「え~~と………兄貴……イメチェンした?」
文字通り毛色が変わった髪を凝視しながらハジメが首を傾げると、神羅は小さく苦笑を浮かべながら首を横に振る。
「まあ、確かに髪色が変わっているが、イメチェンではない。言ってしまえば、技能の適応進化の影響だ」
「適応進化………あ、そう言えば確かにそんな技能があった」
神羅のステータスプレートの項目を思い出したユエが小さく頷く。
「ああ。あれは簡単に言えば外的要因に適応するために進化を促す技能だ。まあ、それには相応のエネルギーが必要だがな」
その言葉に、ハジメはオルクス大迷宮で、神羅が体を再構築するのに神水の魔力を使ったと言っていたことを思い出す。恐らくだが、その適応進化のエネルギー源として利用したという事だったのだろう。
「え……と、それってつまり………神羅さん…………今までより強くなったって事ですか?」
「まあ、そうだな。先の奴との戦いで俺も随分と追い詰められた。このままでは次奴と戦った時後れを取るかもしれないから備える必要があった。で、体力を回復させるついでに進化する分のエネルギーを吸収しておいたんだ」
なるほど、と納得しながらもハジメ達は内心戦慄していた。ただでさえ桁外れの強さを有していた神羅がさらに強くなったというのか。ようやく同じ土俵に立てれるぐらいになったと思ったらまた置いてけぼりにされてしまった。
やってくれるなぁ、とハジメは苦笑を浮かべる。ただでさえ遠く、果てしない背中。ようやく少しは近づけたと思ったら、再び引き離されてしまった。あまりにも果てが見えないが、だからと言ってハジメの心が萎えるようなことはなかった。引き離されたのなら、また追いつくまで追いかけるだけだと言わんばかりに勝ち気な笑みが浮かぶ。
「ふざけるな…………」
その時、背後から怒りを孕んだ声が響く。振り返れば、光輝が凄まじい激情を宿した目で神羅を射殺さんばかりに睨みつけている。
「俺達が……この世界の人たちのために必死になって鍛錬を積んでいるのに………お前は休むついでに強くなるだと?どこまで俺達をコケにすれば気が済むんだ、化け物!!」
「ちょ、ちょっと待って光輝!」
「退くんだ雫!やっぱりそいつは化け物だ!俺達とは決して相いれないケダモノだ!今ここで打ち倒すしかないんだ!」
怒声と共に光輝が聖剣を抜き放ちながら詰め寄ろうとし、雫が慌てて止めようとするが光輝はその雫は振りほどく様に手を力任せに振り、
「言ったはずだぞ。ここではやるなと。ここ以外でだったら幾らでも相手をしてやる」
その手を瞬時に距離を詰めた神羅が掴み上げる。
その光景にハジメ達は驚いたように目を丸くする。その速度は見失うほど早いという訳ではないが、今まで比べたら断然早くなっていたのだ。
「っ!放せ化け物!」
光輝は神羅の腕を振りほどこうとするが、どれ程腕に力を込めても神羅の腕は微動だにしない。
ならばと聖剣を抜こうとすると、神羅のその柄を空いている左手で押さえつける。
「それを使うのはやめておけ。
「何を言って……俺達を欺こうとしても無駄だ!ここにいるみんながお前の正体を知っている!誰もお前の言葉なんて信用しない!」
光輝がそう宣言すると、ほとんどの生徒たちはびくりと肩を震わせると、一瞬神羅に視線を向けようとしたがすぐに顔を俯かせてしまう。一瞬向けられた視線には強い怯えと猜疑が宿っていた。
大方神羅を信じることはできないが神羅の不興を買うような真似はできないといったところだろう。だから彼らは神羅と視線を合わせようとしない。
「お願いだから落ち着いて光輝!ごめんなさい、神羅君!光輝はその、まだ冷静じゃなくて……何とか落ち着かせるから!」
その中で雫は神羅に抑えられた光輝を後ろから羽交い絞めにして神羅から引き剥がすと何とか抑えようとする。
