ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第五十九話です。




第五十九話

 

 

「どうやら響さんは二体のオートスコアラーと共に森の中へと向かったようです」

 

 NINJA緒川と雪音クリスは車で現場へと急行していたがその最中に司令本部から連絡が入り、戦場が森の中へと移った事を知った。

 

「…もしかして、あたしと先輩が戦った場所、なのか?」

 

「その通りです、彼女達は開けた場所で戦闘を行うつもりなのでしょう。僕達も急がないと」

 

「…あの馬鹿、何も考えずにのこのこ敵に付いて行ったんじゃないだろうな…⦅半ギレ⦆」

 

「…周辺に被害を出さないため敵の誘いに乗ったのでしょう、きっと⦅目逸らし⦆」

 

 二人は微妙な気持ちを抱えたまま戦場へと向かう。なお響が本当に周辺の被害について考えていたかは謎である。

 

 

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「さぁて、この辺でいいかしら。 早速始めましょうか♪」

 

「その前にガリィちゃん、ちょっといいかな?」

 

 ガリィ、レイア、響の三人は森の開けた場所に到着し戦闘を開始しようとしていた。しかし響が何かガリィに言いたい事があるようで、ガリィを引き留めるのだった。

 

「何かしら? 先に言っておくけど、説得しても無駄だからね」

 

(ほんとぉ?)

(本当だよ!多分ね!⦅適当⦆)

 

「…ううん、違うよ。一つだけ伝えたい事があるんだ」

 

「伝えたい事、ねぇ…」

 

 響は真剣な表情でガリィを見つめていた。そしてガリィもそんな彼女をいつものとは違う真面目な表情で見つめ返した。そして…。

 

 

 

「ガリィちゃんが何を背負っているのかは私には分からないけど――」

 

 

「っ!?――アンタ、一体何を――」

 

 

「何があっても私と未来は貴方の味方だから、その事を覚えていてほしいんだ」

 

 

「…」

 

≪秋桜祭で言った事、未来ちゃんは覚えていたのね…≫

 

(あぁ、成程ねぇ…)

(一回だけ本音零してたな、そういえば)

(相変わらず隙だらけなんだからも~!)

 

 この瞬間、ガリィは自身がミスを犯していたことを思い出した。秋桜祭の日の別れ際、未来に本音を零してしまっていた事である。恐らくそれが未来から響へと伝わってしまったのだろう。

 

「ふぅん、何のことだか分からないけど…そんな事でガリィは手加減してあげないわよ?」

 

「うん、分かってる。だから――」

 

 響は大きく息を吸い込み、そして…。

 

 

「私が勝ったら、ガリィちゃんは連れて帰るねっ!⦅爆弾発言⦆」

 

 

「――――――は?」

 

(は?)

(えぇ…⦅困惑⦆)

(人攫いが出たぞー!⦅混乱⦆)

 

「ガリィは私達にとって重要な仲間だ。お前達に渡すわけにはいかない⦅真面目な返答⦆」

 

 響はとんでもない事を言い放った。これにはオートスコアラー二体も困惑…いや、レイアは無表情なまま真面目に返答していた。

 

「はい! だから私は勝ちます!」

 

「ちょ、ちょっと! アンタ何言ってんのよ馬鹿じゃないの!?」

 

(この二人の会話は分かんねぇや!⦅思考放棄⦆)

(レイア姉さんは安牌だと思ってたのになぁ…)

 

 そして響も何故かクソ真面目に返答した後にギアペンダントを取り出す、そして…。

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron…」

 

 

 立花響は再び、ガングニールのシンフォギアを纏う事に成功した。

 

「…どうやら口だけでは無いらしい」

 

「いやいやおかしいでしょアンタ達! 何でそれで会話が成立してるのよ!?」

 

(もう早く戦って帰ろう、なっ!)

(この二人の勝負とか一体どうなってしまうのか…⦅戦慄⦆)

 

 その姿を見たレイアは響が完全に復調したことを悟っていた。なおその横にいるガリィはそれどころではないのでテンパっているところである。

 

「未来も、皆も、そしてガリィちゃんも! 私とガングニールが、守る!」

 

「話を聞きなさいよ頭お花畑のどんくさ娘! あぁもうレイアちゃん!あの馬鹿娘を懲らしめてやりなさいな!」

 

(時代劇に出てくる悪役かな?)

