ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第六十二話です。




第六十二話

 

 

「さ~て、どこからでもかかって――」

 

「ガリィ、かくごぉーっ!」

 

(先制はザババコンビの切歌ちゃんだぁーっ!)

(大鎌を振りかぶっていますね。解説の私達さん、これは…)

(あー、これはガリィの首を刈り取ろうとしていますね、間違いないです⦅節穴⦆)

 

 ガリィと二人組との戦闘、その先手を取ったのは切歌だった。彼女は大鎌を振りかぶると、ガリィへと真っ直ぐに突進して行く。

 

「…(もしかして奇襲のつもりなのかしら? …いや、これは違うわね)」

 

「いただきデェェス!!(狙いは…腕! レイアって人形が腕を吹っ飛ばされても平気なら、ガリィも大丈夫なはずデス!)」

 

 イガリマの大鎌がガリィの体を切り裂かんと迫る。しかし…。

 

「はい、残念♪ お返しよ☆」

 

(おっと、これはガリィの盾によって防がれてしまいました)

(避けもせずに防御ですか。解説の私達さん、これは…)

(間違いなく調子に乗っていますね。相手がミカちゃんの時は必死の形相で避けていますから)

 

 大鎌はガリィの体に当たる直前、半透明の盾に阻まれ勢いを完全に止められてしまう。そして当然、動きを止めた切歌はこのままではガリィの反撃をまともに食らってしまうのだが…。

 

「――まだデス!」

 

 しかしそれは切歌達の想定内の状況だった。そう、彼女達の目的は最初からガリィに防御させる事だったのである。

 

「当たって!」

 

 次の瞬間、ガリィの展開した盾に二枚の丸鋸が突き刺さる。実は切歌が突進を始めた瞬間に調も攻撃を放っており、彼女は切歌に丸鋸が当たらない様に二枚の丸鋸を縦に射出、それが切歌の後方から現れガリィの盾に襲い掛かったのである。

 

「…まあまあの連携ねぇ。だ・け・ど・勉強不足かしら☆」

 

(どうやら二人の目的は同時攻撃による盾の破壊だったようです)

(これはガリィが防御する事を読んでいた、という事でしょうか?)

(あの半透明の盾は装者達に何度も見られていますからね、読まれていても不思議ではないでしょう)

 

 しかしガリィは不敵な表情を崩さない。そして…。

 

「どっ、どうして壊れないんデス!?」

 

「削れてはいるのに、どうして…!?」

 

 盾は依然健在のまま二人の攻撃を凌いでいた。イガリマは確かに盾に突き刺さり、シュルシャガナは盾を削り続けているのに何故貫くことができないのか二人には理解できなかった。

 

 

「特別に教えてあげる♪ ガリィの盾はね、非力な攻撃や手数だけの攻撃には滅法強いのよ☆」

 

 

(解説の私達さん、これは一体どういう事なのでしょうか…?)

(実はガリィの盾はですね、強力な一撃には弱い反面そうではない攻撃に強いという特性を持っているんですよ)

(丸鋸に削られている部分をよく見て下さい、削られたところが再生していくのが分かるでしょう? これはガリィが削られる度に想い出をぶち込んでその部分を修復し続けているんですよ)

 

「っ! ど、どういう事!?」

 

「切ちゃん、一旦下がって!」

 

 ガリィに二人の攻撃が届かなかった理由、それはガリィ曰く盾の性質にあるらしい。余裕ぶってわざわざ説明するところが相変わらず小物臭溢れているガリィだが、当然そんな事をしている間に切歌は後ろへと下がってしまう。

 

「あら、まだ説明中なんだけど…まぁいいわ、後はアンタ達が自力で理解しなさいな」

 

(な、なんとガリィの指導方針はスパルタ、スパルタです! 自分には甘すぎるガリィですが他人には厳しいようです!)

(これは印象点にマイナスが…あ、既に印象点はゼロ、ゼロのようです!つまり減点の心配は不要です!)

 

「なんデスか今の!? あんなの反則デース!」

 

「最弱…嘘だったの?」

 

「はぁ?無敵でも何でもないし嘘じゃないわよ。 …うーん、じゃあヒントをあげましょうか。そうねぇ、アンタ達の中なら響ちゃんが一番楽に盾を壊せるかしら」

 

(おっと、ここでガリィ選手ヒントを出しました。その表情は余裕に満ちています!)

