轟く発砲音は一つだけ。だが、それはあまりの連射速度に発砲音が重なっただけで、実際の発砲音は6回。計、6発のレールガンがドンナーから放たれ、ノイントに音速を超えて殺到するが、彼女の両手に双大剣を顕現すると大剣が霞む速度で振るわれ、甲高い音を響かせながらレールガン6発は弾き飛ばされてしまう。
ノイントは無表情に恵理に視線を落とすと、彼女を結界で包むが、その隙にハジメは瞬時に距離を詰め、シュラークを突き付けるも発砲する前に左大剣が振るわれる。
ハジメは即座にシュラークの銃剣で左大剣を防ぐ。甲高い音に交じって左腕からみしりと嫌な音が響くが、どうにか受け止めきり風爪を纏った蹴りを繰り出す。ノイントは閃光のような速度で即座に背後に距離をって回避するが、そこにレールガンが12発、ノイントの全身を狙うように分散して襲い掛かる。
ノイントは背中の魔力の翼を羽ばたかせて前方に無数の雷撃と銀羽が放ち、レールガンを相殺、残った雷撃と銀羽がハジメに襲い掛かる。
ハジメは即座にその場から飛び退いて回避するが、その回避先を予測していたようにノイントが回り込み、双大剣を繰り出す。ハジメは赤い光を纏わせたドンナーとシュラークの銃剣で双大剣を受け止める。すると、双大剣は見る見るうちに形が崩れていき、ノイントの両手を半端に覆った形で固まってしまう。
貰った、と言わんばかりにハジメはノイント目掛けて至近距離でレールガンを乱射する。即座にノイントは回避するが、周囲に赤い飛沫が舞う。
距離を取ったノイントが右肩に視線を向ければ、肩の肉は中ほどまで抉られ、骨が一部が見えてしまっている。腕をまともに動かす事もできないほどの重傷だ。
このまま押し切ると言わんばかりにハジメがノイントとの距離を詰めようとした瞬間、彼女の背中の翼が大きく羽ばたき、
一切の躊躇なく己の右腕と左腕を肩から切り飛ばす。
その行動にハジメが目を見開くと同時に彼目掛けて無数の雷撃が襲い掛かる。ハジメは追撃を中断して雷撃を回避する。
そのまま距離を取りながら態勢を整えたハジメは顔を上げて、さらに目を大きくする。
ノイントの両肩の傷口は白く蠢く膜で覆われており、それが破けた瞬間、そこから肉の芽と骨が伸びていき、瞬く間に両腕が再生してしまう。
「ちっ……本当、再生持ちって言うのは敵だと厄介極まりないな……」
「なるほど………人間にしてはやりますね。少々甘く見ていたようです」
再生した両腕の具合を確かめるように手を握っては開いてを繰り返していたノイントは次に己の体に視線を向け、
「それに、貴方と戦うのにこの状態は不利のようです」
そう言った瞬間、ノイントの全身を銀光が覆い尽くす。それと同時にガランガラン、と何か重い音が落ちる音が鳴り響く。
何を、とハジメが訝しげな表情を浮かべた瞬間、銀光が晴れ、ノイントの姿が露になり、ハジメの顔が別の意味で引きつる。
ノイントは何も纏っていなかった。銀光で服と鎧の留め金を分解したのか、足元には鎧の残骸が転がり、風が服の切れ端を攫って行く。露となったノイントの裸身はあまりにも美しかった。完璧な黄金比で形作られた肢体。程よい大きさの胸にくびれた腰、すらりとした手足と、正しく神の造形物と言っていいだろう。
現にクラスメイトの男子たちは目の前で殺し合いが行われているにも関わらず、食い入るようにノイントを見つめている。
だが、ハジメはそうではなかった。あまりにも均整の取れた体から、人工物めいた不気味さを感じたことが一つ。もう一つは、あの状態がハジメと戦う上で最適解であると言う意味に気づいたからだ。
ハジメの練成なら鎧を変化させ、無力化させる事や身動きを封じる拘束具にすることも可能だ。だが、何も身に着けていないのであればそんな真似はできない。
