こういった凡ミスが続き、本当に申し訳ありません。もしかしたら今後もこう言ったことが続くかもしれませんが、少しでも面白い作品を投稿できるように今後も精進いたしますのでどうかよろしくお願いします。
2/4 一部改訂。
「んむ?」
とある場所で彼女はパチリと目を開けると数度瞬きをしてんん?と首を傾げる。
「なに?ここ。あれ?」
彼女は何度か瞬きをすると再び首を傾げる。
「あれ?私……って、なにこの声……変な感じがする……」
彼女は何度も首を傾げて、硬直する。
「と言うか、声だけじゃなくて…………明らかに体の感覚が変なんだけど……」
自分は成長の過程で体を作り替えるが、少なくとも今感じているような体になることはない。なっていない。こんな感覚は初めての事だ。彼女は慌てて首を巡らして自分の体を確認する。二本の足に二本の腕、そして変な形の胴体……いや、この形は見覚えがある。
彼女はしばしの間首をひねって記憶を探り、少しするとああ、と小さく声を上げる。
「これ、あの時の小さい奴らと同じ体か……」
彼女は納得、と言うように頷く。何度か見た記憶のある小さな存在。今の自分の体はそいつらと同じ体だ。
だが、そこまで考えて彼女はん?と再び首を傾げる。
「なんで私そんな体になってるの?」
確か………自分は死んだ。うん、死んだのだ。それは間違いない。だがおかしい。自分は転生することができる。これまでに幾度となく死に、転生してきた。問題なのは以前とは似ても似つかない身体でとはいえ蘇った事だ。
あの時、自分はその繰り返しを自ら
彼女は少しの間考え込んだが、
「はあ、だめだ。考えても意味が分からないし、とりあえず置いておこう。生きていれば分かるかもしれないし」
そう考えて思考を打ち切り、体を起こす。理由は分からない。だが、今自分は生きているのだ。ならば、それでいいだろう。そして生きているのならやることはただ一つ。生き続ける事だ。そこまで考えて、彼女は軽く目を見開く。
「もしかして……彼も………」
その可能性に思い当たり、彼女の顔に喜色が浮かぶ。あの時、永遠の別れと思っていた彼がいるかもしれない。また会えるかもしれない。そう考えると居ても立っても居られない。自分がここにいるのなら、きっと彼もどこかにいるはずだ。だったら……彼を見つけよう。そして、また共に生きよう。
彼女は起き上がるとそのまま立ち上がる。今すぐにでも探しに行きたいが……
「とりあえず、まずは水と食料を探そう……ここ何もないなぁ……」
そう言ってから彼女は慣れた調子で歩き出す。
「むぐ………とりあえず腹は膨れてきたわね……」
ぶちり、と音を立てて彼女は手元の獣の死体の肉を食いちぎるとそのまま丸呑みにして首を傾げる。獣の死体は死んだばかりなのか血が滴っており、口をつけるたびに彼女の口元を赤く汚していくのだが、彼女は一切気にしない。そのまま食べ進め、骨も残さず平らげると彼女は再び歩き出す。
「さて……折角だし、あの連中にあってみたいわね……もしかしたら、この体の事も何か知ってるかもしれないし」
そう呟きながら彼女は歩いていくが、不意にん?と首を傾げながら空を見上げる。
一見何もない空だが、その空を何かが一直線に飛んでいくのが見える。んん?とさらに首を傾げて彼女はその正体を見極めようとする。が、何かはそのまま空の彼方に行ってしまった。
「あれ何かしら………ふむ、行く当てもないし、行ってみるか……折角だし、走ってみよう。この体にも慣れないといけないし」
そう言うと、彼女はどばんっ!と言う音と共に地面を抉り飛ばしてその場から走り出す。
その場で行われてる戦闘は苛烈の一言につきる。一撃ごとに地面が吹き飛び、炎が荒れ狂う。