(つまり、ビッキーが放つような強力な一撃なら破壊できると言いたいんでしょうね)

(というか弱点を教えて大丈夫なんですかね? 今後の戦いに影響するんじゃ…)

 

 普段ミカとの勝負で散々劣勢を強いられているガリィは、自分が圧倒的有利な状況をこれ以上ないくらいに楽しんでいた。ちなみに追手が迫っている事には当然気付いていない模様⦅悲しみ⦆

 

「響さん…? それって――」

 

「ガツーンってやれば壊れるって事デスか!?」

 

「…さあね~♪ ま、色々試してみればいいんじゃない?(何言ってんだコイツ)」

 

(解説の私達さん、これは…)

(あー、これは答えるのが面倒臭くなってはぐらかしましたね。ガリィの悪い癖です)

 

 切歌は恐らく正解に辿り着いたが、その表現がアレだったのでガリィはこれ以上サービスする事をやめた、というか面倒臭くなった。

 

「…ガリィ、もしかして面倒臭くなった?⦅ジト目⦆」

 

「…さぁ仕切り直しよ!⦅目逸らし⦆ 今度は素敵な歌を聞かせてくれるんでしょうね?」

 

(おっと、調ちゃんにはバレているようです。ガリィ思わず目を逸らしてしまいました!)

 

「?? 二人とも、どうしたんデスか?⦅気付いてない⦆」

 

(切歌ちゃんは気付いていないようですね、彼女を傷つけないためにもさっさと戦闘を再開しましょう)

 

 そして微妙な空気のままに戦いは仕切り直しとなった。…果たして二人は強大かつ凶悪なオートスコアラー・ガリィに勝利する事ができるのか…? 二人の辛く険しい挑戦は続く…⦅軌道修正⦆

 

 

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 S.O.N.G.司令室、そこには連絡を聞いた仲間達が続々と集結していた。

 

「あ、あのっ! 調ちゃんと切歌ちゃんは大丈夫なんですか!?」

 

「ひ、響さん!?」

 

「響、落ち着いて!」

 

 休日を未来とゆったり過ごしていた響もその例外では無く、彼女は司令室に到着した途端、NINJA緒川へと説明を求め詰め寄るのだった。

 

「だけどさ未来~、こんなの落ち着いていられないよぉ…。二人が危ない目に遭ってるかもしれないと思うと私、わたしぃ~!」

 

「あの、もしかして響さんは…」

 

「はい、最後まで聞く前に寮を飛び出しちゃいました…。はぁ…響がご迷惑をおかけしてすいません…⦅溜息⦆」

 

 NINJA緒川の予想通り、響は慌てて寮を飛び出してしまったらしい。そして未来もその後をすぐ追いかけたため、二人は詳しい内容を聞けずじまいだった。

 

「そ、そうですか…。それでは響さん、とりあえず落ち着いて概要を聞いて頂けますか?」

 

「え~! そんな――」

 

 

「今回出現したオートスコアラーはガリィさん一体ですし、それに既に翼さんと司令が救援に向かっています」

 

 

「暇なん、て…――――――――へ?」

 

 

「…ガリィちゃん、昨日も来てたのに…⦅困惑⦆」

 

「貴方も私と一緒で早とちりなのね…⦅遠い目⦆」

 

「ちなみにあいつらは馬鹿人形と仲良さそうに歩いて行ったらしいぞ⦅半ギレ⦆」

 

 

 未来はガリィの脅威の出現率に困惑し、そして同時に『もしかしてあの子、向こうで虐められて居場所が無いのでは…』とも考えていた。ちなみにそれは間違いであり、虐められているのはガリィではなく主の方である⦅悲しみ⦆

 

 

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「全然駄目ね、馬鹿の一つ覚えで半人前のアンタ達がガリィの防御を突破できるわけないでしょうが」

 

「っ!――そんな事ない! あたしだって、あたしだってぇー!!!」

 

「はい、隙あり~♪」

 

「――うあっ!?」

 

(解説の私達さん、二人は依然ガリィの防御を突破できないようですが…)

(う~ん、お互いがお互いを心配しすぎるあまり攻撃が読みやすくなってしまっていますね)

(横に並んで、というよりお互いが相手を庇うように前に出ようとしているような印象です。これでは原作のようなユニゾンの威力は発揮できないでしょうね)