こちらを侮る様子が全くない姿を見て、改めて目の前の使徒が自分が倒した使徒達とは格が違うと確信し、ハジメは顔をしかめる。
「では……行きますよ」
そう言った瞬間、ノイントの姿がぶれ、ハジメは本能が鳴らす警鐘に従ってドンナーをかざす。
瞬間、空気を軋ませるような音と共にドンナーを銀光を纏った手刀が襲う。双大剣が無くなったことで威力は落ちたが速度は段違いに上がっている。
ハジメは即シュラークからレールガンを放とうとするが、その前にノイントは蹴りでシュラークを蹴り上げる。
左腕が上がったところに翼がハジメを貫こうと襲い掛かるが、ハジメは体を捻って回避すると、シュラークから手を放し、体を回転させ、振動破砕を発動させた手刀をノイントに繰り出す。
ノイントはそれを銀光を纏った左腕で受け止める。そこを狙って空中のシュラークからレールガンが放たれ、ノイントの左腕が吹き飛ばされるが、彼女は構わずハジメ目掛けて蹴りを撃ち込む。
轟音と共にハジメの身体が吹き飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられ、崩介した瓦礫に埋もれてしまう。
「ハジメ君!」
香織が思わず悲鳴じみた声を上げる先で、ノイントはハジメに追撃しようと魔力の翼をはためかせるが、その背後に突如として飛び出したティオが回り込むと、容赦のない回し蹴りが頭目掛けて繰り出される。
ノイントは即座に右手をかざしてその一撃を防ぐが、空中でティオは右手をかざし、ブレスを至近距離で放つが、それすらも差し込まれた魔力の翼で防がれてしまう。
ティオはノイントの腕を蹴って離脱すると、そのまま距離を取る。ノイントは追撃を仕掛けようとせず、つまらない物を見るような冷めた視線を向けてくる。その間に吹き飛ばされた左腕は再生を終える。
「そこそこできるようですが……彼に比べれば幾分も劣っていますね」
「……ああ、そうじゃな………そんな事は、百も承知じゃ!」
そう言うと同時にティオは自身の周囲に球状の極小ブレスを無数に展開すると、一斉にノイント目掛けて放つ。それに対抗するようにノイントは銀羽を一斉に撃ち出し、ブレスを全て撃墜し、煙が二人の間に広がる。
その煙を突き破ってノイントが一瞬で肉薄するが、彼女の眼前にティオの黒い尾が勢いよく迫る。
鈍い音と共に尾が直撃するが、ノイントは微動だにしない。そのまま彼女の尾を掴み上げると、叩きつけようとティオを振り上げる。
その瞬間、ティオは即座に尾を消してノイントから逃れると空中でブレスを放つ。
ノイントは素早くその場から飛び退いて回避すると、受け身を取ったばかりのティオに追撃を仕掛けようとした瞬間、上空からガラスを何枚もまとめて割ったような甲高い音が鳴り響く。香織が顔を上げれば、ハジメが直したはずの結界が全て破壊され、豪雨と共に結界の破片が降り注ぎ、上空の黒雲を貫く様に一条の雷が伸びていく。
それにノイントの意識がわずかに逸れる。その瞬間、壁際の瓦礫が轟音と共に赤いオーラによって吹き飛ばされ、そこから自身を朱い閃光に変えたハジメがノイントに斬りかかる。
ノイントはそれを銀光を纏った手刀で弾き飛ばすが、そこで止まらずハジメは降り注ぐ豪雨を吹き飛ばすような凄まじいラッシュを繰り出す。
残像すら置き去りにした死の嵐に対し、ノイントは全身に黄金の雷光を纏うと、更に速度を引き上げ、次々とハジメの猛攻を凌いでいく。
赤い光を纏った斬撃と銀光を纏った手刀がぶつかり合い、雷球と雷撃が交差し、周囲に魔力の粒子が飛び散る。両者は完全に拮抗し、空間を軋ませながらしのぎを削り続ける。
