ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第六十七話です。




第六十七話

 

 

「天羽々斬、イチイバル共にモジュールの稼働を確認!セーフティダウンまでのカウントを開始します!」

 

「近辺にガリィの姿を確認。ですが介入する様子は見せていません」

 

 S.O.N.G.司令室、そこでは目まぐるしく変化する戦況に対応するため、二人のオペレーターが声を張り上げていた。

 

「…何か企んでいる可能性は否定できんか…監視を継続し、動きがあればすぐに知らせろ。――よくやってくれたぞお前達。後は三人に任せ帰って来い」

 

『了解デース!』

 

『分かりました』

 

 司令である弦十郎は指示を出す傍ら、戦場のど真ん中にいる切歌達に後退指示を出していた。彼女達のギアはまだイグナイトモジュールが搭載されていないので、この判断は妥当だろう。

 

「呪いに打ち勝つ程の絆の強さ…これが貴方達の力なのですね…!」

 

「…(イグナイト、あの力が…強さがあれば、私も…)」

 

「マリアさん…?」

 

 エルフナインは装者達の絆の力に感激し頬を赤らめていたが、隣に立つマリアの様子がおかしい事に気付く。彼女は食い入る様にモニターを見つめ、その瞳はまるでその光景を焼きつけようとするかのように見開かれていた。

 

 

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「攻めきれてはいない…だが!」

 

「こっちは三人掛かりなんだ、負けてたまるかよ!」

 

「うおぉぉーっ!!」

 

 

「また貴様か…物分かりの悪い奴め」

 

 

 呪いを克服した装者達三人とキャロル、その戦いが開始されてから僅か二分の間に響達は早くも三度目の攻撃を仕掛けていた。

 

「っ! くぅっ!」

 

「立花!」

 

「大丈夫です! でも…あの糸が邪魔で懐に飛び込めない…!」

 

「それだけじゃねぇ、あたしのにも全部対応してきやがる…!」

 

 しかし三人の攻撃はいまだキャロルに届いてはいなかった。懐に潜り込もうとする響と斬撃を繰り出す翼に対してはダウルダブラの主武装である糸で対応、そしてクリスが放つ遠距離からの攻撃には四元素を主軸とした錬金術で完璧に対応されているのが理由である。

 

「ちっ、鬱陶しい…! 大人しく切り刻まれれば良いものを…!」

 

 そして一見装者達に対して有利に見えるキャロルであるが、彼女もまた装者達と同じく決定打を打てずに攻めあぐねていた。勢い良く懐に飛び込む響に隙あらば切り込む翼、そして後方から援護するクリスの連携の前にキャロルは後手後手に回っていたのだ。

 

「くそっ!なんでこっちにだけ制限時間があるんだよ!」

 

「このまま長引けば敗北する事は必定。ならば…立花、雪音!三人(・・ )で勝負を掛けるぞ!」

 

「…! はいっ!」

 

「…! りょーかいっ!」

 

 実はイグナイトには制限時間が設けられており、それを過ぎた瞬間にセーフティが作動しギアが強制的に解除されるのだ。故に翼は勝負に出る事を選択、それを聞いた響とクリスが翼の下へと集まり、キャロルに勝利するための準備を始めるのだった。

 

「勝負…だと? クッ、クク…愚かな…! 貴様等の力を合わせた程度で俺に勝てるとでも思っているのか!」

 

 その様子を見たキャロルは装者達を見下し、そして変わらず自身の勝利が揺るがない事を確信する。しかし…。

 

「確かに力を合わせただけじゃ、お前には勝てないのかもな。だけどな…!」

 

「我々が合わせるのは、力だけではない…!」

 

 

「…何?」

 

 装者達はその言葉を否定した。そう…。

 

 

「私達が合わせるのは三人の力と…心なんだ!」

 

 

 彼女達の武器はシンフォギアが持つ力だけではない。 『心』 それは彼女達をこれまで何度も勝利に導いた原動力、キャロルはその存在を失念していたのである。

 

「…黙れ…! そのようなあやふやな力など俺は絶対に認めん…!」

 

「はっ!あやふやかどうか、これから証明してやればいいんだろ!」

 

「強さとは表面的な力のみに非ず、それを今より貴様に見せよう」

 

「翼さん! クリスちゃん!」

 

「「ああ!」」

 

 装者達の言葉にキャロルは静かに怒りを表し、彼女達を否定する。そして…。

 

 

「「「~♪」」」

 

 

 装者達はその力を、そして心を合わせるための三重奏を奏で始める。

 

 

「…忌々しい! そのような曖昧な力など、容易く打ち砕いてくれる!」

 

 

 三者の力と心を合わせた一撃、それは強大な力を持つ錬金術師に届くのか。果たして…。

 

 

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≪さて、と…そろそろ出番かしらね。全く、待ちくたびれちゃったわ≫

 

(軍師はどっちが勝つと予想されますか!)

