ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第七十五話です。




第七十五話

 

 

(つよい⦅確信⦆)

(勝てない⦅確信⦆)

(もう駄目だ…おしまいだぁ…⦅諦め⦆)

 

≪…ば、馬鹿言ってんじゃないわよガリィが負けるわけないじゃないの…⦅震え声⦆≫

 

 遂に呪われた旋律を克服…いや受け入れたマリアを前に、ガリィ一行は戦慄していた。

 

「マリアさん…!」

 

「ありがとう、エルフナイン…貴方の声が私の心に力を、そして勇気を与えてくれた」

 

「は、はいっ…!」

 

「…そこで見ていてほしい、臆病で弱虫な私の出した答えを…!」

 

「っ!――も、もちろんです!」

 

 エルフナインはマリアが呪いを克服できた事に感激していたと同時に、自分がその一助になれた事が嬉しくて仕方なかった。

 

「…始めましょうか」

 

「…アンタ、この短時間で何があったっていうのよ…?」

 

(そうだよ、いくらなんでもおかしいだろ!⦅発狂⦆)

(呪いは受け入れるものでは無く、跳ね除けるもののはずです⦅白目⦆)

(もう戦わずに逃げよう、なっ!⦅必死⦆)

 

 エルフナインとの会話を終えたマリアは、再びガリィと対峙し宣戦布告を行った。ちなみに今もガリィは呆然としたままである、どうやら急展開に思考が追い付いていないようだ。

 

「…自分の勘違いに気付いて子供みたいに泣いた、それだけよ」

 

「っ!?――ふざけるな! それだけで人間がそこまで変わるわけねえだろうがっ!」

 

(あっ、まずい)

(落ちついてガリィちゃん!)

(劣等感でイライラしてますねこれは…)

 

 ガリィは激昂した。マリアが変化した理由が単純すぎたために…そして自分の心がそんな相手に『勝てない』と思ってしまっている事に。

 

「…私は何も変わっていないわ。私は今も過去を引き摺り続けている、弱虫で臆病なだけの人間よ」

 

「っ――アタシを馬鹿にしやがって…!――気が変わったわ…アンタをここでリタイアさせてやる…!」

 

(絶対無理だゾ⦅無慈悲⦆)

(海が側にあるからワンチャン…ワンチャン…⦅意気消沈⦆)

 

「悪いけど…私にも守りたいものが、守りたい人達がいるのよ。だから貴方に負けるわけにはいかない…!」

 

 言葉での前哨戦が終わり、戦いはいよいよ本番へと移行する。その勝者はどちらなのか、果たして…。

 

 

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「…あの大馬鹿者め」

 

「? マスター、どうかしたのカ~?」

 

 ガリィとマリアによる戦闘が開始されようとしていた頃、シャトー玉座の間にはガリィ以外のメンバーが揃っていた。

 

「…マリア・カデンツァヴナ・イヴが呪われた旋律を克服し、モジュールの起動に成功した。そして今はガリィ…大馬鹿者と対峙している」

 

「――マスターの説教から逃げ出した先で派手に問題を起こしている、という事ですか」

 

「ガリィばっかり遊んでてズルいんだゾ…」

 

「彼女は数時間前に暴走したはず…この短時間の間に一体何があったのかしら…?」

 

「…あの大馬鹿者は、この事に気付いていた…? いや、だがそれにしては…」

 

 エルフナインを通じて入手した情報を部下達に話していたキャロルだが、何か気になる事があるようだ。まあそれについては勿論勘違いであり、ガリィ本人が一番困惑しているのだが…⦅遠い目⦆

 

「ガリィはあの装者、マリア・カデンツァヴナ・イヴの潜在能力に気付いていたという事ですか?」

 

「…そうも思ったが俺の勘違いだろう。ガリィの表情を見ればそれが想定外であった事は容易に推察できる」

 

「マスタ~、ガリィを助けに行かなくていいのカ?」

 

「ガリィちゃんったら、『マスターのお世話係を務めるガリィは最後に散る事にするわ♪』なんて言っていたものね…如何致しますかマスター」

 

「放置で構わん⦅不機嫌⦆ あの大馬鹿者の事だ、大方あらゆる手段を講じて逃げ延びるだろう」

 

「確かに⦅同意⦆」

 

「これで少しは落ち着いてくれればいいんだけれど…⦅望み薄⦆」

 

「ぶ~!アタシも遊びたいんだゾー!」

 

 なおガリィへの援軍は出されない事が決定した模様⦅無慈悲⦆ 果たしてガリィは無事仲間達の下へと帰還する事ができるのだろうか…。

 

 

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「負けるわけには行かないのはこっちも同じなんだから! さあ、掛かって来なさい!」

 

(軍師!軍師策を!この窮地を乗り切る策を!)

