戦姫絶唱シンフォギアW   作:まだお

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感想評価を下さった方、ありがとうございます。
おかげで無事3話を終わらせることができました。

※第3話加筆修正しました。
少しでも面白くなっていれば幸いです。

PS
最後にどMからアンケートありますんで慈悲の心を持って罵ってください


Wの探偵/熱い一撃

翔太郎が未来の前に駆けつけたのは偶然か?

勿論、そんな事はない。

では何故ここに彼がいるのか、その答えは1日前まで遡る。

 

 

 

「戻ったぞセレナ」

 

ノイズの発生現場から事務所に帰ってきた翔太郎は、いつもの場所に帽子を掛けて腰を下ろす。

そんな彼に対し、セレナはコーヒーを手渡すと壁際に設置されたベッドに腰掛けた。

 

「お疲れ様でした。数は多かったですけど、特別強力な個体がいなかったのは不幸中の幸いでしたね。それにしても…まさか響さんがシンフォギアの装者になるなんて、私…私…」

 

そう言って俯く彼女の表情は見えない。

翔太郎にはその姿が、友の身に起きた変化に不安を感じてるように見えた。

 

(無理もねぇ…あいつら仲良かったし、ダチがこれから戦いに巻き込まれるつーなら心配にもなるか)

 

椅子から立ち上がると、大仰な仕草を取りながらセレナの方へと歩いて行く。

彼が何かしら"キメ"ようとする時の癖だ。

 

「…心配すんなセレナ。危ねえ時は俺がちゃんと守ってやる。ガキの未来守んのはハードな男の仕事「すっごく興味深いです!ゾクゾクして来ました!」…そっちかぁ!?お前ビッキーの心配してんじゃなかったのかよ!」

 

翔太郎は予想と真逆の反応に思わず体勢を崩した。

顔を上げた彼女の目はキラキラとしており、響に対する心配は微塵も感じられない。

むしろ、翔太郎に対して何を言っているのかとばかりに呆れた目を向けた。

 

「心配だなんて…翔太郎さん、あの人はあなたが思っているよりずぅ〜と強い人ですよ?戦いに向かない優しい性格だから時間はかかると思いますけど、いつか必ず私達と一緒に肩を並べる日が来ます。だって響さんですから」

 

そう言って笑うセレナからは響に対する絶大な信頼を感じる。

大人(翔太郎)にとって、響はまだまだ庇護すべき子供に見えるが、年の近いセレナからすれば彼女は守られるだけの存在ではない。

悩み傷つきながらも前を向いて自分で歩く道を選ぶ。

立花響とはセレナにとってそんな存在(憧れ)なのだ。

 

「それより、翔太郎さん『俺が』じゃなくて『俺たちが』ですよ。もし響さんを助ける時が来るなら、それは私達でやるべき事です」

 

「たくっ、ガキんちょが一丁前にカッコつけやがって…『あの子の全ては閲覧し終えました。もう興味も湧きません』なんて言ってたのが嘘みてえだな」

 

「そ、それは…もう!昔の話を掘り返すなんて翔太郎さんは意地悪です」

 

茶化すように昔話を始めた翔太郎に対してセレナは頰を膨らませる。

「カッコつけたがりは翔太郎さんも同じじゃないですか」と呟く彼女の顔は耳まで赤くなっていた。

この街に来た当初の記憶。

それは今のセレナにとって中々振り返り辛いものだ、主に羞恥的な意味合いで、だが。

翔太郎に言われたせいか、段々と当時のことを思い出してしまったのか彼女はベッドの上に寝転び、顔を枕に伏せると足をバタつかせ始めるた。

それを見て微妙に勝ち誇った顔をする翔太郎。

先ほどのセレナを少しカッコいいと思ってしまったのが悔しかったらしい。

 

そんな2人に突然事務所のドアを叩く音が聞こえてきた。

響であればノックはしない、未来であるならばすぐに名乗る。

そもそも2人ともこの時間は外出できないはずだ。

そう判断した2人はドアを開け来訪者(依頼人)を迎え入れた。

 

 

私は、事務所を訪ねてきた依頼人の方にコーヒーを出すと翔太郎さんの横に腰掛けます。

どうやらこの方『堂島隆(どうじまりゅう)』さんは、娘さんに関係する事で私達に依頼に来たようです。

 

