ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第六十五話です。




第六十五話

 

 

「エルフナインによる装者三人のシンフォギア改修が完了した。連中は最終確認を行った後に起動実験を行うようだ」

 

「遂にマスターの悲願が叶う時が来た、という事ですわね」

 

「起動実験、ですか」

 

「あいつら、やっと強くなったのカ!?」

 

「…」

 

 ガリィがキャロルの自室を襲撃してから半時間程経った現在、キャロル陣営は玉座の間にて重要な会議をしていた。キャロル曰くエルフナインによるギアの改修が終わったようで、それについての話をするらしい。

 

「…ところでマスター、ガリィちゃんは…」

 

「放って置け。その大馬鹿者は自分が言った事も忘れ対策( アルカノイズ)を講じなかった愚か者、故に構う必要は無い⦅全ギレ⦆」

 

「愚者…⦅察し⦆ そうかガリィ、派手に失敗したようだな」

 

「??? またガリィが何かやったのカ?」

 

「…どうせガリィが悪いんですよーだ…何よ、ちょっと忘れてただけじゃない⦅不満顔⦆」

 

 なおガリィは部屋の隅で不貞腐れていた。その理由は、弦十郎対策にアルカノイズを展開して置かなかった事をキャロルに見破られしこたま怒られたからである。つまりいつもの自業自得だった。

 

「…⦅完全無視⦆ 起動実験が行われるのは明後日。俺はそれに介入し、この身に呪われた旋律を受け譜面を作成する」

 

「了解しました。我々はどのように動けばよろしいですか」

 

「貴様等はシャトーにて待機、俺が連中に倒された場合は各自呪いの旋律の回収を最優先に行動せよ」

 

「アタシは一番強い奴と戦いたいゾ!」

 

「倒されたら、ねえ…」

 

「? ガリィちゃん…?」

 

「…ファラちゃん、後で話があるんだけど聞いてくれる?」

 

「えっ? も、もちろんそれは構わないのだけど…」

 

「そう、ありがとね。 さて、今はマスターの話を聞きましょうか」

 

「えっ、ええ、分かったわ…(一体どうしたのかしら…?)」

 

 今後の行動についての事を坦々と話すキャロル。そんな中不貞腐れていたはずのガリィはこっそりファラへと話し掛け、後で話をする約束を取り付けるのだった。

 

「…ようやく俺の悲願が叶う時が来たのだ。貴様等もより一層気を引き締め行動せよ」

 

「「はい、マスター」」

 

「?? よく分からないけど、分かったゾ!」

 

「ま、ガリィ達の仕事は壊される( ・・・・)事だけだし、失敗しようがないわよね~♪」

 

「っ…貴様等の尽力に期待する。 以上、俺は部屋に戻る」

 

 こうしてキャロルは自室に戻り会議は終了となった。そして…。

 

 

 

「はいはいガリィにちゅ~も~く♪ 実はアンタ達にぃ、素敵な提案があるの☆」

 

 

 ガリィの悪巧み…じゃなかったハッピーエンドに辿り着くための作戦が始まった。

 

 

 

 -  翌日  -

 

 

(ねえねえガリィちゃん、どこに行くの?)

 

 ガリィは翌日、とある場所に向かっていた。改修されたシンフォギアの起動実験を翌日に控えた今日、ガリィはある目的のために街を訪れていたのである。

 

≪そうねぇ、アンタ達の大好きなハッピーエンドに必要な作業ってところかしら? ま、実際にガリィの思い通りになるかどうかはまだ分からないんだけど。念のためよ、念のため≫

 

(???)

(…あっ! あの家はまさか…!)

(…分からん! ガリィの意図が分からん!⦅降参⦆)

 

 ガリィの目的地、それは声達が見た記憶のある場所だった。しかしガリィの目的は依然不明であり、声達はその意図が掴めず困惑していた。

 

≪ふふん♪ ガリィはね、やるからには徹底的にやらないと気が済まないのよ。だから…≫

 

(???)