(二人とも頑張れ~!⦅観戦⦆)

 

「そうか…立花響、私が相手になるとしよう。どこからでもかかって来るがいい」

 

「はい! 立花響、行きます!」

 

 響への宣戦布告を終え、レイアはコインを指の間に挟み戦闘態勢を取った。そしてそれを見た響は右拳を握り込みレイアとの距離を詰めるため走り出す。こうして一時はどうなる事かと思ったが無事に戦闘は開始されるのだった。

 

 

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「こっちですクリスさん!」

 

「分かった! …あいつ、エルフナインを追い掛けてた…それに!」

 

 正にレイアと響が戦闘を開始する瞬間、NINJA緒川とクリスは現場へと辿り着いた。周囲には戦闘を始めたレイアと響、そして…。

 

 

「あいつ!やっと見つけた!」

 

 

「クリスさん!?」

 

 ソレを見つけた瞬間、クリスはソレがいる場所に向かって全力で走り出した。慌てて追いかけるNINJA緒川だが、その前にクリスはソレの下に到着し、そして…。

 

 

「おいっ!」

 

「――ん~? あら、なんだか騒がしいと思ったらアンタも来――」

 

 

「死ねっ!!!」

 

 

(残当)

(これは避けちゃ駄目だゾ)

 

 クリスはガリィに向かって全力のドロップキックを繰り出した。

 

 

「――ざ~んねん♪ ハ・ズ・レ☆」

 

(えぇ…⦅困惑⦆)

(避ける…いや、防ぐのか⦅戦慄⦆)

 

 しかしガリィはそれを予期していたのだろうか、半透明の盾を展開しそれを防いで見せたのである。ちなみにこの時のガリィの表情はクッソ腹立つものだった。これにはクリス激怒不可避⦅火に油⦆

 

「っ! お前、なんで!なんでだよクソっ!」

 

(クリスちゃんめっちゃ怒ってるじゃんか!)

(そりゃ怒る、誰だって怒る)

 

「相変わらず情緒不安定な奴ねアンタ。ちゃんと説明してあげるから今は目の前の戦いを見守りなさいな」

 

「はぁ!? あたしに指図すんなバカ!」

 

(残当)

(嫌われちゃいましたねぇ⦅悲しみ⦆)

 

 もはやガリィが何を言っても無駄なのではと思うほどクリスはヒートアップしていた。このままではガリィVSクリスが始まってしまいそうな勢いである。

 

「落ち着いて下さいクリスさん! …一昨日もお会いしましたね、僕はS.O.N.G.に所属している緒川慎次といいます」

 

(NINJAさんこんにちわ~)

 

「あら、これはご丁寧にどうも。アタシはガリィ・トゥーマーン、敵同士だからよろしくはしないわよ」

 

 以前にも顔を合わしていた二人は無難に挨拶を交わした。NINJA緒川も前回の事でガリィという人形については警戒度を少し下げたのだろう。

 

「…はい、分かっています。クリスさん、今のあなたが危険に飛び込むのはS.O.N.G.の職員として、そして僕個人としても許容できません。分かっていただけますか?」

 

「…分かったよ。でもコイツが真面目に説明しなかったらその時は知らないからな!」

 

「はいはい、分かったわよ。ただし危ないから二人とももう少しこっちに来なさい、流れ弾に当たったら普通に死んじゃうわよ」

 

(変なところは優しいんだからも~!)

