ガリィちゃんとわたしたち   作:グミ撃ち

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第九十四話です。




第九十四話

 

 

「ガリィ、貴様は自分が何を仕出かしたのか…それを理解した上で今、俺の前に立っているという事だな?」

 

「ええ、もちろん。ガリィは自分の意思で、マスターが不幸になる道を潰すために行動したんです」

 

「…世界を分解しパパの遺言を果たす事のどこが不幸だと言うのだ貴様は…俺がそれを果たすためだけに数百年を費やして来た事は貴様も把握しているはずだろう?」

 

(やっとここまで来たんだ…頼むよガリィちゃん!)

(キャロルちゃん、思ったよりも冷静だね)

 

 シャトー玉座の間…そこでは現在、意識が回復したキャロルとガリィによる一対一の会話が行われていた。ちなみに協力を申し出てくれていた仲間達はガリィの指示により退出させられているため、もしもキャロルがガリィを処分する事を選択した瞬間にバッドエンドが確定するという状況である⦅震え声⦆

 

「いやいや、マスターってばそもそもそこがおかしいんですってば。 ここまで来たらハッキリ言わせてもらいますけど『御父様の遺言=世界を分解』じゃないですから!どう考えてももっと平和的な意味が込められてるに決まってるじゃないですか!」

 

(言った言ったガリィが言ったーっ!!!)

(そうだよ⦅便乗⦆)

(キャロルちゃんの反応で現在の正気度を測るつもりか…ガリィ、恐ろしい子…!)

 

 局面はクライマックスに差し掛かっているため、最早ガリィに手加減する気は毛頭無かった。ここでキャロルの説得に失敗すればガリィがどうなろうともバッドエンドが濃厚なため、ガリィは心の内を全て曝け出しノーガードでの打ち合いを選択したのである。

 

「っ!? そ、そんなはずは無い!パパは業火に焼かれながらその言葉を――」

 

(あれれ~? どうして焦ってるのかなぁ~?⦅ゲス顔⦆)

(大事なのはぁ、パパさんがその時どんな表情をしていたかなんですよぉ~)

 

 対して何の心構えもできていないキャロルは圧倒的不利な状況である。彼女が本当に計画を諦めずに遂行する気ならば、ガリィに口を開かせるべきでは無かったのだ…つまり、もう手遅れである⦅遠い目⦆

 

「笑顔でマスターに伝えた…違いますか?」

 

「っ――ガリィ、貴様何故それを…」

 

≪…なぁんだ、マスターったらほとんど正気に戻ってるじゃない…ああ、だからあんなに焦ってたのね成程成程≫

 

(既にあと一押しのところまで来ていたのか⦅驚愕⦆)

(数年前までのキャロルちゃんなら今の時点で確実にガリィちゃんをスクラップにしてるだろうしね)

 

 そしてその結果、ガリィの攻勢は止まらない。既に正気に戻る一歩手前だったキャロルに対し、ガリィはこれまで得たすべての情報を使い最後の一押しを続けていた。

 

「はい引っ掛かった☆ ガリィが勝手に予想してただけなんですけど~、どうやら大当たりだったみたいですねぇ♪⦅ゲス顔⦆」

 

「き、貴様ぁ…!」

 

(うーん、この畜生⦅呆れ⦆)

(ちょっと余裕が出来たらコレだよ…⦅白目⦆)

 

 そしてもちろん煽りを入れる事も忘れない。これがガリィ・トゥーマーンという人形の説得術である。

 

「はいはい怒らない怒らない♪ それでマスターの言葉が正しければ~、御父様は笑顔でマスターに『世界を識るために世界を破壊して分解しろ』って言った事になるんですけど…マスターの御父様ってそんな人でしたっけ?」

 

「っ!…パパは――――――――そんな人間では、無い…」

 

「あらら、それは困っちゃいましたねぇ…だって――」

 

(あっ、何か嫌な予感がする⦅経験則⦆)

(…奇遇だね、私もだよ⦅白目⦆)

 

 会話を続ける中でキャロルが既に正気を取り戻していると推測していたガリィは、それを確かめるために危険な賭けに出た。そして…。

 

 

「それが確かなら、マスターがこれまでしてきた研究は全部無駄だったって事ですし~」

 

 