(今日のガリィちゃんは秘密が多いゾ)

(だからなんなのさ~)

 

『どうせしょうもない理由なんだろうなぁ…』それが声達の総意だった。しかし、それ故に…。

 

 

 

≪目指してやろうじゃないの、アンタ達の目指す『誰も失わない完全無欠のハッピーエンド』ってやつをね♪≫

 

 

 

(((((………⦅呆然⦆))))))

(そうだよ⦅賛成⦆)

 

 約一名を除き誰も言葉を返す事ができなかった。それを確認したガリィは愉快そうに微笑み、そして…。

 

 

≪ふふ、驚いちゃってまぁ☆ それじゃ、バラ色の未来を掴むために頑張りましょうか♪≫

 

 

 険しい道の一歩を、踏み出した。

 

 

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「司令さん、覚悟するデス!」

 

「絶対に、負けない…!」

 

「いいねいいね! 二人ともその意気だよ!」

 

「響君の言う通り良い気合だぞ、お前達! さあ、来い!(やはり二人から焦りのようなものが消えている…原因はやはり…)」

 

 S.O.N.G.司令本部にあるトレーニングルーム。そこでは現在、徒手空拳の二人VS風鳴弦十郎という絶望的な戦いが行われようとしていた。ちなみに響は順番待ちであり、現在は二人のセコンドに付いていた。

 

「これがあいつらへの罰って甘すぎ…でもないか」

 

「『司令との半日特訓ツアー』が甘いわけないじゃないの。 あの子達がやる気に溢れてなかったら耐えられないわよ普通…」

 

「ガリィと何を話したのか聞こうとしても、頑なに話そうとしないのだから仕方ないだろう。最低限の罰は受けてもらわねば他に示しが付かないからな」

 

「響、楽しそうだなぁ…⦅遠い目⦆」

 

『司令との半日特訓ツアー』 これは先日の切歌達への罰であり、それが今日行われていたところであった。ちなみに特訓内容はかなり厳しいものだったが、何故か切歌達はやる気満々でありその全てを乗り越えていた。そして現在、最後の特訓である司令との対決が行われるところ、という状況である。

 ちなみに響はもちろん自主参加である。元気が有り余っているのだろうか…。

 

「調、行くデス!」

 

「うん、切ちゃん!」

 

 

「「二人一緒なら、絶対に負けない(デス)!」」

 

 

 もはや彼女達に以前のような焦りは無かった。その原因が何かを知っているのは彼女達本人と、そしてとある人形だけである。

 

 

 

「「参りました…」」

 

「中々筋がいいぞ、お前達! どうだ、これからも俺と――」

 

「「嫌です⦅断固拒否⦆」」

 

「…そ、そうか…⦅しょんぼり⦆」

 

 

 ちなみに結果はもちろんお察しである。人類最強と畜生人形じゃ相手の格が違い過ぎるからね、仕方ないね⦅悲しみ⦆

 

 

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「切ちゃん、起きてる…?」

 

「…起きてますよ」

 

 調と切歌、寝床に入った二人は目が冴えてしまっているのか、中々寝付くことができないでいた。

 

「…何、考えてたの?」

 

「…多分調と同じ事デス」

 

 

「…ガリィ、強かったね」

 

「…うん」

 

 

「…でも、不思議。負けちゃったのに全然悔しくない」

 

「あはは、あたしもデスよ」

 

 

「…」

 

「…」

 

 

「私、みんなに嘘付いてた」

 

「…何のデスか?」

 

 

「『みんなの役に立ちたい』ってずっと思ってるつもりだった。だけど――」

 

「『私は、みんなに褒められたかっただけ』デスか?」

 

 

「…もしかして、切ちゃんも?」

 

「あはは、恥ずかしながら…」

 

 

「そうなんだ…」

 

「…私達、きっと焦ってたんデス」

 

 

「…うん、あの優しくて暖かい人達に褒められたくて」

 

「…あの優しくて暖かい人達に認めてほしくて」

 

 

「…くすくす」

 

「…ぷっ」

 

 

「…私達、子供だったんだね」

 

「その通り、これじゃガリィに怒られても仕方ないデス♪」

 

 

「切ちゃん、一緒に頑張ろうね」

 

「勿論デース♪」

 

 

「私達は」

 

「私達のできる事をやるデス!」

 

 

「そうだね、そして…」

 

 

「あの人形に、勝つ」

「あの人形に、一発ぶちかましてやるデス!」

 

 

「…」

 