そのさなかにいるのは4人。一人は金髪をポニーテールにした少女、一人は黒い髪に眼鏡をした青年、一人は赤い髪の青年、そして最後に銀色の髪の少女。情勢を見るに前述の3人が銀髪の少女を相手に戦っているようだ。
数的有利はこちらにある、だが、3人の表情は晴れない。それは銀髪の少女が3人相手に押しているからだろう。
瞬間、空間が破裂するような轟音が轟き、銀髪の少女の頭部を衝撃波が襲う。だが、彼女は微動だにせず、じろりとそれを行った赤髪の青年を睨むと、背中の銀翼が羽ばたき、銀羽が青年を強襲、青年の姿が掻き消えるが、影響はあったようで、別の場所に現れた青年は体中から血を流す。
「ナイズ!?」
「構うな!致命傷は「おーー、いたいた」な、なに?」
突如としてその場に割り込んできた鈴を転がすような声色ののんびりとした口調。その声にその場の全員が動きを止め、声が聞こえてきた方向に目を向け、言葉を失う。
そこにいたのは……果てしなく美しく、果てしなく力強い美女だった。
白色の短めの髪はまるで宝石で作られたかのように美しく月明かりを反射し、紺碧の海をそのまま閉じ込めたような青い瞳。小ぶりな鼻にふっくらとした唇。その全てが現実感がないほど完璧に整っている。目の前の銀髪の少女もまた人間離れした美貌の持ち主だが、彼女には及ばない。無理やりにでも欠点を上げるとすれば、それは口元が血でべっとりと汚れていることぐらいだろうか……そんなの関係なしに見惚れてしまうのだが。
そして彼女は服を着ていなかった。そのおかげでメリハリの利いたプロポーションが露になっている。
豊満な乳房を持ち、腰はキュッと引き絞られ、足はすらりと伸びている。もはや嫉妬も覚えないような完璧な体。だが、それだけではない。その体にはその美を損なわず、むしろ更に健康的な魅力を与えるほどの筋肉がついている。
彼女の登場にその場の全員が動きを止めてしまう。特に黒の青年と赤い髪の青年は状況も忘れて目を奪われてしまっている。だが、彼女はそんなの気にせず……むしろ気付いてもおらず、好き勝手にしゃべる。
「やっぱり……同じぐらいの大きさになってるのね。んん?あんた、なんであいつみたいな翼生やしてるの?そんなの見た事ないけど……あんただけ?あ、さっき空を飛んでたのってアンタだったのね。まあ、別にいいわ。それよりもさ、聞きたいことがあるんだけど……」
「ちょ、ちょっと!そんなこと言ってないで早く逃げて!」
金髪の少女の言葉に彼女はん?と首を傾げると同時に銀髪の少女の身体から銀の光があふれ出し、金髪の少女たちは顔を強張らせ、
「「逃げろ!」」
彼らは慌てて叫び、金髪の少女は彼女の元に向かおうとするが、その前に銀髪の少女から天空を覆うほどの炎の津波が放たれ、少女たちはそれを防ぐが、彼女は成すすべもなくその炎に飲み込まれる。
その光景を青年たちは愕然とした表情で見つめるが、次の瞬間、憤怒の表情を浮かべる。
「お前………!「他人の心配をする暇があると?」な……っ!?」
黒い青年のすぐそばに銀髪の少女が現れ、その手の大剣の切っ先を向け、引き絞るように構えて突きを「なになに?急に炎が上がったけどなにこれ?」
その言葉にその場の全員が驚愕に目を見開いて勢いよく首を動かす。
次の瞬間、炎の津波が消え、そこには彼女がきょとんとした表情で首を傾げていた。尋常ではない熱量、それこそ、人間一人ぐらい骨も残さず焼き尽くせるような炎に生身でさらされたにもかかわらず彼女には火傷を負った様子はない。それどころか髪の毛一本縮れてもいない。せいぜい口元の血が蒸発したぐらいだ。
その光景を見て銀髪の少女は驚愕に目を見開き、次の瞬間、少女は彼女の背後に回り込む。そしてその手の大剣を彼女の首に向けてすさまじい勢いで振るい、それと同時に彼女は大剣の軌道に左腕を差し込み、
ゴギャンっ!と言う音と共に大剣が真っ二つに圧し折れる。