「ありがとう、嬢ちゃん。それに探偵のアンタも、こんな夜遅くにすまねぇな。最近、この街に引っ越してきたばかりでまだ色々と慣れてないんだ」

 

「いえ、いつ如何なる時も依頼人を見捨てない…それが極めてハードな男、左翔太郎です」

 

あぁ…またいつものが出てしまいました…

この人、時々こうしておかしくなるんですよね。

堂島さんが引いてないか心配です。

 

「ははっ、頼もしいな。じゃあ、すまんが早速依頼の話に入らせてくれ」

 

お、驚きました。

翔太郎さんのアレを無視するどころか、笑って流すとは…

この人、なんだか手慣れてる感じがします。

 

「本来、俺の依頼は警察に任せるべき事なんだろうが…コレが出てきちまったらな」

 

そう言って堂島さんが鞄から取り出したのはビニール袋でした。

受け取って中身を確認してみると…

 

「これは…ガイアメモリ!?」

 

「なっ!…つーか堂島さん、あんたコレがどういうモンか知ってんのか!?」

 

翔太郎さんが僅かに警戒の体勢を取ります。

確かに、先程の堂島さんの口振りはガイアメモリ(これ)が何であるかを知っているようでした。

ガイアメモリは裏で密かに流通していると言っても、一般の方、それもこの街に引っ越してきたばかりの方が、その正体を知っているはずがありません。

だというのに、それを知っているということは…

私は気づくと翔太郎さんの服の裾を握っていました。

そんな私達を見ても堂島さんは特に動揺することもなく、冷静に話を進めます。

 

「ああ、俺は数年前まで警察にいてな。と言っても所属はこの街ではなかったんだが、何度か出向という形でこの街の事件にも関わったことがある。その時にこいつの存在を知ったわけだ」

 

その言葉に翔太郎さんは納得したようでした。

翔太郎さんは堂島さんに対しての警戒を解きましたが、私はまだ、翔太郎さんの側から離れることができません。

私の頭に、沢山の大人達が私を使って何かの実験をしている状況が浮かびます。

それはここに来る前の私の過去。

私達がビギンズナイトと呼ぶあの夜よりも前のこと。

ずっと痛くて…ずっと苦しくて…それなのに死ぬことができない…そんな毎日。

私には堂島さんがその時の大人達と被って見えてしまいました。

 

「…随分と嬢ちゃんを怖がらせちまったみたいだな。噂通り、嬢ちゃん達もコイツが何なのかは知ってるわけか。すまん、いきなり見せたのは少しデリカシーてのが無かったか…こんなんだから娘にも嫌われちまうんだ」

 

怯える私を見て、堂島さんが自嘲するように笑います。

決して堂島さんが悪い訳ではないのに、落ち込まれるその姿を見ると申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

依頼人を信じること、それは翔太郎さんから教わってもう2年が経つのに…

私は未だにそれが出来ない自分に腹が立ち、ギュッと翔太郎さんの服を握って目を閉じます。

大丈夫、大丈夫。

私は、そう心の中で呟くと翔太郎さんから離れて元の位置に戻りました。

 

「ごめんなさい、もう、大丈夫です。依頼の続きをお願いします」

 

そんな私を見て、翔太郎さんは少しだけ笑うとすぐに真剣な顔をして堂島さんへと向き直りました。

 

「安心してくれよ堂島さん。少し取り乱しちまったが、こいつは俺の相棒だ。アンタが思ってるよりずっと強えよ」

 

それ、さっき私が言った言葉じゃないですか。

もう!翔太郎さんてば実は根に持ってますね?

私より年上の男の人なのに本当に子供ぽいんですから…

 

 

 

 

でも…少しだけ、私を強いって言ってくれたのが嬉しくて、悔しいです。

 

 

 

 

堂島さんはそう言った翔太郎さんを見て驚いたような表情をすると優しく笑いました。

 

「参った、思った以上に頼りなるようだな探偵さんよ。…改めて依頼させてもらう。俺が娘の部屋でコイツを見つけるに至った経緯なんだがな」

 

 

 

 

 