光輝は暴走した正義感でそんなこと知った事ではないと騒ぎ続けている。
その様子を神羅は目を細めながら眺めていると、その神羅に駆け寄ってくる者がいた。リリアーナだ。
「神羅さん。回復なされたのですね。香織でも回復が難しいと聞いておりましたが……」
「まあ、かなりのエネルギーを消耗したからなぁ。再生魔法で回復出来れば早かったのだが、そううまくはいかなかった」
「そうですか…………あの、お話はハジメさん達から聞いています……王都を守ってくださり、ありがとう……ございます」
そう言うリリアーナは少し腰が引けてしまっているが、真っ直ぐに神羅の顔を見上げている。その目に怯えは……無いとは言えないが、それでも神羅から目を逸らさない。
「ま、ハジメ達がいたから巻き込むわけにはいかなかったしな」
そう言って神羅は大きく鼻を鳴らす。そこで、ふとシアが神羅と別れるとき一緒にいた人物が見当たらない事に気付く。
「あの、神羅さん。モスラさんはどうしたんですか?一緒じゃないんですか?」
シアの言葉で、ようやくハジメ達もモスラの姿が見えない事に気付いたのかそう言えばと周囲を見渡しながら首を傾げる。
「ああ、モスラは神山の様子を見に行ってる。あそこに大迷宮があったのだが、派手に吹き飛んだからなぁ……」
そう言えば神山は神羅の熱線で壊滅したのだった。復興の手伝いで神山の様子を見に行くどころではなかったハジメ達だったが、目撃者のティオ曰く火山のような状態になっていたらしい。確かにハジメ達では調査が難航しただろう。
ハジメ達が納得したように頷いていると、親衛隊達が彼らに近寄り、優花が口を開く。
「ねぇ、南雲。モスラって……誰?」
「ああ。魔竜との戦いで助けてくれた怪獣で兄貴と同類であり………まあ、兄貴の………彼女だ」
へ?と目を丸くしながら優香は何とも曖昧な表情を浮かべるハジメを見つめる。親衛隊達もまさかの発言に驚いたように目を丸くしてユエ達に目を向けると、彼女達もまた何とも言えない表情を浮かべていたが、香織だけは静かな表情を浮かべている。
「リリィ、そいつから離れるんだ!化け物め、リリィに何を……」
優花たちがもう少し詳しい話を聞こうとしたところで、雫の拘束を振りほどいた光輝が神羅に詰め寄り、
「ああ、いたいた」
不意に割り込んできた声と共に巨大な美しい翅を羽ばたかせながら空から女神が舞い降りた。
とっ、と地面に降り立つと同時に翅が消えると、風が舞い上がり、宝石を溶かしこんだように美しい白金のショートヘアが揺れる。小振りな鼻にふっくらとした唇、そして深い海をそのまま閉じ込めたような美しい蒼色の瞳。その全てが身震いするほどに完璧に整った美しい顔立ち。
薄手のコートとワンピースを身に纏っているが、それ越しでも分かるほど抜群のプロポーションにしなやかな筋肉。
正に美の女神と呼ぶべき少女の登場に、クラスメイト達は性別問わずに完全に魅入っていた。光輝でさえ神羅に詰め寄る事も忘れて見惚れたように少女を凝視する。メルドとリリアーナも警戒なんてバカらしいと言わんばかりに少女を見つめている。そしてハジメ達もその幻想的な光景に思わず見とれてしまっていた。結果、その場の人間の大部分が動きを止めてしまったが、その中で平然と動く者が一人。
「おう、モスラ。戻ったか。どうだった?」
「冷えた溶岩に埋まってたけど、迷宮自体は大丈夫よ。いざと言う時のために私の防御結界を施しといて正解だったわ」
「ほぉ、そんなものを施してたのか」
「ええ。何らかの怪獣の活動で迷宮が壊されないように、全ての迷宮に施してあるわ」
だからグリューエンは怪獣が暴れたにしては被害が少なかったのか、と神羅が納得していると、
「あ、え、あ……っと……モスラさん……」