「っ!!!!!!!!!!」

 

 

(はい終わり!主人公死亡!解散!⦅白目⦆)

(これは怒る、誰だって怒る)

 

 ガリィがその言葉を呟いた瞬間、キャロルの手から幾つもの光弾が人形に向けて撃ち出された。

 

 

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「……マスター、貴方は既に自身の間違いに気付いていますよね? だけどそれを認められず、まるで焦るかのように襲撃を強行した。違いますか?」

 

『ガリィ、無事か!?』

 

「問題無いわ、入って来なくても大丈夫よ!」

 

(…ああ、なるほど…今のが最後の一押しになったのか)

(だけど引き下がる事も今更できなかった…って事かな)

 

 キャロルの攻撃を真面に浴びたガリィは…無傷だった。ではキャロルが放った光弾は何処へ行ったのか…その答えはガリィの後方に位置する壁、そこに開いた幾つもの破壊痕を見れば分かるだろう。

 

「そ、それは…」

 

「後には退けない段階まで計画を進める事で全てに決着を…いえ、全てを終わりにしたかったんですか?」

 

「…」

 

(…遠回しな自殺みたいなもんか)

(身も心も、もう限界だったんだね…)

 

 キャロルは俯き、もはや答えを返す事は無かった。しかしガリィは言葉を続ける、キャロルと送る薔薇色の未来を掴み取るために⦅迫真⦆

 

「だけど、その先には絶望しかありませんよ? あの子達に勝利しても待っているのは虚無…きっとそれだけですもの」

 

「…ガリィ、貴様が居なければ俺は何も考えずに進むことができたのだ…それを、貴様は…!」

 

「ふふ~ん、それはガリィとって最大級の賛辞にしかなりませんよ♪ マスターの描いた脚本…ガリィちゃんが全部すり替えさせてもらいましたぁ☆」

 

「きぃさぁまぁ…!!!⦅全ギレ⦆」

 

(すり替えておいたのさ! ベッタベタのハッピーエンドで終わる脚本にな!)

(もう前の脚本は捨てちゃったんでぇ~、この脚本で続きをやるしかないっすねぇ⦅ゲス顔⦆)

(恐ろしく速いすり替え…私でなきゃ見逃しちゃうね…!)

 

 俯いた顔を上げ、涙を浮かべながらガリィを睨み付けるキャロル。しかしそれはガリィにとってはご褒美にしかならず、余計に人形を調子に乗らせてしまう結果に終わるのだった。

 

「だから怒らないでくださいってばぁ…というか怒りたいのはこっちもなんですから! マスターってば退路を断つために私達を犠牲にしようとしましたよね!? 酷いってレベルじゃないんですけど!」

 

「計画を果たすためには呪われた旋律が不可欠なのだから仕方ないだろう! というかそもそも人形なら主の命令に従うのが筋だろうが!前から思っていたが明らかにお前だけおかしいんだよ!」

 

(しっかり根に持ってて草)

(ガリィちゃんがおかしい事に突っ込んでくれるのは今となってはキャロルちゃんくらいのものだゾ)

 

 そして始まるいつもの口喧嘩である。といってもじゃれ合いのようなものなので問題は無いだろう。

 

「は?⦅威圧⦆ ガリィはマスターの幸せのために動いてるんですー!だからそれは命令違反してるわけじゃありませーん!⦅謎理論⦆」

 

「は?⦅威圧⦆ いいだろう…今日と言う今日は言わせてもらう。貴様には不審な点が多すぎる、調達した形跡の一切無い大量の想い出、装者達への異常な程の助力、そして命令違反を始めオートスコアラーでは不可能なはずの行動…他にも挙げればキリが無いが、続けるか?⦅満面の笑み⦆」

 

(これは完全に裏切者ですよ!)