銀髪の少女はそれこそあり得ないものを見るように目を見開き、彼女たちもまた目を見開いている。彼女には何も変わりはない。その細椀には傷一つついていない。
そこでようやく彼女はゆっくりと視線を銀髪の少女に向け、
「もしかしてだけど、さっきの炎は貴女?と言う事は………敵か」
そう呟いた瞬間、空間が悲鳴を上げ、その場の全てに尋常ではない圧が襲い掛かり、青年たちの顔から一気に血の気が引き、その場に崩れ落ちる。足に力が入らず、呼吸が止まる。冷汗は流れない。流すことを体が拒む。まるで天そのものが落ちてきたかのような絶大なプレッシャー。それは彼女が放った殺気だ。それを至近距離で浴びた銀髪の少女の顔が盛大に引きつる。それは紛れもなく恐怖の感情。何も感じないはずの彼女の心を死の恐怖が一気に埋め尽くす。
それに気づいた様子もなく彼女は右手を掲げる。瞬間、右手がその形を変える。
そこに生まれたのは巨大な鎌だった。と言っても、それは人間が慣れ親しんだ刃物の鎌とは言えない。その表面は生物の甲殻特有の生々しさがあり、刃物の鋭さもなく、代わりに棘が生えている。強いてそれが何かと表現しようとしたら……一部の昆虫が持つ鎌足だろうか。
「悪いけど……さすがにここまで攻撃されて情けをかけるつもりはないから」
彼女はそれを銀髪の少女目掛けて振り下ろす。反射的に少女は双大剣を盾にするように掲げ、その身を銀翼で包むる。
だが、鎌が大剣を捉えると何の抵抗もなくあっさりと砕け散り、銀翼を引き裂く。そして驚愕に染まった顔の少女の体を何の抵抗もなく捻りつぶし、そのまま地面に叩きつけられる。
瞬間、轟音と共に地面が爆砕し、盛大に衝撃波がまき散らされる。
その衝撃波から身を守る様に青年たちは身を伏せて顔を庇い、衝撃波をこらえる。
そして衝撃波が収まって、3人は恐る恐る顔を上げて息をのむ。
彼女が鎌を振り下ろした場所は地面ごと吹き飛ばされていた。銀髪の少女がどうなったかは飛び散った肉片と血を見れば一目瞭然だ。
そして彼女は今しがた人を殺したとは思えぬほど淡々と鎌を持ち上げるとそれを3人に向け、
「それで………貴方達は………敵?」
月曜日、それは一週間の家で最も憂鬱な始まりの日。気っと多くの人が前日までの天国を想い、これからの5日、もしくは6日にため息を吐くだろう。それは南雲ハジメも同様で、思わずため息が漏れる。
「む?どうした、ハジメ」
そのため息に反応して隣に居た少年が視線を送り、首を傾げる。ハジメに似た容姿をしているが、短くそろえたハジメの髪よりもはるかに長く、臀部どころか膝裏まで伸ばし、首の後ろで青白い布で無造作にくくった黒髪。大人しく、弱気ながら穏やかそうな雰囲気のハジメの容姿と違い、猛禽類を思わせる鋭い目つきにどこか威風堂々たる佇まいを感じる容姿。標準より少し低めの身長に標準的な体系のハジメと違い、長身にがっしりとした体形。
何もかもがハジメと対を成すかのような存在の双子の兄を見てハジメは何でもない、と軽く手を振る。
「そうか……なら構わんが……」
少し古めかしい口調で双子の兄、南雲神羅は頬を掻きながら引き下がる。
ここで一つ言うと南雲兄弟は双子と言いながら全く似ていない。2卵生双生児だとしても似ていなさすぎだ。初見で二人が双子の兄弟であると見極めることができる者はほぼいないだろう。
そして性格もだいぶ違う。ハジメが基本的に優しくも波風立てずに穏やかに過ごそうとする、根っからのオタクで趣味を人生の中心に置いている。
対し神羅は優しいのだがそれは家族や友人に対してのみ。冷徹な部分があり、思った事は容赦なく告げ、自分の家族や友人を傷つける相手は容赦なく排除する。ハジメと違って創作物に対する興味は薄いなど、本当に双子なのかと疑いたくなるぐらい二人は違う。