その後、依頼人堂島の話を纏めるとこういった内容だった。

堂島の娘、奈那子は元々は親思いのいい子であったが、最近は家に帰ってくるのが遅く、それに対して注意しても反発するばかり。

最初は反抗期かとも思ったが、彼女がアルバイトで貯めていた貯金を大量におろしていた事を知り、問い詰めたところガイアメモリを買っていた事が発覚し現在に至る。

 

「娘の様子がおかしかった理由についても心当たりがあってな、最近、あいつと仲の良かった親戚と連絡がつかなくなっちまったのが原因だと思う。まぁ、親戚の奴は昔から変な事に巻き込まれやすい奴だったが、その度にうまく切り抜けてきた。だから俺は心配はしてねぇんだが、娘には相当ストレスだったみたいでな…」

 

「なるほど、それが原因で奈那子ちゃんはこのガイアメモリ…"ドッグ"の力を使って親戚の方を探そうとした、と」

 

「あぁ、おそらくな。幸い娘がコイツを使う前に取り上げることができた。だが、あの様子じゃまた同じ事を繰り返すかもしれねぇ…そこでお前さん達には、コイツを娘に売りつけた張本人を捕まえて欲しいんだ。警察にも既に相談してるんだが、そこで元同期…刄野の奴にお前らの話を聞かされたってわけだ」

 

刄野幹夫刑事、翔太郎らに協力してくれる街の住人の1人だ。

彼は2人が仮面ライダーである事は知らないものの、翔太郎達に対しガイアメモリ事件に関する事の情報を提供してくれる。

その代わりに事件解決の手柄、犯人の逮捕などは刄野刑事のものとなる約束だが。

 

「最近この街に来た俺にも伝わるくらい噂になってるからな。この街で超常犯罪が起きたなら鳴海探偵事務所を頼れって。元警察としては、お前ら一般の人間にこんな危険な事を頼るのは間違いだってのは分かる。だがっ!一児の親としては放っておけねぇんだ!頼む、俺の娘を守るのに協力してくれ!」

 

そう言って堂島は椅子から立ち上がると翔太郎達に頭を下げた。

そんな彼の肩に翔太郎は手を置く。

 

「顔を上げてくれ、堂島さん。あんたの思いは十分伝わったぜ。売人については俺たちが必ず捕まえてみせる」

 

「探偵…すまねぇ、ありがとう」

 

「そうですね、売人については私達に任せてください!むしろ、心配なのは奈那子ちゃんが、私達が捕まえた売人とは別の人からメモリを買おうとしないかという事です」

 

「嬢ちゃん…へっ、言うじゃねえか。そっちは大丈夫だ。娘は俺が必ず説得する。家族、だからな今度こそちゃんと向き合うさ」

 

 

 

 

 

堂島が帰った翌日。

翔太郎は朝から街の中を駆け巡っていた。

日頃からこの街を庭と称する彼でも、何の情報も無く特定の人物を見つける事は難しい。

だからこそ犯人を見つけるために彼は自分の足で手掛かりを探す。

 

「サンタちゃん、子供に好かれてるアンタに聞きてぇ事があんだけどよ」

 

「翔ちゃん!何、何どうしたの?」

 

ある時は、年中サンタのコスプレをしている看板持ちの男性からだったり、

 

「よぉ、2人とも!ちょっと話を聞かせてくれよ」

 

「あ〜、翔ちゃん。おひさー」

 

「最近怪しい男から声をかけられなかったかって?う〜ん、私達は会ったことないけど…あっ、友達から聞いた話ならあるよ。何でもぼっーと歩いてたら、いつの間にか知らない場所にいて、街もいつもと違う感じでまるで別世界だったとか、何だか暑かったらしいし。そうそう、道が黒かったとかも言ってたような…」

 

「よし、詳しく教えてくれ!…そういやお前ら学校は?」

 

「今日は開校記念日なんだ〜」

 

また、ある時はアイドルばりの女子高生からだったり、と様々な人から今回の事件について聞き回る。

そして、ある程度の情報を得た上で翔太郎は最後に怪しげな風貌の男の元へ向かった。

 

「つーわけで情報屋、頼みがある」

 

「翔ちゃん。ハードボイルド気取るのはいいけど、今日日いないよ?そんな何でも知ってる情報屋。常識疑われちゃうよ?」

 

「うるせぇ!」

 