その光景をリリアーナが展開した結界の中で、クラスメイト達は呆然と眺めていた。彼等がどれ程目を凝らそうと、両者の攻撃の軌跡を追うことができない。彼等が視認できたのは精々両者をドームの様に覆うように展開された攻撃の残像だけだった。だが、それだけで、彼等は分かった。分かってしまった。ハジメと自分達の間にある絶望的な力の差を。それは彼等の心を折るのに十分すぎた。
目の前の激戦を前に、多くのクラスメイトは戦意を失い、誰も彼もが武器を手にすることもできず、ただへたり込みながら戦いを眺めている。
そんな彼らの視界の端で香織は再生魔法を使って光輝の両手を文字通り再生させる。切断された断面から新しい腕が生えてくる光景を雫は驚いたように見つめていた。
「こんな魔法、一体どこで……」
「ちょっと海の底でね………とりあえず、これで大丈夫だよ」
光輝の腕の再生は終わったが、彼は気絶したままで目を覚ます気配がない。
「ありがとう、香織………ハジメ君は………」
雫が目を向けた先では、未だハジメとノイントが激しく打ち合っていた。一撃一撃が交差するたびに衝撃が放たれ、結界を揺らしている。
それを見た雫は思わず黒刀に手を伸ばすが、
「ダメだよ、雫ちゃん。私達じゃあ、あそこに割り込むことはできない」
静かに告げられた言葉に雫は香織に視線を向け、軽く息を呑む。ハジメとノイントの戦いを見つめる香織は悔しげに顔を歪めていた。
本当なら何とかハジメとティオの援護をしたい。だが、ここにいる者達では全員が一丸となって挑んでも瞬殺された挙句、二人に要らぬ負担をかけてしまうだろう。
だからこそ、香織はハジメを援護しそうになる心を抑えて気絶している龍太郎の介抱をする。これが今の自分にできる最善と信じて。
「ちっ……覇潰を使ってこれかよ!」
一方、ノイントと激しく打ち合いを続けるハジメは舌打ちをすると、剛腕を発動させた左腕でノイントの手刀を力づくで弾き飛ばすとそこにドンナーによるレールガンと斬撃を同時に叩きこむ。至近距離で放たれる斬撃と銃撃の同時攻撃を避けることは不可能だ。
ならば避けなければいい、と言わんばかりにノイントは逆に距離を詰めながら体を捻る。
弾丸がノイントの脇腹を抉り、赤い雷光を纏った銃剣がノイントの右腕を切り飛ばし、傷口を焼きつぶすが、彼女はそれらを無視して雷光の速度で左手刀を繰り出す。
至近距離で繰り出されたそれを、ハジメはとっさに左の義手を盾にするようにかざす。
手刀は義手に突き刺さると、そのまま貫通し、ハジメの鳩尾を貫かんと迫りくる。
反射的にハジメは金剛を発動させながら義手からショットシェルを放つ。猛烈な反動を受けた義手がノイントの腕を巻き込むように一気に加速し、それによって手刀の軌道が逸れ、発動した金剛を貫いてハジメのわき腹を引き裂く。
焼けるような激痛がハジメを襲うが、強引にそれを飲み込むと豪脚を発動させながらノイントの右足を渾身の力で踏み抜く。
足の甲を地面ごと文字通り踏み潰され、ノイントの体が傾いだ瞬間、横合いから飛び込んできたティオが黒い魔力を纏った爪を左腕に叩きつける。
神羅の魔撃を参考に生み出されたブレスを纏った一撃はノイントの左腕を叩っ切り、傷口を焼き潰す。
再生しない両腕にノイントが顔を歪めた瞬間、ハジメはノイントの腹に渾身の蹴り上げを撃ち込み、轟音と共に裸体を上空に打ち上げる。
しかし、ノイントは魔力の翼を展開して空中で体制を整える。そのタイミングで両腕の傷口が白い膜で覆われていき、蠢き始める。
そして、膜が破れ、新しい両腕が生えた瞬間、
裂帛の気合と共に振り下ろされた巨大な戦斧がノイントの右半身を両断する。