(ほんと利敵行為しかしてないなこの人形…⦅呆れ⦆)

 

 そしてここぞとばかりにガリィへと反撃を始めるキャロルである。…こうして文字で見ればガリィが裏切者にしか見えないという…⦅呆れ⦆

 

「…おっとっと話が逸れちゃいましたねぇ。そんな事よりこれからどうするかを話し合いませんか?⦅露骨な話題転換⦆」

 

「…貴様、今挙げた中に後ろ暗い事があるのだろう⦅確信⦆ 話せ、今すぐに⦅命令⦆」

 

「え、嫌です♪⦅命令拒否⦆」

 

「貴様ぁ…!!⦅憤怒⦆」

 

(今挙げた中と言うよりほぼ全部だゾ⦅白目⦆)

(黙秘権を行使する!⦅迫真⦆)

 

 そして二人は本来の目的も忘れヒートアップして行く。君達ほんと仲良いっすね…⦅遠い目⦆

 

 

 

 

 

『~!!!』

 

『~!!!』

 

「…どうやら問題は無さそうだな」

 

「ええ、少し危ない場面もあったみたいですけど」

 

「マスターがガリィを捨てるわけないんだゾ」

 

 玉座の間の閉められた扉の前…そこで内部から漏れる怒鳴り声を聞いていた三体の人形は、ガリィがキャロルの正気を取り戻す事に成功したことを確信し安心していた。ちなみに部外者であるウェル博士は別室で待機してもらっているようだ。

 

「さて、この後は…S.O.N.G.に降伏するのか、それとも一切関わらずに去るのか…ガリィは何を考えているのだろうな?」

 

「…降伏した場合、私達は想い出の調達ができなくなるかもしれないわね。流石に被害者が出るのをあちらも許してはくれないでしょうし」

 

「ガリィは降伏なんかしないしアタシも戦いたいゾ!」

 

「そうか。まあそれは中に入ってからの話になるが…もう少し待ってから入るとするか」

 

「ええ、そうしましょうか」

 

 それから十分程が経過した後、ようやく静かになったのを見計らい三人は室内へと足を踏み入れるのだった。

 

 

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「それで~、結局マスターはどうして世界を分解するなんていう物騒な結論を出しちゃったんですか???」

 

「確かに…何がマスターを狂気に走らせてしまったのでしょう…?」

 

「…覚えていない。パパの遺言を果たす手段を考えていた事は覚えているが…」

 

「う~ん、ガリィの予想では御父様を殺害した連中への怒りとか悲しみ…記憶が風化して行く中でそれらが混じっちゃったんじゃないかと思うんですけど。…まあこればっかりはマスター自身にしか分かりませんよねぇ」

 

(結局そこだけが空白のままだねぇ)

(まあいつか思い出すかもしれないし気にしなくてもいいんじゃない?)

 

 キャロル陣営全員が集まった玉座の間、そこには普段通りの空気が流れていた。

 

「…そうだな。あの幻影がそれを示しているとすれば、是非とも思い出したいものだが…」

 

「まあ気長に待つしか無いですかねぇ。 それで、これからどうしますか? もしも皆に明確な意思が無ければ、ガリィのオススメに付き合ってほしいんですけど☆」

 

(オートスコアラーvs装者のタイマンじゃーい!)

(ミカちゃんはタイマンじゃないんですがそれは…)

(ミカちゃんは反則級だから例外だゾ⦅真顔⦆)

 

 キャロルが狂気に囚われた原因を模索する彼女達だが、いかんせん数百年前の事であるためそう簡単に分かるはずもないのが現状である。唯一のヒントはキャロルの前に現れ呪詛を呟いていた幻影だが…。

 

「…正直なところ、目的を失った今は何も考えられん。 故にガリィ、まずは貴様の提案を聞かせてもらおう」

 

「アタシは戦いたいゾ!」

 

「特に通したい意見は無い。それよりもマスターが心配です」

 

「私もマスターが心配なのは同じですが…ガリィちゃん、いいアイデアが浮かんだのかしら?」

 

(…やっぱりキャロルちゃん元気無いねぇ…)

(仕方ないよ、ずーっとやって来た事が無意味になっちゃったんだから…)

 

 そんな中、ガリィが話題を転換しこれからの方針についてを切り出した。どうやらミカ以外には明確な意思は無いらしく、ガリィはそれを内心で好都合だとほくそ笑みながら聞いているのだった。

 

 

「う~ん、なんていうか…ガリィ達って今まで負けるための戦いをして来たわけじゃない? だから最後に一回くらい勝つために大暴れしたいかなぁって♪ …ダメ?」

 

≪皆には悪いけどこれだけは絶対に譲れない…今のまま終わりを迎えればマスターの心は暗闇の中で取り残されてしまう…だから!≫

 