その男は通称ウォッチャマンといい、街中の美女やB級グルメを撮影してブログに掲載する趣味のあるブロガー。

通称のウォッチャマンもネット上での彼のハンドルネームであり、本名については不明だ。

だが、行動範囲がとにかく広く、この街において彼以上に情報を多く仕入れる人物はそうはいないだろう。

 

「ふふ〜ん。翔ちゃん、もう君が何を聞きたいかていうのはボキに分かってるよ。最近、若い子に対してガイアメモリを売りつけてる売人を探してるんだろう?」

 

「相変わらず情報がはえーな。分かってんならさっさと教えてくれよ」

 

「焦らない、焦らない。ここ最近でのガイアメモリの売人については2人目撃情報がある。特徴は2人とも黒いスーツ、片方は白いスカーフに一点だけ血が滲んだような模様の男、ただそいつは子供と取り引きしたことは無いみたい」

 

「そうか、つまり俺が探してる売人てのは」

 

「そう、もう1人の黒スーツに間違いないね。そっちは特別目立った特徴は無いみたいだけど、可愛い子ちゃんばかり狙ってるみたいだよ?それも結構いいところのお嬢さんの方が多いみたい。そして、姿を現わすのは学生の下校時間」

 

「夕方てわけか、もう時間がねぇな…ありがとよ」

 

翔太郎は現金をウォッチャマンに手渡すと足早にその場を去る。

犯人が姿を見せるまでもう時間がない。

ポケットから携帯を取り出すとセレナへと電話をかけた。

 

『はい、セレナです。翔太郎さん、情報は集まりましたか?』

 

「ああ、サンタちゃんからは子供…小学生は被害にあってねぇことを教えてもらった。クイーンとエリザベスからは売人と会った事があるのは女子中学生から女子高生にかけて、それも悩み事を抱え込んだ奴ばかりだったてのを聞いたぜ」

 

『そんな…女の子ばかりを狙うなんて、許せません!』

 

同性として思う事があるのか語気が荒くなる。

だが怒りを抱いているのは翔太郎も同じだ。

彼はこの街を、街に住む人々を泣かせる決して許しはしない。

 

「この街で好き勝手したこと、後悔させねーとな。セレナ!ウォッチャマンのおかげで次、奴が現れる場所については俺に検討がついてる。お前は相手のメモリの能力について検索してくれ」

 

『分かりました!すぐに地球の本棚に入ります。キーワードは?』

 

「俺が集めた情報で鍵になるのは4つ。いつの間にか迷い込んでた"別世界"、いつもと違う"街"、この時期に暑かったつーことから"熱"、そして"黒い道"だ」

 

『別世界、街、熱、黒い道…ですね。結果が判明次第折り返します!』

 

「俺は先に現場に向かう。頼んだぜ"相棒"(セレナ)

 

『任せてください"相棒"(翔太郎さん)

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそして時は現在にー

 

「ほら手だしな、立てるか?」

 

「ありがとうございます…でも、翔太郎さんどうしてここに?」

 

未来は。翔太郎の手を借りて立ち上がると彼に問いかける。

その顔に先程までの不安はなく、落ち着きを取り戻しているようだった。

 

「仕事の一環でな。最近、女子学生を食いモンにするナンパ野郎が出回ってるから捕まえてくれってよ」

 

それを聞いたスーツの男は笑顔から一転、機嫌そうに顔を歪めると立ち上がって翔太郎を睨みつける。

 

「ナンパとは人聞きが悪いな。俺はただ、少しでもこの子の助けになればと思っただけだよ」

 

「さっきまでフラついてた割には元気がいいじゃねーか、頭の怪我はもういいのか?」

 

そう言われた男の人が少しだけ怯んだように見えた。

翔太郎の言葉につられて未来も視線をあげる。

仮にこれが彼の言うようにナンパだったとしても、自分が怪我をさせてしまったことに変わりはないと思ったからだ。

だが既にその男の頭からは血が流れていない。

むしろ傷跡すら残ってないようにもみえる、そこで未来も違和感を覚えた。

 

(ちょっとハンカチを当てただけなのにもう血が止まってる?額って傷の程度に関係なく血が流れるって聞いたような気がするけど…)

 

「悩みを抱えてる女子学生に対して、優しく声をかけ頼れる大人を演じて心の隙間に入り込む、それがお前の手口だろ?警戒心の強い子供には、怪我のふりなんかで善意を利用してな」