そんな二人がいつものように始業のチャイムが鳴るギリギリに教室に入ると同時に教室中の男子生徒の大半がこちらを睨んでくる。一部の女子生徒も似たような感じだ。その大半は神羅に向けられているが、一部はハジメにも向けられている。だが、そんな中をハジメは努めて真っ直ぐに歩いていき、神羅はそんなの知ったことではないと言わんばかりに涼しい顔で歩いていく。
と、視界の片隅で一人の女子生徒が軽く片手を上げてくる。ハジメはすぐにそれに気づいて軽く片手を上げて答えるが、神羅はちらりと視線を向けるだけで歩いていき、女子生徒ははあ、と疲れたようにため息を吐き、ハジメは小さく苦笑を浮かべて頭を下げる。
それに気づいた一部の男子生徒は神羅に殺気と言いたくなるような眼光を向けてくるが、神羅はそれにすら気付かずにそのまま自分の席に着く。すると彼らは今度はハジメを睨みつけるが、それは神羅に比べると比較的弱い。それは八つ当たりだからと言うのもあるが、それと同時にもしも彼に対してやりすぎればどうなるか、彼らは身をもって知っているからだ。
そんな二人に歩み寄ってくる少女が一人。
「おはよう、神羅君、ハジメ君。今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
「あ、おはよう、白崎さん」
「む、おはよう、白崎。そうは言うがハジメを置いて行ったら遅刻しかねんし、母の分の飯も作ってやらなくてはいけないからな……」
ちなみにだが南雲家の家事は神羅が請け負う事が多い。父はゲームクリエイター、そして母親は漫画家、更にハジメはオタクでよく二人の仕事場でバイトをするし、夜更かしもする。そうすると必然的にそういう事に興味なく、時間がある神羅が請け負うようになってきていた。
閑話休題。二人と……特に神羅と会話して嬉しそうにしている少女の名は白崎香織。学校では二大女神と言われるほど男女問わず絶大な人気を誇る美少女だ。腰まで届くつややかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳は優し気であり、すっと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。更に言えば彼女は非常に面倒見がよく、責任感も強いため、学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせずに真摯に受け止めるのだ。人気も出るだろう。
そんな彼女は南雲兄弟によく構う。偶の徹夜のせいで居眠りをしてしまうハジメ、居眠りはしないがこれまでに起こしてきた喧嘩事、更に授業中ボケっとすることが多い神羅は不真面目な生徒と思われており、従来の面倒見のよさから香織が気にかけていると思われている。
これで二人の態度が改善したりすれば許容できるかもしれないが二人はそんな気配はない。
更に言えばイケメンかと問われれば、ハジメはともかく神羅は威圧感はあるが整っていると言えるが、その性格と尾ひれがつきまくった喧嘩事のせいで最悪の印象を持たれている。そんな学校を代表する不良の神羅、平凡な男子高校生でオタクのハジメ、そんな二人が香織と仲良くできる事が男子生徒は我慢ができない。女子生徒は香織に面倒をかけていること、改善しようとしないことに不快さを感じているのだ。
「あ、お母さん、締め切りでも近いの?」
「そんなの関係なしに母は朝が弱いのだがな」
神羅が香織と仲良さそうに話していると、凄まじい眼光が神羅に飛ばされる。さらされていないハジメがわずかにびくりと体を震わせるが、ハジメは何も言わずに小さく呆れたようなため息を吐き、神羅は気にしない。そもそも気付いてすらいない。