(えっ!?⦅驚愕⦆ え、えーっと、そうですね…キャロルさんは冷静さを失っている上に攻撃手段⦅糸と錬金術⦆の切り替えに僅かな隙が見受けられますので…連携が更に強化される装者さん達の勝利に終わるかと…間違っていたらすいません…⦅目逸らし⦆)

(…そんな真面目な考察されたら何も突っ込めないゾ…⦅遠い目⦆)

 

 決着が近付く中、ガリィもその時に向けて準備を始めていた。つい先程までイグナイトを起動させた装者達を死んだ目で見つめていたガリィだったが、出番が近付いた事で無理矢理テンションを元に戻していた。

 

≪合図用の結晶も持ったし…よし、バッチリね☆≫

 

(ガリィ!タイミングを間違えるなよ!⦅注意⦆)

(巻き込まれたら間違いなく死ゾ⦅警告⦆)

(いくぞーっ!!⦅気合十分⦆)

 

 ガリィはタイミングを見計らい何かをする気のようだが、果たしてうまくいくのだろうか…。今までが今までなだけに非常に不安である。

 

≪失敗すれば終わり、なんて分かりやすくていいじゃないの♪ ま、ガリィは失敗なんてしないんだけど☆≫

 

(ほんとぉ?⦅信用度ゼロ⦆)

(ここまできて爆散エンドは許されませんよ!)

(そうだよ⦅便乗⦆)

 

 ちなみにガリィはいつも通り自信いっぱいである。結果的にうまくいっただけで今までも割と危なかったのだが…まぁ悪運だけは強い彼女なら何とかなるのだろう、きっと。⦅適当⦆

 

 

≪…! 行くわよ、アンタ達…! ――今っ!≫

 

 

 そして数秒後、ガリィは建物の陰から飛び出した。目標はキャロルが立つ場所、そうそれは装者達三人の攻撃が最も苛烈な危険地帯であった。

 

 

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 決着は、一瞬で着いた。

 

「(はあぁぁぁっ!)」

 

「…今度は貴様か…!」

 

「(…よし!)」

 

 まずは翼が攻め、それをキャロルが糸で迎撃。その結果、翼の剣は糸に絡めとられ動きを止める。しかし…。

 

「…なんだと!? 貴様、最初からそのつもりで…!?」

 

「(こうなると最初から分かっていたなら、この場に留まるくらいの事はできる…! 雪音!)」

 

 糸で翼の身体ごと剣を引きよせようとしたキャロルだが、何故か彼女の身体は全く揺らがなかった。その理由、実は翼はこうなる事を最初から予見し、予め脚部から伸ばした剣を杭のように地面へと突き刺していたのである。その結果、翼の身体は揺らがず糸だけでなくキャロルの動きをも止める事に成功していた。

 

「(くらええぇぇぇぇっ!!!)」

 

「…!? 貴様、味方ごと俺を倒す気か…! だが…!」

 

 もちろん装者の攻め手はこれだけではない。間髪入れずにクリスが巨大ミサイルを召喚し、翼とキャロルへ向けて躊躇なく発射する。味方を巻き込むという予想外の戦術に慌てたキャロルは、反射的に錬金術での迎撃を選択する。しかし…。

 

「バカなっ…!?」

 

 その砲撃はミサイルには当たらなかった。その理由は、キャロルがミサイルの狙いが自身だと勘違いしていた事。そしてミサイルが軌道を変え自身の前方の地面へと着弾した事。そして、この二つの原因により生み出される結果は…!