 

 戦闘が再開されて数分、切歌と調は依然ガリィの盾を突破できずにいた。現在は切歌が接近戦を仕掛け調が禁月輪で疾走しながら隙を伺っているのだが、ガリィの言葉に動揺させられた切歌が大振りになってしまったところでガリィの反撃⦅手加減⦆を受けてしまうのだった。

 

「――切ちゃん!」

 

「味方に気を取られて足を止める。 アンタの悪い癖ね、それ」

 

「っ!? きゃっ!?」

 

(おっとガリィコーチ、致命的な隙を見せてしまった二人に容赦無く水球をぶつけました!)

(…痛くなければ覚えませぬ⦅真顔⦆)

(実際に今のは相手がガリィで無ければ終わってたくらいには致命的だゾ)

 

 そして気を取られ足を止めてしまった調もガリィに水球⦅手加減⦆をぶつけられてしまう。ガリィと切歌達、両陣営最弱同士の対決は一方的な展開となっていた。

 

「…ねぇ、お互いに足引っ張り合って楽しい? アンタ達本当は相手の事なんかどうでもいいんじゃないかしら」

 

(おっとガリィコーチ、ここにきて精神攻撃を選択しました! 正に畜生人形の名に偽りなし!)

(ふ、二人のために必要な事だから…きっと、恐らく、多分…⦅目逸らし⦆)

(ミカちゃんが多分原作より強くなってるから二人には頑張ってもらわないといけないからね、仕方ないね)

 

「――そんなことない!! あたしは…あたしが、調を守るんデス!!!」

 

「私だって切ちゃんを守りたい…だから!!」

 

 ガリィの言葉に動揺した二人は再び立ち上がり戦おうとするが…。

 

「はぁ…このままで立っても無駄なんだから寝てなさい」

 

「「――っ!」」

 

 ガリィの放った水球によって再び転倒させられてしまう。倒れた二人は立ち上がる気力も失せてしまったのか、うつむいたままだった。

 

「…うっ、ひっく…しらべぇ、わたしは、わたしはぁ…」

 

「切ちゃん…私のせいでごめん、ごめんね…」

 

 

「…ちょっと聞きたいんだけど」

 

(ガリィコーチ、半泣き状態の切歌ちゃんを見てもまるで表情を変えません!正に鬼、鬼デス!)

(ここから一体どうする気なんですかねぇ…)

 

 そしてとうとう二人はうつむいたまま泣きだしてしまう。その様子をガリィは黙って見つめていたが、やがてつまらなそうな表情で口を開いたのだった。

 

 

「アンタ達、どうして二人でかかって来ないの?」

 

 

「「――えっ?」」

 

(おっと、精神攻撃はここまでのようです。ガリィコーチ、先程より柔らかい表情で二人に語り掛けています!)

(酷い扱いをした後に優しく接する…これは…⦅戦慄⦆)

(悪魔、ですかね…⦅遠い目⦆)

 

 ガリィは二人に対し語り掛けるが、彼女達はガリィの言葉の意味が理解できなかった。一体彼女は何を言っているのだろうか…?

 

「は? もしかしてあれで二人で戦ってたつもりなの? だとしたら滑稽過ぎて笑えるんだけど♪」

 

「つもりも何も…」

 

「私達、ちゃんと二人で戦って…」

 

(どうやら無自覚だったようですね)

(お互いを大切に思い過ぎるあまり足を引っ張り合ってしまうとは、なんという…)

(さぁ、ここからが詐欺師ガリィの腕の見せ所だゾ~!)

 

 彼女達はこの戦闘中、ずっと『二人で』戦っていたつもりだった。しかしガリィが言うにはそうでは無いように見えたらしい。

 

「ふ~ん、それならガリィが片方を攻撃しようとする度にもう片方が庇うように突っ込んで来たのは何だったのかしら?」

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(あ、便乗君じゃーん! ちーっす!)