ちらりと二人に視線を向ければ、普通に会話する神羅はともかく、嬉しそうにしている香織の表情を見れば、彼女が兄にどんな感情を抱いているかハジメでももしかして?ぐらいには察しが付く。それもこの殺気の要因なのだろうが……
とまあ、そんな風に二人をハジメが眺めていると、
「ハジメ君、神羅君、おはよう。毎日大変ね」
「香織、また二人の世話を焼いているのか、全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ。そんなやる気のない奴らに何を言っても無駄だと思うけどな」
その3人に話しかけてくる者たちが来る。
ポニーテールの少女は八重樫 雫。香織の幼馴染で親友であり、2大女神の一角を担う少女だ。この学校で数少ない神羅の友人と言える人物だ。
いささか臭いセリフを吐いたのは天之河 光輝。いかにも勇者っぽい名前で容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人であり、神羅がある意味で意識している物だ。
最後の投げやり気味な発言をした物は坂上龍太郎。脳筋を体現したような人物で、神羅は文字通りアリと認識している。
「うむ、おはよう、八重樫」
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん……」
ハジメは3人に挨拶するのだが、神羅は雫にのみ挨拶をする。その事に光輝は目くじらを立てて神羅を睨みつける。
「おい神羅、なぜ雫にだけ挨拶をして俺や龍太郎は無視する」
「ふむ?我は挨拶をされたから挨拶を返したのだ。挨拶をしてこない奴に挨拶をするわけがないだろう?」
神羅は何を言っているんだ?と言うように首を傾げ、光輝は神羅を睨みつける。龍太郎も不服そうに睨んでくるが、彼には見向きもしない。
南雲神羅の最たる特徴として挙げられるのが人間に対する認識だ。彼の中で人間とは2つに分けられる。一つは家族、仲間、友人、と言った者たちと自分、もう一つはその4つに対し危害を加える敵。それ以外の存在を神羅は基本的に人間として認識していない。よくて音を出す障害物、もしくは足元を這い回るアリだろう。それが彼の人間への意識だ。もっとも、そのあたりの意識の切り替えは割と自在で、ちゃんと切り替えればこの教室の生徒たちを人間として意識する。ちょうど……そう。人間が向けようとすれば足元のアリにちゃんと意識を向けられるように。もちろん、相手が何らかの形で直接接触してきたらきちんと対応する。その尺度も神羅次第なのだが。
それに、神羅とて最初の方は彼らを人間と認識し、対応していた。だが、香織と仲良くしているうちに彼らの対応が険を帯び始め、それからしばらくして神羅は彼らを認識しなくなった。
今回は後者の光輝に反応し、龍太郎に関してはアリがいる程度の認識だ。だから反応しない。
神羅と光輝の間に険悪な空気が流れだす(光輝が一方的に神羅を睨んでいるだけで、神羅は気にした風もないが)と雫ははあ、とため息を吐き、
「二人ともこんなところでやめなさい。ハジメ君が困ってるわよ」
「む、そうか。すまんな、ハジメ」
雫の言葉に神羅はハジメの様子を確認し、困ったような笑みを浮かべていることに気づくとあっさりと引き下がる。
「待て神羅。話はまだ……」
「光輝もほら、もうすぐ授業が始まるから……香織も、龍太郎も行くわよ」
そう言って雫は3人を二人から離していく。
それを見ながら神羅はハジメに目を向け、
「悪かったな、ハジメ」
「あはは……大丈夫だよ、気にしてないから」
ハジメはそう言いながら神羅を見つめる。いささか認識に問題があるし、怖いところもある兄だが、それでもハジメにとっては自慢の兄だ。だから気にしない。まあ、あの人間への価値観は何とかしてほしいとは思うが……