 

 

「立花っ!」

 

「決めろーっ!」

 

 

「くっ、見えん…! 一旦下が――」

 

 爆発により発生した大量の煙、それが前方の視界を塞いでいた。この状況に至り、遂に装者達の狙いに気が付いたキャロルだが…。

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁーっ!」

 

 

 

 既に翼とクリスは、必殺の間合いに響を送り込む事に成功していた。その姿を確認したキャロルは思考する、『右手は翼に対応しているため迎撃には使えない』『左手は前方に掲げたままであり、今から立花響に射程を合わせる時間など無い』…そして、次の瞬間…。

 

 

 

「がはぁっ!!!」

 

 

 

 響が放った強烈な一撃が、容赦無くキャロルの懐深くに突き刺さりその身体を遥か後方へと吹き飛ばした。

 

 

「雪音っ!」

 

「クリスちゃんっ!」

 

 

「これで、終わりだあぁぁぁぁ!!!」

 

 

 そして装者達の連続攻撃、その最後を飾るのはクリスだった。彼女は勝利を確実なものにするため、キャロルに向けて待機させていた巨大ミサイルを二発発射する。

 

 

「…ぐぅっ…! 馬鹿な…貴様等、なんぞに…!」

 

 

 キャロルは吹き飛ばされ壁に激突していた。彼女は戦意こそいまだに衰えていない様子だが最早体が言う事を聞いておらず、ミサイルが迫る中動けずにいた。

 

 

『それと残りの二人も悪くないと思いますよ、このまま順調に成長すれば呪いの旋律にも打ち勝てるんじゃないかと』

 

 

「(…俺の敗因は、立花響以外を侮っていた事…か)」

 

 

 ミサイルが迫る中、遂に自身の敗北をキャロルは受け入れた。そして彼女は後に来る自身の死を受け入れようと目を閉じ…。

 

 

 

「ますたあぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!⦅必死⦆」

 

 

 

 突如飛び込んで来たナニカに、その窮地を救われた。

 

 

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「…ガ、ガリィ…? 貴様、何故…」

 

「あっぶなっ!殺す気で撃ってんじゃないわよ馬鹿クリス!⦅言いがかり⦆――ってこれ見て下さいよマスター! うえ~ん!ガリィの髪の毛が焦げちゃいましたぁ~!⦅嘘泣き⦆」

 

(な、なんとか成功したね~…)

(まさかトドメにミサイルが来るとは思わなかったわ…)

 

 突如現れキャロルの窮地を救ったナニカ。それはガリィ・トゥーマーン、キャロルによって製作された自動人形であり既にシャトーへと帰還しているはずの人形であった。

 

「ガ、ガリィちゃん!?」

 

「…おい、今あたしの事なんて言った?⦅全ギレ射撃準備⦆」

 

「ガリィ、またお前なのか…⦅呆れ⦆」

 

 そして装者達も予想外の乱入者に各々が戸惑っていた。なおクリスは既に爆発寸前な模様、畜生人形をぶっ飛ばす力を手に入れたからね、撃ってしまっても仕方ないね。

 

「人形の貴様が髪の毛の心配をするのか⦅困惑⦆…ではなく何をしていると言って――」

 

マスター、『譜面』は手に入れられましたか?

 

「っ!――ああ…立花響の一撃をこの身に受けた事により達成されているが…

 

(よし!キャロルちゃんの本日のお仕事は終了!)

(後はお家でゆっくり休んでね!⦅強制⦆)

 

「ふむふむ…なら目的は達成って事で♪ マスターは帰還して、どうぞ~☆」

 

「っ!? 貴様、何を…?」

 

 小声で何かを話していた二人だが、それが終わった途端急にガリィは立ち上がり地面へと何かを投げつける。ガリィが投げつけたもの、それは…。

 

「知っていますかマスター? 転移結晶にはこういう使い方もあったりするんですよ♪」

 

 それは転移結晶だった。ガリィはそれを帰還するために使用するのではなく…。

 

 

「マスター、ご無事ですか?」

 

「…ガリィちゃんの危惧していた通りになってしまったのね…」

 

「マスターボロボロだゾ! 大丈夫なのカ!?」

 

 

 仲間へと合図を送るために、使用したのである。

 

 

「っ!――貴様等…説明を――」

 

(説明しよう、ガリィは転移結晶を使用する事で玉座の間に待機する仲間達に介入するタイミングを知らせたのである。そして転移結晶が使用された残滓を見た仲間達は近辺へと転移し、キャロルの下に駆け付けたのであった⦅解説⦆)

(ガリィちゃん以外には聞こえてないゾ)

 

「はいはい説明は帰ってからど~ぞ☆ それじゃレイアちゃん、マスターをお願いね♪」

 

「了解した。 失礼しますマスター」

 

 突然現れた部下達にキャロルはその理由の説明を求めるが、それはガリィにスルーされ彼女はレイアに抱えられてしまう。

 