(えっ!? えっと…エルフナインさんを人質に――)

(((((却下)))))

 

「――セレナ、マム…貴方達がくれた力を、そして想いを胸に私は戦う…!」

 

 キャロル達が静観する事を決めた頃、ガリィとマリアの戦闘が遂に開始されようとしていた。

 

「~♪」

 

「…はっ!未練タラタラで情けないったらありゃしないわね!」

 

 マリアは妹と母に向けた想いを全て歌に込めて、その短剣を構える。一方のガリィも周囲に無数の氷柱を生成し、攻撃の構えを取った。

 

「(体が軽い…これなら!)」

 

「ほらほら行くわよ~♪ 体中穴だらけになりなさいな!」

 

 先手を取ったのはガリィだった。彼女は周囲に展開した氷柱をマリアへと次々と射出し、その動きを止めようとした。しかし…。

 

「(っ!――全て、撃ち落とす!)」

 

「っ!?――ちぃっ!」

 

(あかん⦅あかん⦆)

(威力が…違い過ぎる)

(いやー、キツいっす⦅白目⦆)

 

 マリアは左手の籠手から無数の光の刃を発射し、その全てを撃ち落とすばかりか貫通させる。貫通した光刃はガリィへと襲い掛かり、回避されたものの彼女の表情を驚愕一色にさせた。

 

「(――まだよ!)」

 

「…足元がお留守になってるわよお馬鹿さん♪」

 

(当たって!当たってー!⦅必死⦆)

(この攻撃はさすがに避けられまい⦅フラグ⦆)

 

 回避する事により態勢を崩したガリィを見たマリアはすかさずガリィとの距離を詰めようと走り出す。しかしその動きはガリィには想定内だったようで、彼女は迫り来るマリアへと手を翳し…。

 

「――これは流石に避けられないでしょう?」

 

 ガリィはマリアの足元に水柱を発生させる。これで態勢を崩し、その隙に攻撃を加えようとガリィは次の動きへと移ろうとする。

 

 

「(――甘いっ!)」

 

 

「――っ!?」

 

(ブースターっ!?)

(あのタイミングで!?)

(なんという、集中力…!)

 

 しかしその避けられないはずの攻撃は、マリアが急加速する事で楽々回避されてしまう。マリアがした事は簡単、ギアに備え付けられたブースターを使い急加速しただけである。そして…。

 

 

「(はああああっ!!!)」

 

 

「――避けっ――ガッ!?」

 

 

(痛ぁーい!!!⦅幻痛⦆)

(ガリィ君ふっとばされたぁーっ!)

(あんな超反応されて対応できるわけないだろ!いい加減にしろ!)

 

 そのままマリアは更に加速を強め、ガリィとのすれ違いざまに左拳をガリィの顔へと叩きつけた。

 

 

「(あ、当たった…! 今まで掠りもしなかった私の拳が、あの人形に…)」

 

 

「っ…! やってくれるじゃない…今のはちょっとだけ驚いたわよ…!」

 

(痛覚があったら危なかった…)

(なおピンチはこれからも変わらず続く模様⦅絶望⦆)

(これさぁ…もしかして勝てないんじゃないっすかねぇ⦅名推理⦆)

 

 ガリィは吹っ飛ばされてすぐ、体を回転させ立ち上がった。その姿を見つめるマリアは自身の攻撃が初めてガリィに当たった事に驚愕し、そして同時に手応えを感じていた。

 

「(この人形には問い質さなければいけない事が…ここでなんとか捕縛しなければ…!)」

 

「…光栄に思いなさい、ここからは冗談抜きにガリィが全力で戦ってあげるわ…!」

 

≪聞いたわねアンタ達、ここからは全力全開でやるわよ!≫

 

(りょうか~い!)

(想い出無限チートが火を噴くぜー!)