超重量の戦斧はノイントの強靭な体を容赦なく斬り砕き、その余波でノイントを隕石のように墜落させ、地面に叩きつける。
轟音と共に地面にクレーターが出来上がり、中心部のノイントは激しく血を吐き出し、失った右半身から大量の血と内臓が流れ出る。
それでもまだノイントは戦おうとするように体を起こすが、その周囲が白い光に包まれる。
空を見上げたノイントの視界に飛び込んできたのはあまりにも巨大で、眩く輝く白い火球だった。
着弾した白い火球は着弾個所を溶解させながら沈み込んでいき、周囲の一切合切を文字通り消滅させていく。豪雨を瞬時に蒸発させ、周囲の地面をマグマへと変え、その熱量だけで生身の人間を容赦なく焼き殺すだろう。だが、火球はその熱を無差別にまき散らす事はなく、代わりに己の内部に集中させている。だからこそ、ただでさえ尋常ではない熱量は更に凄まじい事になっていた。
あまりの輝きにクラスメイト達は直視することができず、両手で目を覆う。
その輝きが不意に消失する。後に残ったのは溶岩が流れ込み、灼熱の湖となったクレーターだけだった。
それと同時にグリューエン火山内部を彷彿とさせる高温の蒸気が周囲を飲み込み、ハジメの全身から大量の汗が噴き出す。
「凄いな……これがユエの……」
「そう……ミレディの魔法を参考にした対怪獣魔法、白陽。まだミレディ程の威力は出せないけど」
その隣に雨粒をぬぐいながらユエが降り立つ。更にドリュッケンを担いだシアもその隣に着地する。
「あいつ……いつの間にここに来てたんですか……と言うか、早すぎませんか?」
シアが顔を伝う汗か雨かも分からない雫を拭いながら呆れたように言う。
「神羅から逃げ切っただけはあるって事でしょ」
顔に疲労の色を濃く浮かべながらユエは大きく息を吐いて、視線を結界に向ける。リリアーナの結界の中にいた香織が大きく手を振っているのを見て、無事を確認したユエはふう、と安堵したように息を吐く。クラスメイト達は状況に認識が追い付いてないのか困惑しているが、親衛隊の面々はこちらの様子を伺うように顔を向けている。
それを確認した後、ユエは他とは別に結界で覆われている恵理に視線を向ける。
「あれって……」
「奴は中村を狙ってた。それでな……恐らくだが神の命なんだろうが………何だろうな。どうにも違和感があるんだよ」
「違和感……ですか?」
ああ、と半壊した義手を抑えながらハジメは小さく頷き、顎に手を当てながら難しい顔をする。
「なんて言えばいいのかな……こう………仕様書通りに作ってるはずなんだけど、これでいいのか?って疑問があるって言うか……」
「心外ですね。私は常に主の命に沿って動いています」
そのくぐもった声は下から聞こえてきた。正確にはハジメ達が立っている場所の後ろの地面の下から。くぐもっているにもかかわらず、何と言っているのかしっかり聞き取れる声。
その瞬間、熱気に包まれているにもかかわらずハジメ達の全身から冷汗が噴き出し、彼らは一斉に振り返るが、一歩遅かった。
地面が爆発したように吹き飛ばされると巻き上げられた土砂を突き破って繰り出された蹴りがハジメを捉え、轟音と共に吹き飛ばす。
更に続けて繰り出された雷撃がティオを直撃、彼女もなす術なく吹き飛ばされる。
シアは雄たけびと共にドリュッケンのスラスターを起動、爆炎を纏った戦斧を振り抜くが、轟音と共に戦斧が停止し、衝撃で土砂が一気に吹き飛ぶ。