 

「なっ、ち、ちがう!俺は本当にその子に押されて怪我したんだ!」

 

男は慌てるようにして額を隠す。

そこまで見れば未来にも想像がつく。

おそらく、男は予め血糊や割れた瓶などといった小道具を用意して、この裏路地で人が来るのを待ち構えていたのだろう。

そして、たまたま通りかかった女の子に声をかける。

これが未来の考えた男の手口だった。

 

「一回成功したからって、何度も同じ手を使うのは芸がねえな。すぐに情報が集まったぜ三流ナンパ師さんよ…随分とこの街で好き勝手してくれたな!もう逃がさねぇぞ!」

 

男はワナワナと震え出す。

未来にはそれが図星を突かれて怒っているように見えた。

 

「黙って聞いていれば好き勝手言いやがって…俺はただ、もう一度だけ憧れあの子に会いたかっただけだ!そう、ノイズに殺されそうになった時、助けてくれたあの子に!こうやって声をかけていればいつか出会えると思ったんだ!」

 

血走った目で叫ぶ男は、まるで正気を失っているようだった。

未来には男の言っている言葉の大半が理解できなかったが、その姿から尋常ではない執念を感じとり、恐怖で後ずさってしまう。

そんな彼女を庇うように翔太郎が2人の間に割って入る。

 

「訳の分からねぇ事言いやがって。大人しく捕まりやがれ!」

 

「お前があの子に会うのを邪魔するってんなら、コイツで消し飛ばしてやるよ!」

 

『ロード』

 

男は懐からガイアメモリを取り出し首筋へと差し込む。

そうするとメモリは男の体内に吸い込まれるように入り込み、その姿を異形の者へと変えた。

 

「い、いやぁ…な、なにこの怪物!?」

 

怯えて震えだした未来を見て怪物、ロードドーパントはニタニタと笑う。

ガイアメモリの毒素による精神汚染、それが変身者の負の感情を増幅させているのだ。

 

「この力を使うと腹が減るんだ…お前達で飢えを癒させてもらおう」

 

そう言って手を伸ばしてくるロードドーパントを見て、未来は思わず目を瞑る。

怪人に捕まり生きたままその体を貪られる、という最悪の想像が頭をよぎった。

 

 

 

 

 

 

だが、その瞬間が訪れる事はない。

 

 

 

彼女の前に立つのはこの街の希望

 

 

 

 

2人で1人の探偵(仮面ライダー)なのだから。

 

 

 

 

 

翔太郎さんは胸のポケットから、Bのメモリ、『バット』のギジメモリをカメラに挿入する。

するとカメラ、メモリガジェットはコウモリの姿を模した形を取り、ロードドーパントに強烈なフラッシュを浴びせた。

ドーパントは堪らず伸ばした手を引っ込め顔を覆う。

 

「今だ、ヒナ!このまま真っ直ぐ走って逃げろ!そうすりゃ事務所の近くの道に繋がってる。俺が囮になってる隙にさっさと行け!」

 

「そんな!?翔太郎さんを1人置いてなんて行けません!一緒に逃げましょう!」

 

未来は翔太郎の服を掴むと強く引っ張った。

以前、響と一緒に事務所で見せてもらったこともあり、彼女も翔太郎がメモリガジェット(不思議な機械)を多く持っているのは知っている。

だが、それらを駆使してもこの怪物を倒す事は不可能だと思えた。

未来には、翔太郎が自分の命を使って逃がそうとしているように思えたのだろう。

その目に涙が浮かんでいた。

それを見た翔太郎は未来に向き直り、彼女の涙を拭うと諭すように言う。

 

「なぁヒナ。俺がいつも言ってること覚えてるか」

 

「…え?」

 

そう言われた未来の頭にとある言葉が浮かぶ。

 

「…"この街に住んでいる人は誰にも泣いていてほしくない"…」

 

「そうだ、だから俺がお前を泣かせるわけねえだろ。…それでも心配だってんなら、お前に被せてる"それ"まだ預かってろ。俺のお気に入りだからな、それを返してもらうまでは死なねえよ」

 

翔太郎の言う"それ"とはこの場所に来た時、未来に被せた帽子。

彼にとっては己が師より受け継いだ大切なもの(探偵の証)