(なおそれでも勝てるか分からん模様⦅悲しみ⦆)

 

 ガリィは遂に目の前にいるのが手加減無しで勝てる相手では無い事を理解し、出し惜しみ無しの全力で戦う事を決意する。一方のマリアはガリィをなんとか捕縛しようとそのプランを考え始めていた。

 

「…ふふ、アンタに一つ問題よ♪ 今私達がいる場所は、何処でしょうか☆」

 

「っ!? 貴方、何を言って――」

 

(うみ、でーす!)

(すなはま、でーす!)

(つまりガリィちゃんが一番力を発揮できる場所って事だゾ⦅親切⦆)

 

 突然意味の分からない事を言い始めたガリィに驚き歌う事を中断してしまったマリアは、ガリィに言葉の意味を問い質す。

 

「ぶぶ~、時間切れで~す♪ 答えは砂浜…海がすぐ側にある、ね☆」

 

「…それがどうしたって言うのよ」

 

「ガリィはね、水の上でも今と変わらず動けるのよ♪ だけど…貴方はどうかしら☆」

 

「――っ!? 水が…そんなっ!?」

 

(これだから想い出の無駄遣いはたまんねえぜ!⦅ゲス顔⦆)

(じわじわと嬲り殺しにしてくれるわ…!⦅殺すとは言っていない⦆)

 

 ガリィが言葉を言い終わった直後、突如水が押し寄せマリアの腰下までが水に浸かってしまう。その信じられない事態に驚愕するマリアの周囲に既に砂浜は存在せず、その全てが海になっていた。

 

「ガリィはね、自分より優秀な奴が羨ましくて羨ましくて…ついその足を掴んで沈めちゃうの♪」

 

(知ってる⦅真顔⦆)

(自分を高めるより相手をどう落とすかを考えるのがガリィちゃんだよね⦅遠い目⦆)

 

「周りが海に…!? これを…貴方一人がやったって言うの…!?」

 

「もっちろんでぇ~す☆ さぁて、覚悟はいいかしら♪」

 

 驚愕するマリアを余所に、ガリィは水の上に立ちながらマリアへと余裕の言葉を投げ掛ける。足場を失ったマリアはこのままガリィに蹂躙されてしまうのか、果たして…。

 

 

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「…遅いデスね」

 

「…うん、もしかして何かあったのかな…?」

 

 マリアがガリィと邂逅していた頃、施設内にいた切歌達は帰りが遅いマリアを心配していた。

 

「確かに少し帰りが遅いとは思うが…あいつも色々と考える事があるのだろう」

 

「そ、そうデスよね!」

 

「もう少し経っても帰って来なかったら迎えに行ってもいいですか?」

 

「ああ、その時は私も共に――」

 

 そわそわしている二人を落ち着かせるために翼が話し掛け会話を続けていたのだが…。

 

 

「皆さん!大変です!」

 

 

「っ!?――な、何事デスか!?」

 

「緒川さん…?」

 

 その時、焦りを浮かべた表情で三人の下を訪れた人物…それは装者達と共に任務先に滞在している緒川だった。

 

「詳しい事は省きますが…恐らくマリアさんが戦闘を行っています」

 

「っ!?――相手は…?」

 

「不明です。しかし――」

 

「調! 行くデスよ!」

 

「うん…!」

 

「っ!? お前達…! 緒川さん、私も行きます!」

 

「分かりました…! 響さん達にも伝えた後、僕もすぐに向かいます!」

 

 その内容は近くの砂浜で異常な事態が起こっているという事。そしてそれにマリアが関わっている可能性が高いというもので、それを聞いた途端に切歌と調が走り出し、僅かに遅れてその後を翼が追いかけて行くのだった。

 

 

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「――くっ!」

 

「ちっ、ここまでやっても押し切れないなんて…! いい加減に諦めなさいな!」

 

(うーん、攻めきれないな)

(下手に近付けないから遠くからチクチクやるしかないんだよねぇ)

(…マリアさんの周囲を凍らせて動けなくすればどう?)