「…」

 

 

「…切ちゃん?」

 

「…なんデスか?」

 

 

「…勝てなくても、いいの?⦅ジト目⦆」

 

「…今のは言葉の綾という奴デス⦅目逸らし⦆」

 

 

「…おやすみなさい⦅就寝⦆」

 

「ちょっ、ちょっと待ってほしいデス! もう一回、もう一回だけ!⦅必死⦆」

 

 

 

 この日、二人の少女は自分と向き合う勇気を得た。

 

 この事により後日、とある人形の『自分と対等の強さを有する敵と戦いたい』という願いは叶う事となる。その時はまだ、遠い。

 

 

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「はぁ…」

 

「? マリアさん、どうされましたか? もしかして何か問題でも…?」

 

 響達三人のギアの最終チェックが終わった後、マリアは研究室でエルフナインからアガートラーム改修についての説明を受けていた。

 

「…貴方に問題は無いわよ。アガートラームを直してもらえる事は素直に嬉しいと思っているし、ね」

 

「…ガリィとの事、ですか?」

 

「そうね、それも含めて…なんだかうまくいかないなぁって」

 

「うまくいかない…それはどのような意味なのでしょうか?」

 

「…私は強くなりたいのよ。だけど気付けばいつも、それとは離れた行動を取ってしまっている…そう、いつもいつも、ね…」

 

「マリアさん…」

 

 アガートラームの改修、それを聞かされてなおマリアの表情には陰が付き纏っていた。彼女が本当の自分を理解する、それをもたらすのは味方か、それとも…。

 

 

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「お前達、聞こえているか」

 

『はい、聞こえてます!』

『感度、良好です』

『隣の馬鹿がうるさくて聞こえにくいんだよ…』

 

 本日、S.O.N.G.本部が停留する施設の側で、改修されたギアの起動、及び稼働テストが行われようとしていた。

 

「ふむ、問題は無さそうだな。 お前達、準備はできているか?」

 

『はいっ!』

『問題ありません』

『こっちも問題なしだ』

 

「そうか。 ここにはエルフナイン君も待機してもらっている。不測の事態に陥っても慌てるなよ」

 

「…皆さん、何かあればボクと弦十郎さんが対処します。皆さんはギアの起動に集中してください」

 

『あはは、心強いなぁ。ありがと~!』

『ああ、私も頼りにしている』

『へっ、失敗なんざしてたまるかっての!』

 

「よし、改良型シンフォギア稼働実験、かい――」

 

 三人へと最後の確認を取り弦十郎は実験の開始を宣言しようとする。しかし…。

 

 

「~! ~!」

 

 

「っ!?――状況は!?」

 

 

 突如司令室に鳴り響いた警報、それは…。

 

 

「多数のノイズ反応を検知! 場所は…近隣の発電施設です!」

 

 

 それはノイズの出現を告げるものだった。場所は近隣の発電施設、これが意味するものは…。

 

「…! 狙いは、補給路の破壊!」

 

「我々への電力供給を断つため…ですか」

 

 その意味に一早く気付いたのは弦十郎、そしてそれにNINJA緒川が同意する。

 

「実験は中止! 装者達は早急に帰還――」

 

 事態を鑑みた弦十郎はギアの稼働実験を中止し、装者達を戻す事にしたようだ。

 

 

『師匠! 行かせてください!!!』

『民間人を見捨てるわけには行きません、私も行きます』

『こんなの行くしかないに決まってるだろ! 違うのかよおっさん!』

 

 

「お前達…」

 

 しかし装者達はそれに反発する。施設には民間人が多数いるため、それを見過ごす事などできないと彼女達は訴えかけたのだった。

 

『師匠!』

『司令!』

『おっさん!』

 

 彼女達の声を聞いた弦十郎は僅かな時間思考し、そして…。

 

 

「よし、装者達は民間人の救助、及びノイズの排除に当たれ!」

 

「皆さん、ノイズが出現した以上それを操るオートスコアラーも周囲に潜んでいるはずです。どうか気を付けてください」

 

 

『『『了解っ!!!』』』

 

 

 彼女達の出撃を承認する。改良型ギアの初陣、それは実戦の中でお披露目される事となるのだった。

 

 





次回、開戦。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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