「っ!? 貴様等、俺に黙って何を…そうか、また貴様かガリィ!このバカ!バカ!大馬鹿者!バ――」

 

「なにぃ~☆ 聞こえんなぁ~♪」

 

(嘘を付くなっ!⦅迫真⦆)

(この人形がキャロルちゃんの言葉を聞き逃すはずがないんだよなぁ…)

 

 そしてキャロルはガリィへの罵倒を叫び続けたままその場より姿を消した。…というか強制的に消された⦅悲しみ⦆

 

 

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「さ~て、待たせたわねアンタ達…ガリィ達のマスターによくも酷い事してくれたじゃない…!」

 

「そ、それは…」

 

「(イグナイトが解除されたタイミングで増援を送って来るとは…!)」

 

「あいつの方から銃を向けてきたんだろーが! こっちは正当防衛だっつーの!」

 

「そんな事知らないわよ」

 

 キャロルとレイアが姿を消した戦場。そこでは現在、三人の装者と三体の人形が対峙していた。ちなみに最初に話していたのはガリィと装者達だけだったが、やがて各々に相手を見つけ個別に話す事になっていた。

 

 

「あら、剣ちゃんじゃない。逞しくなったみたいね」

 

「…!?――貴様は、あの時の…!」

 

「ふふ、覚えていてくれて嬉しいわ」

 

 

「お前が一番強いって聞いたゾ、だからアタシと勝負するんだゾ!!」

 

「えっ!? わっ、私が一番強いなんてそんなっ! そんな事全然無いから!」

 

「…そうなのカ??? じゃあ誰が一番強いんダ?」

 

「――えっ…そ、それは…つ、翼さんかな?…いやでも遠くからならクリスちゃん…?でもでも両方で戦えるマリアさんだって…でもでもでもあの二人もガリィちゃんと戦った時すごかったし… ⦅一分後⦆ はっ!ま、まさか最強の装者は未来なんじゃ…?⦅大混乱⦆」

 

「??? 何言ってるか分かんないゾ…⦅しょんぼり⦆」

 

 

「はっ、ようやくお前をぶっ飛ばすチャンスが来たってわけだ!」

 

「はぁ?あの黒いの無しでガリィに勝てるわけないでしょうが…というかなんなのよあの黒いの!反則使ってんじゃないわよ馬鹿クリス!⦅半ギレ⦆」

 

「はぁ!?お前なんかこのままで十分だっての! ギタギタにしてやるからさっさとかかって来いよ馬鹿人形!⦅全ギレ⦆」

 

「…いいわ、このガリィ・トゥーマーンがアンタに身の程を教えてあげる…!⦅全ギレ⦆」

 

 

 ご覧の通り正に一触即発の雰囲気⦅強弁⦆である。しかし、既にイグナイトが解除された三人に果たして勝機はあるのだろうか…あ、ガリィには勝てるかもしれませんね⦅ゲス顔⦆

 

 

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「増援だと…!? まさか、これを狙っていたのか…!」

 

 弦十郎は自身が致命的な失策を犯していたことに気付いていた。

 

「(俺は…無意識にガリィ君を敵という枠から外してしまっていたのか…!)」

 

 弦十郎が犯した失策、それはガリィの姿を発見していたにも関わらず放置し増援を許してしまった事だった。

 

「(錬金術師キャロル…俺は彼女の策にまんまと嵌められた大馬鹿者だ!)」

 

 念のために説明するが、もちろんキャロルはこの件について一切関わっていない。この増援についての詳細は 計画:ガリィ 実働班:オートスコアラー全員 である。

 

「…これは俺のミスだ。 彼女を…ガリィ君を発見しておきながら自由にさせてしまった…!」

 

「…弦十郎さん、それは隣にいたボクも同じです。ガリィだけが発見された時、ボクは安心してしまいましたから…」

 

「…あの人形に…いえ、キャロルにまんまとしてやられたってわけね…」

 

 真実を知らぬまま各々に失敗を悔やむS.O.N.G.の面々、だが…。

 

 

「ちょっと待ったぁー!!」

 

「…ただいま、戻りました」

 

 

 その空気を吹き飛ばすような勢いで司令室に入室する二人の少女、たった今帰還を果たした彼女達が弦十郎達に声を掛けた目的とは、果たして…。

 

 





マリアさんはアガートラームが改修中なので出したくても出せないんです⦅半ギレ⦆

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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