 

≪馬鹿ね、下手に水面を凍らせて足場に使われたらせっかくの優位が崩れちゃうでしょうが≫

 

 マリアとガリィの戦い…その戦況は現在、ガリィが氷柱を射出しマリアがそれを撃ち落とし続けるという光景が何度も繰り返されていた。

 

「(この足場ではまともに動く事すら…それに…!)」

 

「…まあいいわ。それなら制限時間一杯までこれを続けるだけなんだから」

 

(…ガリィちゃん、イグナイトが解除されるまでこの状態…維持できるの?)

 

≪…≫

 

(あっ⦅察し⦆)

 

 ちなみに余裕の表情で攻め続けているように見えるガリィだが…実はかなりの無茶をしていた、というか既に限界寸前である⦅悲しみ⦆

 

「(下手に飛んで無防備な姿を晒せばあの槍に貫かれる…空中へと逃れる事もできない…!)」

 

 そんな事は露とも知らずマリアは現状を覆す一手を模索しており、その一つとして考えた空中への離脱もガリィが背後に待機させている無数の氷槍によって断念せざるを得ない、という状況だった

 

「ほらほら、ギブアップするなら今の内よ♪ 『私は強くて優しいガリィ様に敗北しました』って言えば許してあげてもいいんだけど☆」

 

≪ふぎぎぎぎ…!早く、ギブアップしなさいよ…! こっちはもう全部出し切ってスッカラカンなんだから…!≫

 

(エネルギー無限でも一回に扱える量には限界があるからね、仕方ないね)

(つまりこの状態を突破されたら負けゾ)

(更にこの状態を維持できる時間もあと僅かっぽい…つまり実質詰みゾ)

 

「(この状況を覆すためには、この不安定な足場を逃れつつあの槍を迎撃するしかない…)」

 

「…ちょっと、無視するんじゃないわよ」

 

(今の内に逃げれるんじゃない?)

(ガリィちゃんのプライドが邪魔するから無理だゾ)

(捨てちまえそんなくだらない物⦅半ギレ⦆)

 

「(…つまり、求められるのはイチイバルのように目の前の物を全て焼き払う高威力の砲撃…そして…!)」

 

 マリアは考えていた。この状況を覆す一撃を…そして彼女はその答えに辿り着き、それを実行する事を決意した。

 

「…なによその目…! アンタはもう負けてるのよ!このアタシに、ガリィ・トゥーマーンに!!!」

 

「っ――確かにこのままであれば私は時間切れで負けるでしょうね…だけど…!」

 

 敗北を突きつけるガリィの言葉に動揺せず、短剣を構えるマリア。そして…。

 

 

 

「だけど歌がある…!」

 

 

 

 彼女は再び歌を奏でる…この窮地を覆すため、そして勝利を掴むために。

 

 

 

「――この状況で何を…黙りなさい!」

 

(どうして諦めてくれないんですかぁーっ!⦅発狂⦆)

 

 歌を奏でるマリアに対し、嫌な予感を感じたガリィが動き出すのは非常に早かった。彼女はマリアの企みを阻止するため、無数の刃を生成しマリアを狙う。

 

「っ!!」

 

 しかしそれがマリアへと命中する事は無かった。何故なら…。

 

「っ!?――残念ね♪ そこは危険地帯のど真ん中なんだから!」

 

(油断するなってば!)

(早く撃ち落とさないと!)

 

 マリアは跳躍し、空中へと逃れていた。しかしそこは危険地帯である事は彼女も分かっていたはずなのだが…。

 

「これで終わりよ!」

 

(これでどうだぁぁぁ!)

(お願いしますこれで終わってください何でもしますから!)

 

 それを見たガリィは当然、待機させていた全ての武器をマリアへと射出しようと試みる。空中でマリアができる事と言えば先程の様に光刃を発射し迎撃する事くらいだが、それも足場が無い状態では正確な狙いをつける事は難しいだろう。

 

「(思い付きの一発勝負…行くわよ!)」

 

「っ!?―― アレ( ・・)は、なに…?」

 

(なんだ、アレ…?)

(だ、誰か知ってる? ねえ、誰か!)

(知らない…あんなの知らないよ!)

 

 ガリィの予想通りマリアは何か(・・ )を射出しようとしていたのだが、そのギアの形状は明らかに光刃を射出するものとは異なっていたのである。普段はその原作知識により装者の技を詳しく解説できる声達も、その形状を知る者は一人としていなかったためガリィの対応は完全に一歩遅れてしまっていた。

 

「(セレナ…どうか私に、未来を守る力を!)」

 

「――ちぃっ!!」

 

(ガリィちゃん! 大きいのが来るよ!)