そして露になったのは、右肩から生えた魔力の竜頭と右腕でドリュッケンを受け止めているノイントだった。だが、その姿は凄惨の一言に尽きる。著しく再生能力が落ちているのか、未だ肉と骨がむき出しとなっている右足と両腕。全身至る所に重度の火傷を負い、皮膚は醜くく歪み、一部は焼けた肉がむき出しとなってしまっている。銀と金の髪もほとんど焼け落ちてしまい、片目は潰れてしまっている。だが、ノイントはまだ生きていた。恐らくだが、白陽が着弾する寸前、地面に穴を追って直撃を避けたのだ。
ドリュッケンを受け止められたシアは咄嗟に戦斧から手を離すが、右肩竜頭はそのままドリュッケンを放り投げ、左肩から新たな竜頭が現れると雷撃を放つ。シアは何とか避けようとするが避け切れず、雷撃の余波を受けて弾き飛ばされる。
ユエは背後に跳びながら蒼天を放つが、青白い火球を突き破って迫る竜頭が右腕に喰らい付く。
そのまま派手に振り回されて、最後にひときわ大きく振り払われた瞬間、ぶちりと言う音と共に右腕が千切れ、ユエは放り投げられ、地面に叩きつけられる。
しかし、痛覚操作を持っているユエは痛みにひるむことなく即座に立ち上がる。千切られた右腕が即座に再生するのを見て、ノイントは小さく嘆息する。右肩竜頭が咥えた腕はそのまま飲み込まれ、そのまま消えてしまう。
「でたらめな再生力を持っていると言われましたが、貴方も大概ですね」
「お前と同じと言われてもいい迷惑!」
ユエは即座に周囲に蒼天を無数に展開する。
補充しているとはいえ、白陽を使ったせいで魔力量はかなり減ってしまっているが、それでもユエは魔力をかき集め、ノイントに蒼天を連射する。
ノイントは二つの竜頭が口から雷撃を放ち、次々と蒼天を撃墜していく。
だが、それでもユエの魔法の方が威力は勝っている。蒼天の弾幕は竜の雷を飲み込み、次々とノイントに殺到し、炸裂。爆炎が迸る。
魔力が枯渇しかかり、ひゅうひゅう、と荒く息を吐きながらユエは油断なく炎を睨みつける。
「……やった?」
「惜しかったですね」
その声にユエは目を見開き、慌てて顔を声が聞こえてきた方角……恵理が結界で覆われていた方角に向ける。
そこにはいつのまにかある程度の再生を終えたノイントが立っていた。いつの間に回避したのか、とユエが顔を歪める前で、ノイントは恵理を包んでいた結界を解き、彼女を脇に抱える。
「中々楽しませてもらいましたが……そろそろお暇させてもらいましょうこれ以上は無駄でしょうし」
「させると……思うか!」
周囲に響き渡った怒声に、はっとしながらユエが視線を向けると、その先には右手に赤い雷光を纏ったシュラーゲンを構えたハジメが立っていた。その側にはずぶ濡れの香織が立ち、ノイントを睨み付けている。治癒魔法でハジメを治してくれたのだろう。
ノイントが鬱陶し気にハジメに目を向けると同時にハジメが構えたシュラーゲンの雷光が最高潮に達し、
その瞬間、ノイントを取り囲むように周囲の地面から魔力の鎖が飛び出す。香織がハジメを治療しながら地面を通してノイントの周囲に忍ばせてた獄絶鎖だ。
即座に両肩の竜頭が次々と鎖に喰らい付き、全て砕いてしまうが、その隙を逃さずシュラーゲンの引き金を引く。一瞬の静寂の直後に凄まじい轟音と衝撃波と共に極大の朱い閃光が音を置き去りにしてノイントに迫るが、一瞬早く、ノイントは空に向かって落ちたような不自然な動きで急激に上昇して回避してしまう。
「それでは、またいつか会いましょう。イレギュラー」
それだけを言い放つと、ノイントは魔力の翼を羽ばたかせて空の彼方へと飛び去っていく。
ハジメは即座に偵察用ドローンであるオルキスを取り出し、ノイントを追跡しようとするが、オルキスを取り出した時には、すでにノイントの姿は黒雲の中に消えてしまっていた。
くそっ、とハジメが毒づく隣で、香織は強く唇を引き結びながら瞬きもせずに上空の黒雲を睨み付ける。