(いやレイア姉さんのコイン当たったら普通に死ぬから⦅真顔⦆)

 

 そしてガリィはクリスを宥めるため話し始めた。なお話を聞いたところでクリスが落ち着くかは未知数な模様⦅悲しみ⦆

 

 

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「シッ!」

 

「はぁっ!!」

 

 レイアと響の戦闘の始まりはコインを射出するレイア、それを拳で叩き落す響という形で開始された。

 

「(叩き落された…だと?)」

 

「(うそっ!? 手が、痺れてる!?)」

 

 そしてレイアが初撃を終えた後の両者は内心で驚愕していた。レイアはコインを簡単に叩き落された事に、そして響はその予想外の威力にである。

 

「…次だ」

 

「っ!? 連続で撃てるの!?」

 

 響の能力が予想以上に高い事を理解したレイアは様子見をやめて大量のコインを連続で射出する。それに驚いた響は慌てて回避行動を取りつつ、直撃コースのみを叩き落していく、そして…。

 

「近付かせなけば脅威にはならないと思っていたが…」

 

 

「はぁ~、危なかったぁ…」

 

 

「それは私の地味な慢心だったようだ」

 

 レイアの攻撃が終了した時、響は無傷のままであった。その姿を見たレイアは珍しく僅かに驚いた表情を見せ、響の評価を更に上方修正していた。

 

「よし! 今度はこっちから行きますっ!」

 

「来い、派手に撃ち落としてやろう」

 

 そして次は響の攻撃ターンのようだ。驚異的な加速で距離を詰めようとする響に対し、レイアはコインでの迎撃を選択する。だが…。

 

「うおぉーーーーーっ!!」

 

「…やはり止められはしないか。想定通りだ」

 

 コインは撃ち落とされ響はもはや目の前まで迫っていたが、何故かレイアは落ち着いた様子であった。そしてレイアへと響の右拳が振るわれたが…。

 

「甘い」

 

「っ!? コインだけじゃないの!?」

 

 それはレイアが錬成したトンファーによって防がれていた。どうやら響を止められないと判断したレイアは近距離で響の拳を防御し、反撃に移る気だったようだ。

 

「…重いっ…!」

 

 しかしレイアは反撃に移る事はできなかった。響の拳の威力が予想以上に重く、両手に構えたトンファーは破壊寸前という無残な状態になっていたのが理由だった。

 

「っ!」

 

「っ!」

 

 そしてその隙に両者はお互いに距離を取った。響は反撃を、そしてレイアは追撃を警戒したのである。

 

「(立花響、予想以上の派手な強さだな…)」

 

「(隙が無い…でも、接近戦しか私には勝機はないんだ!)」

 

「(ならば…)」

 

「(それなら…)」

 

 同時に距離を取った二人の思考はこの時、偶然にも一致していた。

 

 

「(肉を切らせて)――」

「(肉を切らせて)――」

 

 

「「(骨を断つ⦅!⦆)」」

 

 

 相手の強さを認めた二人は同時に覚悟を決め、渾身の一撃を繰り出す構えを取った。その結果は、果たして…。

 

 

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「お前さぁ…⦅呆れ⦆」

 

「何よ、理由ならちゃんと説明したでしょうが⦅ジト目⦆」

 

(理由になってないんだよなぁ…)

(でも、それ以外に説明しようがないし…)

 

 レイアと響が激戦を繰り広げる一方、クリスは戦闘を見守りながらガリィの話を聞き、そして呆れていた。

 

「あたし達の監視をしてたのは分かったし納得した。だけどな…」

 

「はぁ?それならいいじゃない」

 

 どうやらクリスはガリィが監視していた事には納得したようだが、他にもまだ言いたい事があるらしい。

 

 

「あたし達に接触した理由が何も無いってのはなんだよ! そんなの納得できるかバカ!」

 

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(うん、ガリィが悪い⦅無条件降伏⦆)

 

 そう、クリスはこの事に怒っていた。しかしガリィは実際何も考えていないため弁明のしようなど無いのだが…⦅呆れ⦆

 

「? 理由ならあるわよ、ひ・ま・つ・ぶ・し♪」

 

(あのさぁ…⦅呆れ⦆)

(なんでや!立派な理由やろ!⦅やけくそ⦆)

 

「はぁ!?そんなの理由になるか! クソ!なんであたしにはこいつを殴るためのギアが無いんだよ…!⦅憤怒⦆」

 

 クリスはこの時ほどギアが無くて悔しいと思った事はなかった。実際にイチイバルが健在ならば確実にガリィの体に銃弾を叩き込んでいただろう。⦅残当⦆

 

「…お話し中失礼します。ガリィさん、あなたの主であるキャロル・マールス・ディーンハイムの目的は一体何なのですか?」

 