再起動を果たしたハジメがモスラに話しかけると、モスラはハジメに顔を向ける。それだけハジメの心臓がドキリッと高鳴るが、すぐさま心の中でユエが最高と念仏のように唱えて心を落ち着ける。
「え、えっとですね……神山の大迷宮はどうでした?いつ頃挑戦できそうですか?」
「ああ、大迷宮は無事よ。練成師の貴方なら溶岩を掘り進められるでしょうし、すぐにでも挑むことができるわ」
「そっか……それじゃあ、今日の内に挑戦しておくか」
「それと、さん付けや敬語はいらないって言ったわよね?」
「あ、えっと……すいません。なんか、自然とそうなっちゃって……」
ふ~~ん、と少しすねたように唇を尖らせるモスラだが、そんな仕草も恐ろしく魅力的で、多くの生徒の視線を釘づけにしている。
「え、えっと………ユエ……さん………あの、綺麗な人って………」
どうにか再起動を果たした優花は恐る恐るユエに近づいて問いかける。
「………彼女がモスラ。神羅の彼女で、怪獣の女王」
「女王………って、神羅の彼女?あんな綺麗な人が?と言うか、いつの間に知り合いに………」
「そこ等へんは少し複雑だけど……まあ、神羅とは相思相愛の関係」
「そ、それって…………」
一転して頬を引きつらせた優花が恐る恐る香織の様子を伺う。香織はいっそ穏やかな表情を神羅に向けていた。殺気も、凄みも、オーラも、何もない。でも、それが優花には何とも恐ろしい。
「あ、あの……白崎さん……大丈夫なの?」
「………正直に言えば、この件がどうなるのか私には全く分からない。未来が見えるはずのシアですら全く予想できない………正直、色んな意味で結構怖い」
でも、とユエは小さく息を吐き、
「少なくとも私たちは友達として最後まで見届けるつもり」
そうユエが言うと、
「え~~~と、それでこの子たちが例の召喚されたって言う子達?」
そのタイミングでモスラは使徒たちに視線を向ける。それだけで男子の大半が緊張したように体を硬直させ、女子も体を強張らせているが、小さく喉を鳴らしながらリリアーナが口を開く。
「あの………貴女は、誰でしょうか……?」
「私はモスラ。ゴジラ……そっちだと神羅か。彼の仲間よ。貴女は?」
「私は……リリアーナ・S・B・ハイリヒと申します」
「ハイリヒ……この国の名前と同じ苗字……と言う事はこの国の王族ね。挨拶が遅れてしまって、申し訳なかったわ」
そう言ってモスラは深く頭を下げる。
「あ、いえ、そんな………私は気にいたしませんから」
「そうはいかないわ。ここは貴方たちの国。そして私は部外者。ならば貴方達に礼を尽くすのは当然。それが道理という物よ。流石に言葉遣いは染みついちゃってるから大目に見てほしいけど……」
「いえ、そんな………それで、モスラ……様はどのようなご用向きで……」
「エヒト関係で召喚されたって子供たちから話を聞こうと思ってね。それで、なんか勇者がいるって聞いてるんだけど……」
「あ、は、はい!それは俺です!」
声高に発せられた声にモスラが視線を向ければ、光輝が前に出ていた。
モスラの視線を受け、光輝は顔を赤くしながらも胸を張り、
「初めまして、モスラさん。俺は天之河光輝。この世界を救うために召喚された勇者です」
そう言いながら光輝は爽やかな笑みを浮かべると、モスラはそう、と小さく頷き、
「まぁ、よろしくね、勇者くん」
それだけ言って視線を光輝が腰に佩いている聖剣に向ける。己ではなく聖剣を眺めるモスラに光輝が困惑した表情を浮かべていると、モスラは神羅の傍により、
「ねぇ、ゴジラ。あの聖剣、気付いてる?」
「当たり前だ。その様子だとお前も気付いてたみたいだな」
「当然でしょ。まぁ、何が封じられてるか分からないから手出しはできないけど」
「俺も似たような理由で手を出していない。まぁ、害意があるようには思えんが………」