(また濃いキャラが出てきちゃったなぁ…)

 

「そ、それは――」

 

「切歌、アンタが最初に突っ込んで来たのは自分が危険な近距離での戦闘を引き受けるため」

 

「っ!?」

 

 反論しようとする切歌だが、それはガリィの次の言葉によって掻き消されてしまう。ガリィの言葉を聞いた切歌は驚愕を露にし目を見開いていた。

 

「き、切ちゃん…?」

 

「調、アンタが常に切歌を視界に入れているのはこの子が窮地に陥るのを絶対に見逃さないため」

 

「そ、それは…」

 

 そして調も、切歌と同様にガリィの言葉によって口を噤んでしまう。最早この場で聞こえる声はガリィの発するもののみ、それが二人の心を抉るように響いていた。

 

「違うかしら? 違わないのであればアンタ達はお互いを信頼してなんかいない、ただ心配しているだけよ」

 

 

「っ――――」

 

(解説の私達さん、これは…二人とも顔を蒼白にしているようですが…)

(今まで無意識に行っていた事をガリィに指摘され、それが間違いでない事に気付いてしまったようですね)

(成程…これは精神的にかなり辛いでしょう)

 

 そしてガリィは二人に最後の言葉を放つ。二人はお互いの顔を見合わせ、そしてまた顔を伏せてしまうのだった。

 

 

「あらあら、何も言い返せないって事は図星なのかしら? 気に障ったのなら~☆ごめんなさいね♪」

 

(解説の私達さん、これは…)

(畜生ですね、謝る気なんて毛ほども無い事が容易に窺えます)

(…おっと、切歌ちゃんがガリィを睨んでいますね。残当)

 

 ガリィの言葉を黙って聞いていた二人だったが言葉を言い終わった後、顔を上げガリィを睨み付けた少女が一人。そう、暁切歌である。

 

 

「…れの…が…いんデスか」

 

 

「…? 何、聞こえないわよ?」

 

 

「それの何が悪いんデスか!!! あたしが調を心配して、守りたいって思う事は間違いなんかじゃない!!!」

 

 

(そうだよ⦅便乗⦆)

(便乗ニキは切歌ちゃん推しなんですかねぇ)

(そうだよ⦅カミングアウト⦆)

(あ、そう…⦅無関心⦆)

 

 切歌は目に涙を溜めながらガリィに言い放った、『私は間違っていない』と。

 

「ふぅん…ねぇ、どうしてアンタは調をそんなに気に掛けるの?」

 

「そんなの! 調は小さな頃から一緒にいた家族で一番の親友デス! だから絶対、絶対に私が守る!あたしは調の事が大好きだから!!!」

 

(解説の私達さん、これは…)

(見事にガリィの誘導に引っ掛かってしまいましたね。後で思い出した時に恥ずかしさで悶絶する事は間違いないでしょう)

(卑劣な誘導だ…)

 

 そしてガリィの卑劣な誘導により、内に秘めた思いをぶちまけてしまった切歌。これにはガリィもニッコリである⦅畜生⦆

 

「…だ、そうよ。 調、アンタも同じ気持ちなんじゃないの?」

 

「――へっ?」

 

「切ちゃん…⦅赤面⦆」

 

(おっと切歌ちゃん、ここで自分の言った事に気付いてしまったか!?)

(蒼白だった顔色がみるみる内に真っ赤になっています! 解説の私達さん、これは…)

(死ぬ程恥ずかしい事に気付いたようですね。 これは違う意味でダメージが大きいですよ⦅他人事⦆)

 

「あ、わわわわわわわわ!!! ち、違うんデス! これはガリィに言わされたようなもので! う、嘘という訳ではないのデスけどその――」

 

「――切ちゃん、私も同じ気持ちだよ。だから落ち着いて、ねっ?」

 

「しっ、調…?」

 

「あら、素敵な友情ね♪それとも家族愛ってやつなのかしら☆」

 

(解説の私達さん、これは…)

(あら^~)

(このシーンを見れただけで大満足なんだよなぁ)

 

 顔を真っ赤にして狼狽している切歌を落ち着かせるため、調は彼女の両手を自らの手で包み笑顔で優しく語り掛けた。

 

「私にとっても切ちゃんは大事な家族で一番の親友だよ。だから私も守りたいって思ってるけど、でも…」

 

「…私だって分かってます…きっと、それじゃ駄目なんデスよね…」

 

「うん、そうみたい。だけど…」

 

「私達、どうすればガリィに勝てるんデスか…?」

 

 一週回って落ち着いた二人は自分達がどうすればガリィに勝てるかを考えるが、当然そう簡単には答えなど出ないだろう。

 

 

「な~にまた小賢しい事考えてんのよアンタ達は。 逆よ、ぎゃ・く!頭空っぽにしてかかって来なさいな」

 

 

「わぷっ!」

「冷たい…」

 

(おっとガリィコーチ、ここで無慈悲にも彼女達の顔に冷水を被せました!)