「…前にマスターがアンタ達に言ったはずよ、『世界を破壊し万象黙示録を完成する』ってね」

 

「何故そのような事を…? それは本当に世界を破壊する必要がある事なのですか?」

 

「え~、ガリィは人形だから詳しい事は分かんな~い♪ だからそれはマスターに直接聞くのがオススメよ☆⦅すっとぼけ⦆」

 

(直接そんな事聞いたらすっごい怒られると思うんですけど⦅名推理⦆)

(つまり聞くなって事だよ言わせんな恥ずかしい)

 

「…答える気は無い、という事ですか」

 

 クリスが頭を抱え唸っている間にNINJA緒川が情報を得るためガリィへと質問するのだが、当のガリィに答える気は無いようで彼女は明らかにはぐらかそうとする様子を見せるのだった。

 

「ほらほら、そんな事よりそろそろ決着が着くみたいよ。というか響ちゃんって本当にすごいわね、レイアちゃんとここまで戦りあえる時点で相当なものよあの子」

 

(うん、本当にすごいや)

(原作でもミカちゃんとやりあえてたしねぇ)

(これ、レイア姉さん大丈夫かな…?)

 

「…確かに今日の響さんはいつも以上の力を発揮できているようですね」

 

「これは大番狂わせ…いや、やっぱりないわね。レイアちゃんが負けるはずないもの」

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(君便乗してばっかりやなぁ)

(ガリィちゃんが珍しく仲間を褒めてる…⦅驚愕⦆)

 

 ガリィは大番狂わせが起きる事を一瞬だけ考えたがすぐに訂正した。その理由は戦っているのがレイア・ダラーヒム、オートスコアラーの二番手の実力者でありトータルの性能ではミカにも引けを取らない彼女への厚い信頼であった。

 

 

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「(3、2、1…今っ!)」

 

「…来るか」

 

 響とレイア、二人の戦闘はクライマックスを迎えていた。覚悟を決めた響がレイアに向かって全力で加速し突撃を開始、対してレイアは大量のコインでの迎撃を選択する。

 

「はあぁーーーーっ!!!」

 

「(避けないか…私と同じ選択をしたな、立花響!)」

 

 響はコインを避ける事すらしなかった。その理由はギアの全推進力を前進するために消費していたためで、彼女はコインを弾き飛ばしながら速度を落とさず突撃を続ける事を選択したのである。

 

「…来い」

 

 その姿を見たレイアはコインの射出を止め、トンファーで迎撃する構えを取る。そして…。

 

「うおぉぉぉぉぉぉーっ!!!」

 

「ぐっ…!!!」

 

 響の渾身の一撃はレイアのトンファーを破壊し、その勢いのままレイアへと襲い掛かるが、しかし…。

 

「(そ、逸らされたの!?)」

 

「――腕の一本、お前にくれてやる…だが――」

 

 しかし響の脳内は疑問に満ちていた。レイアはトンファーの一本だけを使い、防御というよりは受け流すような手捌きで響の右拳を受けたのである。その結果、僅かに逸らされた響の一撃はレイアの左腕の関節より下を完全に破壊したが…。

 

 

「――がはっ!!!」

 

 

 次の瞬間、レイアが右腕に構えたトンファーが響の腹部に痛烈な一撃を加え彼女を吹き飛ばした。

 

 

「(私が人間であったならば痛みで迎撃など不可能だったのだろう、だが…)」

 

 

 そして間髪入れずにレイアはコインを射出し、そのコインは正確に響の首元へと向かい、そして…。

 

 

「――うぁっ」

 

 

「これで終いだ。(私は人形で、そしてお前は人間だ)」

 

 

 響のギアペンダントを正確無比に打ち抜いた。

 

 

 

「お前は強い。私とお前との差は痛みを感じるかどうか、それだけだ」

 

 

 

 こうして戦闘可能な最後の装者である響のギアペンダントは破壊された。この事により彼女達は確実に呪いの旋律へと手を伸ばすだろう、それがとある錬金術師の思惑通りだと知らぬままに…。

 

 





どや?真面目に戦ってたやろ?(ドヤ顔)

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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