「何をしている南雲神羅!モスラさんから離れろ!モスラさん、そいつに近づいてはいけない!」
光輝が聖剣を抜き放ちながら言うと、モスラは何を言われたか分からないと言うように首を傾げる。
「いきなり何?どうしたの?」
「モスラさん、そいつは人の皮を被った化け物なんです!そんな奴と一緒にいてはいけない!早くこっちに!」
そう言いながら光輝はモスラに向かって手を差し伸べ
「ふ~~~ん、じゃあ問題ないわ。私も怪獣だから」
直後にモスラの右手が変わる。人間の手から鋭い棘を生やしたカマキリの鎌のような異形の腕へと。更に、右肩から同じ形の腕が新しく生える。
光輝は呆けた様子でモスラの一対の腕を凝視する。周りの生徒たちも驚愕したように目を見開き、中には悲鳴じみた声を漏らす者もいた。
「そ、その腕は………」
「これが私の本来の腕、それだけよ」
モスラはそう言いながら鎌の腕を見せつけるように掲げる。その腕を見て光輝が口をパクパクとさせていると、雫が光輝の前に立ち、慌てたように頭を下げる。
「す、すいません!いきなり光輝が迷惑をかけて……!本当にすいません!」
「ちょ、ちょっと……本当に何よ。迷惑って何のこと?」
「そ、その……いきなり変な言いがかりをつけたり、そのせいで腕を……」
雫がモスラを腕を申し訳なさそうに見つめていると、モスラは軽く眉をひそめながら神羅に顔を向ける。神羅は小さくため息を吐くと大きく柏手を打つ。
ばちんっ!と大きな音が鳴り、その場の全員がびくりと肩を震わせて神羅に視線を向ける。
「いい加減、話を進めさせてもらうぞ。リリアーナたちも俺たちに聞きたいことが沢山あるんじゃないのか?」
「え、あ………はい、そうですね。南雲さん達の旅路、神羅さんの身体の事、神獣の正体、そして神の真実………その全てをお話していただけると聞いています」
「ああ、そのつもりだ。メルドにリリアーナ、聞く覚悟はできてるか?こちらとしては最悪お前達だけでもちゃんと受け止められるのなら構わんのだが……」
「はい、構いません。お願いします」
「俺も大丈夫だ」
「そうか。ならば………」
そして神羅はこの世界の真実を滔々と語っていく。
全てを話し終えると、光輝が声を張り上げる。
「な、なんだよそれ、そんな話あり得ない……また俺たちを騙そうとしているんだろう!?」
「いいえ、全て事実よ。それがこの世界、そして私たちの真実よ」
モスラがそう言うと、光輝はブルブルと体を震わせ、
「なんだよそれ。じゃあ、俺達は神様の掌の上で踊っていただけだって言うのか?なら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!オルクスで再会した時に伝えることはできただろう!」
非難するような眼差しと声に、ハジメは小さくため息を漏らし、
「俺たちがそれを言って、お前は信じたのか?」
「なんだと?」
「無理だろ?この世界の大多数の人間が信じて、自分に世界を救う使命を与えた神様が狂ってるなんて言われてもお前は信じなかっただろ?むしろ俺達を非難しただろ」
「だ、だけど、何度もきちんと説明してくれれば……」
「アホか。そこまでしてやる義理はないし………何よりもだ、仮に信じた場合、お前どうした?」
「当然、王国や教会の皆に教えて……」
「それこそアウトだろうが。教会も含めてこの世界の人間はエヒトを妄信している。そんな連中にお前らの神はお前らを救う気なんてないって言ってみろ。勇者だろうと使徒だろうと関係なく吊るしあげられるぞ。最悪、異端認定を受けていたかもしれない。そうなったらこの場にいる面子のうち何人かは死んでたかもしれないんだぞ。説明しないほうが色んな意味でベストだったんだよ」