(ガリィさん早く盾を! 回避は間に合いません!)

 

 マリアが構えた左手の銀椀にはいくつもの光の羽のようなものが輝いており、その形状はまるで砲身のような形に変形していた。それを見たガリィはこれが射撃では無く砲撃である事を悟り、自身を守るため無数の盾を展開する。

 

「マリアさん!!!」

 

「(エルフナイン…どうか私に、未来を切り開く勇気を!)」

 

「こんなの聞いて無いったら! 落ちなさいっ!」

 

 盾の展開を完了したガリィはマリアを落とすために氷槍を射出した。そしてそれと同時に…。

 

 

「いけえぇぇぇぇぇぇーーーーっ!!!!」

 

 

「っ!?なによ…なんなのよアンタはぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

(光が…迫って来る…)

(無理だ…こんなの)

 

 マリアの左腕から発射された光の砲撃が、前方の景色全てを包みこんだ。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

「…アタシ、生きてるの…?」

 

(た、助かった…?)

(でも、どうして…?)

 

 マリアが放った砲撃の光が収まった頃、ガリィは自身がまだ破壊されていない事に気が付いた。

 

「ぐっ、うぅ…」

 

「マリアさん、大丈夫ですか!?」

 

 一方のマリアは砲撃の反動でかなりの距離を吹き飛ばされ、その横にエルフナインが駆け寄っていた。その衝撃によって既にギアは解除されており、砲撃の凄まじさが伺える状況である。

 

「…まさか、外したって事? それなら――っ!?」

 

 その状況を確認したガリィは自身が無事な理由を砲撃が外れたからだと推測し、後方を確認するのだが…。

 

 

「――アッ、アハハハハ…ば、馬鹿じゃないの…?」

 

 

(…当たってたらどうなっていたと思う…?)

(それ、聞く必要ある?)

(…うん、ごめん…)

 

 そこには 何も(・・ )無かった。ガリィが作った海も、元からあった砂浜もそこには無く…ただ、巨大なクレーターだけがそこには存在していた。これではガリィでなくとも、その光景を見たほとんどが乾いた笑いしか出ないだろう。

 

「こんなの聞いていないわよ…! ねえっ!?」

 

(落ち着いてガリィちゃん!)

(私達も知らなかったんだって!)

(原作ではあんな技使ってなかったんだよ!)

 

 声達が知らないマリアの砲撃…これは実は原作の四期で使用されるはずの大技であった。その技名は『HORIZON†CANNON』ギアの左腕から高威力の砲撃を放つ技で、三期までの知識しかない声達はそれを知らなかったのである。

 

「ちっ…まあいいわ、切り替えましょう」

 

(ガリィちゃん…?)

(まだ帰らないの?)

 

 自身を強引に落ち着かせたガリィは何処かへと歩き出す。その先にいるのは二人の人間…マリアとエルフナインであった。

 

 

 

 

 

 

「…やっぱり空中で撃つのには無理があったわね…まともに狙いが定まらなくては意味が無いもの」

 

「いえ、あの状況では仕方ないと思います。だからマリアさんの判断は間違っていません!」

 

「…ありがとう、エルフナイン」

 

 ガリィが取り乱している時、マリアは既に身体を起こしエルフナインと話をしていた。

 

「…こういう時はお疲れ様、と言うのが正解なのかしらね」

 

(まだ絡むのか…⦅困惑⦆)

(クレームでも付ける気かな?)

 

「っ! ガリィ…!」

 

「…お疲れ様。今回も貴方の勝ちね…これで私の三敗目だったかしら」

 

 そこに現れたガリィは、不機嫌そうな表情でマリアへと語り掛け戦闘の終了を告げた。そしてマリアが自身の敗北をガリィに伝えると、何故かガリィの表情は更に不機嫌なものへと変化して行く。

 

「…引き分け」

 

「――えっ?」

 

「今日は引き分けだって言ってんのよ…! それと…」

 

(⦅限り無く負けに近い⦆引き分け)

(なんでや!ガリィはほとんど無傷やんけ!)

