、ノイズがいる場所へと走り出した。

 

「…やっぱりガリィちゃん、なのかな?」

 

 響はこれがオートスコアラーの仕業であると車内で聞いていたが、それにガリィが絡んでいるかは分からなかった。会いたいようなそうでないような…響は複雑な感情を抱えたまま現場に急行し、そして…。

 

 

「や~っと来てくれたのね♪ 待ちくたびれちゃったわ☆」

 

「立花、響…」

 

 早くも三度目の邂逅を果たした。

 

 

 

「ガリィちゃん! それに、それに…え~っと…それに…⦅ド忘れ⦆」

 

「…レイア・ダラーヒムだ」

 

「ちょっと響ちゃんそれは酷くない…? あの不良品…エルフナインから私達の事を聞いてないのかしら?」

 

(聞いた上で忘れてる方に賭けます)

(私も!)

(こんなの賭けにならないんだよなぁ…)

 

 そして出会って一分と経たずにシリアスは崩壊した。ちなみに原因は響のド忘れであった⦅悲しみ⦆

 

「あっ、あはは~、聞いてたんだけどその…ご、ごめんなさい!」

 

「言い訳せず即座に謝罪したのは、私としては地味に好感触だが」

 

「えっ、許してくれるんですかっ?」

 

「…そもそも怒ってなどいない」

 

「そ、そっかぁ~。よかったぁ~」

 

 

「…なんだこれ」

 

(レイア姉さんも少し天然入ってるところがあるから…⦅遠い目⦆)

(この雰囲気で戦闘になるんですかねぇ…)

 

 そしてこの二人の会話である。レイアと響、実は組み合わせるとマズい事になるのでは…ガリィは戦慄していた。

 

「…立花響、今日は雪音クリス、風鳴翼に続きお前の戦闘能力を奪いに来た」

 

「っ!?――つまり、ノイズは囮って事ですか!」

 

「その通りだ。地味に理解が早くて助かる」

 

「いやレイアちゃんの言葉を聞いたら誰でも分かるでしょ…というか急に真面目に戻るのやめてほしいんだけど⦅困惑⦆」

 

(ガリィちゃんがツッコミ担当になってる⦅驚愕⦆)

(独特なペースの会話だなぁ)

(意外と相性いいのかな、この二人)

 

 二転三転する会話内容に流石のガリィも困惑気味である。ちなみに当の二人は大真面目に会話しているのでガリィの言ってることがよく分からない様子だった⦅天然⦆

 

「…そこの森の中に開けた場所があるわ。邪魔が入ると面倒だしそこで戦いましょうか」

 

 ガリィはそう言うとノイズを全て撤収させ、建物から飛び降り響の目の前へと着地した。

 

「あれは…前に翼さんとクリスちゃんが戦った…」

 

「そうだけど――そんな事より響ちゃん、今日は素敵な歌を聞かせてくれるのかしら?」

 

(さて、響ちゃんの調子はどうかな…?)

(これでダメなら帰るしか選択肢が無くなるという…⦅悲しみ⦆)

 

 ガリィが言う森の中の開けた場所、それは以前ネフシュタンの鎧を纏ったクリスと翼が戦闘を行った所だった。しかしガリィはそんな事より響の状態が気になっていたようで、意地の悪そうな表情で響の状態を探る事にしたようだ。

 

「っ…うん、大丈夫だと思う。親友が…未来が教えてくれたから」

 

(キター!未来さんあざーっす!)

(やったぜ)

 

「あら、素敵な友情ね♪ 内容は教えてもらえないの?」

 

「あはは、恥ずかしいから秘密だよ~。…もう少し仲良くなったら教えてあげるね」

 

(※敵同士の会話です)

(ユルユルやんけ!)

 

「ふ~ん、それは敵同士なんだし無理そうね、ざ~んねん♪ さて、それじゃ行きましょうか。レイアちゃんもいい?」

 

「私はいつでも構わない」

 

 こうして緩い空気のままガリィ達は森の方へと歩き出すのだった。

 

 

 

「ガリィちゃんガリィちゃん! クリスちゃんがね、すっごい怒ってたんだよ!気を付けてね!」

 

「あ~、やっぱり? まぁガリィとしてはその方がやりやすくていいんだけど」

 

「駄目だよ~、仲良くしないと師匠にガツーン!ってされても知らないよ?」

 

「…それは困る、というか死ぬわね多分⦅確信⦆」

 

「風鳴弦十郎、如何程のものか見てみたいものだが…」

 

 なお道中の会話もこんな感じである。君達さぁ…⦅呆れ⦆

 

 





次は真面目な話にしたいと思います。⦅目逸らし⦆

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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