ハジメの説明にクラスメイト達は顔を青ざめさせ、光輝でさえ怯むように体を強張らせるが、厳しい眼差しをハジメ達に向ける。
「でも、これから一緒に神と戦うなら……」
「おい、なんだそれは。誰がお前らと一緒に戦うって言った。神を殺す事はまあ、決まっているし、お前が神と戦うのを止めはしないが、一緒に戦うなんてごめんだ」
「な、なんだと!?まさか、この世界の人たちがどうなってもいいのか!?神を放置してたらこの世界の人々が弄ばれるんだぞ!?」
「誰もそんなこと言ってないだろうが。道中で困ってる奴がいたらできる限り助けていく。でもそこまでだ。流石に全員を助けるなんて真似をしてる暇はない」
「なんで……なんでだよっ!?お前らは俺より強いじゃないか!それだけの力があるならなんだってできるじゃないか!力があるなら!正しい事に使うべきなんじゃないか!?」
光輝の正義感溢れる言葉に口を開いたのは神羅だ。
「愚か者。力とはどこまで言ってもその持ち主の物だ。ならば、その持ち主の意思で振るわれるべきだ。力があるから何かするのではない。その力で以て何をしたいかだ。何をするか自分で選び、そのために自分が持ちうる力を振るう。それが生きると言うものだ」
神羅が呆れたように言うと、光輝はぎりっ、と奥歯を噛むように神羅を睨みつけると、突然モスラに視線を向け、
「聞きましたか、モスラさん!これがこいつの正体です!こいつは力があるのにそれを人々のために使おうとしない!こいつは非道な化け物なんです!こんな奴に………」
光輝はそう声高に告げ、更に言葉をつづけようとするが、モスラが呆れた視線を向けられると、戸惑うように言葉をつまらせる。
「………貴方さっきから何を言ってるの?ゴジラの言う通り、力はその持ち主の意思で振るわれるべき物よ。その意志は、誰かが縛っていい物じゃない。というかそもそもの話、ゴジラ達は誰も見捨てるなんて言ってないでしょ?救える命は救うと言ってる。それの何が不満なの?更に言えば、貴方自分で世界を救うなんて言ってたのになんでそれを他人に押し付けてるの?貴方の世界を救うって決意はその程度なの?」
モスラの問いに光輝は激しく動揺して口を噤む。何か言おうとするが、何も言う事ができずにいる。
「はぁ………話を聞こうと思ってたんだけど、これは骨が折れそうね……」
「まあ、迷宮で神代魔法を獲得した後、その修練に少しかかるだろうし、その間に話を聞くことはできるでしょう」
ハジメの言葉にそれもそうね、とモスラが鼻を鳴らしていると、
「あの………皆さんは近日中にはここを去るつもりなのでしょうか?」
「ん?ああ……今日で迷宮を攻略したとして……まあ、修練もそこそこに出発するとするなら、明後日には出るな。道中でも鍛錬はできるし」
ハジメ達の予定を聞いたリリアーナは一瞬目を伏せると、
「その、もう少しだけ、残ってもらえないでしょうか?せめて、王都の防衛体制が整うまで滞在してほしいのですが……」
未だ防衛体制が不十分な状態で魔竜や魔人族に唯一対抗できそうなハジメと神羅を手放したくないと言うのは仕方ないだろう。メルドも同じ気持ちだろうが、これ以上ゴジラ達に頼るわけにはいかないと考えているのか黙ってしまっている。
「とは言ってもな………さすがにもうこれ以上ずるずると伸ばすのはこちらとしても上手くないんだよな……偽王が出てきたって事は連中も本腰を入れてくる可能性がある。そうなったら……」
「少なくとも、本格的に王都を守る余裕は無くなる。下手したら戦いの余波で王都を蹂躙しかねん。ならばいないほうがいいと思うが?」
「……それに、結界も直ってるうえに、魔人族もあれだけの大打撃を受けたんじゃすぐに攻め込むようなことはできないと思うけど?」