(原作でいうと『頭でも冷やせやぁ~♪』という事ですかね)

(余計な事を考えない方が強い、はっきり分かんだね)

 

 悩む二人に対しガリィが取った行動、それは難しい顔をしている二人の顔に冷水をぶつける事であった⦅畜生⦆

 

「な、何をするんデスかぁ!⦅憤怒⦆」

 

「ガリィ、酷い…⦅ジト目⦆」

 

「アンタ達がまたドツボに嵌りそうになってたから助けてあげたんじゃない。むしろ感謝してほしいくらいよ」

 

「む~…それで、どういう意味なの?」

 

「そ、そうデス!ガリィの言う事はいっつも意味不明デス!」

 

 しかしガリィは謝るどころか逆に感謝を求めていた。その堂々とした様子に二人はこれ以上怒っても無駄になる事を悟ったのか、ガリィの真意を聞くことにしたようだ。

 

「物分かりが悪いわねぇ…あのね、頭空っぽにして二人仲良くお手々繋いでかかって来いって言ってんのよ。そう…二人並んで(・・・・・ )、ね」

 

「二人、並んで…?」

 

「それで、何か変わるんデスか…?」

 

「ま、騙されたと思ってやってみなさいな。もしかしたらもしかするかもしれないわよ?」

 

(解説の私達さん、これは…)

(とりあえずやってみろ、の精神ですね。恐らく説明するのが面倒臭くなったのでしょう)

 

 ガリィの言葉を聞いても二人はまだ半信半疑な様子だったが、ガリィの表情に嘘が無い事を感じたのか二人はお互いの顔を見合わせ、そして…

 

「「…⦅コクン⦆」」

 

 頷くと、再び立ち上がった。

 

「あら、まだやる気なの?」

 

「…やって、やるデス!」

 

「今度は、負けない」

 

(よしよし、立ち直ったね)

(目にも力が戻ったみたい)

 

「…調、あたしと一緒(・・ )に戦ってくれますか?」

 

「うん、私も切ちゃんと一緒(・・ )に戦いたい」

 

 二人は立ち上がりお互いの手を握ると…。

 

「「~♪」」

 

 別々に歌い戦っていたそれまでとは違い、二人の声を重ねるように歌い始めるのだった。

 

 

「あら、こんなに素敵なデュエットを隠してたなんて知らなかったわね♪ これは期待しちゃってもいいのかしら☆」

 

 

「(行くよ、ガリィ!)」

「(今度こそ、私達(・・ )が勝たせてもらうデス!)」

 

 

 そして、戦いの第二幕が始まる。

 

 

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「これは一体…」

 

 S.O.N.G.司令本部司令室、そこでオペレーター席に座る友里あおいは目を見開き驚愕を露にしていた。

 

「どうかしましたか、あおいさん?」

 

「ふ、二人のフォニックゲイン数値が大幅に上昇中! と、止まりません、更に上昇していきます!」

 

 弦十郎の代理を務めているNINJA緒川がそれに気付きあおいに声を掛けると、彼女は慌てた様子でその理由を語り始めるのだった。

 

「何だって!? 一体何故…」

 

「…あの馬鹿人形の仕業だろ、どうせ」

 

「うん、きっとそうだね」

 

「二人ともすごい、すごいよ! さっきまでと全然違いますよ見てますかマリアさん!」

 

「み、見てる、見てるから服を引っ張らないで! やめなさい!⦅半ギレ⦆」

 

 彼女達が見つめるモニター、そこには見違える様に見事な連携を見せる二人の姿が映っていた。

 

 

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「ちっ、面倒な事になったわね!」

 

(解説の私達さん、これは…)

(自業自得ですね、どうやら眠れる獅子にちょっかいをかけて起こしてしまったようです)

(さっきまでと比べて隙が全く無いですね)

 

「(調っ!)」

 

「(切ちゃん!)」

 

「っ!? あぁもうやりにくいったら!」

 

 戦闘が再開された現在、その戦況は先ほどまでとは明らかに違っていた。これまでは基本片方が接近戦を仕掛けてきていたため、ガリィは容易に対処する事ができていたのだが…。