(そうだよ⦅便乗⦆)

 

 ガリィは不機嫌そうなマリアへと強引に引き分けを告げ、そして…。

 

 

「決めたわ、ガリィの相手はアンタよ」

 

 

「貴方が…私の?」

 

(原作セリフキターーーーーっ!)

(ただし状況は全く違う模様)

 

 マリアへと、再戦の意思がある事を告げた。

 

「そう――ただし無駄に何回も戦り合うのはナシにしましょう」

 

(なんでこの人形、上から目線で喋ってるの?)

(二勝している相手だから普通やろ⦅すっとぼけ⦆)

(もう完全に前とは別人なんだよなぁ…⦅遠い目⦆)

 

「…つまり、それは…!」

 

「ええ、次で決着を付けましょうか。当然最高の舞台で、ね」

 

(最高の舞台で散るんですね分かります)

(悲しいなぁ…)

 

 ガリィはこの時点で、自身の計画の最後をマリアと戦う事にすると決めていた。…勝てるわけがないとは言ってはいけない⦅悲しみ⦆

 

「…分かったわ、受けて立ちましょう」

 

「ふふ、その時を楽しみにしてなさい♪」

 

 その提案にマリアが同意し、これで二人の再戦の約束は結ばれた。ちなみにガリィはこの後、脳内でマリア対策会議を開いたのだが良い案は出なかった模様。だってその、力量差が…ね⦅悲しみ⦆

 

 

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「ガリィ…私達とキャロルは、やはり分かり合えないのでしょうか?」

 

 マリアとの会話が一段落した後、それを見計らってエルフナインが話し掛けて来た。

 

「…は? そんなの無理に決まってるでしょ、大体マスターの事を何も知らずに分かり合うなんてよく言えるわねアンタ」

 

「――キャロルの、事を…?」

 

「そうよ。上辺だけの言葉じゃなくて、マスターがどう思っているかをまず考えてみなさい」

 

「キャロルが、どう思っているか…?(そういえばキャロルは、どうしてこんな事を…?パパの最後の言葉が、何故このような事をする理由になってしまったのだろう…?)」

 

「さあね~♪ これ以上は秘密よ☆…というか面倒臭いのが来て時間切れみたいだし…」

 

 ガリィはその言葉の後、転移結晶を取り出し…。

 

 

「それじゃまたねマリア、エルフナイン。また会えるのを楽しみにしているわ♪」

 

 

 その姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「…マリア、か。初めて名前を呼ばれたわね」

 

「…」

 

「? どうかしたの、エルフナイン?」

 

「っ! あっ、いえ…ちょっと考え事を」

 

「そう…それならいいんだ――」

 

 ガリィが去った後、二人はその場に留まっていたのだが…。

 

「マリア~! 何処にいるんデスか~!?」

 

「マリアー!」

 

 聞き覚えのある声が二つマリアの耳に聞こえ、こちらに近付いて来る姿が見えた。

 

「…さて、迎えが来てくれたみたいだし、帰りましょうか」

 

「…切歌さん、調さんも…?」

 

「後ろに翼もいるわよ…というか私を睨んでるし、これはバレてるわね…」

 

「アハハ…すぐ側に大穴が開いていますから…」

 

「動かぬ証拠、という奴ね。今日は疲れたから説教は明日にしていほしいんだけど…」

 

「駄目ですよマリアさん。皆を心配させた分は、きちんと反省しないと」

 

「ふふ、確かにそうね」

 

 エルフナインと軽口を交わしたマリアは、仲間達の下に向かうために歩き出す。その足取りは疲れたという発言とは裏腹に、非常に軽いものだった。

 

 

 

 

「判決…! 司令との一週間特訓コース・スペシャルverをマリアには行ってもらう」

 

 

「な、何よそれ実質死刑と一緒じゃない! そうだ弁護士――弁護士を呼んでちょうだい!」

 

 

「弁護士、言いたい事はあるか?」

 

 

「異議無しデス」

 

 

「異議無し、です」

 

 

「あ、貴方達まさか私を殺す気なの!?」

 

 

 ちなみに判決は死刑⦅実質⦆であった。ちなみに内訳は勝手なモジュールの起動が一割、仲間に心配を掛けたのが九割である…慈悲は無い⦅自業自得⦆

 

 





次回、ガリィ奇跡の帰還。

次回も読んで頂けたら嬉しいです。


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