ハジメ達の説明に彼らが残る気はないと分かりリリアーナは肩を落とすが、もう少し安全の保障が欲しい為、王女として食い下がろうとすると、
「ねぇ、王女様。貴女が欲しいのは防衛戦力って事でいいのかしら?」
「え?は、はい……メルドが残ってくれますが、それでもあれほど恐ろしい存在がいるのであれば、どうにか対抗できる手段が欲しく………」
「ふ~~~ん………それ、私の方に当てがない事もないわよ」
モスラの言葉にリリアーナはへ?と目を丸くする。
「現状を考えれば、事情を知れば彼女ならここに滞在すると思うわ。彼女なら多少なりとも怪獣とやり合えるだろうし、避難の時間ぐらいは稼げると思う」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。ゴジラ達が迷宮に挑むって言うならその間に私の方で話を付けてくるわ」
「そ、それは……とてもありがたいのですが……大丈夫なのですか?」
「……それはその人の安全の話?それとも……戦力として当てになるかって話?」
「あ、いえ、それは………」
口ごもるリリアーナを見てモスラは小さく頭を振り、
「ごめんなさい。少し意地悪が過ぎたわ。大丈夫。戦力として十分期待できる。なにせ、ここにいる者を含めても3番目に強いからね」
その評価にクラスメイト達が驚いたように息を呑む。ここにいる者も含める、となれば一番と二番は間違いなく神羅とモスラであることは彼等にも分かる。それで3番目と言う事は、ハジメ達よりも強いという事だ。そんな人物がこのトータスにいたと言う事実に彼らは驚きを隠せない。
対し、ハジメ、ユエ、シアはモスラの言葉で彼女が誰の事を言っているのか察し、あ~、と納得したような、それでいて悔しそうな表情を浮かべている。
「それでは.........お願いしてよろしいでしょうか?」
「ええ、分かったわ。早速行ってくるわね」
「問題は解決したようで何よりだ。それじゃあ、俺達は大迷宮に挑んでくるな。後は頼んでいいか?」
「ああ、任せてくれ。何から何まですまないな、南雲」
メルドに軽く手を振りながらハジメ達がその場を後にしようとした瞬間、光輝が突然声を上げる。
「待て南雲!だったら俺も連れて行け!」
「……え?急に何だ?どうした?」
突然の発言にハジメが目を白黒させていると光輝は続ける。
「お前たちに任せておけるか!俺がこの世界を救う!そのためには力が必要だ!神代魔法の力が!お前たちについて行けば神代魔法が手に入るんだろ!」
「………いや、本当に何言ってんだお前。俺たちのこと化け物と言っておきながらその化け物に頼るってどう言う理屈だよ……」
「そもそもなんだその寄生する気満々の宣言は。ついてくるだけで神代魔法が手に入るわけがないだろう」
「何を言っている!そもそもお前だってその化け物の力を借りて攻略したんだろ!?」
神羅を指さしながら光輝がそう言うと、
「…………随分な物言いじゃない」
不意に割り込んできたモスラの言葉に全員が目を向けると、彼女は不服そうに顔をしかめている。
「神代魔法は迷宮を攻略すれば皆手に入れられるような安いものじゃないわ。攻略者にそれを手にする資格があるかどうか判別する仕組みが迷宮にはあって、攻略者が神代魔法を得るに相応しいか判別している。寄生なんかで手にする事は不可能よ」
「で、でも、実際そいつは化け物と一緒に…………」
納得がいかないと言うように神羅とハジメを睨む光輝を見て、モスラは小さくため息をつくと、
「そんなに納得がいかないなら、確認してみる?」
え?と光輝達が疑問符を浮かべていると、モスラは人差し指を立てながら告げる。
「だから、ハジメ君達が本当にズルをしたかどうか、彼等と戦った本人に聞けばいいじゃない。これから私が呼んでくる仲間........ミレディ·ライセンに」