 

 表面上は茶化しながら話すガリィだが、その内心は今までにない程真面目かつ本気である。ここでなんとかキャロルを響とぶつけ合わせ、彼女に全てを託そうとガリィは考えていたのだ。

 

「…つまり貴様は徹底抗戦の構えを取るという事か。お前達は?」

 

「アタシはガリィに賛成だゾ!」

 

「ミカちゃんはそうなるわよね。私は…もう一度歌を聴きたいわね⦅正直な意見⦆」

 

「確かに自身の全力を振るい、勝利するために戦ってみたいという想いはある。だが、そもそもどのような理由で宣戦布告する気だ?」

 

(よーし、オートスコアラーは概ね肯定的だな)

(ファラ姉さんはもう手遅れみたいですね⦅遠い目⦆)

 

 そう、これがガリィの計画の最後を飾る作戦…その真の目的は生きる意味を失ったキャロルに光を与える事であり、オートスコアラー達の目的は響以外の装者達を引き付ける事…つまり時間稼ぎであった。

 

「そんな事は簡単簡単♪ 私達がそれぞれ別々の場所に装者達を呼び出して『一人でも決闘に応じない場合、チフォージュ・シャトーの全武装を用い破壊の限りを尽くす。更におまけで世界中にアルカノイズをばら撒いてあ・げ・る♪』って言えばいいのよ。ねっ、簡単でしょ☆⦅満面の笑み⦆」

 

「…ガリィ、貴様と言う奴は…⦅呆れ⦆」

 

「確実に成功しそうなのがまたガリィらしいな…⦅遠い目⦆」

 

「そ、そうね…それで、装者の割り当てはどうしますか?」

 

(な、なんでや!最適解やろ!⦅目逸らし⦆)

(満面の笑みを浮かべながら言えるのがアレなんだよなぁ…⦅白目⦆)

(ガリィちゃんは誰選ぶのかな~?⦅すっとぼけ⦆)

 

 相変わらずのガリィに呆れる仲間達である。そしてその空気を換気しようとファラが話を横に逸らすのだが、その質問はガリィにとって渡りに船だった。

 

「そうねぇ…アタシはマリア、ファラちゃんは風鳴翼…それでレイアちゃんは」

 

「私は雪音クリスと派手に戦うとしよう」

 

「そっ、じゃあミカちゃんは…(アンタ分かってるんでしょうね!響ちゃんの名前を出すんじゃないわよ!)」

 

「チビっ子二人! セットでお得だゾ!」

 

「はいはい、分かったわよ…それじゃマスターは響ちゃんでお願いしまーす♪(よし来た!やるじゃないアンタ達!お陰で自然にマスターに響ちゃんを割り当てられたわ!)」

 

(ミカちゃんは数が多い方を選んだんだね⦅優しい眼差し⦆)

(それよりガリィちゃんは本当にマリアさんと戦えると思ってるの?⦅真顔⦆)

(じ、時間稼ぎなら大得意だから…⦅震え声⦆)

 

 仲間達のアシストもあってキャロルに響を充てる事に成功したガリィだが、しかし…。

 

「…待て、俺も参加する必要があるのか?」

 

(えっ)

(あれれ?)

 

 そこでキャロルからのストップがかかる。どうやら彼女は参加するつもりが無かったようだ。

 

「あったり前じゃないですかぁ! マスターが参加しなかったら響ちゃんだけ除け者になっちゃうんですよ!? あんなに仲良くしていたのに酷いじゃないですかぁ!(ここでマスターだけは絶対に逃がさない!でないとアタシはきっと後悔する!)」

 

「…仲良くした覚えは無い…まあ話くらいはしたが」

 

(ちょっとちょっと主役が参加してくれないと困りますよ!)

(響ちゃんをフリーにするとか何が起こってもおかしくないから!やめて!!)

 

 キャロルの不参加だけは絶対に阻止せんと必死で説得にかかるガリィ。しかしキャロルはどうもまだ迷っている…というより意気消沈した様子である。

 

「…というかマスターかミカちゃんくらいしか響ちゃんと真面にやり合えないですし…あの子滅茶苦茶強いですから(お願い…首を縦に振ってくださいよぅ…!)」

 

「立花響、か…」

 

「ええ、どうですかマスター?」

 

「…今日一日、考えたい」

 

「…はぁい、分かりましたぁ(駄目だった…のかしらね)」

 

(諦めないで明日の朝を待とうよ、ね?)