普段から探偵として、この街に住む人々の悩みを解決してきたのを知っている。

だからこそ、その言葉には重さがあった。

 

「…分かりました。はやく、出来るだけ早く帰ってきてくださいね?」

 

 

 

翔太郎が未来がその場から走り去るのを見届けるのと、ロードドーパントの目が回復するのはほぼ同時であった。

 

「無駄なことを…どこに逃げようが俺の能力の前では無意味だ」

 

「知ってるさ。お前の能力、そいつは超高速と超高熱を使って空間を切り裂き、別次元に道を生成する。お前がターゲットを路地裏に誘い込んだのもこの能力の応用だ」

 

ドーパントの目が驚愕に開かれる。

自身の真の手口、それを言い当てられるとは思っていなかった。

 

「驚くことはねえよ、俺には優秀な相棒がついてるんでな」

 

そう言って翔太郎が取り出すのは事件解決の要(ダブルドライバー)

 

事務所内にいたセレナの腰にダブルドライバーが現れる。

彼女はそれを確認すると読んでいた本を閉じて立ち上がった。

 

「やっと出番みたいですね。待ちくたびれましたよ」

 

『サイクロン』

 

「半分力貸せよ、セレナ」

 

『ジョーカー』

 

そして、2人は1つになる。

 

 

『「変身」』

 

 

『サイクロン』/『ジョーカー』

 

 

彼らがこの2年間、街を人を泣かせる悪党共に投げかけ続けてきた言葉。

それは、仮面ライダーWの象徴。

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ』」

 

 

 

 

「ノイズ以外の高エネルギー反応を検知!…このパターンはドーパントです!」

 

司令室から連絡を受けた友里がメディカルルームにいた弦十郎達に伝える。

 

「ドーパント、だとぉ!?」

 

「あらら、これはすぐに準備をしてもらった方がいいのかしら…」

 

ガイアメモリについての説明を受けていた響は、突然の展開についていけず呆けてしまう。

今まで頑なに態度を崩さなかった翼も顔をしかめていることから、少なくとも良い事ではなさそうだと思った。

やがて、弦十郎らに連れられて司令室へと向かうとモニターにはノイズとは違う、禍々しい怪物が映っている。

 

「な、何ですか、この怪物?」

 

「これがドーパント、さっき説明したガイアメモリの力を使って人間が変身した姿よ」

 

「えぇえええ!?」

 

響は信じられないと叫び声をあげた。

だが、無理もない。

初めてドーパントを見た人間の反応としては真っ当なものだろう。

 

「あら?既に仮面ライダーが交戦中みたいね。これなら、翼ちゃんに向かってもらう必要もなさそうだわ」

 

そう言われた翼に反応はない。

ただモニター画面を食い入る様に眺めている。

了子はそんな彼女に嘆息した。

 

「あ、あの了子さん」

 

「あら、どうしたの響ちゃん?」

 

「翔太郎さん達…仮面ライダーの格好が昨日、見た時と違ってるみたいなんですけど」

 

「あぁ、そのことね。いいわ、さっきの説明の続きといきましょう」

 

 

サイクロンジョーカー。

それが今、ロードドーパントと対面している仮面ライダーのフォーム。

2人に最も相性の良いメモリからなるそれは、仮面ライダーWの基本形態だ。

 

『翔太郎さん、ロードドーパントは距離をあければ高熱を飛ばしてきます!このまま接近戦で決着をつけましょう』

 

「わかってらぁ!」

 

サイクロンの風の力を利用した蹴りは、確実に敵にダメージを与えている。

翔太郎の格闘センスもあり、このまま押し切れるかと思われた矢先、ロードドーパントが全身から高熱のエネルギーを放った。

至近距離にいたWはそれを受けて距離を離されてしまう。

 

「舐めるな!俺の彼女への想いはまだまだこんなものじゃない!」

 

「うおっ!?」

 

『大丈夫です!高熱に関しては風で防ぎました。それより、距離を開けられたのが痛いですね』

 

セレナの声には若干、焦りが込められている。

というのもロードドーパントが持つ、もう一つの性質のせいだ。

 

『ロードドーパントは能力の対価に、自分の肉体を消費します…それも、普通の食事では補えない程の速度で』

 

「てことは、まさか…」

 