ハジメはふう、と息を吐きながら机に座るとすぐに大きく欠伸をするとそのままつっぷしてしまう。神羅はやれやれと息を吐きながらも頬杖を突きながら黒板を眺める。別にノートを取らなくても黒板を眺め、教科書を見ているだけで事足りる。
その神羅を見て、ひとりの女子生徒ははあ、とあきれたようにため息を吐く。
時が過ぎて昼休み。授業中半分寝ぼけていたハジメが大きく伸びをしていると、手に弁当箱を下げた神羅がハジメのそばにやってくる。
「ハジメ、飯にするぞ」
「うん、分かった」
ハジメも心得たもので、カバンから神羅印の弁当を取り出し、移動しようとする。
だが、そこに香織が弁当をもって近寄ってくる。
む?と神羅が首を傾げると、
「ねえ、二人とも、もしよかったらお弁当一緒にどうかな?」
再び教室内に不穏な空気が流れだしたが、神羅は気にしない。気にも留めない。
ハジメはまた呆れるしかない。そもそもそうやって何か文句があるならはっきりと言えばいいのではと思う。だが神羅が怖いからこうやって睨みつけるだけ。神羅の庇護があるハジメにも同様。もっとも、そんなのなくても今のハジメは同じ事を思っただろうが。
「ふむ、我としては構わんが……ハジメ、お前はどうする?」
「あ、いや、僕は別に……」
ここは自分は引っ込んで、二人きっりでの食事の場を設けようとハジメが身を引こうとしたところで、空気を読まない男が乱入してくる。
「香織、こっちで一緒に食べよう。神羅とハジメはまだ寝たりないみたいだし、せっかくの香織のおいしい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
さわやかに笑いながら気障なセリフを光輝が吐くが、
「え?なんで光輝君の許しがいるの?」
「ふむ、その通りだな。白崎がどこで、誰と食事を摂ろうがそれは彼女の自由だ。お前に決める権利なんてなかろう」
素で聞き返し、神羅が真っ向から返し、光輝の表情がひきつる。雫がぶふっ、と噴き出している。更にそれに乗じて神羅への視線の圧力が強まる。ついでにそばにいるハジメへの圧力も強まる。
ハジメが今度こそ隠し切れないほどに呆れたように深いため息を吐いた瞬間、
「……グルゥゥゥ」
ふいに神羅から獣の唸り声のようなものが漏れ出し、神羅の気配がこれまでのとは全く違う物になる。全身に敵意を滲ませ、それは教室の面子がこれまで放ってきた圧なんて比べ物にならないほどの重圧に変わり、その場の全員が一瞬で怯えたように体を震わせる。ハジメが何事かと目を見開いた瞬間、
光輝の足元に白銀に輝く円環と幾何学模様が現れたのだ。
その異常事態にすぐに生徒たちも気がついた。全員が金縛りにあったように輝く紋様、魔法陣を注視する。
その魔法陣は輝きを増して教室全体を満たすほどの大きさになった。そこに来てようやく硬直が解けた生徒たちが悲鳴を上げると同時に神羅が動く。そばにいたハジメと香織を素早くわきに抱え上げ、更に素早く雫の元に向かい、制服の襟を咥えると愛子先生の元に跳躍。「皆、教室ってええっ!?」と愛子先生が悲鳴を上げる中一瞬でたどり着き、彼女も抱え上げようとするが、それと魔法陣が爆発したように輝いたのは同時だった。
数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室に色が戻るころ、そこにはすでに誰もいなかった。蹴り倒された椅子に食べかけの弁当、散乱する箸にペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
この事件は白昼の校内で起きた集団神隠しとして大いに世間をにぎわせることになる。
手を加えた場所は今後の話で詳しく書くので今は……ね
では、最新話は今週中には投稿いたしますので。