(それで駄目なら急いで別の手を考えなきゃ)

(…明日、か)

 

 結局、この日ガリィはキャロルの首を縦に振らす事はできなかった。そして彼女は明日、どのような答えを出すのだろうか…。

 

 

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「そろそろ就寝する。ガリィ、今日は俺一人でいい」

 

「…そう、ですか」

 

(今日はこれで終わり、だね)

(おやすみキャロルちゃん)

 

 その日の夜…キャロルは就寝する時間になったためベッドに入る事にした。ちなみにウェル博士の事は既にガリィから聞いており、彼には客間を宛がっていた。

 

「…?」

 

「…あっ、あのっ!」

 

「? どうした、ガリィ」

 

 横になったキャロルが中々部屋から退出しないガリィを不思議に思っていると、彼女にしては珍しく深刻そうな表情でこちらへと呼びかけ、そして…。

 

 

「明日の朝! マスターが冷たくなってたりしたら一生恨みますから!というか後を追いかけて絶対に逃がしませんから!おやすみなさい!」

 

(なんか深刻そうな感じだと思ったらそんな事考えてたの!?)

(…でも、そうなっても不思議じゃないよね。生きがいみたいなものが全部無くなっちゃったわけだし…)

 

 一方的に捲し立てて彼女は部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

「…自殺、か。確かにそれも考えたが…」

 

 ガリィが去った後、キャロルは一人考える。全てを失ったのにも関わらず、何故自分はまだ生き永らえているのだろうか、と。

 

「ふふ、一生恨む…か。 それは怖いな」

 

 もしも彼女が一人だったなら、既に自死を選びこの世から去っていただろう。しかし彼女がまだここにいるという事はまだ彼女を此処に繋ぎ止める ナニカ(・・・ )が残っているという事なのだろう。

 

「…おやすみ、ガリィ」

 

 そしてそれに気付く事無く、キャロルは無意識に言葉を呟き眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 捻じ曲がった運命はこれより最後の時を迎える。そして、彼女は最後に気付くのだ…己の手から零れ落ちたナニカが自身の心の支えだった事に…。

 

 

 そして二度目の喪失に襲われた時、彼女は…。

 

 

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(この記憶も、あの記憶も…すべては無駄だったという事か)

 

 眠りに就いたキャロルは、夢の中で自身の記憶を彷徨っていた。

 

(やはり、もう俺には何も残っていない…)

 

 しかしキャロルの記憶のほとんどは父の遺言を研究していたもの…つまり今日、全てが無に帰した記憶ばかりだった。それを見続けたキャロルは俯き、ぽっかりと空いた心の隙間をただ晒し続ける。

 

 

 

 

「許さない…パパを殺したあいつらを、絶対に許さない」

 

 

 

 

(っ!?)

 

 

 

 

 しかしその時、キャロルの目の前に一人の少女が現れ…。

 

 

 

「忘れない、私は絶対に忘れない」

 

 

 

(何を…!?)

 

 

 キャロルの身体に抱き着き、そして…。

 

 

「例え全ての人間が忘れても、私自身の記憶が風化したとしても…私はこの怒りを魂に刻み…永遠に呪い続ける」

 

 

(これは…この感情は…!?)

 

 

 別たれていたものは再び一つに戻り…キャロルの心の隙間を、埋めた。

 

 

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「…」

 

「おはようございますマスター♪ 今日も一日がんばりましょ~☆」

 

「…ガリィ」

 

「? はぁい」

 

 翌日の早朝、目を覚ましたキャロルは自身を見つめていた人形の姿を確認し…。

 

 

 

「貴様の悪巧み…()も参加させてもらおう。 …もっとも、()が行うのは行き場を失った怒りを世界に八つ当たりする事だけだが」

 

 

 

「――――――ふぇっ?」

 

 

 

 自身の答えを、告げた。

 

 





不穏なフラグを立てておいてなんですが、作者の頭の中は緩い話を書きたい気持ちで一杯です⦅真顔⦆

次回も読んで頂けたら嬉しいです。



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