『ええ、この場を逃がしてしまえば、減ったエネルギーを蓄えるために1番効率の良い方法…人体の直接吸収、つまり人を食べようとするはずです』

 

「冗談じゃねぇ!これ以上、こいつに街の人達を傷つけさせてたまるかよ!」

 

再び距離を詰めようとするが、ロードドーパントは高熱によるエネルギー弾を飛ばしてきて中々近寄らせようとはしない。

先程の組み合いから接近戦では不利と悟ったのだろう。

時間をかければかける程、ロードドーパントはエネルギーを消費し飢えを募らせる。

いずれは戦闘を放り出し、減った力の補給へと向かうはずだ。

それだけは何としても防がねばならない。

 

『このドーパントのメモリ、中々強力なものみたいです。さっきから全然近寄れません…いっそトリガーを使いますか?』

 

「そうだな…だが、下手に追い詰めて距離があるまま逃げられるのも厄介だぜ…あっ!ヒートトリガーで行くぞ」

 

『えぇっ!サイクロンを変えちゃうんですか?ヒートの熱量じゃ多分、勝てない気がするんですけど、せめてルナにしません?…なんだか嫌な予感がしますし』

 

「うるせぇ!黙って俺を信じろ」

 

Wはドライバーからサイクロンとジョーカーのメモリを引き抜くと新たに、赤と青のメモリを挿入する。

 

『ヒート』/『トリガー』

 

ハーフチェンジ、2つのメモリを使って戦う仮面ライダーWの特徴だ。

セレナの担当するソウルサイド、翔太郎の担当するボディサイド。

それぞれのメモリを変化させることによって、状況に適した力を使うことができる。

今回、彼らが選んだのは最高火力のマキシマムを放つヒートトリガー。

トリガー専用武器、トリガーマグナムを持ち、高い攻撃力を持つがメモリ同士の相性が良すぎるために、かえって不安定なハイリスクハイリターンの姿。

 

『言われた通り、ヒートに変えましたけど…この距離じゃまだマキシマムの圏内に届いてませんよ?』

 

「いいから見てろって!」

 

『ちょっ、翔太郎さん!?』

 

翔太郎がロードドーパント相手に選んだ行動は…突貫。

敵は彼の思わぬ行動に虚を突かれ、一瞬膠着するがすぐ様に高熱を飛ばす。

飛んでくる熱弾の内、何発かは撃ち落とすことが出来るが、それでも全てを弾く事は出来ずに残りの攻撃がWに直撃した。

 

「気でも狂ったか、仮面ライダー!」

.

ロードドーパントは煙の中に消えたWを嘲笑う。

だが、その顔は一瞬にして崩れた。

立ち込める煙の中、Wはその歩みを止める事なくドーパントに向けて進んできていたのだ。

 

『トリガー、マキシマムドライブ』

 

「決めるぜ、セレナ!」

 

『あぁ、もう!後で未来さんにお説教してもらいますからね』

 

「『トリガーエクスプロージョン』」

 

トリガーマグナムから放たれた炎は、文字通り必殺の一撃となってロードドーパントの身を包む。

そして、W最強の一撃は遂にスーツの男の体内からメモリを排出させ、破壊することに成功した。

 

「これで、事件解決だな」

 

『こんなの…無茶苦茶です』

 

 

 

 

 

翔太郎が事務所のドアを開けた瞬間、未来は彼に飛びついた。

少し前に目覚めたセレナから、翔太郎の無事を聞いてはいたが、それでも実際に目にするまでは心配だったのだ。

 

「良かった…本当に良かったです。翔太郎さん」

 

涙を流しながら良かったと繰り返す。

セレナや響に比べれば、随分と大人びて見えるが、彼女もまだ子供である事に変わりはない。

そもそもあんな別れ方をすれば、誰だって不安になるというものだ。

だから、未来が迷子になった後、親を見つけた幼子のようになるのも無理はないだろう。

翔太郎は、そんな未来の背中を優しく叩いてあやした。

 

「心配かけたなヒナ。…あんな事言ったのに、結局泣かしちまったか」

 

「いいんです。これは、嬉しくて泣いてるのもありますから」

 

未来は、翔太郎の言葉にようやく顔を上げて微笑む。

そして、手に持っていた帽子を彼に手渡した。

 