 

「っ!? 今度はアンタなのね! 今のは惜しかったけどガリィには届かないわよ!」

 

 ガリィは異常な程に高度な連携を見せる二人に翻弄されていた。今も気付けば一瞬前まで後ろにいた調が目の前に迫っており、シンフォギアのスカート部分を刃に変化させ回転しながら突撃して来ていたのである。

 

「(また、防がれた…!)」

 

「(でも、今のは惜しかったデス!)」

 

 その攻撃もガリィの盾によって間一髪防がれてしまうが、二人は先程までとは明らかに違う状況に手応えを感じていた。

 

「(調を心配する気持ちは今でも消えない。だけど…)」

「(切ちゃんを心配するのは今も変わらない。でも…)」

 

 

「((信頼する気持ちだって、それに負けないくらいに!))」

 

 

「っ!やっと捕まえた!まずはアンタから――っ!」

 

 ガリィは目の前にいる調に反撃を繰り出そうとして、次の瞬間慌ててそこを飛び退いた。そしてそれまでガリィのいた場所に振り下ろされる刃、それは…。

 

「(っ!? これでも当たらないんデスか!?)」

 

 ガリィが調に気を取られている内に距離を詰めていた切歌が振るった刃だった。彼女は空振りに終わった事を悔しそうにしているが、劣勢だった先程と比べるとその目は爛々と輝きを放ち続けていた。

 

「ふん!生意気なアンタにお返しよ!」

 

 再び後方へと下がろうとする切歌を逃がすまいと氷塊を射出するガリィ。先程までならこれに気を取られ足を止めてしまっていた調だったが…。

 

 

「(――っ!? 違う!信じるんだ、私の親友を!)」

 

 

 彼女はもう一瞬たりとも振り返らなかった。そして…。

 

「ちっ、アンタってば薄情なのね! それにこんなものじゃガリィの防御は――」

 

 調が放った巨大な丸鋸が半透明の盾に食らいついた。それは先程までと比べて速度、威力共に段違いに上昇しているものだったが、それでもガリィの防御は食い破る事ができないでいた。しかし…

 

 

「(イガリマが接近戦しかできないと思ってもらっては困るデス!)」

 

 

 せめぎ合う丸鋸と盾に迫る巨大な刃、それは切歌が投擲した大鎌の刃だった。刃は後方から丸鋸を押し出すように衝突し、そして…

 

 

『ピシッ…』

 

 

 半透明の盾に、遂に一筋の亀裂を刻んだ。

 

 

「――なんですって!? …あぁもう!」

 

「(っ!…ガリィの言った通り、あの盾は無敵じゃない)」

 

「はぁ~、間一髪デスよぉ…」

 

 その事に驚いたガリィは慌てて丸鋸を弾き飛ばしそれ以上の被害を防いだ。一方の二人は一度歌う事を止め、後方へと並んで着地する。ちなみにガリィの放った氷塊を切歌は間一髪回避する事に成功していた。

 

「切ちゃん、今の見た…?」

 

「勿論デス! こうなったらやる事は一つデスよ!」

 

「――そうだね、やる事は一つ…」

 

 それを見た二人はガリィの言った事が嘘ではないと確信した。故に二人の想う事は一つ。

 

 

「「私達の全力で、あの盾を壊す(デス)!!!」」

 

 

「…随分と生意気な宣戦布告してくれるわね。 いいわ、その思い上がりを真正面から打ち砕いてあげる」

 

 

 そして戦いはとうとうクライマックスへと突入する。果たして二人は余裕ぶっているガリィの鼻っ面をへし折る事ができるのだろうか…。

 

 

 

 なお途中から都合によりカットしていた副音声たちであるが…

 

(つよい⦅確信⦆)

(に、二対一なんて卑怯だと思わないのか!⦅小物⦆)

(片方に気を取られた次の瞬間にはもう片方が目の前に…ホラーかな?)

(あっ、ヒビが…⦅白目⦆)

(まーたそうやって自分からピンチに飛び込んで行くんだからも~)

 

 大体こんな感じである。こんなのを間に挟んだらシリアスにならないだろ!いい加減にしろ!⦅全ギレ⦆

 

 





これまでで一番のシリアス回だと自負しております⦅威風堂々⦆。次は明日の夜までに投稿するつもりです。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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