「帽子、お返しします。やっぱり、翔太郎さんが被っている方が似合ってますね」

 

「似合ってる、か。へへっ…少しは俺も、おやっさんに近づけたのかもな」

 

互いを見て、笑い合う2人。

事務所の中は和やかな空気に包まれ、一件落着かに思えた。

だが、翔太郎の無茶に付き合わされたセレナが、それを許さない。

 

「いい雰囲気のところで申し訳ないのですけど、未来さん、実はお耳に入れたいことが」

 

「どうしたのセレナ?」

 

セレナが手招きして、未来の耳にボソボソと呟く。

それを聞いていた彼女の顔が、段々と鬼の形相へ変わる。

まずい、そう思って再び事務所を出ようとした翔太郎だが、その腕がガシッと掴まれた。

 

「どこに行くんですか?翔太郎さん」

 

平坦な声音が返って恐怖を煽る。

元凶となったセレナに目を向けるが、彼女も笑ったまま動かない。

やはり先ほどの無茶に、彼女も思うところがあるようだ。

 

「少しお話し、しましょうか?」

 

「はい」

 

この日、翔太郎は何度目かも分からない誓いを立てた。

未来は絶対に怒らせないようにしようと。

 

 

 

 

 

 

その後の事件についてだが、売人の男は警察に引き渡した。

刃さんから聞いた話ではあの男、根津は2年前のノイズ災害の生き残りらしい。

元は真面目な人間だったようで、奴の関係者は根津が捕まった事に驚いてようだ。

何故そんな奴が売人になったのか。

これは俺の推測になるが、おそらく奴は、災害の時にシンフォギアの装者を見たのだろう。

生来の真面目さ故に、礼を言いたいと思ったが、情報規制により手掛かりが何一つ得られなかった。

落ち込んだ根津は、ある時、ガイアメモリの噂を聞いて思いついたのだ。

また、怪物が彼女達に会えるのではないか、とな。

そうして奴は、ガイアメモリについて調べてるうちに、その闇に呑まれちまった。

真実は本人の口から聞かない限り、分からない。

だが、この街に住んでる奴が根っからの悪人だったなんて、俺は思いたくねぇ。

奴が罪を償ってまた、社会に戻ってきた時には詳しく話を聞いてみたいと思う。

まぁ今は、この街に不幸をばら撒く人間が減った事を良しとするか。

売人全てがこの街からいなくなった訳じゃないが、少なくとも今回の依頼者の心配事を1つ片付けることが出来たのは間違いない。

事件の翌朝、堂島さんに結果については報告した。

依頼を解決した事について感謝されたが、また、この街を出て行くことになったようだ。

行方不明になった親戚が見つかって今度は、その人も含めた3人でまた暮らすらしい。

この街の汚い部分ばかり見ていないか不安だったが、「またいつか遊びに来る。今度は娘を連れてな」という言葉を聞いて安心した。

娘さんともちゃんと話し合って、和解したようだし、あの家族はもう大丈夫だと思う。

それにしても…ウチのじゃじゃ馬も堂島さんの娘くらい物分かりが良くならないものか…

 

 

「翔太郎さん…じゃじゃ馬って誰の事ですか?まさか、私じゃありませんよね〜、また未来さんにお説教してもらいますか?」

 

「おい、セレナ!お前人が打ってるもん勝手に見るんじゃねーよ!」

 

「どうせいつもの変な報告者じゃないですかそれ!結局、私が作り直すんですから、どのタイミングで見たって一緒ですぅ!」

 

こいつは、相変わらず騒がしいぜ。

結局ヒナにも、セレナから告げ口されたせいで2時間ほど説教されるし、本当にロクな事しやがらねえ。

堂島さんに子育てのコツを聞いておくんだった。

 




Qクッソみたいなオリジナル展開に長ったらしい文章で恥ずかしくないの?
Aはい、すみません
Qタイプライターにシンフォギアとかいれたらまずいだろ
Aはい、すみません。最後の翔太郎モノローグについては、タイプライターにはうまくボカして打ってると脳内補完をお願いします…

仮面ライダーナスカてどう思いますか?

  • おう、アリだろ。あくしろよ
  • どMに尻彦さんは扱えねーよ、消えな
  • そんな事よりアクセルだろJK
  • エターナルまだかよどM
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